有価証券報告書-第24期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/29 15:13
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【項目】
78項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積もり
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成されております。また、当社は、財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積もりを行っており、これらの見積もりは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積もりと異なることがあり、結果として財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。
① 金融商品の評価
当社では、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として損益計算書に計上しております。評価に用いる時価は、市場で取引が行われている有価証券やデリバティブ取引については当事業年度末時点の市場価格を、市場価格のない有価証券やデリバティブ取引については理論価格を、それぞれ使用しております。理論価格を算出する際には、対象となる商品や取引について最も適切と考えられるモデルを採用しております。
② 有価証券の減損
当社では、投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。このうち時価のある有価証券については、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当事業年度末における時価の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。時価の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、時価の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがないと判断したものについては、減損処理を行っております。また、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券については、実質価額が著しく低下し、かつ、回復する見込みがないと判断した場合には、減損処理を行っております。
③ 固定資産の減損
当社では、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。
④ 繰延税金資産の回収可能性
当社では、税務上の繰越欠損金や企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
① 平成27年度のマクロ経済環境
<海外の状況>世界経済は緩やかに減速する動きが見られました。平成27年4-6月期にはギリシャの債務返済が延滞となり、中国では株価が急落するなど、金融市場の混乱が相次ぎました。7-9月期には、中国人民銀行が人民元の基準値を引き下げたことを契機に、世界同時株安に見舞われることとなりました。こうした金融市場の混乱は10-12月期に入り幾分緩和したものの、平成28年1-3月期には中国経済の減速懸念が強まり、世界の金融市場は再び不安定な局面を迎えることとなりました。
米国経済は個人消費の加速や堅調な住宅販売など、家計部門が強さを取り戻し、平成27年4-6月期は堅調な推移を示しました。7-9月期の実質GDP成長率は4-6月期からは減速したものの、原油安・ドル高に支えられる形で個人消費が底堅い推移を続けました。企業部門では、堅調な個人消費に支えられる形で非製造業を中心に業況感の改善が見られたものの、ドル高などを背景に製造業において10-12月期、平成28年1-3月期と低迷が続きました。金融面では、雇用環境を中心とした米国国内の景気回復を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)が平成27年12月に利上げを決定しました。しかし、平成28年に入ると、米国の利上げを受けて新興国の金融市場が不安定化したほか、ドル高の影響などにより堅調だった米国経済にも陰りが見え始めたことから、FRBは当初想定していた利上げペースをやや減速させることとなりました。
欧州経済は、ECB(欧州中央銀行)による金融緩和政策の効果や原油価格の下落などが追い風となり、緩やかな回復が続きました。平成27年4-6月期のユーロ圏の実質GDP成長率は、ユーロ安などを背景に輸出が伸び、1-3月期比+0.4%となりました。しかし、7-9月期に入ると、中国経済の減速などが一因となり、輸出の伸びは鈍化しました。10-12月期に入っても輸出の伸び悩みは継続しましたが、一方で底堅い個人消費がユーロ圏経済を支えました。平成28年1-3月期においてもこうした傾向は続き、実質GDP成長率は10-12月期比+0.5%となりました。物価面では、消費者物価指数に見るインフレ率は前年同月比ゼロ%近辺での推移が続いており、ECBが目標とする水準には遠く及んでいません。こうした状況の中、ECBは平成27年12月及び平成28年3月に追加緩和を決定しました。政治面では、ギリシャ問題が再発し、IMFへの資金返済の延滞を契機に同国の実体経済・金融市場は大きな打撃を受けました。7月の国民投票では、緊縮反対派が多数を占める結果となりましたが、最終的にはギリシャ政府が債権団の提案を受け入れ、事態は一旦収束に向かうこととなりました。また、中東情勢の混乱を受けて急増した難民への対処がユーロ圏の大きな課題となっています。英国では平成27年5月の総選挙において保守党が勝利したことを受け、平成28年6月に英国がEUを離脱するか残留するかを問う国民投票が実施されることとなりました。EU離脱派と残留派が拮抗しているとの観測もあり、英国経済のリスク要因となっています。
新興国経済については減速傾向が続いています。中国経済の不振が各国に伝播したことが、新興国全体の景気の足取りを鈍くさせている最大の要因です。平成27年前半、中国人民銀行が相次いで預金準備率の引き下げを行ったことが景気を下支えしましたが、6月以降、中国の代表的な株価指標である上海総合指数は急速に下落しました。このような株価の急落を受けて中国政府はIPOを抑制する方針を固め、中国の大手証券会社がETFへ投資するように指導するなど、総力を挙げて株価の下支えを行いました。さらに、8月に入り、中国人民銀行による人民元の基準値の引き下げや追加の金融緩和の決定など、金融面を中心とした景気対策が相次いで発表されました。中国景気の減速懸念が急速に意識された結果、世界的に株価が下落しましたが、その後、中国人民銀行によって人民元相場を安定させる方針が示されたことで、中国経済に対する懸念は幾分緩和されました。しかし、7-9月期の実質GDP成長率が2四半期続けて政府目標である前年比+7.0%を下回る同+6.9%となったのに続いて、10-12月期、平成28年1-3月期も同+6.8%、+6.7%と一段と減速しており、中国経済に対する先行き不透明感は依然として払拭されずにいます。
<日本の状況>日本経済はこれまでの緩やかな回復が一巡し、「踊り場」局面を迎えました。鉱工業生産は一進一退の動きとなっています。一方、非製造業の活動を示す第三次産業活動指数は非常に緩やかながらも持ち直しの動きが続いています。
GDPに占めるウエイトの大きい個人消費は力強さに欠ける動きとなっています。労働需給のタイト化に伴う賃金上昇圧力に加えて、企業収益の改善に伴うベースアップや賞与の増加など、所得環境は良好である一方、平成27年4-6月期の後半以降は天候不順が個人消費の下押し要因として働きました。このような下押し要因は7-9月期には一旦解消されたものの、食料品価格の値上げなどを背景とした消費者マインドの悪化や、10-12月期には暖冬に伴う季節商材の動きの鈍さが下押し要因として働いたことなどから、個人消費は足取りが重い状態となりました。こうした個人消費の停滞感は平成28年1-3月期においても払拭されず、日本経済の活性化を妨げる要因の1つとなっています。住宅投資に関しては、平均して見ると横ばい圏で推移しました。平成27年度前半にかけては所得環境が良好であることに加えて、住宅ローン金利が低水準で推移していることが住宅投資の増加を支援する材料となった一方、平成27年度後半に入ると住宅価格の上昇などが響き住宅投資は減少しました。企業の設備投資は緩やかな持ち直しの動きとなっています。日銀短観2016年3月調査を見ると、製造業では設備の過剰感の解消、非製造業では不足感の強まりが顕著になっています。公共投資についてはこれまでの増加傾向が一巡し、緩やかな減少局面を迎えています。
外需に目を向けると、輸出数量の減少を主因に輸出金額は減少傾向となっています。地域別に輸出数量の動向をみると、米国向け輸出の減少が目立ちます。さらに、平成27年6月以降はアジア向け輸出も減少に転じており、中国経済減速の影響を確認することができます。他方、ユーロ圏向けに関しては、同地域での個人消費の回復にけん引される形で、消費財を中心に輸出は持ち直しの動きに転じました。また、輸入金額は7月をピークに減少へ転じています。
金融面では、平成28年1月に日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を発表しました。日本銀行による大量の長期国債の購入によって債券需給がひっ迫していたところに、マイナス金利導入の影響も加わり、足下で長期金利はマイナス圏での推移が定着しています。為替レートの動きをみると、米ドル対円では平成27年5月後半から米国経済の改善が明確化してきたことなどを背景にドル高円安が進行しました。その後は年末にかけて120円から125円のレンジで推移しましたが、特に年明け以降、海外経済のリスクが意識されるのに伴い、急速な円高が進行しました。
平成28年3月末の日経平均株価は16,758円67銭(前年3月末比2,448円32銭安)、10年国債利回りは△0.050%(同0.450ポイントの低下)、為替は1ドル112円43銭(同7円78銭の円高)となりました。
② 経営成績
「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1) 業績」に記載のとおりであります。
③ 財政状態
<資産の部>当事業年度末の総資産は10兆5,241億円(前事業年度末比1兆5,438億円減)となりました。内訳は流動資産が10兆4,196億円(同1兆5,495億円減)であり、このうち現金・預金が1兆1,297億円(同2,925億円増)、トレーディング商品が5兆3,802億円(同5,050億円減)、有価証券担保貸付金が2兆7,913億円(同1兆1,523億円減)となっております。固定資産は1,045億円(同57億円増)となっております。
<負債の部・純資産の部>負債合計は9兆7,429億円(同1兆6,243億円減)となりました。内訳は流動負債が8兆5,613億円(同1兆7,362億円減)であり、このうちトレーディング商品が4兆1,103億円(同2,154億円減)、有価証券担保借入金が2兆2,532億円(同1兆1,982億円減)、短期借入金が1兆233億円(同1,355億円減)となっております。固定負債は1兆1,776億円(同1,118億円増)であり、このうち社債が6,200億円(同201億円減)、長期借入金が5,230億円(同1,304億円増)となっております。
純資産合計は当期純利益808億円を計上したことなどから、7,811億円(同804億円増)となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び流動性に係る情報
① 流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>当社は、多くの資産及び負債を用いて有価証券関連業務を中心としたビジネスを行っており、ビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社の資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めております。特に近年においては、世界的金融危機及び信用危機による不測の事態に備え、市場からの資金調達、金融機関からの借入等により、手元流動性の更なる積み増しを行っております。同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
また、当社は、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理体制を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、複数のストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを毎日確認しております。
なお、当事業年度末における当社の短期無担保調達資金及び流動性ポートフォリオ等の状況は次のとおりです。
(単位:億円)
銀行等からの短期借入金4,321
その他の短期借入金4,050
コマーシャル・ペーパー1,377
1年内償還予定の社債965
短期無担保調達資金合計10,714
現金・預金11,297
国債・政府保証債等1,004
流動性ポートフォリオ12,302
その他の債券4,165
上場株式等4,262
その他50
補完的流動性ポートフォリオ8,478
流動性ポートフォリオ等合計20,780


当事業年度末における当社の流動性ポートフォリオの合計額は1兆2,302億円であります。また、補完的流動性ポートフォリオを含めた合計額は2兆780億円であり、この金額は当事業年度末の短期無担保調達資金の合計額の194.0%に相当します。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>当社は、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社は機動的な対応により流動性を確保する体制を整備しております。
当社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
② 株主資本
当社が株式や債券、デリバディブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、証券担保ローン等の有価証券関連業務を中心とした幅広い金融サービスを展開するためには、十分な資本を確保する必要があります。当事業年度末の株主資本は、7,737億円(前事業年度末比808億円増)となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,499億円であり、利益剰余金は当期純利益808億円を計上した結果、3,238億円(同808億円増)となりました。