有価証券報告書-第52期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/22 15:00
【資料】
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【項目】
112項目

研究開発活動

当社は、研究開発型の医療機器メーカーとして、血液凝固技術、メカトロニクス技術、エンジニアリングプラスチックによる接着、溶着等の接合技術、MEMS(※1)開発に必要な精密加工技術等のコア技術を蓄積し、新たな技術開発の基盤としております。また大学や研究機関等との共同研究にも積極的に取り組み、各分野の医師のご理解、ご協力のもと、協力体制を構築し、医療現場の課題を当社の課題として捉え、細部までこだわりぬいた製品の開発を行っております。
これら強固な基盤の上に、今後は当社の強みを発揮できる分野、将来有望な新商品の開発に経営資源を集中させ、顧客が望んでおられる新しい医療機器を一日も早く医療現場にお届けすることが当社の研究開発の基本戦略であります。
加えて当社は、顧客に信頼される製品を開発することは当然のこと、医療の「現場ニーズ」の源泉に立ち返り、他社との差別化・高付加価値を伴った独創的な製品に結びつくような企画、研究、開発を推し進めております。企画、研究段階では、医療従事者との人脈を活かしたマーケティング活動を通して医療現場の潜在ニーズを探り、近い将来において、医療に貢献しうる新技術の研究や製品のプロトタイプ(試作品)による妥当性を確認することで本ニーズの信憑性を確実なものとし、開発段階では、量産性を可能とするべく、開発の初期段階から設計部門と生産部門とで、生産方法や製造原価等の情報を共有しながら進める“設計製造コンカレント開発”を常態化させております。
当社研究開発部門の2020年3月期末の在籍者数は32名であり、当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は488百万円であります。
(※1) Micro Electro Mechanical Systemsの頭文字からMEMSと呼ばれています。その技術範囲として、機械要素部品、センサー、作動装置、電子回路の集積化などが挙げられ、今後は自動車、家電、産業用のみならず、医療への適用拡大のための研究開発及び採用が加速すると考えられております。
現在、主に取り組んでいる研究開発活動は次のとおりであります。
(1)高性能低コストマイクロポンプを用いた薬液注入器
本件は、2014年に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する医工連携事業化推進事業として採択され、国立大学法人岡山大学及び学校法人川崎学園川崎医科大学と共同で実施している研究開発であります。
現在の薬液注入器は、薬剤の種類、量、投与精度等により使い分ける必要があるため種々の装置に分類されています。これらは医療機関にとって機器の導入費用や管理コストを増大させており、また薬剤の種類、機器の操作性も様々であるため、間違いを誘発させるという医療安全面での課題があります。
そこで、当研究開発では、高性能低コストマイクロポンプをキーデバイスとして、数ある薬液注入器を統合していくのと同時に、安全で使い易い製品にすることで、患者のQOL向上、医療従事者の負担軽減や医療安全の向上を目指しております。
また、2015年11月27日付にて「マイクロポンプ(MEMSデバイス)を用いたディスポーザブル型医療機器の開発」について、内閣総理大臣より関西圏国家戦略特区における事業として認定されました。「高性能低コストマイクロポンプを用いた薬液注入器」は、「マイクロポンプを用いたディスポーザブル型医療機器の開発」の一端を担うものであります。
さらに、2018年12月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する「医工連携事業化推進事業(補助事業)」に採択され、2019年12月には、マイクロポンプを搭載した医薬品注入器「クーデックエイミーPCA」の製造販売承認を取得し、2020年度下期の上市に向けて準備を進めております。
(2)結核菌群迅速検査装置:体外診断用医薬品及び機器分野
結核はわが国の主要な感染症の一つで、重症化すると死の危険があることや2次感染拡大の危険性が高いことから、早期発見が大変重要であります。しかしながら、現在の結核用検査は、検体を処理する手順が煩雑などの理由から病院の検査室で手軽に行えるものではありません。
そこで、当社では、これまで結核の検査を行っていなかった医療機関でも容易にお使いいただけるような、安全で手軽な検査システムの開発を目指しております。
本検査システムは、数日かかっていた結核の核酸増幅検査を数時間以内に短縮できることから、結核の早期発見や患者様の心理的負担の軽減に貢献できると考えられます。
なお、当社は、本製品の開発を足がかりとして、体外診断薬事業への新規参入を目指しております。