有価証券報告書-第15期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 11:33
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【項目】
63項目

事業等のリスク

以下において、当社の事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避、発生した場合の対応に努める方針です。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
1. 事業環境に関するリスク
(1) 市場環境について
① 他社との競合について
インターネット上の小説や漫画等のコンテンツを書籍化するビジネスモデルにより、各社から大型のヒット作が相次ぎ出版され、一部のメディアでもそのビジネスモデルが取り上げられていることから、今後はより一層、当社と類似したビジネスモデルにて多くの新規参入等があると考えられます。
当社といたしましては、当社ならびに当社サービスの知名度向上、及び作家・ユーザーの満足度向上のための施策(当社コンテンツ閲覧用のスマートフォンアプリの開発等)を継続的に実施することで、競合他社に対する優位性を確保することに努めてまいりますが、見込みどおりの効果が得られない場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
② 原材料市況について
出版物の印刷・製本業務は複数の取引先に分散して委託することで安定的な供給量とコストのコントロールを行っております。しかし、原材料となる紙のコストが急激な原油高等により高騰した場合、印刷・製本の委託費は増加すると考えられます。その場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③ 出版市場について
当社は、デジタルネットワークの発展に伴う情報メディアの多様化等による書籍の市場規模の縮小、顧客ニーズの細分化に対応するため、魅力ある書籍の拡充・強化を進めております。しかし、顧客ニーズに合致する書籍の拡充・強化が想定どおりに進まない場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④ 電子書籍市場について
電子書籍専用端末やスマートフォン向けの電子書籍販売に関しましては、電子書籍の普及率や市場規模が市場関係者の期待どおりに進んでいない状況にあると認識しておりますので、当社といたしましては、電子書籍専用端末やスマートフォン向けの電子書籍対応には市場の動向を注意深く観測しつつ、状況に応じて即座に対応できる体制作りを進めていく方針です。
しかし、当社の想定する以上に急激に電子書籍化が進行し、現在の収益の柱である書籍の売上が急激に減少することに加え、電子書籍化の潮流に即座に対応できなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(2) 業界慣行及び法的規制について
① 再販売価格維持制度について
当社が販売している書籍等の著作物は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下、「独占禁止法」という。)第23条の規定により、再販売価格維持契約制度(以下、「再販制度」という。)が認められております。
再販制度とは、一般的にはメーカーが自社の製品を販売する際に、「卸売業者がその商品を小売業者に販売する価格」、「小売業者が消費者に販売する価格」を指定し、その価格(以下、「再販売価格」という。)を卸売業者、小売業者にそれぞれ遵守させる制度であります。独占禁止法は、再販制度を不公正な取引方法の1つであるとして原則禁止しておりますが、著作物については再販制度が認められております。
公正取引委員会は平成13年3月23日付「著作物再販制度の取扱いについて」において、「競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべき」としながらも、「同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない」と指摘しており、当面、当該再販制度が維持されることとなっております。しかし、当該制度が廃止された場合、販売価格の値引きなどの価格競争に陥る可能性があるため、業界全体への影響も含め、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 委託販売制度について
法的規制等には該当いたしませんが、再販制度と並んで出版業界における特殊な慣行として委託販売制度があります。委託販売制度とは、当社が取次及び書店に配本した出版物について、配本後も返品を受け入れることを条件とする販売制度であります。
当社ではそのような返品による損失に備えるため、当期及び過去の売上高を基礎として、過去の返品実績を勘案した所要額を返品調整引当金に計上しておりますが、今後の返品実績の動向によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 著作権、商標権、知的財産権等について
当社は、著作権、商標権、知的財産権等の法令等の下、事業活動を行っており、現段階において事業及び業績に重大な影響を及ぼす訴訟を提起されている事実はありません。しかし、当社と作家との間において著作権に関するトラブルが生じた場合、又は当社と他社間において著作権又は商標権に関するトラブルが発生した場合においては、訴訟等が発生する可能性があります。当社では、知的財産権に関する専門の弁護士と顧問契約を締結し、常にトラブルが無いよう努めておりますが、万一訴訟等が発生した場合には、当社の信頼を大きく毀損することとなり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
また、著作権、商標権、知的財産権等の法令等に重大な変更や当社事業に関係する重大な法令等の新設がある場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④ 個人情報等について
当社では、多数の作家及びユーザーの個人情報をお預かりしております。個人情報保護につきましては全社的な対策を継続的に実施しておりますが、万一個人情報の漏洩等が発生した場合には、当社の信頼を大きく毀損することとなり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
2.事業に関するリスク
(1) 取引依存の高い主要な取引先について
当社は、将来的には出版事業を通して蓄積した自社IPを活かした多角展開を見据えておりますので、限られた経営資源は編集等に注力すべきだと考えております。そのため、取次(出版社と書店の間をつなぐ流通業者)との取引業務(書籍の販売・流通業務)は全て中取次(出版社と取次の間をつなぐ流通業者)である株式会社星雲社を介して行っております。そのため、販売金額の約99%(当事業年度(自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日)実績)が同社に対するものとなっております。また、同社との契約条件により、新刊書籍に関しては、出荷から6ヶ月後に取次からの売上回収額が確定し、その翌月に同社が取次から回収、翌々月に当社へ入金するため、同社に対する当社の売上債権の回収期間は約半年となっております。
同社とは、引き続き現状の関係を維持していくことを確認しておりますが、将来において何らかの要因により、同社の事業戦略に変化が生じ取引契約の条件変更あるいは契約解消が起こった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
しかし、同社の業績悪化等により貸倒リスクが顕在化した場合においては、同社が保有する当社書籍の売上債権に対しては債権譲渡担保契約を締結しているため、担保権を行使し取次から直接売上債権を回収することが可能となっております。一方で、取次の貸倒リスクが顕在化した場合においては、当社書籍の売上債権の回収に関して当社の事業及び業績が影響を受ける可能性があることから、当社は取次に対しての与信管理を徹底しております。
また、何らかの理由により取引契約が解消された場合、一定の期間や費用を要するものの、取次との直接取引及び株式会社星雲社に委託していた業務を内製化するために必要な組織・業務の整備を行うことで、対応は可能であると考えております。
(2) 新規事業への取組について
当社は、出版事業のみに留まらず、出版事業により蓄積された自社IPを活用して、ゲームや映像等の出版事業以外のメディア展開、グッズ販売、スマートフォン向けアプリサービス(情報提供サービス等)の開始等、多角的に事業展開することを目指す方針であります。中でも、ゲーム事業に関しては、既にプロジェクトを進めております。
これらの新規事業への取組に際して、新たな人材の確保、システム投資及び広告宣伝等のため追加的な支出が発生する場合、また当社がこれまで想定していない新たなリスクが発生する場合、あるいは事業展開が想定どおりに進捗しない場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(3) 書籍の刊行時期について
書籍の刊行に関しては綿密な刊行計画を設定しておりますが、作家の執筆過程、及び編集者の編集過程等における予測不能の事態の影響から、当初の刊行計画から変更が生じることがあります。その結果、当社書籍の販売時期が延期等となった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(4) サイトの健全性の維持について
書籍化の源泉となるコンテンツが投稿される当社Webサイトは、不特定多数のユーザーがコンテンツを投稿することができ、また独自にコミュニケーション等を図っているため、こうした場においては、公序良俗に反する行為や、他人を不快にさせる行為等が生じる危険性が存在しております。そのため、当社は、Webサイト内における禁止事項を明記すると共に、当社においても不適切なコンテンツや書き込み等がないかの確認を行っております。
しかし、急速な利用者の増加等により、Webサイト内における全ての不適切な行為を取り締まることができない場合には、Webサイトの安全性及び健全性が確保できず、当社のブランドや信頼が毀損する可能性があります。その場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(5) 当社サーバー上のWebコンテンツについて
当社Webサイト上に登録されているコンテンツの多くは、作家が管理する自己のHP又は既存投稿サイトに掲載しているコンテンツを参照する(以下、「リンク」という。)形式での登録となっております。そのため、将来において何らかの要因により、現在、リンク制限を設けていない既存投稿サイトが制限を行い、その結果、Webからのコンテンツ調達が計画どおりに進まない場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
なお、そのリスクが顕在化した場合の影響度低減に向け、当社では、リンク形式のコンテンツ拡充と並行して、当事業年度において、当社Webサイト上に直接コンテンツが投稿できるサービスの提供を開始しております。
3.事業体制に関するリスク
(1) 人材採用と育成について
当社の事業運営に当たっては、人材の確保・育成が重要課題であると認識しております。そのため、当社は採用活動に注力し、人材の確保に努めるとともに、社内教育・研修制度の充実を図ることで、実務スキルに加えて、当社の経営理念や行動規範を理解した責任のある社員の育成を行っていく方針であります。
しかし、人材を適時確保できない場合や人材が大量に社外へ流出してしまった場合、あるいは人材の育成が当社の計画どおりに進捗しない場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(2) 代表取締役社長への依存及び当社の事業推進体制について
当社の代表取締役社長である梶本雄介は、当社の創業者であり、設立時より最高経営責任者であります。同氏は、企業経営に関する豊富な経験と知識を有しており、現在においても経営方針や事業戦略等の立案及び決定を始め、取引先やその他各分野に渡る人脈等、当社の事業推進の中心的役割を担っており、当社における同氏への依存度は高いものとなっております。
そのため当社では、同氏に過度に依存しないよう、経営幹部、ならびに業務推進役の拡充、育成、及び権限委譲による分業体制の構築等を進めておりますが、現時点においては、何らかの理由により同氏が当社の経営者として業務遂行が継続出来なくなった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(3) 小規模組織における管理体制について
当社は、小規模な組織であり、現在の内部管理体制もこの規模に応じたものとなっております。当社では今後、事業の拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充を図る予定です。しかし、事業の拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充が順調に進まなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
4.その他
(1) 配当政策について
当社では、当面は株主への長期的な利益還元を実現するために、環境変化に対応した事業展開を行うとともに、内部留保資金の充実を図る方針です。将来は、株主への利益還元と財務体質ならびに内部留保の充実のバランスを考慮しながら、配当を検討する所存でおりますが、現時点では配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。