有価証券報告書-第7期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/22 14:15
【資料】
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【項目】
127項目

研究開発活動

当社グループは、各事業分野において商品競争力の強化、事業分野拡大及びブランドイメージ向上を目指した各種の研究開発を積極的に推進した。当連結会計年度における当社グループ全体での研究開発費は309百万円である。
(1) 造船事業
造船事業では温室効果ガス、窒素酸化物及び硫黄酸化物の排出規制等の環境問題、エネルギー効率の向上など、商船を取り巻く社会的な要請に対応し、これらの課題解決に資する要素技術の研究・開発に重点的に取り組み、その研究成果を基盤として新船型を開発した。
船型ラインナップとして、主力船型であるパナマックス型、スプラマックス型については、新規則(NOx3次規制及び共通構造規則)を適用した次世代船型として開発した昨年度船型をベースに、競争力強化に向けた開発を行った。パナマックス型については、市場調査で得られた顧客意見のフィードバックを行い載貨重量の大型化を図るとともに、原価造込みを実施し、性能・コストのバランスをとりながら、従来船を上回る高性能を実現した。一方、載貨重量の大型化と省エネ化という相反する性能を両立させた次世代省エネ船型として開発を進めたスプラマックス型についても、パナマックスの造込み要素のフィードバックに加え、船型改良を加え、業界トップクラスの燃費性能を達成しEEDI Phase3達成可能船型とした。市況変動への対応力強化や技術伝承の観点から新しい船種として開発したカーフェリーについては、スムーズな建造を実現するため、水島製造所全部門の力を結集したプロジェクトチームの活動をスタートさせた。パナマックス型、スプラマックス型以外のバルカーのセグメントについても事業可能性を検討するなど、さらなる製品メニューの拡充を図っている。
要素技術開発では、当社オリジナルの省エネ付加物として開発した「船尾ダクト」の特許を取得した。また、更なる省エネに貢献する新たな舵付加物を開発し、船尾ダクトとともに随時新船型に採用した。「モニタリング装置の実船搭載」については、スプラマックス型バルクキャリアーに加えてパナマックス型バルクキャリアーの実海域での性能分析・評価を実施した。その他、実海域性能関連については、日本の主たる海運・造船・舶用工業・関係機関など計25社が参加する、オールジャパンの活動である海事クラスター共同研究「実海域実船性能評価プロジェクト」に当社も参加し、研究を進めた。
新規則対応も重要な研究課題として取り上げた。「船内騒音規制」については、既に騒音規制適用船としてパナマックス型バルクキャリアー及びポストパナマックス型バルクキャリアーにて試運転を実施し、問題なく規制値をクリアして引渡を終えている。これまで各種防音対策製品の騒音低減効果を評価することを目的に、騒音計測を各船の試運転で実施してきたが、これらの対策が有効であったことを実船にて確認した。2015年7月より適用が開始された「共通構造規則(CSR-B&T)」に対しては、新設計バルクキャリアーへの適用実績を作ることができた。詳細な影響評価を実施することで、その結果は新船型開発において有効活用されている。また、2020年1月からの「SOxグローバルキャップ規制」については、次世代船型として開発したパナマックス型バルクキャリアー及びスプラマックス型バルクキャリアーではSOxスクラバーレディー船型とし、規制に対してお客様の要望に柔軟に対応できる船型を提案している。
設計基幹システムである「3D-CAD(FORAN)の開発」については、当年度もさらなる適用領域の拡大を中心に、機能強化及び周辺システムとの連携強化に取り組み、新たに塗装面積・溶接長などの管理物量集計用の3Dツール実船適用、機能向上を実施した。併せて現業への活用展開を目指し、3Dモデルビューワーのユーザービリティ向上のための開発を実施した。
LNG舶用燃料供給システム開発については、既に実設計に基づく船級承認を一般財団法人日本海事協会及びABS(American Bureau of Shipping)より取得済であったが、今年度は実案件の受注に結び付けることができた。今年度より立ち上げたLNG運搬船向けタンク開発では、燃料のLNG転換が進み国内輸送用の小型LNG運搬船(バンカー船)の需要が増加することを見据え、荷役システムを含めて開発の取組みを開始した。
なお、造船事業部門の研究開発費は245百万円である。
(2) 陸上事業
陸上事業では多様な市場、顧客ニーズに応えるべく、経済性・安全性に優れ、環境にも配慮した新商品開発・研究に取り組んだ。
建設工事用機械においては、新規に「アルミ製各階扉」を開発し市場に投入した。2020年東京オリンピック・パラリンピック関連工事及び首都圏の再開発関連工事と需要の拡大が見込まれ大手ゼネコンからの引合い・受注も増加している。来年度は追加製作を行い、更なる拡販を加速させていく。機械式駐車装置においては、既認定装置を新基準に対応させるための認定再取得を昨年に続き進めると同時に、他社との差別化を図るため平面パレットや超大型車を収容できる装置の開発に取り組み認定を取得した。今後、他社にはないニッチな領域での装置の開発にも力を入れていく。
なお、研究開発費は57百万円である。
(3) レジャー事業
レジャー事業では、観覧車の疲労寿命と部材の厚みや径の比較検討を進めた。部材形状はコストに直結することから、コストと疲労寿命の両方の観点から顧客宛に提案を行い受注につなげる。また、工事部門の点検業務の安全確保及びコスト削減を目的に、高所点検箇所のドローンによる点検の試行を開始した。2018年度中に自社ロケーションでの運用を進め、点検手法を拡充していく。
なお、研究開発費は7百万円である。