有価証券報告書-第7期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 11:14
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145項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスクが顕在化する可能性を認識した上で、顕在化の回避及び顕在化した場合の影響の極小化に努めております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅したものではありません。当社グループが認識していない、予見し難い、または重要ではないと考えるリスク及び不確定要因も当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営環境に関するリスク
①経済情勢
当社グループは、事業拠点を国内外に多数配し、グローバルに事業活動を行っております。そのため、当社グループの事業及び業績は、事業を展開する国及び地域の景気、市場金利の変動、自動車の燃料価格の変動等の経済情勢の影響を受けます。
とりわけ、当社グループではニュージーランド向け中古自動車輸出販売が事業の中心となっており、当連結会計年度における当社グループのニュージーランドでの売上高は全体の約9割を占めることから、同国の経済情勢には特に大きな影響を受けます。
当社グループは、市場の多角化によって特定の国や地域の経済情勢の影響を低減すべく、現在、オーストラリアにおける事業の拡大に注力しております。
②産業構造の変化及び技術革新
自動車の売買において、ディーラーを介する従来の商取引に代わって、消費者間の電子取引等の新たなチャネルによる商取引が拡大した場合、当社グループの主要な取引先であるディーラー向けの売上が減少する可能性があります。
また、自動運転技術をはじめとした自動車IT技術及び電気自動車をはじめとしたエネルギー技術の急速な進化と普及により、従来型の中古自動車の商品価値が低下する可能性があります。
当社グループは、このような変化を新たな収益機会として捉える一方、変化の影響を低減すべく事業の多角化に積極的に取り組んでおります。
③大規模自然災害及び偶発的事故等
地震、津波、洪水、火災等の大規模自然災害またはテロ等の偶発的事故によって、当社グループの事業拠点もしくは設備が毀損した場合、社会インフラが機能しなくなった場合、また事業拠点の操業人員が確保できなくなった場合、事業の継続が困難になる可能性があります。
当社グループでは、大規模自然災害及び偶発的事故に対しては、役職員の安全を最優先として適切な対応をとることを基本としつつ、事業への影響を最小限にとどめ、安全に事業を継続し、もしくは事業を早期に復旧するために、これらの事態を想定した事業継続計画(BCP)を策定しております。
④感染症の流行
当社グループは、様々な国及び地域で業務に従事する役職員及び家族の健康と安全を最優先に考えております。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しては、職場の衛生管理、出社・移動の制限、役職員に対する感染症予防策の周知徹底等を実施し、感染防止に努めております。
当社グループの主要市場であるニュージーランドは、本書提出日現在、警戒レベルは最も低い1であり、市民生活や経済活動をほぼ正常化しております。
しかしながら、今後、このような感染症の感染拡大防止もしくは予防のため、国内外における経済活動や市民生活に制約、制限等が課された結果、経済が停滞した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤外国為替及び市場金利
当社グループの当連結会計年度売上高に占める海外売上高比率は9割を超えております。このため、当社グループでは、売上規模と販売地域に応じて適切な為替ヘッジを行っております。また、海外グループ会社の売上、費用、資産及び負債をはじめ現地通貨建の項目は、連結財務諸表作成の際に円換算しており、為替の変動の影響を受けます。
一方、当社グループは事業の拡大に向けた資金を金融機関からの借入によって調達しております。その多くが変動金利であるため、経済金融情勢により市場金利が著しく上昇した場合や、当社グループの財政状態が悪化して信用力が低下した場合には、資金調達コストが上昇する可能性があります。また、サービス事業における自動車ローンでは、契約締結時の市場金利の水準をもとに適用利率が固定金利で設定されるため、市場金利の水準が急激に上昇すると利鞘が縮小し、収益性が悪化する可能性があります。
為替の変動や市場金利の著しい上昇の影響を完全に排除することは困難ではありますが、為替ヘッジ、または外貨建て資産や負債等の総合的な運用管理により、影響を最小化するよう努めております。
⑥中古自動車の需給
生活様式及び社会慣行の変化や、自動車性能の向上に伴うユーザーの自動車保有期間の長期化等により、自動車の保有台数が減少し、購入頻度が低下する可能性があります。
また、当社グループの主要市場であるニュージーランドでは、移民の増加が中古自動車に対する安定的な需要を支える要因の一つとなってきましたが、将来、移民の減少等により、購買層が減少する可能性があります。
一方、当社グループは、商品である中古自動車のほとんどを日本国内のオートオークションにて仕入れております。何らかの要因でオートオークションの出品台数が減少した場合や、仕入れ競争が激化した場合は、当社グループが希望する中古自動車を仕入れるのが困難になる可能性があります。
⑦海上運賃
当社グループは、自らは船舶等の輸送手段を保有せず、自動車の輸送は実運送業者(船会社、自動車運送業者等)に委託しております。燃油価格の上昇や船舶需給の逼迫等により、実運送業者の運賃が上昇する場合には、当社グループの販売価格に転嫁することによって収益の減少を回避することを原則としております。
(2)事業活動に関するリスク
①競合
中古自動車輸出は、市場の拡大に伴って同業他社との競争が年々激しくなっております。当社グループの事業は、特許権、商標権その他の知的財産権によって保護されるものではなく、比較的容易とされる古物営業法に基づく許可を取得すれば、参入はそれほど難しくありません。当社グループの主要市場であるニュージーランド、さらにはオーストラリアにおいても、今後、有力企業及び同業他社の新規参入が増加する可能性があります。その結果、優良な中古自動車をめぐる仕入れ競争、販売先の争奪及び輸送手段の確保における競争等が激しさを増す可能性があります。
また、検査事業は、後記のとおり、認証や認可に基づいて行っておりますが、これらの認証や認可の取得者が大きく増加した場合、激しい競争に直面することになります。
当社グループは、サービス内容の差別化を図ることで優位性を維持、強化するよう努めております。
②新規事業展開
当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を進めるため、新たな事業を創出し、拡大していく考えであります。また、新たな市場も開拓してまいります。個々の事案では、グループの投資規律に沿って検討を重ね、所定の審議プロセスを経て決定し、実行後はモニタリングを励行し、継続的にレビューを行います。
しかしながら、想定外の事業環境の変化や新たな事業リスクの顕在化により、計画通りの収益を達成できず、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③海上輸送
当連結会計年度における海上輸送仕入高(※)において主要船社一社が占める割合は7割程度となっております。同社の事情によっては、配送スケジュールや船腹量が急遽変更され、予定していた輸送が困難となる可能性があります。このため、同社との取引を確保する営業努力と同時に、他の船会社との取引関係強化に努めております。
一方、当社グループは、横浜港、名古屋港等の港湾施設及び仕向地先の港湾施設を利用しております。これらの施設が自然災害や事故、その他の何らかの事由により使用不能となった場合は車両の輸出が困難になり、代替地に転換するにも追加費用が生じる可能性があります。このような事態が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
※ 海上輸送仕入高
NVOCCとして海上輸送を行うために生じる船舶の積載スペースの賃借費用
④検査品質
当社グループは、日本においては、国際植物防疫条約 (※1)に準拠し、ニュージーランド政府の認定機関であるInternational Accreditation New Zealand (IANZ)よりISO/IEC17020(※2)の認証を取得して中古自動車の輸出前検査を実施しております。またニュージーランドにおいては、同国政府認可のもと、輸入車用の車体識別番号(VIN:Vehicle Identification Number)の付与、自動車検査等を行っております。
当社グループは、検査工程の改善、設備更新、協力会社との連携強化等により、常に検査業務における品質向上に努めております。
しかしながら、想定外の病害虫の発生や想定を超える病虫害の蔓延をはじめ、予測し得ない事態が発生した場合には、その対処に多大な体力と費用を要することとなり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
※1 国際植物防疫条約(IPPC)
植物に有害な病害虫の侵入・蔓延の防止に向けて、各国間で共同かつ有効な措置を確保するための条約
※2 ISO/IEC17020
国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)及び国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)が定めた、検査を行う検査機関の能力に係る基準を規定した国際規格
⑤取引先の信用
当社グループは、国内外で数多くの企業と取引を行っております。取引先の財務情報をもとに、事業内容、取引履歴、担保価値等を勘案し、さらには一定の前提条件を折り込んで貸倒引当金を計上することで、取引先の破綻に伴う損失の最小化を図っております。
また、コンプライアンス重視の基本方針のもと、テロ資金供与対策及びマネーロンダリング防止を徹底し、反社会的勢力の該当可否も含めて、取引先としての適格性を適時適切に判断しております。
⑥風評及び風説
マスコミ報道やインターネット等の情報媒体によって、当社グループの事業及び役職員に係る否定的な内容もしくは事実と異なる内容の報道がなされたり、誹謗中傷等の風評及び風説が流布したりすることがあります。
当社グループは、このような報道、風評及び風説に対しては、専門家のアドバイスも踏まえて適時適切に対応することで、影響を極小化するよう努めております。
⑦人材の確保及び育成
高度な専門知識と豊富な経験を持ち合わせた優秀な人材の確保と育成は、当社グループの重要な経営課題であると認識しております。とりわけ貿易事業では、仕入れにあたって個々の中古自動車の品質が顧客の要望に応える水準であるかを的確にチェックし、適正価格で仕入れることができる優秀なバイヤーを多数必要とします。また、検査事業では、検査に関係する法規制、国際規格、基準等の知見を有する優秀な検査員を多数必要とします。
そのため当社グループでは、人材の採用チャネルを拡充し、就業環境の改善により定着化を促進し、人材育成プログラムの充実を図ることで優秀な人材の確保と育成に努めております。
(3)法規制等に関するリスク
①関係法令
中古自動車の輸出は、外国為替及び外国貿易法ならびに輸出貿易管理令等の規制の対象となっております。輸出地域、輸出貨物の用途及び需要者の要件によっては経済産業大臣の輸出許可が必要となる場合もあります。また、当社グループの事業は、主に下記の法令等の適用対象となっております。
当社グループは、コンプライアンスを経営の基本的な方針と位置付け、役職員は社会からの期待に沿うよう、公平かつ公正な業務執行に努めることとしており、日本をはじめ事業を展開する国及び地域の法令等を遵守して事業を行っております。
しかしながら、法規制の改廃や新設等により規制内容が強化された場合や法規制の解釈及び運用が変更された場合、または、過失やその他の事情によりこれらに違反し、刑事罰、行政処分、許認可の取消等を受けて当社グループの事業が制限された場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(貿易)
古物営業法
目的及び内容取引される古物の中に窃盗の被害品等が混在するおそれがあることから、盗品等の売買の防止、被害品の早期発見により窃盗その他の犯罪を防止し、被害を迅速に回復することを目的とする法律
監督官庁等三重県公安委員会
愛知県公安委員会
神奈川県公安委員会
関連する許認可等の内容古物商許可
(三重県公安委員会 第551320077300号)
(愛知県公安委員会 第5411600003000号)
(神奈川県公安委員会 第452550006906号)
更新期限期限の定め無し
取消事由古物営業法その他関連する法令等もしくはこれに基づく処分に違反した場合(古物営業法第24条)

(物流)
貨物利用運送事業法
目的及び内容貨物利用運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、貨物利用運送事業の健全な発達を図ると共に、貨物の流通の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応した貨物の運送サービスの円滑な提供を確保し、もって利用者の利益の保護及びその利便の増進に寄与することを目的とする法律
監督官庁等国土交通省
関連する許認可等の内容許可書 (国総国物第187号)
更新期限期限の定め無し
取消事由貨物利用運送事業法その他関連する法令等もしくはこれに基づく処分に違反した場合(貨物利用運送事業法第33条)

(サービス)
金融サービス提供者(登録及び紛争解決)法(Financial Service Providers(Registration and Dispute Resolution)Act 2008)
目的及び内容ニュージーランドにおいて公正、効率的かつ平明な金融市場の促成を目的とした法律
監督官庁等ニュージーランド ビジネス・イノベーション・雇用省
(Ministry of Business,Innovation and Employment,New Zealand Government)
関連する許認可等の内容金融サービス提供者登録(FSPR:Financial Service Provider Register)
更新期限2021年11月1日(1年ごとの更新)
取消事由金融サービス提供者(登録及び紛争解決)法その他関連する法令等もしくはこれに基づく処分に違反した場合(金融サービス提供者(登録及び紛争解決)法第56条(56 Withdrawal of approval))

自動車販売法(Motor Vehicle Sales Act 2003)
目的及び内容ニュージーランドにおける自動車販売に関する消費者保護を目的とした法律
監督官庁等ニュージーランド ビジネス・イノベーション・雇用省
(Ministry of Business,Innovation and Employment,New Zealand Government)
関連する許認可等の内容自動車取引業者登録(MVTR:Motor Vehicle Trader Registration)
更新期限2022年1月24日(1年ごとの更新)
取消事由規制が課す義務(注)に違反して車両を売った場合

(注)オドメーターの改竄や抵当権の設定等の車両と売主についての正確な情報の公開義務
(検査)
輸出貨物船積前検査(PSI;Pre-Shipment Inspection)
目的及び内容輸出貨物の船積み前検査に係る許可
監督官庁等ニュージーランド 第一次産業省(Ministry for Primary Industries(MPI))
関連する許認可等の内容輸出貨物の船積み前検査に係る許可
更新期限期限の定め無し
取消事由重大な検査基準の違反のためMPIによる監査が増加または重大な検査基準の違反が継続した場合

車検基準(Land Transport Rule:Vehicle Standards Compliance Rule 2002)
目的及び内容ニュージーランドにおける車検基準
監督官庁等ニュージーランド 交通省(Ministry of Transport,New Zealand Government)
関連する許認可等の内容指名証(Deed of Appointment)
更新期限(※)
取消事由重大な検査基準の違反により、ニュージーランド 運輸庁(NZTA:New Zealand Transport Agency)による監査が増加または重大な検査基準の違反が継続した場合

(※)JEVIC NZ Limitedの更新期限は2026年6月30日、Vehicle Inspection New Zealand Limitedの更新期限は2026年2月28日であります。
②訴訟その他法的手続き
当社グループは、前記の通り、コンプライアンスを経営の基本的な方針と位置付けており、役職員には随時、コンプライアンスの徹底を図っております。その結果、常に関係法令、社内規律等を遵守して業務が遂行されております。また、個別事案においては顧問弁護士ほか社外の専門家の指導やアドバイスを適宜受けながら、適切に対処しております。本書提出日現在、当社グループに重大な影響を及ぼす訴訟その他法的手続きは提起されておりません。
しかしながら、将来、当社グループの事業活動に関連して重要な訴訟その他法的手続きが発生し、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③移転価格税制等の多国間取引に伴う税務
当社のグループ会社間取引においては、会計監査人ほか社外の専門家の指導やアドバイスを適宜受けながら、国際税務の観点から事前の調査を綿密に行い、二重課税や追徴課税等のリスクの回避に努めております。
しかしながら、各国の税務当局との間で見解の相違が生じ、取引価格に係る移転価格税制上の指摘や源泉徴収の必要性等の指摘を受ける可能性や、政府間協議が不調に終わり二重課税及び追徴課税を受ける可能性があります。このような事態が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)情報セキュリティに関するリスク
①情報システム
当社グループは、業務の主要な部分を情報システムに依存しております。情報通信技術が日進月歩で発達する中で、事業や組織の発展と社会の変化に合わせて、情報セキュリティの強化に継続的に取り組んでおります。
しかしながら、当社グループが運用している情報システムにおいて、人為的ミス、事故、火災、地震等の自然災害、ハードウェアもしくはソフトウェアの不具合、コンピュータウィルスの感染、公衆回線等の通信ネットワークの障害、電力供給の障害、その他予期せぬ事象が発生した場合には、当社グループの業務運営に支障を来すだけでなく、サービスの質・量の劣化を引き起こすことにより、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②情報資産
当社グループは、事業活動を通じて取引先の機密情報もしくは個人情報を入手することがあります。また、当社グループ自身の機密情報及び個人情報も大量に保有しております。これらの情報資産は、不正アクセスやサイバー攻撃等によって漏洩、紛失、データの破壊といった危機に常に晒されています。
当社グループでは、情報資産を様々な脅威から保護し、適正に取り扱うために「情報セキュリティポリシー」及び「情報セキュリティ管理規程」を制定しております。役職員に対しては情報セキュリティに係る教育及び啓発を随時実施することで意識の向上を促し、厳格な情報管理を励行しております。
しかしながら、当社グループの情報資産において、不測の事態により漏洩、紛失、データの破壊等が発生した場合には、当社グループの事業活動に支障を来すだけでなく、取引先をはじめとする第三者に甚大な被害を及ぼす可能性があります。当社グループに対する社会的信用が毀損し、巨額の補償負担が生じることにもなります。このような事態が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。