有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/20 15:00
【資料】
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【項目】
111項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しておりますが、当社グループに関するすべてのリスクを網羅するものではございません。
なお、以下の将来に関する記載事項は、特に断りがない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 利用者の減少について
当社グループの主要な事業である保育事業及び介護事業は、国内の居住者を対象とした事業であるため、国内の人口や社会構造、家族形態、労働需給、ライフスタイルの変化等に伴い利用者の増減が生ずる事業です。
今後、国内においては少子化及び人口減少が見込まれますが、労働人口の確保のために、保育及び介護施設の利用率が高まり、結果として保育及び介護の市場規模は拡大することが予想されております。また、国内の人口減少に伴い、都市部への人口集約化が見込まれております。このような状況において、都市部については地方からの人口流入が継続し、保育及び介護のニーズは高い水準が継続すると見込まれることから、当社グループの保育事業及び介護事業は東京都23区、千葉県内、大阪市内に集中して施設展開をしております。
しかしながら、今後施設展開をしている地域において、想定していない大きな人口減少や社会構造の変化等が生じた場合は、施設利用者が減少し、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(2) 国や自治体による方針の変更や関連法規制等の改定等について
国による官業の民営化の方針に伴い、サービスの向上や費用削減を目的に、各地方自治体で保育所の民営化が進められております。株式会社も認可保育園の運営主体として認められるようになり、2015年4月には「子ども・子育て支援新制度」が施行され、国及び自治体は認可保育園の開設費用について補助金を拡充する等、待機児童解消に向けた様々な支援策を実施しております。しかしながら、今後、国や自治体の方針に変化が生じ、補助金の削減や制度の廃止等、株式会社による認可保育園の開設ならびに既存の公立保育所の民営化が推進されなくなった場合、当社グループにおける保育事業の拡大が止まり、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
また、介護事業は介護保険法などをはじめとする各種関連法令改定によって影響を受ける事業であり、介護保険制度は定期的な見直し改定が行われております。今後、介護保険制度の改定により報酬引き下げ等の事象が発生した場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(3) 許認可等について
当社グループは、保育事業及び介護事業において、児童福祉法及び介護保険法等に基づき、認可保育園、小規模保育施設、放課後等デイサービス、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム等を運営しております。
いずれの事業も許認可権限、指定権限を持つ行政機関へ、施設開設前に設置の申請を行い、審査を経た上で許認可や指定が付与されますが、施設の運営が著しく適正を欠き、その後も運営の適正を期し難いと認められるときは施設運営の停止、指摘の公表措置、許認可等の取消といった行政処分が下される場合があります。本書提出日現在において、当社グループの事業において運営している施設に許認可取消、指定取消事由は発生しておりませんが、今後、何らかの原因により許認可や指定が行政機関から取消された場合等には、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(4) 人材の確保及び育成について
当社グループでは、新規施設の増加に伴い、保育士、児童指導員や介護福祉士などの資格や要件を満たした人材の確保と育成が必要となっております。そのため、当社グループでは、採用担当の人員を増員し、幅広い採用活動を行いながらキャリアプランに沿った研修を年度を通して行い、人材の育成に取り組んでおります。しかしながら、その採用と育成が施設開設の速度に対応できない場合には、開設計画に遅れが生じ、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(5) 新たに保育所等の施設を開設する場合の経営成績に対する影響について
新たに保育所等の施設を開設する場合、一般的に下記の影響が生ずる傾向があります。
営業損益:開設時においては、高年齢クラス(3歳~5歳児等)で定員を満たさず、開設初年度からの数年間は稼働率が低く売上が低位な傾向にあります。一方で、施設定員数に応じた保育士配置が必要であることや、開設準備のための従業員の新規採用コストや研修費、消耗品費並びに減価償却費といった経費が発生することから、施設開設後一定期間は赤字となる傾向にあります。その後、低年齢クラスの児童が進級を重ねることにより、稼働率が向上し売上が増加することで、通常開設後2~3年目以降に黒字化する傾向があります。
経常損益:開設に伴う設備投資に対して、所管する自治体から設備補助金が交付される場合があります。その場合、開設が完了したことに伴い当該設備補助金の支給が決定され、営業外収益に計上されます。補助金制度は各自治体が独自に設けており、支給条件も各様となっております。
なお、保育所の開設は4月に集中することが多いため、当社第2四半期において上記の影響が生じやすい傾向にあります。また、開設予定エリアにおける用地及び物件の確保が困難となった場合や、必要とされる人員を確保できなかった場合、地域住民からの反対などにより開設が困難となった場合は、開設計画の見直し等により当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(6) 大規模な災害について
当社グループでは、東京都23区、千葉県内、大阪市内を中心に保育施設及び介護施設を有しております。これらの地域において大規模な災害が発生した場合、施設が地震や津波、火災、台風、洪水などの被害を受け、利用者や従業員、建物などに被害が及ぶ可能性があります。その場合は、設備の損害、保育士や介護士の不足、社会の混乱による保育や介護需要の減退等が発生し、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(7) 有利子負債への依存について
当社グループでは、保育施設等の新規開設に関する設備資金等は、主に金融機関からの借入により調達しております。その結果、総資産に占める有利子負債の割合は、2019年9月30日現在において、70.7%と高い水準にあります。今後、急激な金利変動など金融情勢に変化が生じ、金利負担が増加した場合や、計画どおりの資金調達が出来ず、新たな保育施設等が計画どおりに開設できなくなった場合等には、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(8) 個人情報の保護について
当社グループの保育施設及び介護施設においては、事業の性質上、利用者をはじめ、保護者や家族の氏名、住所及び職業などの情報を取得し保持しております。これら顧客の個人情報の取扱いについては厳重に管理し、万全を期しておりますが、万一漏洩するようなことがあった場合、顧客からだけでなく、広く社会的な信用を失墜することとなり、施設の許認可及び指定に影響が出るなど、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(9) 保育市場の縮小がICT事業に与える影響について
当社グループのICT事業においては、主に保育事業者を対象とした保育園運営管理システムの販売等を行っております。したがって、保育市場が縮小した場合は、当該システムの需要が減退し売上高が減少するなどして、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(10) 感染症の流行について
当社グループでは、全ての利用者に安全なサービスを提供するため、感染症防止のための衛生管理を徹底しております。しかしながら、インフルエンザやノロウィルスなどの感染症が流行した場合、従業員の欠勤等により、一時的に施設運営が困難になる可能性がある他、当社グループのレピュテーション低下が生じ、利用者が減少する可能性があります。その場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(11) 創業者への依存について
当社の代表取締役である貞松成は、株式会社global bridgeの創業者であり、当社グループ事業の創業者です。同氏は保育・介護業界に精通しており、経営戦略等の策定において重要な役割を果たしております。当社グループでは、役員等への権限移譲やコーポレート・ガバナンス体制の構築により、同氏に過度に依存しない経営体制を整備しておりますが、何らかの事情により同氏が当社グループの業務を継続することが困難になった場合は、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(12) 季節変動(保育施設の利用者の一時的な減少)について
保育事業においては、毎年4月になると5歳児等クラスが小学校へ進級する一方、新規0歳児は自治体毎に定める入園可能月齢を満たした後に入園することから、児童数が一時的に減少する傾向があります。このため、上半期は下半期と比較して児童数・施設稼働率が減少する傾向があります。
(13) 食の安全性について
当社グループでは、保育施設・介護施設において利用者に対し食事を提供しております。当社グループでは、食品衛生法等に基づき厳正な食材管理及び衛生管理を実施して、食中毒、賞味期限切れ食材の使用、異物混入などの事故を起こさないように努力しており、これまで業績に多大な影響を与えるような事故等は発生しておりません。しかしながら、万が一何らかの原因により食の安全に関する重大な問題が発生した場合は、喫食者に対する補償、レピュテーションの低下や行政による運営停止措置等により、施設運営に支障をきたし、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(14) 運営施設における事故等について
当社グループは、施設運営において利用者の安全を確保する体制を整備しており、これまで業績に多大な影響を与えるような事故等は発生しておりません。しかしながら、万が一運営施設において重大な事故等が発生し、所管する自治体等からの事業停止命令を受けた場合や、保護者等から損害賠償請求を受けた場合、ならびに風評被害等により利用者が大幅に減少した場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(15) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社グループは、業績向上への意欲を高めることを目的として、当社グループの役員及び従業員に対して、ストック・オプションによる新株予約権の発行を行っております。また今後においてもストック・オプション制度を活用することが考えられることから、現在付与している新株予約権に加え、将来的に付与される新株予約権について行使がなされた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。本書提出日現在これらのストック・オプションによる潜在株式数は315,392株であり、発行済株式総数の13.18%に相当しております。
(16) 固定資産の減損に関するリスクについて
当社グループは、主に保育事業及び介護事業において施設における建物や設備等の固定資産を保有しております。今後業績が著しく悪化し、投資回収が困難となった場合や、施設の撤退を決定した場合には減損処理が必要となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(17) 親会社等との関係について
株式会社アニヴェルセルHOLDINGSは、本書提出日現在、当社の発行済株式総数の44.48%を保有しております。同社は当社大株主の青木拡憲氏の資産管理会社であり、同氏の保有分を含めると当社の発行済株式総数の69.55%を保有しております。このため同社は当社の親会社等に該当いたしますが、当社は自ら経営責任を負って独立した経営を行っており、同社の承認を必要とする事項は存在せず、また取引関係及び人的関係はありません。
しかしながら、同社は今後も当社株式を継続的に保有する方針であり、同社の方針に変更が生じた場合、当社の事業活動に影響を与える可能性があります。
(18) 配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要施策の一つと認識しております。現時点では、当社は成長過程にあると考えており、事業拡大に向けた積極的な設備投資や財務体質の強化等を行うことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。このことから、創業以来配当を実施しておらず、当面はこの方針を継続することとしております。
将来的には、各事業年度の経営成績や財政状態を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針ですが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。