有価証券報告書-第6期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/30 8:41
【資料】
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【項目】
125項目

研究開発活動

当社グループは、鋼製橋梁、PC橋梁、複合構造物、建築鉄骨、建築等の各事業分野において、顧客満足度の向上のためにより一層の技術力向上に努めています。また、双腕型ロボットなどの機械事業、無潅水タイプ屋上緑化、地中熱、太陽光を用いた環境事業など鋼構造事業以外の分野においても研究成果をあげています。
現在の研究開発は、次世代の事業拡大に向けて川田テクノロジーズ㈱の技術研究所を中核とし、グループ各社と連携を図るとともに、外部の研究・教育機関、民間企業などとも密接な連携・協力関係を保って効果的に推し進めています。
当連結会計年度における研究開発費は470百万円であり、各セグメント別の主な内容は、次のとおりであります。
(鉄構セグメント)
川田工業㈱の鋼構造事業部が、鋼構造に関する研究開発を推進しました。
当連結会計年度における研究開発費は96百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。
① 橋梁保全技術に関する研究開発
平成24年12月に発生した中央自動車道の笹子トンネルの天井板落下による大事故に端を発して、国土交通省では平成25年をメンテナンス元年と宣言し、道路をはじめとするインフラの維持管理を本格的に取り組んでいます。
当社グループにおいても、構造物の維持管理の一環として、打音法、電磁パルス法及び赤外線サーモグラフィ法による点検技術の開発を行ってきました。この成果により、鋼板などに覆われたコンクリート内部の欠陥の検出や、笹子トンネルの事故の原因となった「あと施工アンカーボルト」の健全性評価が可能になり、構造物の維持管理がより容易にできるようになりました。
また、鋼橋をはじめとする鋼構造物の長寿命化対策として、鋼材の腐食を促進させる表面の塵埃や塩分などを洗浄し、コーティングする予防保全技術を開発しました。
② 複合構造に関する研究開発
当社グループの得意とする複合構造物では、これまでにプレビームやSCデッキなどを開発し、数多くの実績を収めています。これらの複合構造物については、現状にとどまることなく常に改善を進めています。
プレビームに関しては、現場で施工を行う継手部分に膨張コンクリートによるケミカルプレストレスを採用し、作業を省力化する技術を開発しています。SCデッキに関しては、さらなる耐久性の向上を目指して、鋼板とコンクリートを一体化するスタッドに従来の3倍の疲労寿命を有する高機能スタッドを開発し、実橋に適用しました。この高機能スタッドは、SCデッキのみならず、鋼橋のコンクリート床版の接合や鋼床版橋の補修にも適用可能な技術です。
③ 建築鉄骨生産の省力化に関する研究開発
建築鉄骨生産の省力化を図るために、建築鉄骨の重要な技術である溶接継手部に対して、高能率・高品質・高性能を兼ね備えた新たな溶接方法を開発してきました。その成果として、先行電極の溶融プール内に電流を流したアークなしのホットワイヤを用いたサブマージアーク溶接「F-SAW法」、コールドタンデム溶接法の隅肉溶接への適用、ノズル回転法を利用した狭開先溶接、タンデムサブマージアーク溶接法における裏面加熱による角変形の低減などを開発し、実用化を目指しています。
(土木セグメント)
川田建設㈱は、コンクリート構造物に関する研究開発を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は 56百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。
土木セグメントにおいては、新設橋の品質・耐久性向上技術として、コンクリート施工の基本である養生や仕上げ工法の研究、各種施工管理システムの開発を推進しています。また、壁高欄の耐久性向上技術として開発してきました埋設型枠工法を改良し、実用化を目指しています。
環境負荷低減技術として開発してきました高炉スラグ微粉末配合のプレキャスト工場製品については、新設橋3件で採用していただくことができ、その効果確認のために新たに海岸部での暴露試験を予定しています。
(建築セグメント)
川田工業㈱の建築事業部が、システム建築に関する研究開発を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は43百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。
① 建築工事の省力化などに関する研究開発
建築基礎部分など土で隠れる部位に市販の鋼製型枠を採用し、在来工法と比較を行った結果、施工日数、人工数などを削減することができました。また、システム建築の腰壁や外構フェンス基礎など仕上げ部分にも使用できるようテスト施工を実施しました。加えて、多層階倉庫建築の経済的な床組工法を開発中であり、構造実験を行って安全性が確認できたため、公的機関による性能評価取得を目指しています。
② 環境関連事業に関する研究開発
香港において無潅水タイプ屋上緑化「みどりちゃん」の性能確認試験を実施し、植物が問題なく生育することを確認し、販売につなげることができました。さらに、香港において別の種類の植物に関する性能確認試験を継続するとともに、植栽管理システムを開発して海外への拡販を目指しています。
地中熱ヒートポンプ冷暖房システム「GEOneo」については民間工場に実際に導入され、CO₂削減などの環境問題に貢献しています。また、温泉の排熱を利用したエネルギーコストの大幅削減を目的とした「芳賀温泉ロマンの湯」におけるESCO(Energy Service Company)事業に参画して研究を続け、さらなる拡販を目指しています。
(その他)
カワダロボティクス㈱及び川田工業㈱ロボティクス事業部が連携して、双腕型ロボットに関する研究開発を実施しました。
当連結会計年度における研究開発費実績は273百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。
双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」に関する研究開発
双腕型産業用ロボット関連では、アプリケーション開発を目的とした用途開発及び性能・機能向上を目的とした要素技術開発を実施いたしました。
用途開発では、フィールドエンジニアリングを顧客に派遣し、新機能抽出のためのニーズ調査研究を実施しました。この成果は、「NEXTAGE」の使い勝手の向上につながっています。
また、用途開発の一環としてグローリー㈱と共同で、次世代自動組み立てライン開発を行いました。この組み立てラインは、「NEXTAGEを活用した生産方式構築による『ものづくりイノベーション』の取り組み」として、グローリー㈱が第5回ものづくり日本大賞「経済産業大臣賞」を受賞するという成果につながり、「NEXTAGE」の有用性を広くアピールする機会となりました。
要素技術開発では、ロボットの性能、操作性、信頼性を向上するための開発を実施し、カワダロボティクス㈱と共同で研究機関向けの双腕型ロボット「NEXTAGE OPEN」の商品化に至っています。