有価証券報告書-第6期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/26 15:12
【資料】
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【項目】
128項目

研究開発活動

当社グループでは、TIS株式会社および株式会社インテックが中心となり、下記領域における先端的な研究開発に取り組んでおります。なお、当社グループにおける研究開発活動は、その多くが個別の事業セグメントに特化するものではなく、事業横断的な技術を探求するものです。
(1) ソフトウェア生産技術
開発の品質と生産性の向上を目指し、グループ各社がそれぞれの強みを活かした仕組み作りに取り組んでおり、その成果はグループで共有しています。
2013年度は、システム開発で大きな工数を占めるテスト工程に注力しました。株式会社インテックでは、テスト自動化基盤TaaS(Test as a Service)とテストスクリプトジェネレータの研究開発と社内活用を推進しており、2013年度下期から社内推進ワーキンググループを立ち上げ、各本部における取り組みを開始しました。また、製造工程の飛躍的な生産性向上を目指したプログラム自動生成ツールの研究開発にも取り組み、段階的なプロトタイプ開発と評価を行いました。
TIS株式会社では、テスト仕様・テストケースを中心にテストの計画から設計、実行、進捗、不具合までを統合的に管理するテスト管理システムCapsule-Tを開発し、2013年度上期から本格的な利用を開始しました。
さらにTIS株式会社では、上流工程の品質向上を目指して、新たに2つの領域において施策の研究を開始いたしました。一つは要件定義の品質向上を目的とした要求工学知識体系(REBOK)の採用に関する調査で、2014年度中にプロジェクトで試行した後、全社展開をめざしています。もう一つは形式手法を使用した仕様の品質高度化で、2014年度中に一定の成果をあげるべく施策化を進めています。
また、TIS株式会社では2010年度から取り組んでいるJava開発フレームワークであるXenlon~神龍(シェンロン)の開発検証を継続するとともに、金融・公共等の大規模基幹システムにおいて利用されている実行基盤であるNablarch(ナブラーク)の開発体制との融合を2014年1月に完了し、WEBアプリケーション開発における社内標準化と生産性向上を推進しています。
(2) クラウド技術
株式会社インテックでは、SDN(Software-Defined Networking)を含む、Software-Definedなデータセンターの構築技術の調査を行うとともに、それらの技術を活用したデータセンター/クラウドの連携モデルの検討と必要技術の調査を行いました。また、クラウド環境におけるセキュリティモデルの研究開発として、セキュアオンラインストレージの機能追加を行い、今後のサービス展開に向けた社内評価を行いました。さらに、大阪大学を中心とするDistcloudプロジェクトに協力し、“Long Distance Live Migration”技術の実証実験において、最大で地球の外周の半分以上に相当する約2万4千km離れた拠点間で仮想計算機(Virtual Machine:VM)を無停止で移動することに成功しました。
TIS株式会社は、独自のクラウド技術であるT.E.O.SとAWS(Amazon Web Service)等のパブリッククラウドをハイブリッドで提供していますが、さらに2013年度はオープンソースのクラウド基盤構築ソフトウェアであるOpenStackの調査研究を開始しました。OpenStackを用いたプライベートクラウド基盤とAWSとを簡単に統合してシステムの構築や運用を行うことのできるCloudConductorを開発し、2014年3月にインターネットに公開しました。この一部は、経済産業省の「平成25年度「産業技術実用化開発事業費補助金(ソフトウェア制御型クラウドシステム技術開発プロジェクト)」を受けて実施したものです。
(3) オープンソース
TIS株式会社では、2011年度よりオープンソースソフトウェア(OSS)への貢献を重ねています。具体的には、システムインテグレーションに必要なミドルウェア(WEBサーバ、アプリケーションサーバ、データベース、クラスタ構成、監視運用等)を独自に検証し、「ISHIGAKI Template」という名称で提供しています。2013年度は、この豊富なサポート経験に基づいて、いくつかのミドルウェアOSSについての技術サポートとコンサルティングを事業として開始いたしました。
特に、世界中で広く使われているオープンソースの監視ツールであるZabbixには数多くの貢献をしました。具体的には、仮想環境やクラウド環境を統合的に監視するHyClops for ZabbixやPostgreSQLデータベースを監視するテンプレートとしてpg_monzを開発し、インターネットに公開しました。その功績は広くオープンソース・コミュニティに評価されており、2014年2月、優れたオープンソースソフトウェアの開発及び普及に貢献した個人等を表彰する「第9回 日本OSS奨励賞」(日本OSS推進フォーラム主催)を受賞いたしました。
(4) スマートフォン・タブレット端末関連技術
普及が加速しているスマートフォンやタブレット端末に関しても、重要なテーマとして継続的に研究開発に取り組んでおります。
株式会社インテックでは、総務省による「ICT街づくり推進事業」の採択テーマである「富山まちあるきICTコンシェルジュ事業」を実施しました。富山市・富山大学・富山県立大学・地元企業との連携のもとで、生活者へまちあるき情報を提供し、歩行者の動態情報を収集・分析するためのICTインフラと情報配信プラットフォームの整備に取り組みました。また、GPSが届かない屋内で位置を推定するための独自技術の研究開発を進め、「屋内位置特定サービス SonicLocator」としてリリースしました。
(5) ビッグデータ、ユビキタスプラットフォーム技術
これまで処理できなかった大量のビジネスデータ、さらには今後広く普及することが予想される各種のセンサーから産み出される大量のデータを処理する技術が実用化されつつあります。こうしたビッグデータの研究開発、それらを利用して各種のアプリケーションを実現するためのユビキタスプラットフォームの研究開発にも取り組んでいます。
株式会社インテックは、ユビキタスプラットフォーム事業の企画、開発、サービス提供のための環境を整備する専門組織として、「ユビキタスプラットフォーム事業開発室」を設置しました。独自開発のスケールアウト型ストレージ「EXAGE/Storage」を活用しながら、ユビキタスプラットフォームの構築を進めています。今後は、その基盤の上にインテックの健診プラットフォーム「スーパー・フェニックス」を核とするヘルスケアサービスをはじめ、他社サービスも含む個々のサービスを展開していく予定です。
TIS株式会社ではビッグデータ解析の事業化を進め、マーケティング・プラットフォーム・ソリューションである「テクモノス」と連携したデータサイエンティスト向け統計解析実践セミナーを開始いたしました。また、主にASEAN市場へ向けた動きとして、2013年10月にはホーチミン市校工科大学との研究助成金契約の第一号として、「ホーチミン市内の交通量情報のリアルタイムでの取得および予測」と「特定の製品やサービスに対するネット上の評価の総合分析」に関する研究を開始しました。
(6) その他の研究開発活動
株式会社インテックでは、研究開発活動成果について各種学会発表や外部講演を実施しているほか、INTEC Technical Journal誌に論文発表し、広報活動を行っています。その他、慶応義塾大学、富山大学、富山県立大学等での特別講義を実施しています。
TIS株式会社では、研究開発の取り組みをTech Sketchと名づけたウェブサイトで一般公開しており、幅広く技術者との意見交換できる場を運営しています。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は853百万円となっております。