有価証券届出書(新規公開時)

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2019/08/08 15:00
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事業等のリスク

以下には、当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、事業上のリスクとして具体化する可能性は必ずしも高くないと見られる事項を含め、投資家の投資判断上重要と考
えられる事項については、投資家及び株主に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。
当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の予防及び発生の際の対応に努力する方針ですが、本株式に関する投資判断は、本項目以外の記載内容もあわせて以下の記載事項を慎重に検討の上、行われる必要が
あると考えられます。
なお、以下の本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、当社の事業又は本株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありません。
(1)セキュアクラウドシステム事業遂行上のリスク
①業界の動向について
当社の属する情報通信サービス産業は、ネットワーク化の進む今日の社会においては必要不可欠なものとなっており、近年では、情報漏洩問題対策や個人情報保護法対策としてのセキュリティ強化、モバイル端末やテレワークでの業務システム利用などを目的として、クラウド環境構築技術が活用されています。
これらの社会情勢を背景に、今後の当業界は更なる発展を遂げると考えておりますが、企業のシステム投資に対する姿勢の変化や、今後当社の予測に反して相応の市場拡大を遂げない場合は、当社の事業運営及び業績に影響を与える可能性があります。
②技術革新について
当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新の進捗が早く、それに応じて業界標準及び利用者ニーズが急速に変化します。当社はかねてより技術革新及び顧客ニーズの変化に対応すべく、積極的に最新の情報収集、技術の蓄積等を行っております。しかしながら、当社の対応力を上回る急激な技術革新が生じた場合、或いは当社が想定していない新技術が普及した場合、当社取扱製品やサービスの陳腐化・競争力の低下を引き起こし、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とのパートナー契約について
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(本社:東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館 23F)は米国市場NASDAQに上場しているCitrix Systems,Inc.社の連結決算対象法人です。
Citrix Systems,Inc.社が提供するソリューションは2017年度に年間売上高28億2千万ドルに達しており、アメリカFortune誌が監修するFortune100企業の99%及びFortune500企業の98%を含む40万社の企業や組織に採用されています。
当社は、2004年4月にシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とシトリックス・ソリューション・アドバイザー/プラチナ契約(コンサルタントまたはリセラーとして、Citrix製品の販売に関する専門知識、サービスの提供、顧客の教育、技術的な実装とサポートを提供するパートナー契約の最上位レベル)を締結して以来、同社のパートナー企業としてCitrix製品を活用したプライベートクラウド構築に注力しておりますが、その結果として、当社におけるCitrix関連ビジネスがセキュアクラウドシステム事業売上に占める割合は2018年9月期で約37%となっております。従って、同社並びに同社製品の市場における訴求力が大きく低下した場合や、同社とのパートナー契約が更新できなかった場合等には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④他社ソフトウエアの活用について
当社のセキュアクラウドシステム事業は、多数のプラットフォーム案件においてCitrix Systems,Inc.社のソフトウエアを活用した事業となっております。これは、日本進出前であった同社のメタフレーム(現VirtualApps)を当社が1998年10月より取り扱ってきた経験及び実績により、同社ソフトウエアを利用した仮想化システム構築のノウハウを当社が積み上げてきた結果であります。現在当社では、顧客ニーズに幅広く対応することを目的として、同社以外の複数社のソフトウエアを取り扱うことで、活用ソフトウエアの多様化を図っており、これらのソフトウエアを利用した仮想化システム構築実績も多数あります。しかしながら、当社が何らかの理由でCitrix Systems,Inc.社のソフトウエアを利用できなくなった場合には、当社がこれまで培ってきたノウハウを活用できなくなることに伴う競争力の低下により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤競合の状況について
当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新とともに既存技術の陳腐化が早いため、他社との差別化を図るためには高い付加価値をもった製品・サービスが求められます。
競合先が多数存在する中、プライベートクラウド構築技術・セキュリティネットワーク構築技術においては、長年クラウド構築に特化した事業を行ってきた当社ならではの、独自に蓄積した実装・コンサルティング能力、ノウハウや実績において他社に対し優位性を有していると考えておりますが、競合先の技術力等の向上により当社の競争力が大きく低下した場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑥プロジェクトの検収時期の変動あるいは収支の悪化について
当社では、顧客の検収に基づき売上を計上しております。そのため、当社はプロジェクトごとの進捗を管理し、計画どおりに売上及び利益の計上ができるように努めておりますが、プロジェクトの進捗如何では、検収時期が変更されることもあります。この場合、顧客の検収時期によっては、売上計上が事業年度を前後することで当社の売上計上時期が変動し、当社の業績に影響を与える可能性があります。
また、プロジェクトは、想定される工数を基に見積もりを作成し受注をしております。そのため、当社は顧客との認識のズレや想定工数が大幅に乖離することがないように、工数の算定をしておりますが、この算定業務の大半が顧客企業とのヒアリング等で把握したデータの内容に依存する事から、完全に事前に工数や成果を見込むことは困難であります。そのため見積もり作成時に想定されなかった不測の事態等により、工数が増加し、プロジェクトの収支が悪化する場合があり、特にそれが大規模なプロジェクトの場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑦外注管理体制について
当社が事業展開する上で、顧客の業務分析及びシステム設計からシステムの開発(プログラミング)までを一括して行っており、その一部については協力会社への外注を活用しております。当社が事業を更に推進して利益を計上するためには、システム開発を含む大規模案件の受注数を増加させることが一つの方策として考えられますが、そのためには、有用な外注先企業の確かな選定と安定的な活用が必要となります。
現在の外注管理体制としては、当社製造部門のプロジェクトマネージャーによる外注管理のもと、確かな外注先の選定を行うことができておりますが、今後外注先の選定が予定通りに進まない場合や管理体制が十分に機能しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑧顧客の機密情報管理体制について
当社は、事業を遂行する上で顧客情報の取扱いをしており、当該情報中には顧客の営業上・技術上の機密情報や個人情報(以下「機密情報等」といいます)が含まれております。当社では、機密情報等を適切に保護・管理することが重要であると認識しており、情報管理体制の整備及び従業員教育等を通じて、当社内部からの情報漏洩防止及び社外からの不正アクセス防止等に対して必要なセキュリティを施しております。また、外注先に対しても当社と同等の対策を求めており、過去に機密情報等の漏洩が起こった事実は認識しておらず、これらに起因するクレームや損害賠償請求を受けた事実もありません。しかしながら、万一、当社から機密情報等が外部に流出する事態が生じた場合には、顧客からの信用や社会的信用を喪失し、当社に対する損害賠償請求、その他責任の追及により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)エモーショナルシステム事業遂行上のリスク
①エモーショナルシステム事業について
VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)関連技術は、今後も技術革新が拡がることが見込まれますが、当社のエモーショナルシステム事業は、本格的な事業の開始以降、未だ営業損益では赤字の状態が継続しております。しかしながら、同事業は、セキュアクラウドシステム事業に概ね特化したプライベートクラウドシステム構築会社である当社が、VRという別事業を内包することで、中長期的にセキュアクラウドシステム事業と互いに補完し合う関係を構築して収益構造を安定化させること、また、今後における当社企業価値向上に寄与することを期待している事業であります。
同事業については、今後、新たな市場をさらに開拓することで早期の黒字化を目指す方針でありますが、同事業の技術の源泉となるVR/AR業界では技術革新が急速で、当社の技術が業界の技術革新に追いつかない場合や当社のコンテンツを含む4D王が一般消費者の支持を得られない場合には、同事業の事業進捗が遅れることにより、当社全体の業績向上が遅れる可能性があります。また、新技術等への対応のための開発投資やコンテンツ償却費等の支出が拡大した場合には、採算悪化による収益性の低下を招くとともに、事業継続の検討が必要になるなど、当社の事業及び業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②4D王の売上時期の変動について
当社では、4D王の販売において顧客の動作確認による検収に基づき売上を計上しております。そのため、当社は4D王個別のプロジェクト進捗を管理し、計画どおりに売上及び利益の計上ができるように努めておりますが、進捗如何では、検収時期が変更されることもあります。この場合、顧客の検収時期によっては、売上計上が事業年度を前後することで当社の売上計上時期が変動し、当社の業績に影響を与える可能性があります。
③資産評価リスクについて
エモーショナルシステム事業では、「4D王」として主にスクリーン等の本体設備および上映コンテンツを提供しておりますが、本体設備は棚卸資産もしくは有形固定資産として、上映コンテンツは無形固定資産として計上しております。棚卸資産としての本体設備は収益性の低下に基づく簿価切下げを実施すること、また、有形固定資産としての本体設備および無形固定資産としての上映コンテンツについては、採算性の悪化等に伴う減損処理を適用することで、業績に影響を与える可能性があります。
(3)全社のリスク
①当社製品・サービスの不具合等による影響について
当社が提供する製品・サービスにおいては、納品前に十分な品質管理を行い、不具合(誤作動・バグ・検収遅延等)の発生を未然に防ぐ方策を図っております。しかし、万一、当該製品・サービスにおいて、当社に責務のある原因で不具合が生じた場合、無償対応や損害賠償責任の発生、顧客からの当社に対する信頼を喪失すること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
②システム障害の影響について
当社は、コンピュータシステムのバックアップにより安定的なシステム運用、災害対策を行っておりますが、地震や水害等の大規模広域災害、火災等の地域災害等予測不可能な事由によりシステム障害が生じた場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③人材の確保について
当社の継続的な発展及び急速な技術革新に対応して、競争力のある製品及びサービスの提供を行っていくためには、優秀な人材の確保が不可欠となります。現時点では優秀な人材の採用、社内でのノウハウの共有等による人材教育により必要な人材は確保しております。更なる事業の拡大にともない、積極的に優秀な人材を確保し、育成の強化を図る方針でありますが、当社の希求する人材が十分に確保できない場合、又は、現在在職中の人材が流出するような場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④特定の人物への依存について
当社代表取締役社長で創業者でもある冨田和久は、当社設立以来代表取締役社長を務め、豊かな知識、経験を基に、経営に関わる者として当社の経営方針や経営戦略・事業戦略の決定をはじめ、当社にとって重要な役割を果たしております。また、冨田和久は当社の筆頭株主として本書提出日現在当社株式を201,000株(発行済株式総数の17.3%)所有しております。
現状において冨田和久が不測な事態を含め当社業務より離脱することは想定しておりませんが、同氏へ依存しない経営体制を整備するとともに、各分野での人材登用・育成を強化しています。未だ同氏への依存の度合いが高いと思われ、何らかの理由により同氏が現在の役割を遂行できなくなった場合や退職をした場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤知的財産権について
当社は、事業展開する上で、技術・ノウハウ・知的財産権等は重要な位置を占めるため、特許権の取得による保護を図るとともに、これらの保全管理については細心の注意を払っており、また同様に、他社の知的財産権の侵害をすることのない様、リスク管理に取り組んでおります。
現在、当社が保有している知的財産権を侵害されている、あるいは、第三者から当社が権利侵害をしている旨の通知等を受領した事実はありませんが、今後、当該事実が生じる可能性は否定できません。この場合、第三者より知的財産権の使用料請求、損害賠償請求及び差止請求が発生する可能性があり、当社の信用低下及びブランドの毀損等により、当社の事業及び業績に重要な影響を与える可能性があります。
⑥法的規制について
当社の事業運営において、現在、直接的な法的規制は存在しないと認識しておりますが、今後新たな法令等の制定や既存法令の解釈の変更等が行われる可能性があり、こうした場合に対応して、製品・サービス内容の変更や新たなコストが発生すること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑦小規模組織であることについて
当社は、2019年7月31日において、取締役5人、監査役4人、執行役員及び従業員46人(うち管理部門10人)と小規模な組織であり、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び事業内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進まなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑧配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つと位置付けております。しかしながら、当社は、現在のところ成長過程にあると考えており、経営体質の強化及び将来の事業展開のための内部留保の充実に重点を置く必要があると考えており、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。
⑨新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、当社役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として新株予約権を発行しております。これらの新株予約権による潜在株式数は本書提出日現在282,200株であり、発行済株式総数1,159,200株の24.3%に相当しており、将来的にこれらの新株予約権が行使された場合には、当社の一株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。なお、新株予約権の詳細は、後記「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2)新株予約権等の状況」をご参照ください。
⑩税務上の繰越欠損金について
当社には、第22期事業年度末において税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の業績が順調に推移することで繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
⑪資金使途に関するリスク
当社の公募増資による調達資金の使途については、人材採用費及び社内システム整備等に充当する予定です。しかしながら、外部環境等の影響により、目論見どおりに事業計画が進展せず、調達資金が上記の予定通りに使用されない可能性があります。また予定どおりに使用された場合でも、想定どおりの効果を上げることができず、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑫有利子負債への依存と金利変動の影響について
当社は、長期の運転資金やコンテンツ開発資金を金融機関からの借り入れに依存しており、2018年9月末における有利子負債残高は369,460千円、総資産額は848,878千円であり、有利子負債依存度は43.5%となっております。なお、有利子負債残高は長期借入金(1年以内に返済予定のものを含む)の合計額です。当面、金融当局の巧みなかじ取りによりわが国の長短の金利は低水準を維持すると予測しておりますが、その動向次第で当社の経営成績等に影響が及ぶ可能性があります。
⑬ロックアップについて
当社の株主のうち、当社の役職員(執行役員を含む。)及び代表取締役社長の親族は、上場日(当日を含む。)後180日目までの期間のロックアップの合意を行っております。この対象となる株式は、本書提出日現在、顕在株436,600株及び潜在株256,000株であります(ただし、引受人の買取引受による売出し、オーバーアロットメントによる売出しのために当社株式を貸し渡すこと等は除くとしており、その除かれる株式数は顕在株90,000株であることから、本書提出日現在の顕在株のロックアップ株式数は346,600株となります。)。
また、当社の株主のうち、加賀電子株式会社、株式会社ユニリタ、日本アジア投資株式会社、山代ガス株式会社、株式会社ゼネラルアサヒ、イメージ情報開発株式会社、K&Pパートナーズ1号投資事業有限責任組合、株式会社E3、みやざき未来応援ファンド投資事業有限責任組合及び株式会社バリュー・アップは、上場日(当日を含む。)後90日目までの期間のロックアップの合意を行っております(ただし、当社普通株式の売却価格が本募集等における発行価格又は売出価格の1.5倍以上であって、主幹事会社を通して行う証券会員制法人福岡証券取引所での売却等を除く。)。この対象となる株式は、本書提出日現在、顕在株380,000株であります。
上記のそれぞれのロックアップは、主幹事会社の事前の書面による同意により解除されることがあります。また、それぞれのロックアップ期間後又はロックアップ解除後に、上記の株主がその保有株式を一斉に売却することにより、短期的に需給バランスが悪化し、当社株式の株価形成に影響を及ぼす可能性があります。