有価証券報告書-第8期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/23 16:32
【資料】
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【項目】
120項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
人生は「ある日」の積み重ねでできています。そして住宅を持つ日は、お客さまにとってかけがえのない「ある日」。当社グループは、住み替える人々に必要なさまざまなサービスと商品を、全国の店舗をはじめとする多様なチャネルを通じご提供することで、お客さまの大切な「ある日」が最高のものとなるようにお手伝いします。
お客さまにとって本当に住みやすい街やライフスタイルに合った家のご紹介、不動産売買のお手伝い、さまざまな暮らしのサービスが付いた住宅ローンなど、住み替えに必要なサービスと商品をワンストップでご提供します。
(2)中期的な経営戦略
新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」)の拡大は、日本社会における働き方の意識を変え、都心から郊外、マンションから戸建など、住環境に求めるニーズの大きな転換点となりました。このような住環境ニーズの大きな変化を捉え、当社グループは、2022年3月期から2026年3月期までの5年間を対象とする「中期経営計画2021」を策定し、2021年5月に公表いたしました。
これまでの「住宅ローンカンパニー」からお客さまをワンストップでフルサポートする総合的な「住み替えカンパニー」への進化を目指し、既存の住宅ローン事業に加えて、不動産事業並びに住み替えに関するコンシューマーサービス事業を本格的にスタートいたしました。住宅ローンを核として、お客さま一人ひとりのライフスタイルや価値観に合った住みやすい街の提案から、住み替え時や住み替え後の暮らしまで、ライフステージに合わせたさまざまな商品・サービスをご提供するために、下記の取組みを行います。
①住宅ローン事業
多様化するニーズに対応し、お客さまの住み替えをサポートするため、商品ラインアップの拡充、全国への地域支社への展開をはじめとした販売チャネルの強化に加え、デジタルトランスフォーメーション(以下、「DX」)の加速によるお客さまの利便性の向上とともにオペレーションや店舗業務の効率化を推進しています。
また、新規事業である不動産事業との連携を進めることで、お客さまの住み替えの上流工程からサポートできる体制を整え、更なる事業成長を目指します。
②不動産事業
人生のさまざまなライフステージで住み替えを希望するお客さまを、ご検討の初期段階からお手伝いします。一人ひとりのライフスタイルや価値観に合った本当に住みやすい街を提案するWebサービス「TownU(タウニュー)」の提供を2021年11月に開始しました。今後、同サービスに物件情報の掲載などの機能拡充を行ってまいります。物件購入・売却、住宅ローンなどの住み替えについてのコンサルティング業務を行う住み替えコンシェルジュでは、TownUとの連携強化、外部サービスとの連携を増やすことで、住み替えを希望するお客さまの流入を増強するなど事業基盤の強化に取り組んでまいります。買取再販事業では、堅調な需要を背景に事業拡大期と捉え、仕入・販売エリアの拡大を推進してまいります。
③コンシューマーサービス事業
当社の住宅ローンをお申し込みいただいたお客さまに対し、お得な引越しや生活インフラなど、住宅購入時や購入後の新生活に必要な優待サービスをご提供することで、住宅ローン事業や不動産事業へのシナジーを実現してまいります。
(参考)住み替えカンパニーへの進化 -2022年度以降展望-
各機能間連携を進め、街・家探し~住宅購入~住宅ローンまでの繋がりを強化し、住宅ローンに繋げると共に各事業の成長を通じ、住み替えカンパニーとしての成長基盤の確立を目指します。
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(3)目標とする経営指標
中期経営計画2021における財務目標は、次のとおりであります。
指標2022年3月期(実績)2026年3月期
営業収益251億円610億円
税引前利益61億円170億円
住宅ローン新規借入実行件数2.0万件5.3万件

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当面の住宅市場は、昨今のテレワークの普及などライフスタイルの変化を踏まえ、より快適な住環境を求める傾向は続いており、住宅取得の意欲は底堅く推移することが見込まれます。感染症やウクライナ情勢などの影響による原油価格、建築資材の高騰等による物件価格の高止まり、更に金利が上昇した場合に購入検討の見送りが発生する懸念は残るものの、中~高所得者層を中心に住宅需要は底堅く推移すると予想しています。
やや中期的には、地方から大都市圏への人口流入、ライフステージ・ライフスタイルに合わせた住み替え、単身世帯の増加等を背景とした住宅需要の活性化が予想されます。また、国の中古物件流通促進政策を背景とした中古物件流通量の増加等、住宅ローン市場において引き続き成長が見込める領域(潜在マーケット)が存在すると想定されます。
上記環境を踏まえたうえで、複数の切り口から対処すべき課題について記載します。
①競合他社の状況と商品ラインアップ
住宅ローン市場においては、変動金利商品を提供する大小の銀行が全住宅ローンの80%を超える市場を占有し、特に三大都市圏における競争が激化しています。銀行による積極的な貸出が行われた一方、フラット35市場については、感染症の長期化による就業不安や物件価格の高騰などから利用顧客層の購入見送りなどの影響が見られました。外部環境の変化に合わせた商品ラインアップの拡充に加え、新たな顧客層や不動産事業者等への営業基盤強化等が課題であると認識しています。
当社グループは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している全期間固定金利商品で、従来から提供する「ARUHIフラット35」(フラット35買取型)に加え、当社独自の全期間固定金利商品である「ARUHIスーパーフラット」(フラット35保証型)を市場に投入・拡大することにより、固定金利市場の拡大を図っています。「ARUHIスーパーフラット」シリーズは全体の実行件数を押し上げる原動力となっており、2022年3月期のフラット35の実行件数(借換を含む)シェアは27.3%となり、12年連続で第1位(注)となりました。
変動金利商品においては、固定と変動の金利差を背景に銀行の積極的な融資スタンスが継続すると予想されることから、ネット銀行の変動金利商品の拡販やオリジナル変動金利商品の拡充により、市場規模の大きな分野に参入し、住宅ローン事業の更なる拡大を図っています。
今後も2022年5月に商品改定を行った「ARUHIスーパー40」のような毎月の返済額を抑える超長期住宅ローンの導入をはじめとして、外部環境の変化に合わせた商品ラインアップの拡充に引き続き取り組んでまいります。
(注)取扱全金融機関のうち借換を含むフラット35実行件数(当社調べ)
②販売チャネル及び営業体制
当社グループは、FC店舗、直営店舗、直販ホールセール営業や、来店不要で手続きが可能な非対面チャネルなど、様々な販売チャネルを拡大して提供することで、より大きな市場により効率よくアクセス可能な体制を整備してまいりました。足元の外部環境の変化を踏まえ、今後は、当社の強みである店舗ネットワークにおける業務の更なる効率化やオンラインチャネルとのハイブリッド化、店舗の営業活動や接客スキルの平準化や向上を目的としたデジタル営業ツールの拡充など、DXを加速させ、お客さまの多様化するニーズへの対応に引き続き取り組んでまいります。また、2021年4月1日付で営業体制を再編し、従来のFC店舗の支援・管理機能と直営店舗の営業機能を一本化することで、より高度かつ機動的な営業戦略の策定・遂行を図るとともに、全国に支社を設立しFC店舗と連携した大手不動産事業者開拓やFC店舗へのきめ細かいサポートなど、地域密着型マーケティングの強化を目指してまいります。
一方、適正な店舗運営の強化に取り組む上で、FC店舗を含む人材の安定的な確保、研修などの教育制度による能力向上及びコンプライアンス体制の強化が課題であると認識しており、こうした営業体制の再編により、店舗チャネルの戦略的な運営を従来以上に推し進め、販売体制とコンプライアンス体制の強化に継続的に取り組んでまいります。
③オペレーション体制
当社グループは、住宅ローン業務において、OCR(Optical Character Recognition)やRPA(Robotic Process Automation)、AI等の最先端テクノロジーを活かして、お客さまの利便性と営業及び事務効率の向上への取組みを加速させています。また、審査プロセスの強化・AIを活用した住宅ローン不適正利用検知システム「ARUHI ホークアイ」を導入するなど、住宅ローンの不適正利用の予防に取り組んでおります。今後も引き続きテクノロジー活用領域の拡張を行い、事務を極小化した新型店舗の開発などの事務処理の効率化に取り組んでまいります。オペレーション体制の強化においては、イノベーション・チャレンジを継続することが当社グループの責務かつ課題であると認識しています。
④サステナビリティ
当社グループは、経営優先テーマ「マテリアリティ」を策定し、社会や環境への配慮などの取組みをより一層事業戦略と結びつけ、社会と自社の成長につなげていきます。
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a.環境への取組み
1)「ストック型・循環型社会の形成」による環境負荷の軽減及び気候変動への対応
環境への取組みにおいては、「良いものを受け継ぎ長く使う、ストック型・循環型社会の形成に貢献する」「地球環境に配慮した、良質な住宅の普及を促進する」との考え方をベースに企業活動を行っております。当該考え方に基づき、当社は、日本で初めてグリーンRMBSを発行し、ARUHIスーパーフラットSのうち「省エネルギー性に関する技術基準」を満たす住宅を対象とする貸付金に対する資金調達を行っております。グリーンRMBSの発行を通じ、省エネルギー性に優れた住宅の普及促進に貢献しております。こうしたグリーンRMBSの発行は、日本初の取組みとなるもので、2021年4月には「ディール・オブ・ザ・イヤー2020」で「ベスト・ストラクチャード・プロダクト」を受賞いたしました。
また、温室効果ガス排出量については、Scope2まで開示を行いました。当社は、2022年6月に、金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が2017年6月に公表した提言への賛同を表明いたしました。TCFD提言に沿って、気候変動に関連するリスクと機会を識別し、それらの財務的影響を分析・評価したうえで取組みを検討し、コーポレートサイト上に、その内容を開示いたしました。今後も気候変動に関連するリスク及び機会の評価や管理を行い、適切な情報開示を行うとともに、低炭素社会を実現する取組みに努めてまいります。
b.社会への取組み
1)自分らしい豊かでサステナブルなライフスタイルの提案
当社グループは、ARUHIフラット35をはじめ様々な金融商品や住み替えに関わる各種サービスの提供を通じ、より多くの人に豊かな住まいと暮らしを提供してまいります。
地域活性への取組みにおいては、「本当に住みやすい街大賞」の選定を行っております。住宅ローン事業で得られた膨大なデータを元に、あこがれやイメージではなく「実際にその地域で生活する」という視点から、住環境・交通利便・教育環境・コストパフォーマンス・発展性の5つの基準について、住宅や不動産の専門家が参画する選定委員会によって、公平な審査のもとに本当に住みやすい街を選定しランキングを毎年発表しております。主要な地域別に公表しているこのランキングはTV、雑誌、インターネットなどの多くのメディアに取り上げられ話題となっており、選出された街の商店街の看板やWebサイトなどにランキングを利用していただくことで、街のPRを後押ししております。また、2022年4月には、川口市と移住促進、地域活性化のためのリーフレットを制作し、無料配布を開始しました。選定された街と連携し地域活性に向けた取組みを行うことで、街の持続的な発展に貢献しております。さらにWebサービス「TownU(タウニュー)」の提供を通じ、一人ひとりに合った本当に住みやすい街を提案することで、自分らしい豊かな生活の実現をサポートしてまいります。
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2)カスタマーファースト
当社グループはお客さまの満足度向上は最も重要な経営課題の一つであると考えております。当社グループの考える「お客さま」とは、住宅ローンにおけるお客さまだけでなく、ビジネスパートナー、地域社会、従業員等を含むさまざまな方であると定義しております。全社をあげて顧客満足度の向上への取組みを行うため、社内のすべての会議体・すべての部署に対してお客さま満足に関する提言を行うCSD(Customer Satisfaction Director)を設置し、「カスタマーファースト」をスローガンとして、全社的な取組みを行っております。
3)社会価値を生み出す人材の育成・開発と個の尊重
当社グループは、従業員一人一人がそれぞれのワークスタイル・ライフスタイルに合わせてその能力を最大限発揮できる多様性のある職場環境をめざし、その一環として、リモートワーク体制の積極的推進やコアタイムがないスーパーフレックス制度を導入しております。また、最長3年の育児休業や小学校6年生までの育児時短勤務などに加え、産休・育休中は先輩従業員に復職後のアドバイスを受ける「ワーキングペアレントコミュニティ」を開催するなど、出産や育児が必要な従業員をサポートしております。教育研修については、人材開発に関する専門部署を設けており、階層別研修や外部研修への参加を推奨するなど従業員のスキル向上やキャリア形成をサポートする体制を整えることにより、従業員全員がその能力を最大限に発揮できる環境づくりと人材育成に取り組んでおります。
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c.持続的成長に向けたガバナンス強化
1)コーポレート・ガバナンス
当社は、コーポレートガバナンス・コードを重視した透明で健全な企業経営を継続的に行ってまいります。なお、コーポレート・ガバナンスの詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
2)リスク管理
当社グループは、リスク管理基本方針に基づくERM(Enterprise Risk Management)体制により、グループ全体のリスクを統合的に管理しております。事業領域の拡大や商品拡充に伴う新規リスクや既存リスクの継続的なモニタリングにより、リスクを適切にコントロールしながらビジネスの拡大による企業価値向上に取り組んでまいります。
なお、リスク管理の詳細は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
3)コンプライアンス
当社グループは、当社の「Mission、Value」の企業理念を具現化した「アルヒ・コンプライアンス行動規範」を定め、FC店舗従業員を含む全役職員に周知しております。この行動規範では、社外のステークホルダーの皆さま(お客さま・株主・社会全般など)への行動規範と帰属する組織の一員(よりよい企業風土・組織の一員・経営者など)としての行動規範を定めております。
当社は、こうした行動規範を日常業務で継続的に想起し行動につなげるため、「コンプライアンスファースト」をスローガンに掲げるとともに、「コンプライアンス・ハンドブック」を作成し、FC店舗従業員を含む全役職員に配布しております。また、テクノロジーの活用やオペレーションの改善を通じ、ルールに沿った適切な業務運営を行えるよう体制を整えております。FC店舗を含めたこれらの取組みは継続して強化していくことが重要と認識しており、FC店舗を含む全役職員に対する定期的な教育・研修及び月1回行う自主点検に加えて、定期検査を通じた管理体制を維持することでコンプライアンス風土の醸成に引き続き努めてまいります。
また、全国に設置する支社にコンプライアンス推進責任者(管轄する直営店舗及びFC店舗のコンプライアンスに関する管理・指導責任者)を設置し、地域に密着したきめ細かいコミュニケーションによるコンプライアンス活動を実践しております。