有価証券報告書-第11期(平成26年4月1日-平成26年12月31日)

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2015/03/30 15:49
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事業等のリスク

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスク事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1.事業環境に由来するリスクについて
(1) 抗体医薬品市場
当社グループは、創薬基盤技術であるADLib®システムを核として、主に抗体医薬品の開発及び研究開発支援等を行っております。医薬開発においては、当社グループは、抗体医薬品市場が安定的に成長すると見込んでおりますが、各種疾患のメカニズムや病態の解明により、疾患特異的に作用する分子標的低分子医薬の開発、更に低分子特有の副作用を軽減するために疾患部位だけに到達するデリバリーシステムの開発や、抗体医薬品と競合する低分子医薬品が増加する等により想定どおりに市場が拡大しない場合、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。また、平成25年11月に新規制定された再生医療法や改正薬事法などによる再生医療による根本的な治療の普及等も抗体医薬品市場の拡大に影響を与える1つの要因と言えます。
(2) 技術革新
当社グループが属する医薬品開発分野では、技術革新が著しく速いため、当社グループは独自の創薬基盤技術を常に最先端の技術としての地位を確保しさらなる発展を継続すべく、内外の英知と資源を結集してダイナミックに研究開発を展開しております。
完全ヒトADLib®システムは、治療用としての機能性を持つ完全ヒト抗体を数週間で作製することを可能とするものであり、将来的には新たな事業として「バイオテロや新興感染症の発生に即応し、安全で有効な抗体を迅速にかつ大量に提供する事業」や「患者さんから疾患に関連する細胞や組織の提供を受け、最適な抗体を迅速に作製・選択するオーダーメイド医療としての事業」等に対応することを目標としております。
しかしながら、急激な技術革新等により完全ヒトADLib®を含めた新技術の競合優位性が保持できない場合、また、必要な技術進歩を常に追求するために想定以上の費用と時間を要する場合は、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 他社との競合
競合他社が当社グループと同様に優れた機能をもつ抗体を創出する結果、製薬企業へのライセンスアウト活動が容易でなくなる可能性があります。また、複数の同業他社の参入に伴いアライアンス活動の競争が激化し当社グループ事業の優位性が低下する場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 法的規制等
平成16年2月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法)が施行されました。当社の完全ヒトADLib®システムの技術開発には、当該法律が適用されます。今後、法改正等により規制が強化された場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 抗体医薬品開発におけるフェーズ・ゼロ(*)の実施
従来の第1相臨床試験の前に行う探索的臨床試験フェーズ・ゼロ試験が米国を中心に注目されています。抗体医薬品開発におけるフェーズ・ゼロ試験の採用は、より安全に臨床開発を進めるためには意義のある選択肢の1つであり、革新的医療には優位である一方で、開発プロジェクト単位では前臨床・臨床開発における効率化に必ずしも繋がらず、むしろ費用面と期間面において負担の増大に繋がり、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性もあります。
(6) 海外取引
当社グループは、全世界の製薬企業等を対象とした事業展開を図っており、国内のみならず海外の製薬企業等に対しても、当社グループの創薬基盤技術を紹介し、取引開始に向けた交渉を行っております。今後、当社グループの海外における事業展開が進展し、海外の製薬企業等との取引規模が拡大した場合、海外における法的規制や商取引慣行等により、当社グループの事業展開が制約を受ける可能性があります。また、外貨預金口座の開設など為替リスクの対応策を実施してまいりますが、当社グループの想定以上に為替相場の変動が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
2.事業内容に由来するリスクについて
(1) 特許権
当社グループが創製した技術等について、当社グループの特許権を侵害されるリスク又は当社グループが他社の特許権を侵害してしまうリスクがあります。こうしたリスクに対応するために、積極的かつ速やかに特許出願等を行うことで他社からの侵害を防御するとともに、必要に応じて特許データベース及び特許事務所を活用して情報収集を行い、他社の権利を侵害しないように対応しております。すでに基盤技術特許は国際特許が成立しておりますが、第三者によって既に出願されている特許の存在により、特許侵害があるとして特許侵害訴訟を提起された場合には、損害賠償を請求される等、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが職務発明の発明者である役職員等から発明の権利を譲り受けた場合、当社グループは特許法に定める「相当の対価」を支払うことになります。当社グループでは、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、これまでに発明者との間で問題が生じたことはありません。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の対価の支払請求等の問題が生じた場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の技術への依存
当社は、理研と創薬基盤技術であるADLib®システムに関する特許ライセンス契約を締結し、ADLib®システムを核として事業を展開しておりますが、競合他社が画期的な技術で先行した場合や特許期間が満了した場合、当社グループ事業の優位性が低下する可能性があります。当社は、積極的な研究開発により技術改良を推進しておりますが、当社の技術が他の安価な技術で代替できる場合や当社の技術自体が陳腐化した場合、あるいは当社の技術改良の対応が遅れた場合は、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 特定の取引先への依存
当社は、中外製薬グループと抗体医薬品開発の研究契約を締結しており、平成26年12月期における当社グループの売上高に占める同社グループの割合は、56.9%となっております。当社では、事業の核となるADLib®システムの更なる技術改良を推進し、これまで同様、付加価値を向上させ続けていくことで、同社グループに限らずクライアントとの良好な取引関係を維持・継続していく方針であります。
しかしながら、同社の経営方針の変更あるいは何らかの事情により、委託業務量の減少、本契約の解除、その他の理由で終了した場合、あるいは契約条件の変更等が生じた場合、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 複数の製薬企業との関係について
当社グループが製薬企業と共同研究契約を締結する場合、当該契約が定めるターゲット(抗原)に重複が生じないよう配慮しておりますが、研究内容によっては、一部に重なりが発生する可能性も考えられます。その結果、当社グループがどちらか一方の企業との共同研究の機会を喪失することで当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 提携先に影響されるリスク
当社グループは、創薬アライアンス事業においては、共同研究での補完関係を前提としており、双方の分担する技術又は製品の完成をもってより付加価値の高い事業展開が可能となります。よって、双方の技術及び研究開発の進捗に大きな差が生じた場合、又は提携先の経営不振若しくは経営方針の変更があった場合、目的とする製品・サービスの開発が遅れる、あるいは中止されることが予想され、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 収益計上について
契約の締結時期、医薬品開発の進捗状況、医薬品販売開始時期等が遅れる場合や、何らかの事由により医薬品開発、販売が中止となる場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 事業計画の主な前提条件について
① 既存提携先との提携事業の確実な推進
当社グループは、中外製薬グループや富士レビオをはじめとした既存提携先との継続的な事業提携を基盤として事業計画を策定しております。しかしながら、当社グループの想定どおりに事業提携が進捗しない場合、あるいは想定していた成果が得られない場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
② 取引先数及び契約締結数の増加
当社グループは、創薬基盤技術を核として継続的な契約獲得活動を実施し、主に創薬アライアンス事業における複数の製薬企業との提携を基盤とし、事業計画を策定しております。当社グループの事業特性として、契約金額が計画を下回る場合、契約締結時期が計画よりも遅れる場合、計画している契約が締結できない場合等には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
③ 医薬品開発の進捗状況、規制当局への申請時期と規制当局からの承認時期
当社グループは、契約締結時に生じる着手金(アップフロント)の他、医薬品開発の進捗に応じて生じる成功報酬(マイルストーン)、医薬品販売後に獲得するロイヤルティを収益として受領する事業構造となっております。
医薬品の開発には、一般的に探索研究、創薬研究、開発、製造、販売のプロセスがあり、抗体医薬品開発においては、初期の研究から販売まで一般的に6.5年~9年の期間が必要となり、各プロセスの進捗や必要となる期間は、対象疾患、開発者の経営状況、規制当局の審査判断等の影響を受けることがあります。
当社グループは、このような状況を鑑み、医薬品開発の進捗状況や規制当局への申請時期と規制当局からの承認時期等を勘案し、事業計画を策定しておりますが、必ずしも当社グループが計画しているとおりになるわけではありません。医薬品開発の進捗が計画を下回る場合、規制当局への申請時期が計画よりも遅れる場合、規制当局からの承認時期が計画よりも遅れる場合等には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 当社グループの創薬基盤技術に関する研究開発の進捗
当社は、現在取り組んでいるADLib®システムのバージョンアップをはじめとした研究開発活動が計画どおりに進捗することを前提として、事業計画を策定しております。しかしながら、研究開発活動を中断せざるを得ない場合、研究開発に想定以上の開発コストがかかる場合、あるいは研究開発から想定どおりの成果が得られない場合等には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
3.その他のリスクについて
(1) 経営管理体制
① 小規模組織であること
当社グループは小規模な組織であるため、研究開発体制及び社内管理体制もこの規模に応じたものとなっております。このような限られた人材の中で、業務遂行上、取締役及び幹部社員が持つ専門知識・技術・経験に負う部分が大きいため、今後、当社グループの業容の拡大に応じた人員の増強や社内管理体制の充実等を図っております。しかしながら、取締役及び幹部社員の退任・退職、また研究機能や社内管理体制に不備が生じた場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
② 特定の人物への依存
当社グループの経営戦略、研究開発並びに事業開発等の事業推進については、当社代表取締役及び各部門の業務執行を担当する取締役に大きく依存しております。これらの人材は、業務に必要となる経験及びスキルを有し、さらに各部門の業務に精通しており、業務運営において重要な存在であります。当社グループでは、これら特定の人材に過度に依存しない経営体制を構築するため、組織体制の強化を図りつつありますが、当面の間はこれら業務執行者への依存度が高い状態で推移するものと考えております。このような状態において、これらの業務執行者の当社グループ業務の継続が何らかの理由により困難となる場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材の確保・育成等
当社グループの事業を組織的に推進していくためには、高度な専門的知識や技能、経験を有する人材の確保が不可欠であります。当社グループは、優秀な人材を採用および確保しながらその育成に努めておりますが、このような人材が短期間に流出した場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 社外取締役太田邦史について
東京大学大学院総合文化研究科教授である太田邦史は、当社の創薬基盤技術であるADLib®システム発明者であり、平成17年2月に当社を設立した創業者の一人であります。現在、国立大学法人東京大学の兼業許可に基づき社外取締役(非常勤)に就任し同研究室をパートナーとした共同研究を行っており、これまでに技術開発における成果として次世代技術開発の特許出願をはじめ多くの実績があります。当社グループでは、コンプライアンス遵守の方針の下、共同研究契約に基づき共同研究を今後も継続してまいりますが、何らかの理由により利益相反行為が行われた場合、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 過年度の経営成績
① 社歴が浅いこと
当社グループは社歴が浅い会社であるため、業績の期間比較を行うための十分な財務数値が得られておりません。従って、過年度の経営成績及び財政状態だけでは、今後の当社グループの業績を判断する材料としては十分な期間とは言えないと考えております。
② マイナスの繰越利益剰余金の計上
当社は、創業時よりADLib®システムを利用した医薬品開発のための研究開発活動を重点的に推進してきたことから、多額の研究開発費用が先行して計上され、第1期から第11期まで当期純損失を計上しております。平成26年12月期(第11期)には、△3,048,153千円の繰越利益剰余金を計上しております。当社グループは、安定的な利益計上による強固な財務基盤の確立を目指しておりますが、事業が計画どおりに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金が計画どおりに解消できない可能性があります。
③ 資金調達
当社グループでは、研究開発活動の進捗に伴い多額の研究開発費が先行して計上され、継続的な営業損失が生じており、今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が予想されます。製薬企業等とのアライアンスによる売上や新株予約権の権利行使等によるキャッシュイン、人件費や研究開発活動にかかる投資活動等のキャッシュアウトを見込んだ資金計画を策定しておりますが、充分な運転資金を確保できない等の状況となる場合には、当社グループの事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 新株式の発行による株式価値の希薄化
当社は、資金調達を目的とした増資や新株予約権行使による新株式の発行を機動的に実施していく可能性があります。新株式の発行は、当社グループの事業計画を達成する上で合理的な資金調達手段であると判断しておりますが、発行済株式総数が増加することにより、当社株式の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、当社は、当社の役員や従業員に対して新株予約権を付与しており、更に今後も優秀な人材の採用、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気の高揚、そして、当社の中長期的な企業価値の向上を図るために、ストック・オプションとして新株予約権を付与していくことを予定しています。
(5) 営業機密の漏洩
当社グループにおける事業では、当社グループは顧客である製薬企業から抗原の情報を預かる立場にあります。従いまして、当社グループは、その全ての役員及び従業員との間において顧客情報を含む機密情報に係る契約を締結しており、さらに退職後も個別に同様の契約を締結し、顧客情報を含む機密情報の漏洩の未然防止に努めております。また、抗原名をプロジェクトコード化した社内共通言語を用いた顧客情報管理を実施するとともに、顧客情報へのアクセス制限も行っております。しかしながら、万一顧客の情報が外部に漏洩した場合は、当社グループの信用低下を招き、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 自然災害等の発生
当社は、東京都渋谷区に研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関わる設備及び人員が同研究所に集中しております。そのため、同研究所の周辺地域において、地震等の自然災害、大規模な事故、火災、テロ等が発生し、当社グループが保有する抗体ライブラリの滅失、研究所設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。