有価証券報告書-第106期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 12:13
【資料】
PDFをみる
【項目】
157項目

研究開発活動

研究開発の基本方針
当社グループは、保有している基盤技術の深耕による既存事業の拡大を図るとともに、マーケットイン型R&Dの実行による次世代中核事業の創製を研究開発の基本方針として、既存事業における次世代製品の開発ならびに新規事業の創出にかかる開発に取り組んでおります。
さらに開発過程で得られた知的財産を経営資源化することを目的として、当連結会計年度に知的財産部門を新たに研究開発部門内に設置し、研究開発活動の推進の強化を行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は467,785千円、国内で出願された特許は10件、国内で登録された特許は3件となり、研究要員は37名であります。なお、当連結会計年度における品目別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。
(1)自動車関連資材分野
エンジン用濾材は、用途として主に吸気用、潤滑油用、燃料用フィルターに使用されております。
天然パルプ、コットンリンター、ポリエステルなどの合成繊維を主原料として、空気中のゴミ、他車から排出されるスス、潤滑油中のカーボン粒子、燃料中のゴミ、水分などを取り除き、エンジンに清浄な空気、燃料を供給すること及び潤滑油の性能を維持することができます。当該分野では小型かつ高効率、ダストの高捕捉量を満たすフィルターが求められており、これらニーズに対応するための研究開発を行っております。
当連結会計年度においては、紙と不織布のコンポジット化につきまして研究開発を推進した結果、お客様から良好な評価結果が得られました。さらに、海外拠点にて新たに設備投資した複合加工機設備で量産体制が整ったため、今後、市場展開を進めていく予定です。
(2)水処理関連資材分野
① 分離膜用湿式不織布
分離膜用湿式不織布は、主に世界の水処理用分離膜メーカーが製造する逆浸透膜モジュールに分離膜支持体として使用されております。
当商品は、専用の抄紙機及び加工機で製造されたポリエステル繊維100%の湿式不織布であります。耐水強度が高く、平滑性に優れることから水処理用の支持体紙として最適です。用途市場としては、海水淡水化や廃水処理などのインフラ用途をはじめ、工業用、家庭用浄水器など高度な水の需要に対応する分離膜に幅広く使用されており、高い伸び率で成長しております。
当連結会計年度においては、お客様により一層安定して使用していただくため、コストダウン対応に加え、品質のさらなる向上を目的とした現行製品の改良タイプを開発いたしました。
世界トップシェア維持を確実なものとすべく新規顧客に対して積極的にサンプルワークするとともに、市場の幅広いニーズに対応するためポリエステル繊維以外を原料とした製品開発も進めており、製品ラインナップを充実した市場展開を行うべく引き続き注力してまいります。
② M-fine(エム・ファイン)
M-fine(エム・ファイン)とは、当社が提供するメンブレン(ナノレベルの微細な孔径を有する分離膜)及び水処理などのモジュール・ユニットの総称であります。
当社の事業領域の拡大の一環として、廃水処理に使用されるMBR(膜分離活性汚泥法)用浸漬膜及びユニットの事業化推進に取り組んでおり、品質のさらなる向上や高性能化に向けた開発を継続的に行っております。
また、新たに当社の小型ユニットを活かした「小型廃水処理装置」の開発にも着手し、その用途の一つとして「水も電気もなく排水も出来ない」場所でも水洗トイレや温水洗浄便座が使用できる「独立水循環型快適トイレ」の実証試験を行うなど、事業の川下化に向けた取り組みを行っております。
(3)一般産業用資材分野
一般産業用資材分野の電気・電子部品用機能紙は、主に電子機器などの断熱部材や放熱部材(CARMIX(※)を含みます)としてのいわゆるサーマルマネジメント材として使用され始めており、電子機器の過酷な発熱環境下における厳しい要求が強まり高い伸び率が期待されている分野です。また、主に耐熱プレス用の工程紙として使用される耐熱クッション紙や半導体の加工工程で発生する粉塵をトラップするためのワイヤーカット用濾紙などがあります。その他、食品用として主に加工食品の鮮度保持用に使用される脱酸素剤の包材として使用されております。
当連結会計年度においては、特に自動車の電動化による成長が期待されるサーマルマネジメント分野について早期事業化を図るため研究リソースを集中させ、「機能材事業部」と「研究開発部」が緊密に連携し、次世代市場のニーズを的確かつ迅速に捉える活動を行ってきました。具体的な成果としては、必要な方向を高熱伝導化した放熱部材や高温まで耐えうる軽量で可とう性がある断熱部材などの様々な差別化技術を開発し、これらの知見の特許化を進めてまいりました。新たに開発した厚さ方向に高熱伝導を有するサーマルマネジメント材は、携帯端末などの民生機器をはじめ、車載用電子機器などへの展開を鋭意検討中であり、東京ビッグサイトで開催された「エヌプラス」(2019年9月)・「2020高機能性材料展」(2020年1月)にこれらの商材を展示し、顧客要求に直結した製品開発を行っております。
(※)CARMIX(カルミックス)とは、当社が提供する炭素複合材の総称であり、放熱分野や炭素繊維を含んだCFRTPマット材を示します。