有価証券報告書-第10期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

【提出】
2018/03/30 16:51
【資料】
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【項目】
57項目

業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度は、世界的に金融緩和状態が続くなか、米国を筆頭に経済が回復基調に転じたことから、多額の資金が株式市場に流入し、株価が大きく上昇した1年となりました。
世界の期待を集めたのは、インターネット等を活用した新しいビジネスモデルや、人工知能等の新しい技術の開発・実用化に取り組む企業です。これらのイノベーションは、徐々に我々のライフスタイルを変えつつあります。
ヘルスケア分野においても、新しい技術への取り組みが行われています。大塚グループでも、世界初のデジタルメディスン「エビリファイ マイサイト(Abilify MyCite®)」の商品化に成功しました。
このような経営環境下において、当社グループの当連結会計年度の売上高は1,239,952百万円(前期比3.7%増)となり、営業利益は104,181百万円(前期比3.0%増)、当期利益は114,387百万円(前期比22.6%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は112,492百万円(前期比21.5%増)となりました。
セグメントの業績は次のとおりです。
(単位:百万円)
医療関連事業ニュートラシューティカルズ
関連事業
消費者関連事業その他の事業調整額連結
売上高774,762326,22135,595151,133△47,7591,239,952
営業利益82,69439,16911,1159,743△38,541104,181

① 医療関連事業
当社は、2018年度までの第二次中期経営計画において、抗精神病薬の「エビリファイ持続性水懸筋注用/Abilify Maintena」と「REXULTI」、バソプレシンV2受容体拮抗剤「サムスカ/JINARC」をグローバル3製品、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」を次世代製品の1つと位置づけ、中長期での持続的な成長を目指しています。
◇日本
精神・神経領域では、抗精神病薬「エビリファイ」は、2016年4月の薬価改定において適用された市場拡大再算定と2017年6月以降、後発品発売の影響を受け、同剤の売上は前期比で減少となりました。持続性注射剤(月1回製剤)である「エビリファイ持続性水懸筋注用」は、処方の拡大により、売上が大幅に増加しています。ユーシービージャパンとコ・プロモーションを行っている抗てんかん剤「イーケプラ」は、高い有効性と安全性、使いやすさが専門医の評価を得て、処方数が順調に伸長しています。また、パーキンソン病とレストレスレッグス症候群の治療剤「ニュープロパッチ」も、2016年6月に発売した18㎎製剤が処方の拡大に寄与し、売上が増加しています。
がん・がんサポーティブケア領域では、抗悪性腫瘍剤「アブラキサン」は、胃がんにおける用法・用量の拡大により、売上は前期比で増加しました。抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」は、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんに対する標準療法の一つとしての位置づけを確立し、前期比で増収となりました。制吐剤「アロキシ」の売上は前期比で増加しました。
循環器・腎領域では、「サムスカ」は経口水利尿薬として医療現場での価値訴求が奏功し、売上は前期比で大幅に増加しました。また、常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)の唯一の治療剤としても、服用患者数の増加と高い継続率で腎臓の難病治療に貢献しています。
消化器領域では、武田薬品工業とコ・プロモーションを行う酸関連疾患治療剤「タケキャブ錠」の処方が大幅に拡大しています。
眼科領域では、ドライアイ治療剤の「ムコスタ点眼液UD2%」は製品コンセプトの訴求により増収となりました。また、2017年1月に緑内障・高眼圧症治療剤「ミケルナ配合点眼液」を発売し、処方拡大を続けています。
診断領域では、インフルエンザ検査薬、ヘリコバクター・ピロリ関連製品の売上減少等が影響し、診断薬全体で減収となりましたが、2017年7月に「クイックナビTM-マイコプラズマ」、同年9月に「クイックナビTM-Flu2」を発売し、販売数量は伸長しています。
臨床栄養領域では、2017年1月に新規処方で発売した高カロリー輸液「エルネオパNF輸液」の販売数量の伸長等が寄与し、臨床栄養全体で増収となりました。
◇北米
「エビリファイ」の持続性注射剤(月1回製剤)「Abilify Maintena」は、製剤の利便性に対する認知の向上に加え、2017年7月の双極性障害の効能追加により、前期比で増収となりました。「REXULTI」は、2015年に米国で発売以降、統合失調症と大うつ病補助療法の2つの効能で処方数が伸長し、売上は大幅に増加しています。また、2017年4月にカナダで販売を開始し処方が拡大しています。神経疾患領域の薬剤開発に強みを持つ米国アバニア社の「NUEDEXTA」は、世界初で唯一の情動調節障害の治療剤としての評価が浸透し、売上は増加しています。「ロンサーフ」の売上は、前期比で減少しました。経口水利尿薬として販売する「サムスカ」は、価値訴求の強化により売上が増加しました。また、ADPKD治療剤「JINARC」は2015年にカナダで発売以降、順調に処方が拡大しています。
◇その他
「Abilify Maintena」は欧州での処方が拡大し、売上は前期比で大幅に増加しました。「ロンサーフ」はセルヴィエ社とのライセンス契約のもと、2016年4月に製造販売承認を取得以降、販売国が順調に拡大しています。「サムスカ」は経口水利尿薬としての成長に加え、ADPKD治療剤「JINARC」としても承認国が増加しました。「サムスカ/JINARC」の販売国は日本・北米を含む世界で26カ国・地域に拡大しています。
以上の結果、当連結会計年度の医療関連事業の売上高は774,762百万円(前期比2.9%増)、営業利益は82,694百万円(同10.1%減)となりました。
② ニュートラシューティカルズ関連事業
当社のニュートラシューティカルズ関連事業は、日々の健康の維持・増進をサポートする機能性飲料・機能性食品等を中心に、グローバルに事業を展開しています。
◇日本
水分・電解質補給飲料「ポカリスエット」は、季節性要因に伴う市場の低迷*1同様、販売数量は減少しましたが、乾燥時の水分補給や熱中症対策等の消費者に対するコミュニケーション活動により、市場シェアは伸長しています*2。炭酸栄養ドリンク「オロナミンC」は、食系栄養ドリンク市場が低迷するなか*3、積極的なコミュニケーション活動を継続し、販売数量は前期並に推移しました。「カロリーメイト」は、前年に発生した震災に係る一時的な需要増の反動等により4月に販売量が前期比で大きく減少しましたが、年間では前年比で増加し、栄養バランス食品市場においてトップシェアを維持しています*4。また、2016年5月にラインアップを拡充した「カロリーメイト ゼリー」は、バランス栄養食の新しい形態としての製品価値が浸透し、順調に成長しています。大豆バー「SOYJOY(ソイジョイ)」は、前年4月に「SOYJOY クリスピー」3製品を発売した反動により前期比で販売数量が減少しましたが、2017年2月に発売した新製品「SOYJOYクリスピー ホワイトマカダミア」は、市場への導入が順調に進んでいます。
◇北米
米国店頭販売No.1サプリメント*5である米国ファーマバイト社の「ネイチャーメイド」は、米国のサプリメント市場の拡大傾向*6も相まって、売上は前期比で増加しました。また、米国フードステイト社の医療従事者向け販売チャネルを通じ、2017年10月よりエクオール含有食品「エクエル」の米国での販売を開始しました。2017年7月には、北米でプラントベース(植物由来)食品を開発・製造販売するデイヤフーズ社を買収しました。
◇その他
欧州を中心に40カ国以上に事業展開するニュートリション エ サンテ社は、全体の売り上げは前年並みに推移しましたが、フランスの健康食品No.1ブランド*7「ジェルブレ」等の栄養・健康食品におけるグルテンフリー製品、ミートフリー製品、シュガーフリー製品は成長を続けています。2017年12月には本分野の強化を図るべく、フランスの有機食品メーカー BC BIO社を買収しました。アジアを中心に海外19カ国・地域で展開しているポカリスエットは、中国では販路の拡大や製品認知度の上昇に伴い販売数量が増加しましたが、インドネシアにおいて天候不順や景気後退等の影響を受け、海外全体の販売数量は前期比で減少しました。
以上の結果、当連結会計年度のニュートラシューティカルズ関連事業の売上高は326,221百万円(前期比4.7%増)、営業利益は39,169百万円(同20.5%増)となりました。
*1:インテージSRI 2017/1-12 -10.3 % 無断転載禁止
*2:インテージSRI 2017/1-12 38.4 % 無断転載禁止
*3:インテージSRI 2017/1-12 -6.8 % 無断転載禁止
*4:インテージ SRI 栄養バランス食品(種別:クッキー・ビスケット、シリアル、ケ-キ)市場2017/1-12 31.8% 無断転載禁止
*5:ⓒ2018, The Nielsen Company, Scantrack service®, 米国xAOCチャネル2008-2017 無断転載禁止
*6:ⓒ2018, The Nielsen Company, 米国xAOCチャネル2017/12/30 2.7% 無断転載禁止
*7:IRI社 フランススーパー向け栄養食品市場調べ(2017年) 無断転載禁止
③ 消費者関連事業
ビタミン炭酸飲料「マッチ」は、積極的なマーケティング戦略や営業活動等によるブランドの活性化に取り組み、販売数量は前期並に推移しました。「クリスタルガイザー」を中心とするミネラルウォーターは、新規ユーザー層拡大にむけた積極的なマーケティングを展開しましたが、通販チャネルにおける売上減少等により、販売数量は前期比で減少しました。
以上の結果、当連結会計年度の消費者関連事業の売上高は35,595百万円(前期比0.4%増)、営業利益は11,115百万円(前期比103.9%増)となりました。国際会計基準(IFRS)の適用により、海外事業の持分利益が計上され、営業利益率は31.2%と高くなっていますが、既存事業については、引き続き効率化や組織の改革を継続しています。
④ その他の事業
機能化学品分野では、水加ヒドラジンや発泡剤等の販売数量の伸長等により、売上は前期比で増加しました。ファインケミカル分野では、医薬品原薬及び中間体の販売数量の伸長等により、前期比で増収となりました。
運輸・倉庫分野では、取扱数量が堅調に推移し、売上は前期比で増加しました。通販サポート事業と保険事業では、取扱件数の増加や契約件数増加等により、前期比で増収となりました。
以上の結果、当連結会計年度のその他の事業の売上高は151,133百万円(前期比7.0%増)、営業利益は9,743百万円(同25.2%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は336,613百万円となり、前連結会計年度末より33,262百万円減少しました。これは、営業活動により獲得したキャッシュ・フロー102,832百万円が、投資活動により使用したキャッシュ・フロー△40,072百万円と、財務活動により使用したキャッシュ・フロー△94,537百万円の合計額を下回ったためです。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得したキャッシュ・フローは、102,832百万円となりました。当連結会計年度の主な内容は、税引前当期利益103,712百万円、減価償却費及び償却費62,235百万円、減損損失及びその戻入益28,847百万円、持分法による投資利益△19,307百万円、その他営業活動によるキャッシュ・フロー△12,313百万円、法人所得税等の支払額△43,210百万円となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用したキャッシュ・フローは、△40,072百万円となりました。当連結会計年度の主な内容は、有形固定資産の取得による支出△54,153百万円、投資の売却及び償還による収入74,409百万円、投資の取得による支出△48,416百万円、子会社の取得による支出△47,100百万円、定期預金の増減額59,679百万円となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用したキャッシュ・フローは、△94,537百万円となりました。当連結会計年度の主な内容は、長期借入金の返済による支出△40,037百万円、配当金の支払額△54,861百万円となっております。
(3) IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
(のれんの償却)
日本基準では、のれんは、その効果が発現すると認められる期間で償却することとしておりましたが、IFRSでは、移行日以降、のれんの償却を行っておりません。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、連結損益計算書の「販売費及び一般管理費」が前連結会計年度11,900百万円、当連結会計年度12,723百万円減少しております。
(研究開発費の資産計上)
日本基準では、技術導入契約等の支出は、「研究開発費」として認識しておりましたが、IFRSでは、IAS第38号による無形資産の定義を満たすものについて資産化し、「仕掛研究開発」として無形資産に計上しております。当該資産は、未だ使用可能ではない無形資産であるため、償却をせず、減損テストを行っております。「仕掛研究開発」については、その後の期間に規制当局の許認可が得られ使用可能となった時点で「商標権及び販売権等」に振替を行い、その時点から見積耐用年数にわたり定額法で償却を開始しております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、連結財政状態計算書の「無形資産」が前連結会計年度56,287百万円、当連結会計年度68,001百万円増加しております。