訂正有価証券届出書(新規公開時)

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2015/03/20 14:22
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事業内容

(1)当社の事業領域
当社グループ(以下、当社及び連結子会社SanBio, Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社を指します。)は「再生細胞薬の開発を通じて、アンメットメディカルニーズ(未だ有効な治療法がない治療ニーズ)を充たし、ステークホルダーにとっての価値を創造する」ことをコーポレート・ミッションに掲げ、SanBio, Inc.を研究開発の主たる拠点として再生細胞薬の研究、開発、製造及び販売を手掛ける再生細胞事業を展開しております。
≪再生細胞薬とは≫
当社グループが手掛ける再生細胞薬は、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を再生させる効能が期待される医薬品です。
当社グループでは、主に脳神経に係る疾患(眼科を含む)における、慢性期脳梗塞(発症後6カ月が経過した脳梗塞)、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、パーキンソン病、脊髄損傷、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズのある疾患を対象とした治療薬の販売を目指しております。
例えば、当社グループが治療薬の開発を進めている慢性期脳梗塞では、これまでリハビリやリハビリ補助機器等による理学療法による対処が主流とされてきた疾患であり、麻痺、半身不随等が残った場合の有効な治療薬は存在していませんでした。
このような領域において再生細胞薬による治療法を確立することで、世界中の前記の疾患を抱えた患者の身体機能の改善に寄与することが当社グループのミッションであります。
(2)事業の内容
当社グループは、当社と連結子会社SanBio,Inc.(米国カリフォルニア州マウンテンビュー市)の2社により構成されています。当社設立は平成25年2月ですが、SanBio,Inc.は平成13年2月の設立以降、一貫して再生細胞薬の研究開発を進めております。現在も同社が研究開発の主たる拠点となっており、米国において研究開発のための研究機関、大学病院、研究/製造受託機関、アドバイザー等とのネットワークを構築しております。
主な提携研究機関:スタンフォード大学、ピッツバーグ大学、ノースウェスタン大学
主なアドバイザー:米国食品医薬局(元)長官、スタンフォード大学(元)学長、米国国立衛生研究所(NIH)老化研究所(元)所長、間葉系幹細胞発見者
当社グループは、大学等の研究機関から技術を導入して当社グループにおいて製造開発、非臨床試験、臨床試験等を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾することで(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給に係る収入を得るビジネスモデルとなっております。収入形態の内容は以下のとおりであります。
なお、上記のライセンス許諾のタイミングは、安全性と有効性を確認する(Proof of concept)段階まで開発を進めた時点を想定しております。
≪当社グループの収入形態≫
収入形態内容
A契約一時金ライセンス許諾の契約時の一時金として得られる収入。
Bマイルストン収入開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成するごとに一時金として得られる収入。上市後は予め設定した売上マイルストンの達成ごとに一時金として得られる収入。
C開発協力金開発費用のうち、ライセンスアウト先負担分として得られる収入。
Dロイヤルティ収入製品売上のうち、ロイヤルティとして一定割合を得られる収入。
E製品供給収入製品供給の対価として得られる収入。

当社グループの収入は、開発段階においては、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金のいずれか、又はすべてで構成されます。製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入が当社グループの主な収入形態となります。(D)及び(E)は製品売上の一定割合として支払われるため、製品売上に比例的に伸長することになります。
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(3)開発の状況
① 当社グループが手掛ける再生細胞薬
当社グループが開発を進める再生細胞薬はSB623(神経再生細胞、適応疾患は慢性期脳梗塞、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、パーキンソン病、脊髄損傷、アルツハイマー病等)、SB618(機能強化型・間葉系幹細胞、適応疾患は末梢神経障害等)、SB308(筋肉幹細胞、適応疾患は筋ジストロフィー等)の3種類であります。
現在、SB623の慢性期脳梗塞用途の開発が最も進捗しております。SB623慢性期脳梗塞用途についてライセンス先の大日本住友製薬株式会社との共同開発を進めており、フェーズⅡbの臨床試験開始に向けた準備を行っております。また、同じくSB623外傷性脳損傷用途について、米国食品医薬品局より臨床試験開始の認可を得ております。
当社グループでは、バックアップとなりうる製品を用意しつつも、主たる製品候補に資源を集中していくことが事業上最適と考えており、再生細胞薬SB623(神経再生細胞)の適用拡大を図ることを最優先に開発を進める方針であります。
0201010_002.png≪SB623の概要≫
SB623は神経機能を再生する作用を持つ治療薬であります。体の自然な再生プロセスを促進させ、失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生をターゲットとしております。
再生細胞薬は、患者本人の細胞を処理して再度患者に戻す形態の医療サービス(自家移植の再生医療)ではなく、均質の細胞を大量製造して製品化した医薬品であります。同一の製品で多くの患者を同様に治療できるため、製品認可取得後には迅速な普及が見込まれます。健常者の骨髄液を培養することで得られるMarrow Adherent Stem Cells(MASC細胞)に、Notch-1遺伝子を一過性に導入し、さらに培養して得られる細胞を分注して凍結保存した神経再生細胞が最終製品となります。当社グループでは一人の健常者の骨髄液から患者数千人分の最終製品を製造可能な技術を確立しております。
SB623は慢性期脳梗塞等の脳神経疾患の場合には、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与可能であります。長期入院も不要で、臨床試験で被験者は一日入院し、投与翌日には退院しております。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能であります
作用メカニズムについては、複合的な作用で神経機能の再生を促進しているものと考えられます。投与したSB623は、投与後約1~2カ月の比較的早い時期に液性の神経栄養因子や不溶性の細胞外マトリクスを分泌することで、体の自然な再生プロセスを促進させていると考えられます。具体的には(A)神経保護(神経細胞をまもる)、(B)神経新生(神経細胞をつくる)、(C)血管新生(血管をつくる)、(D)抗炎症(炎症を抑える)等、複合的に作用することを示唆するデータが確認されております。
作用メカニズムのうち神経新生(神経細胞をつくる)作用の一例をあげると、動物試験で確認された現象があります。脳が損傷を受けた場合、通常は損傷部位で新たに神経細胞がつくられることはありません。これは別の場所に存在している神経幹細胞(神経細胞のもとになる細胞)が損傷部位まで到達できないためであります。同じ条件下でSB623を移植すると、SB623の作用により、神経幹細胞のいる場所から損傷部位まで橋渡しの経路がつくられ、神経幹細胞が損傷部位まで到達できるようになります。この結果、損傷部位で新たな神経細胞がつくられるようになります。
② SB623 慢性期脳梗塞の開発状況
≪SB623 慢性期脳梗塞プログラムの概要≫
脳卒中は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして(脳出血)、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう病気であります。
脳梗塞は、発作後数時間までの急性期を過ぎるとリハビリ以外に対処方法が無く、さらに6カ月を過ぎ慢性期に入ると大半の場合、それ以上の改善を期待することはできないとされています。
SB623は、脳梗塞の発作後、慢性期に入り、他に有効な治療法の存在しない症状の改善を狙うアンメットメディカルニーズを満たした医薬品として期待されています。
≪臨床試験の状況≫
当社グループでは、平成23年より、慢性期の脳梗塞患者に対して、SB623の安全性と有効性を確認するためのフェーズⅠ/Ⅱa臨床試験(フェーズⅠとフェーズⅡの一部を同時に行い、再生細胞薬の安全性と有効性を同時に確認したため、フェーズⅠ/Ⅱaとしています。)を実施し、平成26年2月に投与後6カ月の効果測定が完了しました。この結果、副作用は認められないこと(安全性)と脳梗塞患者の運動機能が改善したこと(有効性)が確認され、平成26年6月に米国食品医薬局より、次の臨床試験のステップ(フェーズⅡb)に進むことについての承認を得ることができました。
下図は平成26年6月に完了したフェーズⅠ/Ⅱaの臨床試験の結果の一部を、運動機能の効果を測定するための代表的な指標であるFugl-Meyer Assessment(フューゲルマイヤーアセスメント)を使ってまとめたものです。
横軸はSB623投与後の経過月数、縦軸は運動機能の改善度合いであります。縦軸に示された数値が高くなるほど、機能改善の度合いが大きいことを示しております。
投与前と投与後の機能改善例として、車いすが必要な患者が歩けるようになった、動かなかった腕が上がるようになった、うまく話すことができなかった患者がスムーズに話すことができるようになった等の事例が確認されております。
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本フェーズⅠ/Ⅱa臨床試験に続き、現在は、大日本住友製薬株式会社との共同開発でフェーズⅡb臨床試験を準備中であります。
③ その他のパイプラインの開発状況
≪SB623外傷性脳損傷プログラム≫
SB623は神経機能の再生を促すことから、慢性期脳梗塞以外にも、脳神経系の多くの疾患への適用が見込まれます。とりわけ外傷性脳損傷への適用が期待されております。
外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり、脳が傷つくことによって起こる疾患であります。脳の損傷によって、半身の麻痺や感覚障害記憶障害等の症状が起こります。外傷性脳損傷では脳梗塞よりも改善を期待できる期間はやや長いものの、損傷後1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされています。
こうしたことから、神経機能の再生を促すSB623が治療薬として期待されます。当社グループでは、動物試験結果での有効性を確認しており、平成25年5月に米国食品医薬局より臨床試験の実施許諾を取得済みであります。
なお、SB623の外傷性脳損傷用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しております。
≪SB623網膜疾患プログラム≫
SB623は強い神経保護作用を持つことから、網膜疾患への適用も期待されます。
対象となる網膜疾患の主なものとしては、加齢黄斑変性、網膜色素変性、緑内障などがあげられます。これらのうち、当社グループで最初に取り組んでいるのは加齢黄斑変性であります。カメラでいえば光を感知するフィルムに相当する膜が網膜ですが、この中心部に黄斑とよばれる部分があり、ものを見るときに大切な働きをしております。加齢にともなって黄斑が異常をきたし、徐々に網膜の細胞が減ってしまう結果、視力が低下していくのがドライ型加齢黄斑変性であります。患者数が多い一方、有効な治療法が存在せず、新たな治療法の確立が期待されております。
平成26年1月には、網膜疾患の動物試験の結果をもとに、米国食品医薬局とINDミーティングを実施いたしました。現在はドライ型加齢黄斑変性を対象疾患として、臨床試験の実施許諾に必要な非臨床試験を実施しております。
網膜疾患用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しております。
≪SB623その他の疾患への展開≫
パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施いたします。アルツハイマー病等その他の疾患については動物試験において適用可能性について検討してまいります。
その他の用途では初期臨床試験段階まで自社で開発を進めつつ製薬会社にライセンスアウトする方針であるため、現段階において、開発及び販売に係る権利は当社グループでのみ留保しております。
≪SB618≫
再生細胞薬SB618もSB623と同様、神経機能を再生する作用を持った治療薬でありますが、SB618はSB623とは異なった特性を持っており、機能強化型の間葉系幹細胞と考えられます。
SB618は健常者の骨髄液を原料として独自の製法で大量培養し、分注して凍結保存することで最終製品となります。この点はSB623と同様ですが、途中の製法が異なります。骨髄液からMASC細胞を得るまでの、SB623と共有した上流の製造プロセスのあと、レチノイン酸や複数のサイトカインを添加しさらに培養いたします。このプロセスにより間葉系幹細胞の性質が変化し、SB618の独自性を生むものと考えられます。SB618は、これまでに、末梢神経障害、脊髄損傷について動物試験での効果が確認されており、末梢神経障害、脊髄損傷、多発性硬化症などを対象に開発を進めております。
≪SB308≫
再生細胞薬SB308は骨髄由来の筋肉幹細胞であります。未だ研究段階ですが、将来的には筋ジストロフィーなどの疾患への応用を視野に開発を進めます。
筋ジストロフィーは、筋肉が壊死・変性し、次第に筋力低下が進行して行く病気であります。その中でも最も多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉の細胞骨格をつくるジストロフィンが遺伝子異常により作られなくなってしまうことにより起こります。有効な治療法は存在せず、筋力低下による呼吸障害や、心臓の機能障害により若くして亡くなるケースが大半を占めます。SB308は、筋ジストロフィーの動物試験で、その応用可能性が示唆されています。
④ パートナー製薬会社との契約の締結状況
当社グループでは、SB623の慢性期脳梗塞用途の開発、製造ならびに販売について、パートナー製薬会社との契約を締結しております。具体的には、米国子会社SanBio,Inc.が大日本住友製薬株式会社と米国及びカナダにおける共同開発契約及び販売権に係る契約を締結しており、製品販売前の臨床試験段階における当社グループの収入形態及び製品販売段階における販売権の取り決めが完了しております。また、日本においては帝人株式会社と開発権及び販売権に係る契約を締結しております。
≪大日本住友製薬株式会社との契約の概要≫
平成26年9月に締結しました当社グループと大日本住友製薬株式会社との契約により、当社グループは米国及びカナダにおけるSB623慢性期脳梗塞用途の開発・販売権を大日本住友製薬株式会社にライセンス許諾しました。
当該契約に基づき、今後は、SB623慢性期脳梗塞用途の当該地域における開発費用は当社グループ、大日本住友製薬株式会社それぞれが一定割合を分担し、また販売に係る費用は大日本住友製薬株式会社が全額を負担することになります。また、契約締結時の契約一時金に加え、開発段階では、(A)契約一時金、(B)マイルストン収入、(C)開発協力金の合計額が当社グループの収入となり、製品上市後は、売上マイルストンに関する(B)マイルストン収入のほか、(D)ロイヤルティ収入及び(E)製品供給収入の合計額が当社グループの収入となる見込みです。
≪帝人株式会社との契約の概要≫
平成21年12月に締結しました当社グループと帝人株式会社との契約により、当社グループは日本におけるSB623慢性期脳梗塞用途の開発・販売権を帝人株式会社にライセンス許諾しました。
当該契約に基づき、SB623慢性期脳梗塞用途の日本における開発・販売の全ての費用を帝人株式会社が負担します。また、当該ライセンス許諾の対価として、製品上市後は、製品売上のうちの一定割合が(D)ロイヤルティ収入として当社グループに支払われるほか、製品供給権は当社グループで保有したままとし、製品上市後の製品売上の一定割合が(E)製品供給収入として当社グループに支払われる見込みです。
今後は、SB623の慢性期脳梗塞用途のその他の地域の開発権及び販売権、並びに外傷性脳損傷等、その他用途の世界各地における開発権及び販売権について、パートナー製薬会社との提携を検討してまいります。
(3)事業の特徴
① 収益性の確保に向けた取り組み
(ⅰ)他家(たか)移植であること
一般に再生医療は、自家(じか)移植と他家(たか)移植に分けられます。
自家移植の再生医療は、患者の細胞を処理して再度患者本人に戻す形態の治療法であります。この場合、細胞調整に手間がかかる、個人間のばらつきが大きくなる、費用が高額化する等、実用化に当たっての課題が存在しております。一方、当社グループが手掛ける再生細胞薬は、他家移植であり、ドナー(細胞提供者)の細胞を処理し、均質の細胞を量産化した医薬品であり、同一の製品で多くの患者を治療できるモデルとなっております。
(ⅱ)量産化技術が確立されていること
ドナーの骨髄液を大量に培養して、均質な製品を製造し、これを凍結保存して輸送し、融解して投与できる技術が確立されており、製品販売後の量産化に対応できる段階に達しております。
なお、当社グループの再生細胞薬は、骨髄液を細胞源としているため、増殖性の高いES細胞やiPS細胞由来の細胞と比較してがん化のリスクが低く、安全性に優れていると認識しております。また、骨髄液は健常者から取得することが一般的となっていることもあり、大半が受精卵の破壊を伴うES細胞由来または中絶を伴う胎児由来の細胞を使用し倫理的な点が懸念されるのに対して、骨髄液由来のSB623はそうした問題もなく臨床現場で抵抗なく受け入れられるものと期待しております。
(ⅲ)製品供給権が確保されていること
他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い、自社で製品供給権を保有していないため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなります。
一方、当社グループの再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた当社独自の製品となっております。
そのため、当社グループでは、パートナー製薬会社との関係において製品の製造を担うため、製品販売後は製品販売に伴う(D)ロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として支払われる収入を獲得することについて契約上の取り決めがなされております。
② 対象となる患者数の多さ
当社グループが手掛ける再生細胞薬は、世界的に旧来の医療では対応できなかった(アンメットメディカルニーズのある)中枢神経系領域の疾患を対象としているため、対象患者数が多いことが見込まれます。例えば、脳卒中(脳梗塞を含む)の患者数は、米国において約680万人(出典:Heart Disease and Stroke Statistics - 2014 Update)、日本において約123万人(出典:平成23年(2011)患者調査)と推計され、このうち一定割合が慢性期脳梗塞の患者と見込まれます。
脳梗塞のほか、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、パーキンソン病、脊髄損傷及びアルツハイマー病等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの中枢神経系領域の疾患に対して、再生細胞薬は機能の再生を促す新しい治療薬として期待され、製品開発に成功すれば新たな医薬品分野を切り拓くことに貢献できるものと考えております。
③ 開発に必要な知的財産を自己保有
当社グループでは、開発及び製品販売に伴う、収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の開発に必要な知的財産を全て自社で取得することを基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308)の基本特許は全て取得済みであります。特許取得地域については、開発を進捗させている米国に加え、今後、開発を進める予定の日本、欧州、中国、カナダ、オーストラリア、香港、イスラエル、シンガポール等にて権利を取得済みであり、世界各地における臨床試験、製造開発、製品販売に向けた基盤の整備を進めております。
≪基本特許取得地域≫
米国、日本、イギリス、ドイツ、デンマーク、アイルランド、スペイン、スイス、ギリシャ、スウェーデン、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、オーストリア、フィンランド、ポルトガル、ポーランド、カナダ、韓国、香港、オーストラリア、中国、シンガポール、イスラエル
④ 今後の展開
SB623は神経機能の再生を促すことから、慢性期脳梗塞以外にも、脳神経系の多くの疾患への適用が見込まれるため、複数の疾患を対象とした開発を進めております。このうち、最も進捗しているのは、外傷性脳損傷を対象疾患とした開発であります。良好な動物試験結果を得て、平成25年5月に米国食品医薬品局より臨床試験の実施許諾を取得済みであり、身体の麻痺や感覚、記憶障害等が慢性化した患者を対象に、SB623の安全性及び有効性を確認するための臨床試験の準備を進めております。
このほか、網膜疾患(加齢黄斑変性・網膜色素変性)、パーキンソン病、脊髄損傷では動物試験で良好な結果が得られており、今後は臨床試験の実施許諾に向けて必要な追加試験を実施いたします。また、アルツハイマー病等その他の疾患については動物試験で適用可能性について検討してまいります。
<用語解説>
番号用語意味・内容
1マイルストン医薬品を開発する際に段階的に設定される、開発状況の進捗の節目のこと
2ライセンスアウト自社の開発権、販売権などの権利を他社に使用許諾すること
3ロイヤルティ医薬品販売後に、医薬品の売上高に応じて権利の保有者に支払われる使用料のこと
4上市研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと
5再生細胞薬病気・事故等で失われた機能を再生する効能を持った細胞医薬品のこと。患者様本人の細胞をプロセスする自家移植と異なり、健常者から提供された細胞を原料に製造される医薬品であり(同種移植)、安価に大量製造できるため、迅速な普及が見込まれるとともに、高収益な事業が実現できるところに特徴がある
6細胞調整ヒト幹細胞等に対して、その細胞の本来の性質を改変しない操作や加工(人為的な増殖、細胞の活性化を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作など)を施す行為をいう
7フェーズ有効性と安全性を調べるための臨床試験(治験)における段階のこと。フェーズⅠからフェーズⅢの3段階がある。
8米国食品医薬局食品や医薬品等の許可や取締り等の行政を行う、アメリカ合衆国の政府機関のこと
9分注一定量の少量ずつに分けること
10免疫抑制剤免疫系の活動を抑制するための薬剤。主に拒絶反応の抑制に用いられる
11神経栄養因子神経細胞へ栄養を送り届け、神経の機能の維持や成長などの要因となっているもの
12細胞外マトリクス生体組織のうち細胞以外の部分。単なる構造体でなく、細胞の挙動に多大な影響を与える生物学的機能も有しているもの
13パイプライン新薬誕生に結びつく開発中の医療用医薬品候補化合物(新薬候補)
14INDミーティングInvestigational New Drug Exemptiom。前臨床試験から臨床試験に移行しようとしている新医薬品候補品目について、前臨床試験結果等の情報をまとめた資料、すなわち、臨床試験実施のための申請資料を提出することを指す。臨床試験の開始に際して、INDを提出し、米国食品医薬局より試験実施の承諾を得ることが義務付けられている。