訂正有価証券届出書(新規公開時)

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2016/05/24 14:00
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事業内容

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社、連結子会社5社、持分法適用関連会社1社で構成されており、『グローバル事業』と『メディカル事業』の2つのセグメントに分類され、グローバル事業は、グローバル部門、及びエンタープライズソリューション部門の2つの部門により構成されます。グローバル部門では、日本及びフィリピンを中心拠点としたソフトウエア開発、ITアウトソーシング、ビジネスアプリケーション及び組込みソフトの設計・開発等の支援を行っております。 一方、エンタープライズソリューション部門では、特定顧客の金融関連の開発案件を中核としたソリューションサービスの企画、営業及びデリバリー活動を行っております。
他方、メディカル事業では、病院等の医療機関あるいは関連施設に関わる、医療情報システムのソフトウエア商品の開発・販売、受託開発、コンサルテーションを行っております。
また、当社グループは、既存の製造業およびサービス業に加え、金融・医療、そして今後は自動車・ロボット分野におけるデータ融合型AI(人口知能)を視野に入れた領域を戦略的事業ドメインと位置づけ、また、国際化や少子高齢化などの社会構造の変化、医療生命科学やロボット・人口頭脳の分野における技術革新などの社会変革を新規ビジネス創出のチャンスと捉え、Go Global Company(注1)として事業モデルを展開しております。「金融領域」においては、国内の金融機関や国内外の大手電機メーカーの金融系案件を中心に、金融分野に精通した業務アプリケーションの開発や、金融システムのASEAN諸国や英語圏への海外展開を支援しております。「医療領域」においては、医療事業を担う中核としてレセプト点検ソフトウエア等を開発する株式会社エーアイエスを中心に医療情報システムのソフトウエア商品の開発・販売、受託開発、コンサルテーションを中心としたビジネスモデル戦略を積極的に推進する体制を整えております。
当社及び当社の関係会社の事業における当社及び関係会社の位置付け及びセグメントとの関連は、次のとおりであります。なお、以下に示す区分は、セグメントと同一の区分であります。
(1) グローバル事業
a.グローバル部門
近年、製品開発は、国内から海外の事業者や海外子会社に委託するオフショアへとシフトしており、従業員1,001名以上のIT企業の約6割がオフショア開発を導入している(出典:独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2013」)等、注目を集めている開発手法であります。オフショア開発は、ソフトウエア開発やWebシステム開発、運用保守管理等を単価の安い海外へアウトソーシングすることにより、開発及び保守・運用コストの大幅削減・利益拡大を目的として、今後、更に導入率が高まっていくものと期待されております。
また、急激に成長する新興国市場への投資が拡大しており、なかでもグローバルレベルでのIT統制の必要性が高まっております。当社グループが主たる事業拠点としているフィリピン共和国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の新興国として年6%程度の経済成長を続けております(2010-2014年の平均値。出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「世界貿易投資報告:フィリピン編」他)。また、人口動態予測でも、消費者・就労者人口とも一貫して増え続ける予想(出典:総務省統計局「世界の統計2014」2-3 世界人口・年齢構成の推移(1950~2050年))となっており、さらには、中国リスクに対応するための「中国+1(チャイナ・プラスワン)(注2)」の候補地の1つとしても注目されております。
グローバル部門では、主に国内外の大手電機、車載機器メーカーを主要顧客に、当社子会社であるAdvanced World Systems, Inc. 及びAdvanced World Solutions, Inc. (以下、「フィリピン子会社」という。)を活用したシステム開発業務を行っており、システム開発業界の競合の激化、国際化という業界環境の流れの中で、低コスト、高品質を同時に実現すべくサービスを提供し続け、フィリピン子会社は、2006年1月に当社の子会社となる以前の、前身であるAPTi Philippines, Inc.が設立された1993年以来、20年以上の開発実績を積み上げております。
当社グループは、ソフトウエアの設計・開発から製品保証まで、英語・日本語のバイリンガルな環境で広範なシステム開発のサービスを行っております。日本国内の大手電機、車載機器メーカー等と取引をしている経験と実績を基に、信頼できるオフショア開発パートナーとして、確かな技術と品質を提供しております。
フィリピン子会社の活用形態は、主に①フィリピン国内における事業所において開発を行う(オフショア受託開発)、②フィリピン子会社の開発要員を当社に出向させ、そこから日本国内の顧客の開発拠点にて直接開発を行う(オンショア開発)の二形態があります。当社グループでは、顧客の個々の要望に応じてこれらの二形態の組み合わせを基礎として最適な開発形態を都度構築しております。さらに国内においては、外部の人材についても積極的に活用することを目的として、一般労働者派遣事業の免許を取得し、人材派遣業務を行っております。
フィリピン子会社の従業員は当社グループの重要な経営資源であり、フィリピン及び日本でクライアントと直接的に作業を実施することから、英語と日本語のバイリンガル能力を有するエンジニアを育成する必要があります。そのため、フィリピン子会社においては、毎年計画的にフィリピン全国の理工学系専攻新卒者の上位成績者のみを採用し、戦略的人材育成を行っております。具体的には、フィリピンのマニラとセブのそれぞれの施設に社内研修センター「AWS's Center for Technology Incubation(通称:ACTION)」を設立し、4ヶ月間の集中新人研修プログラムで日本語環境下での高度なソフトウエア開発ができる要員を養成しております。
この社内研修センター「ACTION」ではIT分野の基礎技術・知識の教育に始まり、ソフトウエア開発に関わる最新技術、ビジネススキル、さらに日本人講師による日本語講座等、5つの研修コースを設け、従業員の技術力向上を継続的に支援しております。フィリピン子会社では、高い技術力で長年、国際優良企業と協業してきた実績を基に、グローバルな市場で評価されるソリューションを創造・提供し続けた結果、e-services Philippines(注3)において2002年から大賞4回(6部門)を含む6年連続で大賞(最優秀賞)又は優秀賞を受賞し、2007年には「最優秀社内研修プログラム」を受賞しております。
また、2016年3月には第10回国際ICTフィリピン・アワード(International ICT Awards Philippines)(注4)にて「ベスト・ソフトウエア・カンパニー賞」を受賞する等、高い評価を受けております。
このように、フィリピン子会社の従業員は高い英語能力のみならず、基本的な日本語を習得しており、ソフトウエアの設計・開発から製品保証まで、英語・日本語のバイリンガルな環境で、幅広いシステムソリューションの提供が可能となっており、同業との競合において差別化を図れる重要な要素となっております。
一方、中国拠点(北京、昆山)に関しては、規模はまだ小さいものの、当社グループの主要顧客の開発拠点であることから、今後は、仕様書に基づく開発、テスト・導入等の下流工程にとどまらず、顧客の要求に基づく要件定義や基本設計等の上流工程を含めた高度化な開発に対するニーズが増えることが予想され、中国国内でのビジネスチャンスは増加するものと見込まれております。
b.エンタープライズソリューション部門
エンタープライズソリューション部門では、主に国内外の金融系を中心とした開発案件の企画、営業等を行っております。また、2015年5月に日本アイ・ビー・エム株式会社のコア・パートナーに認定されたことで、金融系に限らず、CAMSS(注5)という先進技術の習得・参画が可能となりました。これにより、当社グループの最大の経営資源であるフィリピン子会社の開発要員にプロジェクトを通じたスキルアップの機会を与えるとともに、より優秀な人材の確保が可能となります。
(注1)Go Global Company
世界的な事業活動を推進する企業。単なる事業拠点の国外展開ではなく、「世界的な規模」の視点で、経営戦略から人的資源のマネジメントを行うカンパニーを指す。
(注2)中国+1(チャイナ・プラスワン)
主に日本の製造業等が、製造拠点が中国に集中しているリスクを回避するために、新たな中核拠点として中国以外(特に、東南アジア諸国連合(ASEAN諸国))に製造拠点を持ち、そのリスクを分散するためのリスクヘッジ方法。
(注3)e-Services Philippines
2009年まで開催された、フィリピンIT産業の主要企業・団体が毎年参加する展示会・会議イベント。フィリピン貿易産業省及び国際貿易促進センター主催で行われる国内最大のIT展示会。フィリピン国内でのパートナー探しのための世界的な展示会・会議として位置付けられていた。
(注4)国際ICTフィリピン・アワード(International ICT Awards Philippines)
フィリピンを代表する情報技術団体であるIBPAP(The Information Technology and Business Process Association of the Philippines)の協力のもと、在フィリピンカナダ商工会議所によって運営されており、デザイン及び開発の側面において、ソフトウエア・カンパニーとして、その年のフィリピン国内にて最も創造的な役割を担った企業に送られる賞。評価基準としては、年間売上成長率等の定量的な側面に加え、顧客への提供サービスの多様性やコンピタンス、経営管理手法、フィリピンのICT産業への貢献度等が挙げられる。
(注5)CAMSS
現在のIT産業における成長分野であり、米国IBMが提唱している「Cloud」「Analytics」「Mobile」「Social」「Security」の頭文字をとった言葉。
(2) メディカル事業
当事業では、医療情報システムのソフトウエア商品の開発・販売、受託開発、コンサルテーションを中心としたビジネス戦略を積極的に推進する体制を整えております。
当事業の中核を担う子会社株式会社エーアイエスは、医療現場の業務効率を改善し、経営品質を高めるため、「Mightyシリーズ」製品として主に4つのソリューションシステムを開発・販売しております。なかでもレセプト(注6)点検ソフト「Mighty Checker®」は、1999年に他社に先駆けて当該機能を提供するソフトウエアの開発・販売を行ったことから、全国の多数の医療機関に採用されております。
その他、医療新領域における各種コンサルティングも行っております。
当事業の主力製品である「Mighty Checker®」シリーズのラインアップは、下記のとおりであります。
① レセプト点検ソフト「Mighty Checker®(マイティーチェッカー)」
平成21年5月8日付平成21年厚生労働省令第110号「療養給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令」により、一部例外を除き、医療機関はオンラインによるレセプトの請求が義務付けられるようになりました。審査支払機関における審査強化の動きも重なり、レセプトチェックの精度と効率を上げることは、医療機関において、経営上の重要な課題となりました。
「Mighty Checker®」シリーズでは、レセプト電算処理・レセプトオンライン請求が一般化された現在、医療機関にとって有益なツールの1つであり、院内審査(注7)における査定・返戻対策用の機能に留まらず、その後の機能強化により請求漏れのある可能性がある加算項目の指摘を行うことを可能とし、また、グラフィック機能の搭載、請求金額順点検の実現、加えて、査定・返戻データの取り込みにより査定された該当レセプトの抽出、それに基づくスムーズなデータベース修正、集計分析機能などを追加し、業界の中でもユニークで先駆的製品として供給を続けております。
「Mighty Checker®」の特徴及び導入医療機関数の推移については、下記のとおりであります。
製品名特徴
Mighty Checker® PRO Analyze
(マイティーチェッカープロアナライズ)
・医科レセプト点検ソフトウエアの上級システム
・点検結果を分析し、効率的な点検業務を提案
・査定・返戻対策に加え、レセプト点検結果を活用した、より効率的な点検結果の活用が可能
・査定返戻データ取り込みによりスムーズなデータベース修正を実現し、査定返戻の抑止を強化
Migty Checker® PRO Advance
(マイティーチェッカープロアドバンス)
・医科レセプト点検ソフトウエアの普及型システム
・病名・医薬品・医療行為の適応症を点検
・査定・返戻対策の点検(突合点検・縦覧点検・算定日チェック等)
・算定支援機能による点検(指導料等で算定できる可能性がある項目をチェック)
Mighty Checker® for ORCA(注8)
(マイティーチェッカーフォーオルカ)
・Mighty Checker® PRO Advanceが日医標準レセプトソフト「ORCA」と連携
・ORCAで入力されたデータを、Mighty Checker® PRO Advanceと同じ点検機能でスムーズに点検することが可能
Mighty Checker® DENTAL
(マイティーチェッカーデンタル)
・歯科レセプト点検ソフトウエア
・Mighty Checker® PROとの併用で医科・歯科トータルな点検が可能
Mighty Checker® Cloud
(マイティーチェッカークラウド)
・業界初となるインターネット版としての医科レセプト点検サービスの提供
・PCにアプリケーションがインストールされてなくても、サーバーへアクセスすることで、レセプト点検ソフトを利用することが可能


(単位:件)
2013年3月末2014年3月末2015年3月末2016年3月末
「Mighty Checker®」導入病院数1,5181,8412,3102,708
「Mighty Checker®」導入診療所数5,6016,4867,2238,061
合計7,1198,3279,53310,769

② オーダリングチェックソフト「Mighty QUBE® PRO(マイティーキューブプロ)」
「Mighty Checker®(マイティーチェッカー)」のデータベースを活用し、疾患と診療行為・投薬の適応性、用法用量等を処方オーダー時に点検し、不適応のもの、病名が漏れているケースへエラーを出す仕組みとして、国立大学法人東京大学と共同開発したものであり、オーダリング時の人為的な誤入力・誤操作を防ぐことで、医療事故(ヒヤリ・ハット)や査定(減額)を防止します。
③ レセプト点検ソフト+オーダリングチェック「Mighty Double®(マイティーダブル)」
①レセプト点検機能を搭載した「Mighty Checker® PRO」による「収益改善」と、②オーダー点検機能を搭載した「Mighty QUBE® PRO」による「ヒヤリ・ハット防止」をダブルでサポートすることにより、オーダーチェック情報、レセプトチェック情報を一元管理でき、医療の安全管理及びリスクマネジメント対策を実現し、総合的なチェック体制を構築することで、病院経営の健全化にも効果的であり、また、審査支払機関における審査強化に対応しております。
④ 院内物流管理システム「Mighty SPD®(マイティーエスピーディー)」
「Mighty SPD®」は、院内物流業務において必要十分な機能構成により、倉庫と部署の在庫を適正に管理することができ、「人」「モノ」「情報」の観点から病院内の物流業務の効率化を支え、医療現場の生産性向上を実現します。発注業務から入庫、出庫、在庫管理までの物流の流れをシンプルにすることで、保険請求漏れや曖昧な在庫管理を減少させることができます。また、医療機関では、「Mighty SPD®」の経営改善支援機能を活用することで、入力された使用実績をもとに、医師別・患者別・術式別の実績管理ができ、各種統計・分析機能により、経営課題の発見や病院主導のコスト管理運営等の経営改善を推進できます。
※「Mighty Checker®」「Mighty QUBE®」「Mighty Double®」「Mighty SPD®」は、株式会社エーアイエスの登録商標であります。
(注6)レセプト
患者様が受けた診療について、医療機関が市町村や健康保険組合等の公的機関に対し、保険負担分の支払いを請求する医療診療の明細書。医科・歯科の場合には「診療報酬明細書」、薬局における調剤の場合には「調剤報酬明細書」と呼ばれる。
(注7)院内審査
医療機関自らが内部で実施する自己点検業務。
(注8)ORCA(オルカ)
日本医師会が会員のために開発・提供している無料レセプトソフト。2015年12月末現在、15,250以上の施設で稼働している(出典:「ORCA PROJECT 日本医師会総合政策研究機構」ホームページ)。
事業の系統図は、次のとおりであります。