訂正有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2014/12/17 15:00
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【項目】
81項目

事業等のリスク

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
当社は、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
1. 事業環境に由来するリスクについて
(1)インターネット関連市場
当社の主たる事業は、インターネットを活用した医師を中心とする医療分野の人材紹介事業であり、インターネットの普及・利用状況や技術革新等の影響を受けます。わが国におけるインターネットの普及率は平成25年12月時点において82.8%(総務省「平成26年度版 情報通信白書」)であり、世界的に見ても高水準にあります。しかしながら、今後、インターネット利用の普及に伴う弊害の発生、利用に関する新たな規制の導入、その他予期せぬ要因によって、インターネット利用の順調な発展が阻害された場合、一般的な普及が進んでも何らかの理由で医療従事者の間でのインターネットの普及が阻害された場合、あるいは、急激なインターネットの技術革新が発生し当社が対応できない場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(2)医療・ヘルスケア市場
現在、当社の売上の多くが、医療・ヘルスケア関連分野からのものとなっています。医療・ヘルスケア関連業界は、高齢化などにより今後も市場の成長が見込まれますが、何らかの理由により、市場の成長が停滞し、あるいは市場が縮小するなどした場合や、市場動向に当社が対応できない場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)他社との競合
人材紹介業界は、新規参入障壁が低く、大手事業者から個人事業まで多数存在しています。しかしながら、医療分野の人材紹介業界に限ると、医師からの信頼を得ることが必要であり、当社は口コミや紹介をベースに会員を増やしていることから、差別化が図られていると考えております。しかしながら、今後、他社との競合による紹介手数料の低下、事業者間の合併・事業譲渡による再編が進む可能性も否定できず、当社がこれらの流れに対応できない場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(4)法的規制等
当社事業を規制する主な法規制として、「職業安定法」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)」、「電気通信事業法」、「プロバイダ責任制度法」及び「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」があります。当社は、職業安定法に基づく厚生労働大臣の「有料職業事業許可」及び労働者派遣法に基づく厚生労働大臣の「一般労働者派遣事業許可」を受けており、許可の有効期間は5年であります。
職業安定法は、職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割に鑑み、その適正な運営を確保するために、紹介事業を規制しており、厚生労働大臣は、当社が有料職業紹介事業者としての欠格事由(職業安定法第32条)に該当したり、当該許可の取消事由(職業安定法第32条の9)に該当した場合には、許可の取り消しや業務の全部又は一部の停止を命じることが出来る旨を定めております。
また、労働者派遣法及びその施行令においては、原則として医師の医療機関への派遣が禁止されており、例外的にへき地などには医師派遣も法的に許されております。その限りにおいて、労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、「許可の取り消し等」を定めており(労働者派遣法第14条)、派遣元事業主(派遣事業を行う者、法人である場合にはその役員を含む。)が同条第1項のいずれかに該当するときは、許可の取り消しが出来る旨を定めております。
本書提出日現在において、当社が職業安定法及び労働者派遣法に定める取消事由に抵触することはありませんが、今後何らかの理由で許可が取り消された場合、当社の事業活動が制限され、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
このほか、当社は電気通信事業法上の特定電気通信事業者であり、通信の秘密の保護等の義務が課されております。また、当社の人材紹介先である医療機関は、「医療法」及び「薬事法」等の医療関連法規制等の影響を受けております。今後、これらの法規制等の改正等が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
2. 事業内容に由来するリスクについて
(1)業績の季節変動性
医師ネット紹介においては、紹介した人材の入職日を基準に売上高を計上するため、一般的に年度の始まりとされている4月の転職希望者が多く、第1四半期に売上高が偏重する傾向となります。
第15期の各四半期会計期間に係る売上高は以下のとおりであります。
会計期間第15期
第1四半期会計期間
第15期
第2四半期会計期間
第15期
第3四半期会計期間
第15期
第4四半期会計期間
自平成25年4月1日
至平成25年6月30日
自平成25年7月1日
至平成25年9月30日
自平成25年10月1日
至平成25年12月31日
自平成26年1月1日
至平成26年3月31日
売上高(千円)233,767162,629185,789145,962

(2)人材紹介の取引慣行
常勤医師紹介及びコメディカル転職紹介において、当社は医療機関に紹介した常勤医師及びコメディカルの入職時に売上高を計上しております。人材紹介事業の慣行として、求職者が自己都合により退職した場合には、求職者の勤務期間に応じて一定率の手数料を返金する取り決めがあり、当社においても医療機関と紹介手数料を返金する取り決めを行っております。過去の返金実績に応じて売上返金引当金を計上しておりますが、当社の想定する以上の返金が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)公務員医師の紹介
公務員医師は、国家公務員法及び地方公務員法に基づき兼業を禁止されておりますが、事前に兼業する許可を取得することで、兼業が認められております。
当社は、会員規約等により事前の兼業許可を取得することを医師会員に対して注意喚起しており、事前の兼業許可を取得していることを条件に公務員医師に対して医療機関への紹介を行っております。しかしながら、当該公務員医師が事前の兼業許可を得ていない場合に、当社は法令違反の公務員医師を医療機関に紹介する可能性があり、当社の職業紹介事業者としての信用が毀損される可能性があります。
なお、当社は、運営サイトを通じた勤務実績に応じてMRTポイントを公務員医師を含む医師会員に対して付与しておりますが、公務員医師にとって当該ポイントは公務員の職務に関して収受等されるものではないこと等を弁護士に確認しており、法令に抵触するものではないと考えております。
(4)運営サイトの健全性の維持・向上
当社が提供するコミュニティサービスは、医師専用のサイトにおいて、多数の個人会員が会員間で独自にコミュニケーションをとることを可能としております。当社は、健全なコミュニティを育成するため、医師が会員登録するにあたり、医師免許や保険医登録票等を確認しており、医師になりすました者等の不適切な利用を排除しております。
しかしながら、今後急速な会員数の拡大等の結果として、当社が会員によるサイト内の行為を完全に把握することが困難となり、会員の不適切な行為に起因するトラブルが生じた場合には、当社が法的責任を問われる可能性があります。また、法的責任を問われない場合においても、ブランドイメージの悪化等により当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(5)システム障害
当社が提供する医療機関の求人情報や医療従事者向け専門サイト等のサービスは、コンピュータシステムと通信ネットワークにより提供されております。
当社は、自前のシステム管理体制の構築、定期的バックアップ、稼働状況の監視等により、システムトラブル発生の未然防止又は回避に努めておりますが、自然災害や不慮の事故、想定を上回る急激なアクセス増等の一時的な過負荷その他の要因によりコンピュータシステムにトラブルが生じた場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(6)知的財産権
①当社の知的財産権について
当社は、事業推進のため「MRT」「ネット医局」等を商標登録しており、今後においても必要となる提供サービスの呼称等は商標登録し、当社の知的財産権として保護・管理する方針としております。しかしながら、当社の知的財産権が何らかの理由により侵害された場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
②当社による第三者の知的財産権の侵害について
本書提出日現在において、当社が第三者の知的財産権を侵害していないと認識しており、第三者から当社が第三者の知的財産権を侵害している旨の通知等を受け取っておりません。当社は、インターネットを通じたサービスの提供にあたり、第三者の著作権や商標権等の知的財産権を侵害することがないように、顧問弁護士等との連携を図る等の対策を講じておりますが、当社が意図しない形で第三者の知的財産権を侵害するような事態が発生した場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(7)人材の確保・育成
当社が事業拡大を進めていくには、優秀な人材の確保・育成が重要な課題であると認識しております。
しかしながら、人材を適時確保できない場合や人材が大量に社外へ流出してしまった場合、あるいは人材の育成が当社の計画どおりに進捗しない場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(8)新規事業の推進
本書提出日現在、当社では、中長期的には、医師ネット紹介での経験・ノウハウを活用し、ネット医局®をはじめとする新規事業に取り組んでまいりますが、これによりシステムへの先行投資や、人件費等の追加的な支出が発生する可能性があります。また、当該事業を推進させるなかで、当社の計画どおりに新規事業が進捗しない場合及び十分な収益を見込めず初期投資を回収できない場合等には、固定資産の減損損失の発生等、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
3. その他のリスクについて
(1)大株主について
当社の非常勤取締役会長である冨田兵衛氏は当社の創業メンバーの一人で、当社以外にデータサイエンス株式会社代表取締役会長、医療法人社団優人会理事長及び優人クリニック院長を務めております。
同氏は、同氏の配偶者及び同氏の資産管理会社である株式会社冨田医療研究所とあわせて、本書提出日現在、当社株式の71.9 %を所有する大株主であり、当社の創業者、医師及びシステム開発事業会社の代表者としての経験に基づき、当社経営陣に対する助言・アドバイス等を行う役割を非常勤取締役として担っております。
同氏が常勤役員として兼任している法人は以下のとおりであります。
法人名医療法人社団優人会
事業内容病院経営事業
当社との取引関係医療法人社団優人会優人クリニックとの間で 医師・看護師等紹介の取引があり、取引条件は、一般取引条件と同様であります。

(2)訴訟等について
本書提出日現在において、当社と元役員及び元従業員との間で、民事訴訟あるいは刑事事件が発生しております。それぞれの訴訟等の内容については、①から③のとおりであります。今後の推移によっては当社の主張が認められず、当社に金銭その他の損害が発生する可能性があります。
また、当社は①から③の訴訟等について弁護士と協議しながら、どのような時期に、どのような手続等が発生するかの見通しを検討しつつ慎重に対応しておりますが、必ずしも当社が想定している通りになるわけではありません。原告、裁判所及び警察等の関係者の判断により、当社の想定よりも訴訟等の進捗が早くなる場合又は遅くなる場合、当社の想定している結果が得られない場合等が生じる可能性があり、その場合には当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、今後も事業推進上、偶発的に発生する訴訟や訴訟に至らない請求を受ける可能性、訴訟に関連した弁護士費用が発生する可能性、あるいは刑事事件の被害者となる可能性があり、その場合には当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
① 元従業員(元システム担当者)との係争
係争内容:パワーハラスメントに関する民事訴訟
原 告 :元従業員 1名
被 告 :当社及び当社代表取締役
内 容 :元従業員である原告より、パワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)を理由に損害賠償3,051千円を求めて平成24年8月に提訴されました。
方 針 :当社としましては、弁護士とも協議し、当社としての正当性を主張する方針であります。しかしながら、将来発生するおそれが現実化した場合の支出に備えるため、原告のパワハラによる損害賠償額の一部を訴訟関連費用引当金として計上しております。
② 元取締役(元システム担当取締役)との係争
係争内容:役員解任に伴う損害賠償・名誉棄損等に関する民事訴訟について
原 告 :元取締役 1名
被 告 :当社、当社代表取締役、当社取締役会長及び当社取締役
内 容 :元取締役である原告より、役員任期の途中で解任されたことによる損害賠償、名誉棄損及びハラスメント等を理由に総額22,873千円(内訳:解任による損害賠償額 21,873千円、名誉棄損及びハラスメント等による損害賠償額 1,000千円)を求めて、平成24年10月に当社及び当社全取締役を相手に提訴されました。
方 針 :当社としての正当性を主張する方針でありますが、解任については、弁護士とも協議し、解任の正当性を主張しております。しかしながら、将来発生するおそれが現実化した場合の賠償金の支出に備えるため、原告の解任による賠償請求額及び訴訟費用見込額を訴訟関連費用引当金として計上しております。
③ 元従業員(元システム担当者)との係争
(a)民事訴訟について
係争内容:労働契約上の地位確認に関する民事訴訟について
原 告 :元従業員 1名
被 告 :当社
内 容 :元従業員である原告より、試用期間満了による雇止めを不服として、社員としての労働契約上の地位の確認とそれに伴う賃金(総額7,913千円)の支払いを求めて、平成25年1月に当社を相手に提訴されました。
方 針 :当社としましては、弁護士とも協議し、正当な理由にもとづく試用期間満了であると考えており、「(b)刑事事件について」に記載の刑事事件の証拠の提出も含めて、当社の正当性を主張する方針であります。しかしながら、将来発生する訴訟費用等の支出に備えるため、訴訟費用見込額を訴訟関連費用引当金として計上しております。
(b)刑事事件について
平成24年3月及び4月に当社の特定の役職員に対する着信メールを不法に作成者不明の個人メールアドレスに自動転送するプログラムが仕掛けられていたことが、同年9月に発覚し、警察に捜査を依頼しました。その後の社内調査で、個人情報の流出の可能性があることが判明しました。
また、警察の捜査により、上記「(a)民事訴訟について」に記載の原告である当社元従業員が平成24年5月に当社の営業秘密(約1万7千人分の医師、看護師等の個人情報)を領得したという疑いで平成26年10月14日に不正競争防止法違反により、逮捕されました。さらに、当該元従業員は、当社のメールを違法に自らのメールアドレスへ転送していたという疑いで私電磁的記録不正作出及び供用罪により、平成26年11月4日に再逮捕されており、同年11月25日、同罪により起訴されました。これらの事案について、すべて適時に関係省庁へ報告するとともに医師会員等に対し、その旨のお詫びと報告を行いました。
上記①から③の訴訟において訴訟関連費用引当金として計上している訴訟費用見込額は、合計25,243千円(本書提出日現在)であります。
また、これらの個人情報流出関連の支出に備えるため、情報セキュリティ対策費用見込額を情報セキュリティ対策費用引当金21,350千円(本書提出日現在)として計上しております。
(3)個人情報管理
当社では、当社提供のサービスを利用する医師、看護師、その他の医療従事者から取得した個人情報を利用しているため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務を課されております。
そのため、当社は、平成24年3月にプライバシーマークを取得し、日本工業規格(JISQ15001)に合致した個人情報保護規程を策定のうえ、運営サイト上の暗号化や個人情報を管理しているファイルサーバーへのアクセス権限の制限等を通じて、個人情報の機密性を高める施策を講じております。一方で「(2)訴訟等について ③元従業員(元システム担当者)との係争 (b)刑事事件について」に記載のとおり個人情報の流出の可能性があったことを踏まえ、平成25年10月に全サーバーシステムをISO27001準拠のデータセンターに移行を完了させ、アクセスログが完全保存される仕組みとするとともに、社員のメールやトラフィックの監視ツールの導入に加え、社員教育の徹底等あらゆる方策を講じております。しかしながら、何らかの理由により当社が管理する個人情報等の漏洩、改ざん、不正使用等の事態が生じた場合、顧客からの損害賠償請求や信用の失墜等により、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(4)配当政策
当社は成長性を第一義と考えており、当面の間、成長資金を要すると考えられますので、内部留保の確保に努め、配当を行わない方針であります。今後、業績及び財務状態等を勘案しながら余剰資金が生まれたと判断される場合に、一定の利益を配当することを検討いたしますが、現時点において配当実施の可能性及び、その実施時期等については未定であります。
(5)潜在株式の行使による当社株式価値の希薄化
当社は、当社役員、従業員及び社外協力者に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、当社株式の1株当たりの価値が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在における潜在株式数は334,700株であり、発行済株式総数1,780,000株の18.8%に相当しております。
(6)調達資金の使途
当社の株式上場時に予定している公募増資による調達資金の使途につきましては、システム開発を中心に充当する予定であります。しかしながら、調達した資金の使途の全てが必ずしも当社の成長に寄与するとは限らず、期待どおりの成果をあげられない可能性があります。