有価証券届出書(新規公開時)

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2018/11/14 15:00
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事業等のリスク

当社の事業とその他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 事業環境に関するリスクについて
① スマートフォン関連市場について
当社は、スマートフォン上でのサービスを中心としたアプリ事業を主たる事業領域としていることから、スマー
トフォン関連市場が今後も拡大していくことが事業展開の基本条件であると考えております。総務省「平成29年通信利用動向調査」によると、平成29年末時点でスマートフォンを保有する世帯の割合は75.1%に達しており、スマートフォン契約数は今後も拡大するものと予測されております。当社はこれらの統計に基づき、今後もより快適にスマートフォンを利用できる環境が整い、スマートフォン関連市場は拡大を続けるものと見込んでおります。しかしながら、今後新たな法的規制の導入、技術革新の遅れ、利用料金の改定を含む通信事業者の動向など、当社の予期せぬ要因によりスマートフォン関連市場の発展が阻害される場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② マンガアプリ事業の特性について
マンガアプリ事業の背景となる電子書籍市場は、スマートフォン・タブレット端末が普及したことにより、大きく成長しております。マンガアプリ事業が属する電子書籍ビジネスの国内における市場規模は、下図のとおり2017年度は2,241億円と推計されており、今後も拡大基調が予測されています(注1)。一方で、競合他社の参入により競争は激化してきております。当社はこうした電子書籍市場の拡大や幅広い表示端末に対応し、各種サービス内容の拡充と整備を進めていく所存でありますが、万が一、電子書籍市場の拡大が想定とおりに進まなかった場合、法制度の改定等により当社が行うサービスが規制対象となった場合、その他予測し得ない不測の事象が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(注)1.株式会社インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2018」
③ アプリ広告の動向について
当社が運営するマンガアプリでは、数多くの広告主及びアドネットワークを含む広告代理店(以下「広告主等」という)へ広告の掲載を委託しており、広告の収益性は経済状況、市況、広告主等の経営状況によって変動する可能性があります。当社といたしましては、新しい広告システムの情報収集を積極的に行い、常に安定かつ高収益の広告が配信できるよう努めておりますが、広告主等の状況により広告出稿意欲の減衰があった場合には当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ Apple Inc. 及び Google Inc.の動向について
当社の売上はスマートフォンアプリの課金売上及び広告売上であり、当社の事業モデルは、Apple Inc.及びGoogle Inc.の2社のプラットフォーム運営事業者への依存が大きくなっております。これらプラットフォーム運営事業者の事業戦略の転換並びに動向によっては、手数料率等の変動等何らかの要因により、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、プラットフォーム運営事業者の方針変更などにより、当社の提供するマンガアプリや当社のアカウントがプラットフォーム運営事業者により削除された場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業内容に関するリスクについて
① ユーザーの嗜好の変化について
当社が属するマンガアプリ市場においては、ユーザーの嗜好の移り変わりが激しく、ユーザーのニーズに対応するコンテンツの開発・導入が何らかの要因により困難となった場合には、想定していた広告による収益または課金決済による収益が得られない可能性があります。その結果、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合他社の影響について
マンガアプリ事業が属する電子書籍業界は、特許等による特別な参入障壁が存在しない業界であります。そのため、近年多数の企業が参入し、競争が激化しております。このような競争環境の下、当社は積極的にサービスの拡充及びサービスの差別化を図ることで、当社ならではの付加価値を増やしてきました。その結果、売上高及び「マンガBANG!」の累計ダウンロード数は以下のとおり推移しております。ただし、競争激化によってARPU(一人当たり顧客単価)の向上やユーザー獲得が想定とおりに進まなかった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
回次第6期第7期第8期第9期第3四半期累計期間
決算年月平成27年9月期平成28年9月期平成29年9月期平成30年9月期
売上高(千円)152,545389,3211,171,086917,529
累計ダウンロード数(千人)1,6382,9875,5097,074

(注)第6期の数値については監査法人による監査を受けたものではありません。
③ 著作物の利用許諾契約について
当社は、電子コミックの配信にあたり、著作権者等の取引先(法人及び個人)との間で著作物利用許諾契約を締結するとともに、これら取引先との良好な信頼関係を築いております。サービスの拡大においては、これら契約の継続を前提としておりますが、何らかの事情により契約の更新に支障をきたす場合、または著作物の利用料が変動した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 知的財産権の侵害について
電子書籍コンテンツは海賊版や模倣品が流通することによって出版社や著作権者等に不利益をもたらします。仮に電子書籍コンテンツの知的財産権について、長期にわたり大規模な侵害行為を受けた場合には、その侵害行為によって生じる機会損失が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 特定取引先への依存について
当社は、マンガアプリ事業にあたり、多数の作家や出版社等の著作権者から提供を受けたコンテンツを配信しておりますが、ユーザーの嗜好により一部の出版社への依存度が高まっております。また、著作権者の意向等により、特定の電子書籍取次者への依存度が高まっております。しかしながら、これら取引先との永続的な取引が確約されているものではなく、契約条件の変更等があった場合、当社の業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 広告宣伝活動について
当社は、マンガアプリ事業の展開にあたり、下表の第8期広告宣伝費が著しく増加していることが示すとおり、広告宣伝活動を積極的に実施しユーザー数の増加を図っております。CPI(インストール当たり広告単価)等を勘案の上、都度、最適な施策を実施しておりますが、必ずしも当社の想定とおりに推移するとは限らず、当該施策が当社の想定とおりに推移しない場合、当社の業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
回次第6期第7期第8期第9期第3四半期累計期間
決算月平成27年9月期平成28年9月期平成29年9月期平成30年9月期
広告宣伝費(千円)95,63092,925314,704213,273

(注)第6期の数値については監査法人による監査を受けたものではありません。
⑦ 特定事業への依存について
当社は、主力サービスであるマンガアプリサービス「マンガBANG!」に経営資源を集中させております。
新たな柱となるサービスを育成し、収益構造の多様化を図って参りますが、事業環境の変化等により、当サービスが停滞又は縮小した場合、当社の業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 海外展開について
当社は、これまで培った開発・運用・版権社とのコネクションを活かしたマンガアプリを海外で積極的に展開することを企図しています。しかし、海外においてはユーザーの嗜好や法令等が、本邦と大きく異なることがあり、当社の想定どおりに事業展開できない場合には、当社の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑨ システム障害について
当社の事業は、携帯電話やPC、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、自然災害や事故(社内外の人的要因によるものを含む)等によって通信ネットワークが切断された場合には、当社の事業展開及び業績は深刻な影響を受けます。また、当社のコンピュータ・システムは、適切なセキュリティ手段を講じて外部からの不正アクセスを回避するよう努めておりますが、当社の運営する各サイトへのアクセスの急激な増加、データセンターへの電力供給やクラウドサービスの停止等の予測不可能な様々な要因によってコンピュータ・システムがダウンした場合や、コンピュータ・ウイルスやクラッカーの侵入等によりシステム障害が生じた場合には、当社の事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。
⑩ 社歴が浅いことについて
当社は平成21年10月に設立されており、設立後の経過期間は9年程度と社歴の浅い会社であります。また、過年度の業績については、事業立ち上げ段階であったこと等により3期連続で当期純損失を計上しており、将来安定的に黒字化を達成し続けることができる保証はありません。スマートフォンアプリ関連業界を取り巻く環境はスピードが速く流動的であり、マンガアプリ事業はその業態としての歴史も浅い為、期間業績比較を行うために十分な期間の財務情報を得られず、過年度の業績のみでは今後の業績を判断する情報として不十分な可能性があります。
上記のような事情から、経営計画の策定は、当社内で合理的と考える方法による計画値であり、不確定事象が含まれざるを得ない状況にあります。

(3) 組織体制に関するリスクについて
① 組織規模が小さいことについて
当社組織は、従業員数が平成30年10月末現在で12名(臨時従業員を除く)と規模が小さく、現在の社内管理体制もこの規模に応じたものとなっております。当社では、今後の事業強化、拡大に対応して人材の採用、育成と管理体制の強化を進めて参りますが、必要な人材の確保や社内教育等が順調に進まなかった場合には、当社の事業拡大に影響を与え、その結果、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 特定人物への依存について
当社の代表取締役である佐久間亮輔は、創業者であると同時に創業以来当社の経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を担って参りました。佐久間亮輔は、インターネットサービスの企画から開発、運用に至るまで豊富な経験と知識を有しております。また、取締役CTOである江口元昭は、当社サービスのシステム開発、インフラ開発に関する豊富な経験と知識を有しており、最高技術責任者として当社の技術的判断、経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を果たしております。当社では、取締役会や経営会議等において役員及び社員への情報共有や権限移譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、佐久間亮輔及び江口元昭に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により佐久間亮輔及び江口元昭が当社の経営執行を継続することが困難になった場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材の採用・育成について
当社は、今後急速な成長が見込まれる事業の展開や企業規模の拡大に伴い、継続的に幅広く優秀な人材を採用し続けることが必須であると認識しております。質の高いサービスの安定稼働や競争力の向上に当たっては開発部門を中心に高度な技術力・企画力を有する人材が要求されていることから、一定以上の水準を満たす優秀な人材を継続的に採用すると共に、成長ポテンシャルの高い人材の採用及び既存の人材の更なる育成・向上に積極的に努めていく必要性を強く認識しております。しかしながら、当社の採用基準を満たす優秀な人材の確保や人材育成が計画とおりに進まなかった場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 内部管理体制の整備状況にかかるリスクについて
当社は、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、さらに法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 技術革新への対応について
当社のサービスはインターネット関連技術に基づいて事業を展開しておりますが、インターネット関連分野は新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われ、非常に変化の激しい業界となっております。また、ハード面においては、スマートフォンの普及が急速に進んでおり、新技術に対応した新しいサービスが相次いで展開されております。このため、当社はエンジニアの採用・育成や創造的な職場環境の整備、また、特にスマートフォンに関する技術、知見、ノウハウの取得に注力しております。しかしながら、係る知見やノウハウの獲得に困難が生じた場合、また、技術革新に対する当社の対応が遅れた場合には、当社の競争力が低下する可能性があります。
(4) 法的規制に関するリスクについて
当社のマンガアプリ事業に関する法規制は、「著作権法」、「個人情報の保護に関する法律」、「特定商取引に関する法律」、「資金決済に関する法律」等、多岐の分野にわたっております。
① 知的財産権について
当社は、電子コミックの配信にあたり、著作権をはじめとする知的財産権を侵害しないよう、取引先との間で締結する著作物の利用許諾契約を遵守し事業を展開しております。しかしながら、電子書籍の販売は新しい業態であるため、今後の法改正や解釈の変更、並びに海外展開による権利処理の複雑化等により、第三者から知的財産権に関する侵害を主張される可能性があります。このような場合、解決までに多くの時間と費用が発生する等、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 「個人情報の保護に関する法律」について
当社は、サービス提供にあたり、取引先、コンテンツ利用者等の個人情報を取得する場合があります。これらの情報を適切に保護するため、情報へのアクセス制限、不正侵入防止のためのシステム採用や「プライバシーポリシー」等の情報管理に関する規程の作成等、個人情報保護のための諸施策を講じるとともに、個人情報の取得は必要最小限にとどめております。しかしながら、外部からの不正アクセス、故意または過失等による情報漏洩に関するリスクは完全には排除できないことから、個人情報が流出する可能性があります。このような場合、損害賠償の請求や信用低下等によって、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 「特定商取引に関する法律」について
当社は、「特定商取引に関する法律」の定義する販売事業者に該当するため、サービス利用料金の決済時の最終確認画面において注文内容が確認できる仕様とし、また、サイト上で「特定商取引に関する法律」に基づく表示を行っております。今後、上記法令の改正等により規制の範囲が拡張した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 「資金決済に関する法律」について
当社は、「資金決済に関する法律」の定義する事業者に該当するため、サービス利用料金の決済時の最終確認画面において注文内容が確認できる仕様とし、また、サイト上で「資金決済に関する法律」に基づく表示を行っております。今後、上記法令の改正等により規制の範囲が拡張した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、平成30年10月末現在の許認可等の取得状況は以下のとおりであります。
許認可等の名称資金決済に関する法律の届出
所轄官庁等財務省
許認可等の内容「資金決済に関する法律(資金決済法)」による、自家型前払式支払手段の基準日未使用残高の基準額超過による届出
番号なし
有効期限
法令違反の要件及び主な許認可取消自由前払式支払手段の発行業務の運営に関し、前払式支払手段の利用者の利益を害する事実がある場合等

⑤ 青少年保護に関連する法令について
現在、当社は「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」等の法令等の遵守に努めております。なお、当社のマンガアプリ事業は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」及び各地方公共団体が制定する青少年健全育成条例等が規制対象とする事業に当たりません。しかしながら、当社ではコミックを配信する前に、東京都の青少年有害指定図書等における指定状況の確認、各プラットフォーム運営事業者の基準や当社の基準に照らし合わせ、表現の健全性を確保するように努めております。
これらの法令が改正・解釈の変更または新たな法令の制定により、何らかの制約を受けることとなった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ コンプライアンス体制について
当社では、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのため、コンプライアンスに関する社内規程を策定し、全役員及び全従業員を対象として社内研修を実施し、周知徹底を図っております。併せて、コンプライアンス体制の強化に取り組んでおります。しかしながら、これらの取り組みにも関わらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社の企業価値及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) その他のリスクについて
① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、当社の株主及び役員並びに従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日時点でこれらの新株予約権による潜在株式数は216,200株であり、発行済株式総数3,018,000株の7.2%に相当しております。
② 資金使途について
今回計画している公募増資による調達資金の使途につきましては、マンガアプリ事業における人材の採用・育成等に係る人件費や広告宣伝費等の運転資金に充当する予定であります。しかしながら、変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点での計画以外の使途にも充当される可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性もあります。
③ 配当政策について
当社は、利益配分につきまして、将来の財務体質の強化と事業拡大のために必要な内部留保を確保しつつ、当社を取り巻く事業環境を勘案して、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としております。しかしながら、現時点では配当を行っておらず、また、今後の配当の実施及びその時期については未定であります。
④ 自然災害、事故等について
当社では、自然災害、事故等に備え、データの定期的バックアップ、システムの稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めておりますが、当社所在地近辺において、大地震等の自然災害が発生した場合、当社設備の損壊や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生して、当社の事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。