有価証券報告書-第7期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 15:00
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【項目】
62項目

業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度の連結業績は、売上高は前期比6.7%減の7兆251億円、営業利益は2,711億円(前期は3,507億円の損失)となりました。また、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた場合の営業利益相当額は1,411億円(前期は1,005億円の損失)となりました。
金融収益と金融費用の純額220億円を差し引いた結果、税引前利益は2,491億円となり、法人所得税費用990億円を差し引き、当期利益は1,501億円(前期は3,098億円の損失)となりました。
また、当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益が1,500億円、非支配持分に帰属する当期利益が1億円となりました。
なお、当連結会計年度からIFRSに基づいて連結財務諸表を作成しており、比較対象である前年度の数値もIFRSに基づいています。
(2)一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度における世界経済は、英国のEU離脱問題、米国における新政権発足、世界各地の地政学的リスク等の影響により不透明感が高まる中、中国においては成長が鈍化しましたが、米国においては個人消費の拡大による景気回復が継続し、全体として緩やかな成長となりました。また、日本経済は、雇用・所得環境の改善を背景に回復基調を維持しました。
アジアの指標原油価格であるドバイ原油の価格は、期初においては1バーレル当たり36ドルでしたが、産油国における増産凍結への期待感から上昇し、また、平成28年11月末にOPEC(石油輸出国機構)及び非OPEC主要産油国において減産合意が成立したことから、当期末時点では1バーレル当たり51ドルとなりました。
国内の石油製品需要については、冬場の気温が前年に比べ低めに推移した影響により灯油が増加したものの、低燃費車の更なる普及によりガソリンが減少し、電力用C重油も減少したことから、全体として前期を下回りました。また、石油化学製品の需要はアジア域内において伸長しました。
銅の国際指標価格であるLME(ロンドン金属取引所)銅価格は、期初から10月にかけて、中国の景気減速懸念や新規鉱山の操業開始により1トン当たり4,700ドル程度の低水準で推移しましたが、米国におけるインフラ投資増加の期待やチリ、インドネシアの銅鉱山の一時的な操業停止により上昇し、当期末時点では1トン当たり5,849ドルとなりました。
(3)事業活動の経過及び成果
セグメント別の概況は、次のとおりです。
エネルギー事業(JXエネルギーグループ)
● 基幹事業の競争力強化
石油精製販売事業については、原油価格の変動や国内石油製品需要の減退という外部環境に左右されない強靭な事業基盤を構築するべく、原油の調達から精製・物流・販売に至るまでのサプライチェーン全体の競争力強化に努めました。具体的な施策として、調達・生産面では、採算性の高い原油の調達・処理の拡大に努めたほか、安全・安定操業の確保のため設備の検査・補修を確実に実施し、さらに、鹿島製油所の「溶剤脱れき装置」及び「ボイラ・タービン発電設備」の稼働により生産効率化・高付加価値化を図る等、各種の収益改善策を講じました。販売面では、国内において各油種の採算販売を徹底するとともに、SSネットワークの強化を図ったほか、海外マーケットへの機動的な製品輸出を行い、一層の収益獲得に取り組みました。
基礎化学品事業については、主力のパラキシレン事業において、アジア最大の供給能力を活かして、中国を中心としたアジア域内での拡販に積極的に取り組んだほか、有望な市場として期待のできる米国向けの輸出を開始しました。
● 次世代の柱となる事業の育成
電力事業については、平成28年4月の電力小売全面自由化を機に、「ENEOSでんき」のブランド名で家庭用電力小売事業に参入しました。シンプルで分かりやすく、かつ、お客様にメリットを感じていただけるような料金メニューを設定し、各種キャンペーンの展開、新たな事業提携といった拡販施策を実施した結果、外部調査機関の調査において顧客満足度1位を獲得し、当期末時点で申込件数は約19万件となりました。
LNG・天然ガス事業については、アジアにおける需要を取り込むべく、平成28年6月、マレーシア国営石油会社の子会社(PETRONAS LNG 9社)に出資しました。同社は、平成29年1月、商業生産を開始しています。
水素事業については、将来の燃料電池自動車の普及を見据え、引き続き水素ステーションの設置に取り組み、当期末時点での設置数は、当初計画どおり40カ所となりました。
また、平成28年4月、ベトナム最大の燃料油販売シェアを有する国有石油会社(Vietnam National Petroleum Group社)に出資するとともに、同社及び同社の大株主であるベトナム政府との三者間で戦略的協業契約を締結しました。同国においては石油製品需要の将来的な高まりが期待できることから、同国の精製から販売に至るまでのサプライチェーンに関して、幅広くビジネスの可能性を検討します。
● 技術立脚型事業・高付加価値製品の取組み強化
潤滑油事業については、自動車の保有台数の増加に伴い潤滑油需要の伸長が期待できる新興国を中心に事業のグローバル展開を進め、平成28年5月には、フィリピンにおいて、16か国目の海外拠点となるマニラ事務所を開設しました。
機能化学品事業については、不妊治療に利用される医療用培地をはじめとして、将来を担う事業の種となる素材・商材の研究開発や事業化の推進に一層注力しました。
<エネルギー事業の業績>こうした状況のもと、エネルギー事業の売上高は前期比7.2%減の5兆5,886億円、営業利益は2,384億円(前期は1,040億円の損失)となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は1,141億円(前期は1,405億円)となりました。
石油・天然ガス開発事業(JX石油開発グループ)
● 石油・天然ガスの生産量及び埋蔵量
当期における生産量は、パプアニューギニアLNGプロジェクトをはじめ、油田・ガス田からの生産が好調に推移した結果、前期を上回る日量12万6千バーレルとなりました。
なお、Petroleum Resources Management System 2007(PRMS)に基づく、当期末における石油・天然ガスの確認埋蔵量(proved reserves)及び推定埋蔵量(probable reserves)の合計は、石油換算で660百万バーレルです。
● インドネシア タングーLNG拡張プロジェクトの最終投資決定
平成28年7月、インドネシアにおけるタングーLNG拡張プロジェクトへの投資を最終決定し、今後、LNGの増産に向けて、既存の液化プラント2系列に加えて、年間380万トンの生産能力を有する第3液化プラントの増設及び生産井の掘削等を進める予定です。本拡張プロジェクトにおいて生産されるLNGは、日本及びインドネシアの電力会社に供給され、両国のエネルギーの安定供給に寄与するものです。また、本拡張プロジェクトを着実に実施することにより、将来のキャッシュ・フロー、収益への貢献が見込まれます。
● 米国における石炭火力発電所の排ガス活用による原油増産プロジェクト
米国において、石炭火力発電所の排ガスからCO2(二酸化炭素)を回収し、老朽化した油田に圧入することにより原油の増産を図るCO2-EORプロジェクトを推進しています。平成28年12月、世界最大規模のCO2回収プラントが完成したことに伴い、テキサス州ウェスト・ランチ油田へのCO2の圧入を開始し、平成29年4月、本プロジェクトにより原油を増産しています。
● 安定した収益、キャッシュ・フロー創出に向けた取組み
強靭な企業体質を構築し、安定した収益、キャッシュ・フローを創出するため、引き続き操業費その他のコストの削減に努めるとともに、今後の開発費の負担を軽減するため、英国北海のカリーンガス田、マリナー油田の権益を一部売却する等、選択と集中による設備投資の抑制と事業再構築を推進しました。
<石油・天然ガス開発事業の業績>こうした状況のもと、石油・天然ガス開発事業の売上高は、前期比18.3%減の1,444億円、営業損失は482億円(前期は2,258億円の損失)となりました。
金属事業(JX金属グループ)
● 銅の資源開発事業及び製錬事業の取組み
チリのカセロネス銅鉱山においては、現地法人の経営体制を刷新するとともに、大手コンサルティングファームを起用して、改善プログラムを導入・実践することにより、操業の改善を強力に推進しました。その結果、平成28年度下期には、安定した高水準の粗鉱処理を達成しました。
製錬事業については、玉野製錬所で生じる貴金属含有物を佐賀関製錬所で一括処理する等、生産体制の効率化によるコスト削減や操業の安定化を通じて競争力強化に努めました。
● 電材加工事業の取組み
電材加工事業については、スマートフォン向けの需要増大を主因として、スパッタリングターゲット、圧延銅箔及び精密圧延品の販売は、前期に続いて好調を維持しました。また、倉見工場に仕上げ圧延機と処理炉を増設し、今後需要の拡大が見込まれる電材加工製品の生産能力を増強することとしました。
● 環境リサイクル事業及びチタン事業の取組み
環境リサイクル事業については、引き続き、国内外においてリサイクル原料及び産業廃棄物の集荷ネットワークを拡充しました。
チタンは、軽量で強度・耐久性に優れ、航空機、化学プラント設備等に使用されていますが、同事業については、サウジアラビアにおいてスポンジチタン製造合弁事業を推進しており、平成29年度中の商業生産開始に向けて、順調に工場建設を進めました。
<金属事業の業績>こうした状況のもと、金属事業の売上高は、前期比0.6%減の8,718億円、営業利益は274億円(前期は693億円の損失)となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は217億円(前期は636億円の損失)となりました。
その他の事業
その他の事業の売上高は前期比6.1%減の4,846億円、営業利益は471億円(前期は448億円)となりました。
<株式会社NIPPO>株式会社NIPPOは、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当期は、引き続き厳しい経営環境が続きましたが、同社は、優れた技術力を活かし、工事の受注獲得に尽力するとともに、コスト削減・効率化に取り組み、収益確保に努めました。
なお、同社は、平成23年に発生した東日本大震災の舗装災害復旧工事に関して、東日本高速道路株式会社東北支社が実施した入札における独占禁止法違反により、平成28年9月6日、公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金納付命令を受けたほか、同年9月15日、東京地方裁判所において、同社及び同社関係者に対する有罪判決を受けました。また、同社は、同じく東日本大震災の舗装災害復旧工事に関して、東日本高速道路株式会社関東支社が実施した入札における独占禁止法違反により、同年9月21日、公正取引委員会から排除措置命令を受けました。同社は、再発防止に向けて独占禁止法遵守の周知徹底を図っており、当社としましても、引き続き同社を指導してまいります。
上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高643億円(前期は620億円)が含まれています。
(4)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は3,430億円となり、期首に比べ1,892億円減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
営業活動の結果、資金は2,258億円増加しました(前期は5,891億円の増加)。これは、税引前利益(2,491億円)、減価償却費及び償却費(2,226億円)等による資金増加要因が、営業債権及びその他の債権の増加(1,791億円)、棚卸資産の増加(1,229億円)等による資金減少要因を上回ったことによるものです。
投資活動の結果、資金は2,519億円減少しました(前期は3,220億円の減少)。これは、主として石油製品製造設備への投資及び石油・天然ガス開発に係る投資等によるものです。
財務活動の結果、資金は1,383億円減少しました(前期は1,126億円の減少)。これは、短期借入金の減少(1,473億円)、長期借入金の返済による支出(1,373億円)等による資金減少要因が、長期借入れによる収入(2,054億円)等の資金増加要因を上回ったことによるものです。
(5)IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
①連結の範囲
IFRSに準拠して連結の範囲を検討した結果、IFRSと日本基準における連結の範囲が相違しています。
②バーター取引
日本基準において売上高に計上している取引のうち、販売された物品が同様の性質及び価値をもつ物品と交換されている部分については、収益を生み出す取引とはみなさず、売上高と売上原価を相殺しています。
③大規模修繕費
日本基準においては、将来の大規模定期修繕に伴う支出に備えて修繕引当金を計上し、実際に修繕した時点で引当金を充当しています。IFRSでは、当該修繕引当金は引当金の要件を満たさないため取崩すとともに、修繕した時点で支出を資産計上し、その後当該資産について減価償却を行っています。
④のれん償却費
日本基準において、のれんは、その効果が継続すると見込まれる期間を見積り、その年数で償却することとしていますが、IFRSでは、のれんの償却を行っていません。
⑤非上場株式の公正価値評価
日本基準において取得原価で評価を行っている非上場株式について、IFRSでは、公正価値で評価を行っています。