有価証券報告書-第12期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 15:30
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業績等の概要

(1) 業績
安倍内閣は、平成28年1月22日に閣議決定された第5期科学技術基本計画(平成28~平成32年度)において、国内又は地球規模で顕在化している課題に先手を打って対応するため、「課題解決に向けた科学技術イノベーションの取組を進め、非連続なイノベーションを生み出す研究開発を強化し、新しい価値やサービスが次々と創出される「超スマート社会」を世界に先駆けて実現するための一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進する。」ことを表明しました。また同日に開催された第190回国会の施政方針演説にて、平成27年9月に一億総活躍への挑戦の一つとして提唱した「介護離職ゼロ」の実現を改めて強調するとともに、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」としてゆく決意を表明しました。その際に、国内外の研究機関・大学・企業のオープンな連携からダイナミックなイノベーションが生まれた事例として、当社および筑波大学が連携して開発したHAL®が「夢のロボットスーツ」として取り上げられました。当社グループは、このような事業環境のもとで、革新的サイバニクス技術を駆使することにより、『重介護ゼロ®社会』の実現と、医療・介護福祉・作業支援分野にフォーカスした「人支援産業」という新産業の創出を目指し、研究開発及び事業展開をさらに加速して進めています。
当連結会計期間において、医療分野では、HAL®医療用(下肢タイプ)について、平成27年11月25日に神経・筋難病疾患に対する「新医療機器」として厚生労働省より日本における製造販売承認を取得し、平成28年4月25日に厚生労働省がHAL®医療用(下肢タイプ)を用いた治療に係る技術料等の保険点数解釈を公表し、ロボット治療として世界で初めて公的医療保険の償還価格が決定しました。なお、当該保険算定については、一回あたりの診療報酬が最大で85,100円〜49,600円であり、効果が確認される場合には回数に制限なく算定可能となっています。当社では、今後の他の疾患への適用拡大に向けて、臨床試験を進めてまいります。欧州においては、既に医療機器認証を取得し、ドイツで治療サービス事業を展開しています。ドイツではHAL®医療用(下肢タイプ)を利用した治療に公的労災保険が適用されていますが、新たに公的医療保険への適用拡大を目指し、平成27年10月27日、InEK(病院医療報酬制度協会)に対して、急性期から回復期に相当する期間のすべての対麻痺患者に対する診療報酬に関する申請を提出しました。また、平成27年10月30日にはG-BA(ドイツ連邦合同委員会)に対して、急性期から回復期に相当する期間を終えたすべての対麻痺患者に対する診療報酬に関する申請を提出しました。米国においては、FDA(米国食品医薬品局)に対して医療機器の承認申請を行っており、FDAの早期承認を目指しつつ、各種保険適用を米国事業の重要なマイルストーンとして位置付け、戦略的に推進してまいります。
HAL®医療用(下肢タイプ)は、今後の対象疾患の適用拡大を目指して国内外での臨床試験を推進し、平成28年3月末時点で、臨床試験用も含め国内外あわせて140台が稼働中です。またHAL®自立支援用(単関節タイプ)も臨床研究を目的として日本国内での病院を中心に導入が進み、平成28年3月末時点で154台が稼働中です。
介護福祉の分野においては、HAL®福祉用等の下肢タイプは、動作支援を目的として日本国内の福祉施設や病院等で運用され、平成28年3月末時点で489台が稼働中です。また、介護離職に悩む介護施設での労働環境改善を目的としたHAL®介護支援用(腰タイプ)は、平成28年3月末時点で282台が稼働中ですが、今後は厚生労働省の介護ロボット導入支援事業等の施策により大幅な導入増加が期待されます。
作業支援の分野においては、少子高齢化による労働人口の減少を背景に深刻な人手不足が発生している物流倉庫業や建設業や各種工場での労務環境改善による労働力確保を目的としたHAL®作業支援用(腰タイプ)は、順調に増加して平成28年3月末時点において216台が稼働中です。また、クリーンロボットおよび搬送ロボットは、平成28年3月末時点において14台が稼働中です。
また当社は、平成27年12月25日に、茨城県と県有地取得の仮契約を締結しました。サイバニクスの未来技術と共生する街「サイバニックシティ」の実現に向け、先進的生活支援ロボット等の研究開発から社会実装までを一体として事業推進してまいります。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は主にHAL®腰タイプ(介護支援用・作業支援用)等の新製品の導入台数の大幅増加により1,264,902千円(前年同期比100.4%増加)を計上する一方で、新製品の量産による原価低減効果や子会社のサービス原価の低減により売上原価が401,121千円(同11.5%増加)に留まった結果、売上総利益は863,780千円(同218.2%増加)と大幅に増加し、売上総利益率も68.3%(同25.3%増加)と大幅に向上いたしました。
研究開発費は新製品開発及び臨床試験の推進により1,001,547千円(同1.9%増加)を計上し、その他の販売費及び一般管理費は主に事業税(資本割)等の租税公課の他に人件費や直接販売費の増加により1,154,365千円(同9.5%増加)を計上した結果、営業損失は1,292,132千円(同26.8%減少)と大幅に改善しました。
営業外収益につきましては、主に助成金収入の大幅減少により705,727千円(同33.7%減少)を計上し、営業外費用につきましては、前期の株式交付費99,409千円がなくなったことにより123,674千円(同40.1%減少)を計上することにより、経常損失は710,079千円(同21.8%減少)と改善しました。
また、法人税等11,173千円及び非支配株主に帰属する当期純損失3,195千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は718,057千円(同21.6%減少)と改善しました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比762,887千円減少し18,458,970千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、258,282千円の資金流出(前連結会計年度は779,286千円の資金流出)となりました。これは主に、減価償却費を280,299千円計上したものの、たな卸資産増加による資金流出が110,417千円、未収入金減少による資金流入が200,633千円、税金等調整前当期純損失710,079千円を計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、482,675千円の資金流出(前連結会計年度は26,780,601千円の資金流出)となりました。これは主に、拘束性預金の減少による資金流入20,000,000千円、有価証券の取得による支出2,000,213千円、定期預金純増による資金流入1,500,000千円、有形固定資産取得による資金流出1,354,938千円及び投資有価証券の取得による支出599,980千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、主に割賦債務の返済による資金流出により、21,185千円の資金流出(前連結会計年度は42,441,003千円の資金流入)となりました。