訂正有価証券報告書-第10期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/08/05 13:52
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事業等のリスク

当社グループの事業その他に関するリスクとして、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針です。なお、以下の事項のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
(1) テレビ放送事業に関するリスクについて
① テレビ広告収入について
当社グループの地上波放送事業およびBS放送事業における広告収入は、総売上高の約6割を占めています。
広告市況は企業の広告費に依存し、マクロの経済動向と連動する傾向があります。国内においては少子高齢化に伴う低成長という要因に加えて、コンテンツへの接触環境や広告宣伝形態の多様化により、テレビ広告の市場は漸減傾向となっています。さらには、新型コロナウイルス感染症に伴う経済の停滞の影響もあり、テレビ広告市場の見通しは厳しい状況にあります。
当社グループは、こうした広告市場の動向を注視しながら、広告主ニーズへの対応や新たな営業手法の開発等により、テレビ放送による広告収入の向上を目指してまいります。しかしながら、今後の日本経済のマクロ動向、広告市況の動向が想定外の変化を示した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
② 視聴環境の変化について
定額制の動画配信サービスの普及により放送と通信は業界の垣根がなくなり、2020年には次世代通信規格「5G」サービスも本格化します。視聴環境の多様化が加速するなかで、放送番組のタイムシフト視聴やインターネット視聴へのシフトも起きています。
一方、放送事業においては、視聴率がCM放送枠の販売価格を決定する重要な要素であることに変わりはなく、視聴率の獲得は引き続き重要な課題です。
当社グループは、テレビ放送を軸とし、視聴者に受け入れられ、当社グループのブランドイメージ向上につながるコンテンツの創出に努めてまいります。しかしながら、今後の視聴動向に想定外の変化が生じた場合や、視聴者の期待に応える番組編成が実現せず視聴率が獲得できない場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(2) テレビ放送事業以外に関するリスクについて
① アニメビジネスにおける海外展開について
当社グループはアニメビジネスに積極的に取り組んでおり、2019年度では地上波放送事業において43本の新作アニメ番組を放送するとともに、海外への配信・商品化等でのライセンス展開も積極的に行っています。中国では2017年にアニメグッズの企画およびライセンス事業を行う現地法人「杭州都愛漫貿易有限広司」を設立したことに加え、当会計年度には現地資本とコンテンツを共同制作する現地法人「杭州都之漫文化創意有限広司」を設立しています。
現地法人による事業展開に当たっては、現地取引先との連絡を密にし、コンテンツ産業政策に関する現地の最新情報を収集するとともに、可能な限り万全な契約締結等によるリスクの最小化に努めてまいります。
しかしながら、海外展開においては、進出先の法制度やコンテンツ産業政策の変更等によるリスクがあり、計画通りにコンテンツの制作や販売等ができない場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
② イベント事業について
当社グループは、展覧会、スポーツ・演劇・音楽のライブ等、イベント事業に積極的に取り組んでいます。これらイベント事業については、過去の実績や他社事例を踏まえた慎重な収支計画のもと出資判断を行っています。しかしながら、不測の事態によりイベント自体が開催できなくなる場合や大幅な計画変更を余儀なくされる場合、イベントのチケット収入や関連グッズの販売収入等が、当初計画した収益を確保できないような場合には、当社グループの経営成績および財政状況に影響を与える可能性があります。
また、イベントの実施にあたっては、準備段階から事故等のないよう細心の注意を払うとともにイベント保険を付保するなどの危機管理を行っています。しかしながら、万が一、事故等が発生した場合には損害賠償責任を負う場合があり、また、社会的な信用の低下を招く可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
③ インターネット動画配信事業について
多くの家庭で高速通信回線の普及が進み、ケーブルテレビ、インターネットを通じた映像視聴環境が整ってきたほか、スマートフォン、タブレットといった新たな携帯型高機能端末の普及に伴い、通信を利用した映像コンテンツへの接触頻度はますます拡大しています。
当社グループは有料配信サービスとして、アニメコンテンツを中心とした「あにてれ」を2006年に、また報道番組を中心とした「テレビ東京ビジネスオンデマンド」を2013年にそれぞれ開始しました。また、広告付き動画配信として、2015年から「ネットもテレ東」を開始し、同年10月には民放公式のテレビポータルサービス「TVer」によるサービスにも着手しました。さらに他の放送事業者等との共同事業として、2018年4月にサービスを開始した「Paravi(パラビ)」の運営にも参画し、幅広いコンテンツを提供しています。
当社グループは、映像メディアの多様化に対応したコンテンツの開発やビジネスモデルの構築に取り組んでまいりますが、これら事業は成長分野であると同時に競争環境も厳しく、事業が想定通りに進捗しない場合や動画配信事業の市場環境が大きく変動する場合には投下資本の回収が困難になり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 資本提携・M&Aについて
当社グループは、将来の成長力強化に資するような企業との資本・業務提携やM&Aを積極的に進めてまいります。新規の資本出資やM&Aに関しては、当社グループの事業との親和性、シナジー効果等を十分に考慮し、投資リスクと効果を慎重に見極めたうえで「出資委員会」による審議を踏まえて最終的に取締役会の決議により投資判断を行います。
M&Aを行うに当たっては、対象企業の財務状況や事業の成長性についてデューデリジェンスを行い、十分なリスク対策を行うよう努めていますが、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査では把握できない問題が生じる可能性もあります。また、事業環境の変化その他の理由により、対象者の事業展開が計画通りに進捗しない場合には、減損リスクが発生するなど、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
⑤ 災害時等の対応について
当社グループは、災害発生時において報道メディアに求められる役割を踏まえ、放送の継続が何よりも重要であると考えています。また、放送事業者は放送法により、災害が発生した場合またはそのおそれがある場合に、その予防または被害軽減のための放送を義務付けられており、大規模な災害が発生した場合は、予定されていた番組の放送を取り止め、緊急に報道特別番組を放送することがあります。
このような場合、CM放送やテレビ通販番組の休止に伴い、放送事業や通信販売事業の収入が減少する場合があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、テレビ放送等の事業継続を担保するため災害時におけるBCP(事業継続計画)を策定しており、今回の新型コロナウイルス感染症対応においては、2020年2月に「テレビ東京グループ大規模感染症対策ガイドライン」を整備し、緊急事態宣言の発令に先立つ4月3日にBCP体制を本格化し、出社率を20%に抑えて事業運営いたしました。また、同宣言解除後においても新型コロナウイルスの感染が再び急拡大する「第2波」にいつでも対応できる体制を維持すること、新しい働き方を実践することにより効率よくクリエイティブな仕事を実現することなどを目指した「リモート50(出社率50%の新しい働き方)」に移行し、引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の防止に全力をあげる社会の要請に応えてまいります。しかしながら、新たな災害やパンデミック等が発生する事態となった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
⑥ 通信販売事業について
当社グループは、放送およびインターネットを通じ様々な通信販売事業に積極的に取り組んでおります。販売する商品の選定および品質管理については細心の注意を払っており、商品に関する表示についても適正な表示に努めております。
しかしながら、当社グループが販売した商品に何らかの不具合や欠陥があった場合、返品や商品の交換、損害賠償等の責任を負う可能性があります。また、販売において不適切な表示があった場合には法令上の処分を受ける可能性があります。このような場合には、当社グループの社会的信用が低下するとともに、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
⑦ 著作権等の知的財産権について
当社グループが制作するテレビ番組等の映像コンテンツは、原作者、脚本家、音楽の作詞家・作曲家、実演家、レコード製作者など(以下「著作権者等」といいます)多くの人々の知的創造の結果としてそれらの人々に生じた著作権や著作隣接権などが組み合わされた創造物になります。
当社グループは、こうした映像コンテンツを、地上波やBS、CSでの放送だけでなく、インターネットによる配信、DVDやBlu-ray Discでのパッケージ化、コンテンツから派生するキャラクターの商品化、出版化、またはイベント事業の実施などにより、国内および海外において多岐に展開しています。
しかしながら、これにはテレビ番組の制作とは別途に多くの著作権者等の許諾を得ることが必要な場合があり、その権利処理のために多くの時間と費用が必要となる可能性があります。また、結果として権利者等の理解を得られず、円滑に映像コンテンツの利用ができない場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(3) 保有財産に関するリスクについて
① 設備投資について
当社グループは、放送事業の基幹システムの更新、コンテンツ制作力向上のための放送設備の更新に加え、動画配信事業に伴う新たなシステム開発を行うなど、メディアの多様化に対応するための設備投資や投融資を計画的に実施してまいります。
これらのシステムの導入にあたっては初期費用、運用費用、改修費用等を慎重に精査し、事業における優先順位を勘案して「設備投資委員会」による審議を踏まえて最終的に取締役会の決議により設備投資判断を行います。しかしながら、技術革新などにより投資したシステムが陳腐化することにより追加的な投資が必要となる場合や、投資計画に見合うだけの十分な利益が確保できない場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
② 投資有価証券の時価評価について
当社グループは、取引先との関係促進を主な目的として、投資有価証券を保有しております。
新規の投資案件はリスクとリターンを勘案し投資判断を行うとともに、既に保有している投資有価証券についても、投資先との取引や協業の状況および企業業績を精査し、継続保有の是非を定期的に判断することとし、「出資委員会」においてこれらを審議のうえ、最終的に取締役会で決議しています。
しかしながら、これらの投資先の業績や市場評価を正確に予測することは困難であり、投資有価証券の時価評価額の増減に大きな変動があった場合には減損処理等の措置が必要となる可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(4) 法的規制等に関するリスクについて
① コンプライアンスについて
コンプライアンスの観点から当社グループが対処すべき分野は、当社グループの役職員および派遣社員・スタッフによる放送事故や不祥事、不適切な内容の放送、コンテンツの制作過程における他者の権利侵害を含むトラブルや事故、また、個人情報に関する事故や下請代金支払遅延防止法への抵触、さらにインサイダー取引の禁止など、多岐に及んでいます。
当社グループでは、「テレビ東京グループ行動規範」をはじめとし「個人情報取扱基本規程」「下請法対応マニュアル」「インサイダー取引防止に関する規程」等のルールを定め、定期的な研修等でその周知・徹底を行っています。また、当社の「リスク管理・コンプライアンス委員会」において当社グループ内のさまざまなコンプライアンス・リスク低減のための検討をしています。
当社グループは、このように不祥事やトラブル、法令違反等への対策を講じていますが、万が一、コンプライアンスに抵触する事態が生じた場合には、当社グループの社会的信用が低下し、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
② テレビ放送事業に関する法的規制
当社グループの主たる事業であるテレビ放送事業は、放送法、電波法等の法令に規制されています。
このうち放送法は、放送の健全な発展を図ることを目的とし、番組編集の自由や放送番組審議機関の設置などを定めています。また電波法は、無線局に対する免許制度をはじめ、電波を利用するための基本が定められています。
事業会社である㈱テレビ東京が現在取得している電波法による地上デジタル放送免許は、2018年11月に更新されたものであり、免許の有効期限である5年毎に再免許の申請が必要になります。また、同じく㈱BSテレビ東京が現在取得している放送法による委託放送事業者としての認定および電波法による衛星放送の地球局免許は、2018年11月に更新されたものであり、5年毎の更新手続きおよび再免許申請が必要になります。さらに2018年12月には、新たにBS4K放送の免許交付を受けています。
当連結会計年度末において、免許の取消し等の処分を受けることを予測すべき事実はありません。しかしながら、仮に法令で定める免件要件に適合しなくなった場合には、再免許が取り消される可能性があります。このような場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
③ 認定放送持株会社に対する法的規制について
認定放送持株会社は、放送法による認定を受けることにより、複数の地上放送局とBS・CS放送局を子会社として保有することが認められており、当社は、㈱テレビ東京、㈱BSテレビ東京を子会社とする認定放送持株会社として認定を受けています。
これにより、当社は、グループとしての経営の効率化や財務基盤の強化を進めてまいりますが、今後、当社が放送法で定める認定放送持株会社の基準を満たさなくなった場合には、認定を取り消される可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 外国人が取得した株式の取扱いについて
放送法により、外国人等が直接間接に占める議決権の合計が、当社の議決権の5分の1以上を占めることとなる場合は、認定放送持株会社としての認定が取り消されることになります。このため放送法では、このような状態に至る場合、当社は、外国人等が取得した当社株式について、株主名簿に記載・記録することを拒むことができ、その議決権は制限されることとされています。
なお、外国人等の有する議決権の割合が100分の15に達した場合は、放送法に基づきその割合を公告しますが、当連結会計年度末において、当社は公告をすべき状況にはありません。
⑤ 個人情報の取り扱いについて
当社グループは、番組出演者、番組観覧者、視聴者の他、インターネット事業の会員や通信販売事業の顧客などに関する個人情報を保有しています。これらの個人情報の取扱いについては、社内ルールに基づいた安全管理を徹底し、十分な注意を払っています。
しかしながら、不正アクセスや不正利用などにより情報の外部流出が発生した場合には、社会的な信用性の低下により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。