有価証券報告書-第12期(平成26年11月1日-平成27年10月31日)

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2016/01/28 15:44
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。特に、コンピューター・ソフトウェアといった無形資産の会計方針については昨今の我が国における企業会計ルールに則り、透明性を重視し、外部専門家の意見を適宜受けながら作成しております。ソフトウェア会計は世界的にも比較的新しい企業会計の分野であるため、国内外の同会計ルールの制定・改訂が将来行われる可能性がありますが、当社グループとしてはそういった流れ・傾向を慎重に見極め、必要な対応をとっていきたいと考えております。
また、当社経営陣は、財務諸表の作成に際して、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
(2)財政状態の分析
当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況は次のとおりであります。
(資産)
流動資産合計は、2,654,197千円(前連結会計年度末比733,518千円増)となりました。これは主に、現金及び預金が728,522千円、売掛金が18,066千円、仕掛品が14,584千円がそれぞれ増加し、未収消費税等が29,074千円減少したことによるものであります。
固定資産合計は、288,676千円(同137,854千円増)となりました。これは主に、有形固定資産が9,091千円、投資有価証券が8,500千円、繰延税金資産が123,926千円増加し、無形固定資産が4,952千円減少したことによるものであります。
以上の結果、資産合計は2,942,874千円(同871,372千円増)となりました。
(負債)
流動負債合計は、546,438千円(前連結会計年度末比235,725千円増)となりました。これは主に、買掛金が5,124千円、未払金が24,196千円、未払法人税等が166,131千円、前受金が43,956千円それぞれ増加し、一年以内返済予定の長期借入金が19,076千円減少したことによるものあります。
固定負債合計は、70,547千円(同27,648千円減)となりました。これは主に、長期借入金が24,648千円減少したことによるものであります。
以上の結果、負債合計は616,986千円(同208,076千円増)となりました。
(純資産)
純資産合計は、2,325,887千円(前連結会計年度末比663,296千円増)となりました。これは主に、新株予約権の行使による新株の発行により資本金が24,352千円及び資本剰余金が24,352千円増加したこと、当期純利益の計上により利益剰余金が604,374千円増加したことによるものであります。
(3)経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、グローバル市場における海外スマートフォンメーカー及び半導体メーカーへの営業活動を積極化させ、新規顧客の開拓や追加での案件獲得に成果を出してきております。
ネットワークサービス分野では、当社グループ製品のサービス事業への展開を実施しており、当社グループの基幹技術を用いたネットワークサービスのビジネスモデル構築に取り組んでおります。一方で集中と選択を心がけることで効率的な投資に努め、新規投資余力の拡大をしてきた結果、増収増益となりました。
営業損益は前連結会計年度比151.4%増の742,430千円の利益、経常損益は前連結会計年度比138.4%増の785,505千円の利益となりました。
当期純損益は前連結会計年度比95.5%増の604,374千円の利益となりました。
(売上高)
売上高は、前連結会計年度比45.0%増の2,037,515千円となりました。
収益区分別にみると、ロイヤリティ収入は、海外スマートフォンメーカー及び半導体メーカーへの営業活動を積極化させ、新規顧客の開拓や追加での案件獲得などの成果により、前連結会計年度比47.4%増の1,858,038千円となりました。開発収入は、ネットワークサービス分野を中心に開発案件が増加し、前連結会計年度比で94.6%増の96,536千円となりました。サポート収入については、ネットワークサービス分野におけるサポート収入は増加したものの、前連結会計年度に引き続き、海外メーカー各社との取引において、商習慣等の違い等により実装(ポーティング)支援等による収入が減少しており、前連結会計年度比13.3%減の82,940千円と減収となりました。
(売上原価)
売上原価は、前連結会計年度比70.8%増の498,580千円となりました。
これは主に、海外メーカーへのサポート体制強化のための外部委託が増加したこと、協力企業などに対する支払手数料等が増加したことにより、前連結会計年度から大幅に増加いたしました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比2.7%減の796,504千円となりました。
主な要因として、①海外スマートフォンメーカー及び半導体メーカーへの営業活動を積極化させたこと。②ネットワークサービス分野で、当社グループの基幹技術を用いたネットワークサービスのビジネスモデル構築に取り組んできたこと。③機械学習の新たな手法であるDeep Learningを使用した画像認識技術の開発にも取り組んできたこと。が挙げられますが、集中と選択を心がけることで効率的な投資に努め、前連結会計年度の同程度の費用となりました。
(営業外損益)
営業外損益においては、引き続き円安傾向であったことにより、保有する外貨預金及び外貨建債権の評価替による為替差益を43,749千円、設備投資資金として調達した借入金に係る支払利息1,156千円を計上いたしました。また、法人税等301,990千円、当期より繰延税金資産を追加計上した影響で法人税等調整額△120,860千円を計上いたしました。
(4)キャッシュ・フローの分析
「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの属するソフトウェア業界は、事業の特性から常に新しい技術が創出され技術の陳腐化が早い事業環境にあります。またスマートフォンの急速な普及等、ハードウェアの進化により大幅な事業環境の変化が起り得ます。
このような環境の中で、常に環境の変化に適応した革新的な技術やサービスの提供が求められております。従いまして、研究開発投資について継続的に実施していくことが求められ、かつ投下した研究開発投資等は比較的短期間のうちに成果に結実しなければならないものと認識しており、必然的に資金の循環は早くなるものと考えております。
今後につきましては、引き続き積極的に先行投資的な事業資金を投じていく方針であることから、現状の事業資金は、手元流動性の高い現金及び現金同等物として保持していく方針であります。
(6)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは研究開発主導型のベンチャー企業として、主にスマートフォン向けの技術開発及び製品開発を行い、新たな付加価値を提供することにより事業を推進してまいりました。昨今のスマートフォン市場での環境変化が示すように、当社グループ事業領域では今後の動向を予測し難い状況になっており、市場動向には留意しなければならない状況にあります。
当社グループの中期的な成長は、当該市場における技術的な優位性の維持と市場ニーズに迅速に適応した付加価値の高い製品の開発に依存しております。また、中長期的な成長を実現させるためには、今後成長が見込まれる市場に対する研究開発・製品開発を行い、事業領域拡大を実現させていくことが必要となってまいります。
昨今のスマートフォン市場では、新興国中心に需要の拡大が見込まれるもののオープンプラットフォーム化により業界がボーダレス化しております。一方、通信速度の高速化による新たなサービスの出現によりスマートフォンを入り口としたネットワーク・サービスは拡大し、加えてスマートフォン以外の様々なモバイル端末機器にも通信機能やカメラ機能が搭載されるなど事業環境は著しく変化しております。他方、スマートフォン等ハード機器の急激な技術革新も起りつつあり、市場ニーズの急変も十分起りえる環境にあります。
当社グループでは、これら市場環境の変化に迅速に対応しながら、技術的な優位性を維持し且つ市場ニーズに適応した付加価値の高い製品開発を推進することが将来の成長の成否を分けるものと認識しており、事業環境の変化に迅速に適応できなければ経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
(7)経営戦略の現状と見通し
当社グループでは、前述のとおり、現状はスマートフォン市場を中心とした収益構造となっておりますが、今後も引き続き成長性を維持していくために、①海外市場への積極的な展開によるシェア拡大、②国内市場では通信速度の高速化によるネットワークを活用した新たなサービスに対応した製品開発、③カメラデバイスの小型化、高性能化、低コスト化の進行により収益獲得機会が顕在化しつつある車載・産業機器等の新たな分野への参入を重点施策に掲げて経営資源を投入しており、中期事業計画の達成に向けて、以下のような戦略にて取り組んでおります。
① 海外市場では、一部の海外スマートフォンメーカーが市場シェアを拡大し、更なる成長にむけ積極的な技術開発・投資活動を行っております。海外スマートフォンメーカーへの販売機会を拡大すべく、既存製品の機能向上及び新規製品・技術の開発へ取り組むとともに、関係する企業や業務委託先との連携を強固にすることにより、海外への積極的な展開に取り組んでおります。
② 通信速度の高速化等によりネットワーク上では大容量の画像データ等がやり取りされ、また膨大に蓄積されるようになっております。従いまして、ネットワーク・サービスに対応した製品開発としては、既存技術の応用や新規技術の創出によりネットワーク・サーバー上においても当社製品(機能)が利用可能な技術及び製品・アプリケーションの開発を推進します。画像データ等を様々なモバイル機器等を介して、例えば軽快な操作感を維持したまま閲覧等できるようにすること、端末・サーバーを問わず画像データの検索を簡易に行えるようにすることはユーザーへの新たな付加価値の提供になるものと考えて取り組んでおります。
③ カメラデバイスは小型化、高性能化、低コスト化、多様化が実現されてきており、通信速度の高速化とクラウド化の進展も相まって、通信機能とカメラ機能を備えた各種デバイスやシステムが出現し、当社の事業機会は確実に増大しております。当社では、この新たな事業機会を獲得して中長期的な成長戦略の基軸とすべく、積極的な研究開発等に取り組んでおります。
(8) 経営者の問題意識と今後の方針
当社グループは、スマートフォンをはじめとするモバイル端末業界において、独自の画像処理技術を用いた各種製品を創出し、且つ幅広い市場に対して付加価値の高い製品を提供しつづけるために、現時点で入手可能な情報をもとに、事業環境の変化に配慮しながら最善の経営方針を立案するよう努めております。
しかしながら、スマートフォン市場の環境変化は著しく、スマートフォン普及に伴うメーカー間のシェア変動や競争の激化等、市場の拡大と並行して大幅な業界構造の変化や、通信仕様の高速化による新たな市場の出現など、今後の動向を予測し難い状況になっており、市場動向には留意しなければならない状況にあります。
一方、撮像素子の小型化、高性能化、低コスト化、多様化により、カメラ機能が様々なデバイスに搭載され始めており、これに通信機能を備えた各種製品が発売されて、新たなサービスが出現するなど事業機会は拡大しております。
このような環境下において当社グループでは、中長期的な成長を目指し、複数の海外スマートフォンメーカーとの取引開始やロイヤリティ契約締結の実現、画像処理技術が展開可能な様々な市場への活動・投資を行いました。その結果、当連結会計年度は増収増益を実現できました。今後これら活動をより積極的に推進していくことで事業規模の拡大に努めてまいります。
当社グループの強みは、ソフトウェアの研究開発及び技術開発力にあり、上記の実現及び今後の成長には革新的な技術開発が不可欠となります。そのため、短期的なスマートフォン市場に最適化された主力製品の性能向上と新規製品の開発により、競合技術・企業への優位性確立と海外スマートフォンメーカーとの取引拡大を実現するとともに、新たな事業領域にむけた技術及び製品の開発に注力してまいります。特に機械学習の新たな手法であるDeep Learningを使用した画像認識系の技術を活用したネットワーク・サービス等市場への参入、今後成長が見込まれるComputational Photography分野での研究開発投資等は当社における戦略的開発領域となり、中長期的な成長には欠かせない投資と位置付けております。
財務面においては、市場環境変化が著しく、市場動向の予測が従前より難しくなってきていることから、キャッシュ・フローを重視した経営を推進してまいります。当連結会計年度末においても現預金等キャッシュについては投資・成長を実現していくのに十分な水準を確保しております。今後についても重点領域の明確化により効率的に中長期的な投資を実現しつつ事業の安定的な成長を実現し、財務面における成長と安定の両立した経営に努めてまいります。