有価証券届出書(新規公開時)

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2018/08/17 15:00
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82項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、リスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)インターネット広告事業に係るリスクについて
① 技術革新について
当社のインターネット広告事業を含むインターネットビジネスの業界環境は、事業に関連する新技術の開発やそれらを利用した新サービスの導入が相次いで行われており、変化が激しくなっております。このため、当社は、新技術の導入及び新サービスの提供を継続的に検討するとともに、優秀な人材の確保に取り組んでおりますが、激しい環境変化への対応が遅れた場合には、当社のサービスの陳腐化、競争力の低下が生じる可能性があります。また、環境変化への対応のために新技術及び新サービスに多大な投資が必要となった場合には、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
② 景気動向の変動について
当社の事業領域であるインターネット広告市場を含む広告市場は、一般的に市場変化や景気動向の変動により広告主が広告費用を削減する等、景気動向の影響を敏感に受けやすい傾向にあります。したがって、わが国経済の景気動向の変動によって、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
③ 市場動向について
当社の事業領域であるインターネット広告市場は、スマートフォン端末の普及等によるインターネット利用者の増加、企業の経済活動におけるインターネット利用の増加等により、平成29年は1兆5,094億円(前年比115.2%)と4年連続で二桁成長となり、成長を続けております。また今後も、雑誌、新聞等の他媒体における広告市場が縮小傾向(雑誌広告費:平成29年前年比91.0%、新聞広告費:平成29年前年比94.8%)を示している一方で、スマートフォン端末のさらなる普及やビッグデータ時代到来に伴う消費者行動等により、更なる市場の成長が継続すると考えております(広告費データは、株式会社電通「2017年 日本の広告費」より引用)。しかし、今後の日本におけるインターネット利用者人口の推移やインターネット広告市場の成長を阻害する状況の発生等、何らかの事情により、このような市場の成長が将来にわたって継続する保証はなく、結果として、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
④ 媒体運営会社への依存について
当社は、インターネット広告事業の単一セグメントで事業を展開しております。インターネット広告事業は、取引形態の性質上、媒体運営会社からの広告枠の仕入れに依存しています。媒体運営会社のうち、Google,Inc.の提供する「Google AdWords」及びヤフー株式会社の提供する「Yahoo!プロモーション広告」の取次額(媒体費用)への依存度が高くなっており、平成29年12月期における当該2社合計の取次額(媒体費用)は、媒体費総額の86.2%を占めております。当社は当該2社との良好な取引関係維持に努めておりますが、当該2社の事業方針の変更や契約の更新内容、また契約の更新ができなかった場合には、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 競合について
インターネット広告事業は、新規参入する競合会社も多く、また、多くの企業が事業展開しており、競合会社が存在しております。当社では、当社の特徴でありますワンストップサービス(一人の担当者が営業、広告の企画提案・運用・分析・改善までをワンストップで行う専任制)により、企画力や営業提案力等の強化や広告主との良好な取引関係の維持等に積極的に取り組み、競争優位性の確保に努めておりますが、競合との間で顧客獲得のための価格やサービス競争の激化等により収益性の低下を招き、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
⑥ 法的規制について
現在のところ、当社の事業領域であるインターネット広告事業に関する直接的な法規制又はインターネット広告業界の自主規制はありません。
しかし、広告主は掲載する広告の内容により、「商標法」、「著作権法」、「不正競争防止法」、「景品表示法」、「個人情報の保護に関する法律」、「特定商取引に関する法律」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、「独占禁止法」、「出会い系サイト規制法」等の規制を受ける可能性があります。当社では、上記の各種法的規制に抵触しないように、広告取扱ガイドラインを制定し、広告の内容について管理統括部の専任担当者が慎重に確認しております。広告主がこれらの法律に違反しても直ちに当社の広告取引が違法となるわけではありませんが、当社が広告主の違法行為を助長するものとみなされた場合、当社の社会的信用が失墜し、場合によっては損害賠償請求の対象となるリスクがあります。
また、今後法令の改正や新たな法令の制定等が行われ、既存の法令等の解釈に変化が生じたり、インターネット広告事業の自主規制が制定された場合や、広告内容に起因する損害賠償等が発生した場合、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(2)経営管理体制について
① 人材の確保・定着及び育成について
当社の事業を継続及び拡大させていくためには、優秀な人材の確保・定着及び育成が必要不可欠であると考えております。そのため、当社では、業界未経験者の採用も積極的に実施しており、教育体制を充実させることで、人材の育成・確保に努めております。しかしながら、優秀な人材の確保・定着及び育成が計画通りに進まない場合や優秀な人材の社外流出が生じた場合には、今後の事業展開の制約要因等になり、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
② 小規模組織であることについて
当社は、平成30年7月末現在、従業員82名と比較的小規模な組織であり、現在の人員構成にて最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後も業務の適正性及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用して参りますが、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追い付かない場合、適切な業務運営が困難となり、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
③ 知的財産権について
本書提出日現在、当社ではこれまで、特許・著作権・その他知的財産に関して第三者の知的財産権を侵害した事実や損害賠償及び使用差止の請求を受けた事実はありません。今後においても、第三者の知的財産権を侵害しないよう、十分な注意を払って参りますが、当社の事業分野で当社の認識していない知的財産権が既に成立している可能性又は新たに第三者の知的財産権が成立する可能性もあり、当該侵害のリスクを完全に排除することは困難であります。
万が一、当社が第三者の知的財産権等を侵害した場合には、直ちに、事例に応じて弁護士・弁理士等と連携し解決に努めて参りますが、損害賠償請求、差止請求や知的財産権の使用に関する対価等の支払い等により、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 訴訟について
当社は、本書提出日現在、損害賠償を請求されている事実や訴訟を提起されている事実はありません。また、当社は、法令違反となるような行為を防止するため、取引先、従業員その他第三者との関係において訴訟リスクを低減するよう、コンプライアンス研修による役員及び従業員への教育や内部監査の実施等により努めております。しかし、当社の役員及び従業員による機密情報の漏洩、事務処理のミス、不当な労務管理、取引先とのトラブル、その他不正・不適切な行為等が発生した場合、また外部からの不正アクセス等の何らかの要因から個人情報保護法の適用を受ける個人情報等の流出が発生した場合、これらに起因する訴訟その他の請求が発生する可能性があります。これらの事象が発生した場合には、訴訟内容や損害賠償額及びその結果等により、当社の社会的信用に悪影響を及ぼすほか、事業活動並びに財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 与信管理について
当社の事業領域であるインターネット広告市場の取引慣行として、広告会社が広告主に請求する手数料には、媒体運営会社等に支払う媒体料金等を含んでおります。したがって、広告主の倒産等により、広告代金の回収が不可能となった場合には、当社が媒体運営会社等に支払う媒体料金等も含めて負担することとなります。当社では、与信管理規程を制定し、信用リスク低減を図っておりますが、広告主の倒産等により、広告代金の回収が不可能となった場合には、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
⑥ システム障害について
当社のインターネット広告事業は、インターネットを介してサービスを提供しており、自然災害、火災等の事故、人為的ミス、通信ネットワーク機器の故障、ソフトウェアの不具合、コンピュータウィルス等により、システム障害が発生し、継続したサービス提供等に支障が生じる可能性があります。
当社では、このような事態に備え、外部からの不正アクセスを防止するためのファイアウォールやセキュリティソフトの導入等といった対策をとっており、また定期的なバックアップや稼働状況の監視を行うことで、情報漏洩の事前防止又は回避に努めておりますが、こうした対応にも関わらず、システム障害が発生し、サービス提供に障害が生じた場合、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)親会社等との関係について
① 親会社との資本関係について
当社の親会社であるEMNET INC.(以下、「同社」という。)は、平成12年4月に大韓民国ソウル特別市で設立されました。その後、インターネット広告運用や、広告等のデザイン制作、広告成果の分析ソリューションの提供等の総合的なインターネット広告事業を展開し、平成23年11月に韓国KOSDAQ市場に上場しております。同社グループは、本書提出日現在、韓国、日本、中国において事業展開しており、そのうち日本においては当社が事業展開を担っております。
同社は、平成30年7月末現在、当社の発行済株式総数の91.95%を保有しており、当社は同社の連結子会社となっております。当社の経営判断において同社の承認を必要とする取引や業務はなく、当社の海外展開についても同社からの制約は存在しません。しかし、同社の事業戦略やグループ戦略に変更が生じた場合は、当社の事業展開等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の取締役、監査役の選任・解任や合併等の組織再編、重要な資産・事業の全部又は一部の譲渡、定款の変更及び剰余金の処分等、株主の承認が必要となるすべての事項に関しては、他の株主の意向や利益にかかわらず、同社が今後も影響を与える可能性があります。
なお、同社の平成29年12月期における主要な連結経営指標は以下の通りです。
・営業収益 2,856百万円
・営業利益 414百万円
・当期純利益 380百万円
・純資産額 4,594百万円
・総資産額 7,372百万円
・広告取扱高 16,771百万円
(注)1.為替換算レートは、損益及び広告取扱高は平成29年の期中平均レート(1韓国ウォン=0.09916円)、資産は平成29年12月末レート(1韓国ウォン=0.10536円)で換算しております。
2.韓国の会計基準に準拠した金額です。日本の会計基準との主な相違点は、当社の売上高に相当する営業収益は、当社の概ね売上原価に相当する広告媒体費である広告取扱高を控除した金額で会計処理されております。
② 親会社との取引について
平成29年12月期における当社とEMNET INC.との取引総額は2,944千円となっており、そのうち主なものは、当社代理店としての韓国法人の広告出稿に関する取次業務に対する支払手数料と、同社が開発し保有する販売管理・社内情報共有システムの利用料となっております。同社との取引のうち広告出稿に関する取次業務については、過去の類似取引事例を参考とした条件により行われております。また、同社の保有するシステムの利用料については、一般の取引条件を踏まえて市場価格や総原価を勘案し交渉の上で決定しております。同社からの独立性確保の観点も踏まえ、同社との重要な取引については、取締役会の承認により健全性及び適正性を確保しております。
③ 親会社との役員等の兼任について
本書提出日現在において、当社監査役の金永源は、以下の通り、EMNET INC.の代表取締役社長を兼任しております。当該兼務については、当社が、同氏の上場企業の経営者としての深い知見の活用とコーポレート・ガバナンス体制の強化を目的として招聘したものです。
氏名当社における役職役員派遣元会社役員派遣元会社における役職
金 永源監査役
(非常勤)
EMNET INC.代表取締役社長

④ トランス・コスモス株式会社との関係について
当社の親会社であるEMNET INC.は、トランス・コスモス株式会社の持分法適用関連会社であり、平成30年7月末現在、トランス・コスモス株式会社は、同社の株式の25.14%を直接保有しております。
トランス・コスモス株式会社の展開するデジタルマーケティングサービスの一部は当社のインターネット広告事業と事業領域が重複しておりますが、トランス・コスモス株式会社は、大手企業を対象に売上拡大とコスト削減の実現を支援するアウトソーシングサービスを提供するビジネスモデル(インターネット広告サービスはその一環)であるのに対し、当社はインターネット広告代理店専業のビジネスモデルであること、トランス・コスモス株式会社は、営業、企画提案、広告運用、分析・改善の業務に関して分業体制を敷いているのに対し、当社はワンストップサービス(一人の担当者が営業、広告の企画提案・運用・分析・改善までをワンストップで行う専任制)を提供していること等、基本的に事業モデルが異なっております。また、トランス・コスモス株式会社は、主に大手企業をターゲットとしているのに対し、当社は中小・中堅企業をターゲットとしており、営業対象とする広告主が異なっていることから、事業上の棲み分けがなされております。このほか、当社の経営判断についてトランス・コスモス株式会社の承認を必要とする取引や業務はなく、当社における事業上の制約等はありません。しかしながら、トランス・コスモス株式会社の事業戦略やグループ戦略に変更が生じた場合は、当社の事業展開等に影響を及ぼす可能性があり、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他
① 配当を行っていないことについて
当社は、成長過程にあり、経営基盤の強化を図るため内部留保の充実を図り、なお一層の業容拡大を目指すことが重要でありますが、株主の皆様をはじめとするステークホルダーに対し、安定的な利益還元を実施していくことも重要であると考えております。しかしながら、本書提出日現在では配当を行っておらず、また今後の配当の実施の可能性及びその時期については未定であります。しかし、株主の皆様への利益還元についても重要な経営課題と認識しており、将来の持続的な成長に必要な内部留保を確保しつつ、経営成績及び財政状態・事業計画等を総合的に勘案したうえで、利益配当を実施していく方針です。当社は、株主に対する利益還元についても経営の重要課題の一つと認識しており、経営成績及び財政状態を勘案しつつ、将来的には配当による利益還元を検討する所存であります。
② 資金使途について
当社は、今回の株式上場時における公募増資による調達資金の使途につきましては、優秀な人材獲得のための採用費及び人件費等への資金に充当する計画であります。
しかしながら、当社が属する業界環境の急速な変化により、調達資金を計画以外の使途に充当する可能性があります。また、計画通りに使用された場合でも、想定通りの投資効果が得られない可能性があります。資金使途や支出予定時期の変更を行う場合は、適正な開示を行います。
③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、役員及び従業員に対してストック・オプションとして新株予約権を付与しており、今後もストック・オプション制度を活用していくことを検討しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在における新株予約権の割合は発行済株式総数の7.7%に相当します。
④ 風評被害について
当社及び当社が属すインターネット広告業界に対して、インターネット上の掲示板への書き込みや、それを起因とするマスコミ報道等によって、何らかの否定的な風評が広まった場合、その内容の正確性にかかわらず、企業イメージの毀損等により、当社の事業活動並びに財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 会計基準等の変更について
当社は、一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて決算を行っており、会計基準の変更へも適時対応しております。当社が属するインターネット広告の広告代理店業務では、取扱高を売上高に計上する会計処理と取扱手数料のみを営業収益(売上高)する会計処理が認められておりますが、当社では取扱高を売上高に計上しております。しかし、平成30年3月30日付で「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準委員会 企業会計基準第29号)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第30号)が公表されたことにともない、今後、取扱手数料を売上高に計上する会計処理へ変更した場合には、当社の損益計算書上で計上される売上高の表示金額に影響を与える可能性があります。