有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2015/05/15 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
109項目

事業等のリスク

本書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因に該当しないと考えられる事項についても、投資家の投資判断上、有用であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項も慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のあるリスクのすべてを網羅するものではありません。
①市場環境に関するリスクについて
イ.必要な技術の確保について
当業界においては、技術革新のスピードが速いため、先進のノウハウと開発環境を保有し、かつそれらを継続的に進化させていく必要があります。当社グループにおいては、常に新しい技術を利用したシステム構築に挑戦しており、迅速な環境変化に対応できるよう技術者の採用・教育、開発環境の整備等を進めております。しかしながら、当社グループの想定を超える技術革新等による著しい環境変化等が生じた場合、当該変化に当社グループが対応することができず、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
ロ.価格競争激化の可能性について
当業界においては、技術者の不足や人件費の高騰に伴い、安価な労働力を大量に得られる等の理由から、「オフショア開発」を行う企業があります。「オフショア開発」とは、システム開発・運用管理などを海外の事業者や海外子会社に委託することです。現在、アジア諸国企業の日本進出も始まっており、今後価格競争が一層激化することが予測されます。
「オフショア開発」の導入は、国外の安価な労働力を利用できることから、コスト面でメリットがあると一般的に言われておりますが、言語が異なること等により開発現場とのコミュニケーションが円滑にいかないケース等もあるため、総合的に見た場合の導入コストは必ずしも安くなるとは限らないと当社グループでは考えております。当社グループでは生産性向上に取り組みつつ、提案力、営業力、技術力等の強化により、価格以外の付加価値を顧客に対して訴求し、単純な価格競争を回避していきたいと考えております。また「ニアショア開発」体制も導入しており、低価格競争への対応も図ってまいりますが、かかる当社グループの施策が奏功しなかった場合、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
②当社グループ事業に関するリスクについて
イ.人材の確保、育成について
当社グループの提供するサービスは、人材、特に情報処理技術者の能力や資質に大きく依存しております。当社グループは人材こそが他社との差別化のキーであると位置付け、有能なプロ集団としての技術者、業務ノウハウの保有者、管理者等の確保・育成に努めております。
具体的には、人材確保に関しては、これまでの新卒・即戦力である中途採用及び協力会社からの技術者確保に加え、地元志向の優秀な人材を地方拠点で採用しております。人材育成に関しては、新卒採用者を対象に、IT基礎を学ぶ入社前研修を実施しております。入社後は、横浜研修センターにて、自社の専任講師によるSE育成カリキュラムに基づいた集合研修を行い、配属後は各カンパニーにおいて、OJTにより実務に近い技術研修を実施しております。また、若手・中堅社員を対象に、技術テーマごとの社内勉強会の実施や社外技術研修への参加などを行い、技術力向上を図っております。リーダークラスに対しては、マネージメント力育成を目的としたビジネスリーダー研修を実施しております。
当社グループでは、以上のような施策を実施することで、事業拡大に必要な人材の確保・育成に努めておりますが、かかる施策が当社グループの計画通り行えなかった場合、当社グループが受注した案件に対応し得る十分な体制を確保できなくなり、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
ロ.契約形態の変更について
当社グループのソフトウェア開発事業における顧客との契約形態には、請負契約と派遣契約とがあり、当社グループは業務の実態に合わせて適切な契約形態を選択しております。顧客との契約が請負契約の場合は、外注技術者も活用できますが、派遣契約の場合、当社グループから顧客の事業場に派遣できる技術者は当社グループの社員のみであり、外注を活用することはできません。
今後、何らかの理由により、顧客との契約において派遣契約を選択する割合が当社グループの想定を超えて増加した場合、顧客からの要求に対応できるだけの技術者を社内で確保することができず、受注機会を逸する可能性があります。
ハ.不採算プロジェクトについて
当社グループのソフトウェア開発事業においては、顧客からソフトウェア開発を受託するにあたり、あらかじめサービスの対価や納期を定めた請負契約を締結する場合があります。当該契約を締結したプロジェクトについては、原則として受注金額が契約時に確定し、定められた納期までにソフトウェアを完成して納品する責任が当社グループ側に発生します。
当社グループは、ソフトウェア開発プロジェクトの請負契約を締結するにあたっては、発生が見込まれるコストを積み上げ、それに適正な利潤を乗せたものを見積もり金額として提示しております。また、プロジェクトの受注後は、進捗状況を管理するプロジェクトの責任者を選任し、社内関係者及び顧客に対して定期的に進捗状況を報告することとしております。大規模なプロジェクト等、リスクの高いプロジェクトについては、社内に設置されたプロジェクトリスク委員会において、受注前の見積もり金額の妥当性や受注後の進捗状況をモニターし、プロジェクトに係る適正な利益を確保するよう努めております。
しかしながら、すべてのプロジェクトに対して必要コストを正確に見積ることは困難であり、仕様変更や追加作業に起因する作業工数の増大等が発生する可能性があります。また、当社グループの提供するソフトウェア製品・サービスにおいて、予期せぬ不具合(バグ)の発生やサービス不良等の品質上の問題により、手直し等の追加コストの発生や損害賠償が発生する可能性があります。これらの場合、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
ニ.売上原価について
当社グループの売上原価の大部分は、技術者に係る人件費・外注費で構成されております。
当社グループ社員の人件費は固定費であり、当社グループの受注量が急減して稼働率が低下した場合においても、それに応じて技術者に係る人件費が減少するわけではありません。当社グループは、顧客との長期的・安定的な取引関係を構築し、また事業内容や顧客の多様化を図ることで、外部環境の変化に左右されにくい収益構造の構築に努めておりますが、当社グループの受注量が急減した場合、当社グループの収益性が悪化する可能性があります。
また、業界全体で技術者不足が発生した場合、協力会社(外注先)から単価の値上げを求められる可能性があります。その場合、当社グループは販売単価の値上げを顧客に対して求めていく方針でありますが、当該値上げ分を顧客への販売単価に転嫁できなかった場合、当社グループの収益性に影響を与える可能性があります。
③その他のリスクについて
イ.法的規制に関するリスクについて
ソフトウェア開発事業において顧客の事業場へ当社社員を派遣する場合、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法)」により規制される特定労働者派遣事業に該当するため、当社は以下のとおり厚生労働大臣への届出を行っております。
当社が特定労働者派遣事業を行うにあたっては、同法を遵守する必要がありますが、将来、法改正が行われた場合、改正の方向性によっては当社グループの事業活動に支障が生ずる可能性があります。現在、特定労働者派遣事業を廃止して一般労働者派遣事業に一本化するという労働者派遣法の改正が政府において検討されております。特定労働者派遣事業が廃止された場合、当社は一般労働者派遣事業の許可を申請する方針ですが、現時点において当該法改正の内容は未確定であり、当社グループが適切に対応できなかった場合、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
届出内容取得年月日届出受理番号
特定労働者派遣事業届平成18年4月7日特13-304131

ロ.知的財産権の保護に関するリスクについて
近年、当業界においては、自社技術保護のための特許申請が増加する傾向にあります。当社グループも自社技術保護、他社との差別化及び競争力のあるサービスを永続的に提供するため、知的財産権の取得・保護活動を行っていく方針であります。当社グループの知的財産が第三者によって侵害された場合、当社グループは知的財産権の保護のため、かかる侵害者に対する訴訟及びその他防衛策を講じる等、当該対応に経営資源を割くことを余儀なくされることになり、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害しないよう努めており、現時点において侵害はないものと認識しておりますが、将来において第三者の知的財産権への侵害が生じてしまう可能性は否定できません。当社グループがサービスを提供する上で第三者の知的財産権を侵害していることが発覚した場合、当社グループへの損害賠償請求、信用の低下により、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
ハ.個人情報・機密情報漏えいに関するリスクについて
当社グループは、業務に関連して顧客や取引先等の個人情報及び機密情報を取り扱う場合があります。
当社グループでは、情報管理に関する全社的な取り組みとして、情報管理規程をはじめとする諸規程を制定するとともに、役職員からの誓約書の入手、社内教育等により、情報管理への意識向上の施策を実施しております。当社グループ事業所においては、ICカードによる入室制限、個人情報・機密情報書類を格納したキャビネットの施錠管理、ファイルフォルダへのアクセス制限、外部記憶媒体への書き込み制限等を行い、情報漏えいの防止に努めております。当社グループ社員が顧客の事業場に常駐して作業を行う場合は、顧客の情報管理体制に従っております。また、個人情報につきましては、個人情報保護方針の公表、プライバシーマーク認証の取得等を行っております。
以上のような施策により、当社グループは個人情報・機密情報の漏えい防止に努めておりますが、万が一、個人情報・機密情報が外部に漏えいするような事態となった場合には、当社グループの信用失墜による売上の減少又は損害賠償による費用の発生等により、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
なお、当社グループは業務の一部について外注委託を活用しておりますが、協力会社(外注先)に対しても誓約書の入手や研修の実施等、当社グループの役職員と同様の管理を実施しております。しかしながら、協力会社(外注先)による情報漏えいが発生した場合、それが協力会社(外注先)に起因するものであっても、当社グループの信用の失墜、損害賠償の請求等が発生する可能性があり、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
ニ.情報システムトラブルについて
当社グループは、社内のコンピュータシステムに関して、バックアップ体制を確立することによる災害対策を講じておりますが、地震や火災などの災害、コンピュータ・ウィルス、電力供給の停止、通信障害、通信事業者に起因するサービスの長期にわたる中断や停止、現段階では予測不可能な事由によるシステムトラブルが生じた場合、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
ホ.財務制限条項について
当社グループの借入金に係る契約の一部について、自己資本と利益に関する財務制限条項が付されている契約があります。当社グループは、経営成績及び財政状態の向上に努め、同条項への抵触を回避していく方針ですが、業績の悪化等により同条項に抵触した場合、借入れ条件の見直しや期限前弁済義務が生じ、当社グループのキャッシュ・フロー及び財政状態に影響を与える可能性があります。
ヘ.投融資について
当社グループでは、将来的な事業との相乗効果や関係強化を期待して、顧客企業や協力会社(外注先)等に対し、投資や融資を実施する場合があります。投融資を実施するにあたっては、事前に決算書や事業計画、資金繰り計画等、必要な資料を入手したうえで、投資については発行価格の妥当性、融資については回収可能性について検討を行います。その後、投資については取締役会決議、融資については取締役会決議又は稟議による社内決裁手続きを経たうえで投融資を実施しております。投融資の実施後は、定期的に業績等のモニタリングを行っております。
以上のように、当社グループは事前に十分に検討したうえで投融資を実施していく方針でありますが、投融資の結果、事業との相乗効果が事前に期待していたほどは得られない可能性があります。また、投融資先の業績が悪化した場合、減損処理が必要となる可能性があり、当社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
ト.ストックオプションについて
当社はストックオプション制度を採用しており、当社及び当社の子会社の役員(取締役、監査役)及び従業員に対して会社法の規定に基づき新株予約権を付与しております。平成27年4月30日現在の発行済株式総数は3,229,455株であり、同ストックオプションによる潜在株式328,000株が全て行使されたと仮定した場合のシェアは9.2%に相当しております。これらは、当社の事業発展のために優秀な人材の確保・獲得のためのインセンティブ施策として実施しており、必ずしも既存株主の利害と相反するものではありません。しかしながら、新株予約権の行使が行われた場合には、当社1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。また新株予約権の行使により取得した株式が市場で売却された場合は、市場の需給バランスに変動を生じ、適正な株価形成に影響を与える可能性があります。