有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/05/31 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
80項目

事業内容

当社は「『働く』を豊かにする。~B2B領域でイノベーションを起こし続ける~」というミッションを掲げ、企業の生産性を向上させるサービス・プロダクトづくりを通じて豊かな働き方を実現するべく事業活動を行っております。特に、デジタルマーケティング領域において、データフィード、構造化データ(注1)、ID連携(注2)をはじめとしたテクノロジーを駆使し、「企業の持つ情報を適切な形でユーザーに届ける」ことで、企業の抱える課題の解決や生産性の向上を支援しております。
データフィードとは、インターネット上のデータを送受信する仕組みのことです。データの形式や通信方法を決めておくことでデータ間のやり取りをスムーズに行い、更新情報を素早く同期することができます。
データフィードを活用する最大のメリットは「簡単に様々な場所に散らばった情報を最新の情報に保てること」です。たとえば、EC 事業者が、商品情報を最新のものにしたいと考えたとき、更新した商品のリストにあわせてEC サイト、比較サイト、ショッピングモール、ソーシャルメディア、リスティング広告、ディスプレイ広告、アフィリエイトなど、様々な場所に散らばっている古い情報を新しい情報に書き換える必要があります。これをすばやく確実に行えるのがデータフィードです。
データフィードを活用した広告の代表例としては、Googleにて商品やこれに関連するワードを検索したユーザーに対して商品の画像や価格、ショップ名等を表示する「Google ショッピング広告」、FacebookやInstagram等のタイムラインに表示される「インフィード広告」、CriteoやGoogle等がサイト内の商品閲覧履歴などの行動データに基づき最適な広告を配信する「動的ターゲティング広告」が挙げられます。
現在、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルコンピュータ等の普及により、かつてパーソナルコンピューターに限られていたインターネットへのアクセスは、様々なデバイスを通じて可能となっております。また、一般的なWebサイトに加え、Googleの提供する検索エンジン、Facebook/ Instagram、Twitter等のソーシャルメディアやLINE等のメッセンジャーアプリ(注3)などのプラットフォームの登場により、ユーザーが情報を得るメディアも多種多様になっております。あらゆるデバイスやメディアが分散化(以下「フラグメンテーション(注4)」)されたことで、一律に同じ情報を受動的に入手するのではなく、それぞれのユーザーが嗜好にあった情報を能動的に入手する時代へと変化を遂げております。
このような消費者行動の変化は、インターネットを利用した企業のマーケティング活動にも大きな影響を与えております。例えば、企業がユーザーの趣味趣向に合わせたインターネット広告を出す際、複数のデバイスへの対応と複数メディアへ出稿することは、ユーザーとの接触機会を減少させないためにこれまで以上に重要性が増します。一方で、企業にとってはフラグメンテーションによりメディアごとのフォーマットに合わせたデータフィードの構築が必要となり、また広告内容や配信先媒体の追加、変更又は更新の度にデータフィードの改修が必要となるため、膨大な人的及び物的負荷並びに費用が掛かる状況にあります。
これらの課題の対処方法として、欧米先進国ではデータフィードを活用したマーケティングが定着しており、昨今、国内においても注目を集めております。当社は、創業以来長年にわたりデータフィード及び構造化データに特化して取り組んできており、国内におけるデータフィードを活用したマーケティング市場を創造、牽引してきたと自負しております。その結果、データフィード構築のためにこれまでに蓄積した膨大な商品・案件等データとその変換・更新ノウハウをもとに、企業が有する情報を最適な形に加工し、ニーズのあるユーザーに対して適切な情報を適切なタイミングで適切なデバイスに提供することを実現してまいりました。
0201010_001.png
また、各デジタルプラットフォーマーと良好なパートナーシップを構築している点も当社の強みと認識しております。各プラットフォームへの広告掲載にあたっては、必要な情報や掲載内容についてそれぞれ独自の制約があります。当社は、過去より技術的なパートナーになるなど各プラットフォームとのリレーションを構築し、それぞれの技術的要件について熟知しているため、円滑な広告出稿が可能となっております。当社は、各プラットフォームとのリレーションを活かし、当社の複数のサービスをAPI(注5)を通じて連携させることで、企業の顧客開拓支援に止まらず、その後の継続的な関係強化を支援する包括的なサービス提供を行っております。
当社事業は、企業のデジタルマーケティング支援をビジネスの主軸に、顧客属性に応じたサービスの提供方法により、プロフェッショナルサービス事業とSaaS(注6)事業の2つの事業セグメントで構成されております。プロフェッショナルサービス事業では、主としてエンタープライズ(注7)を中心とした顧客に対して、個々のニーズに応じたデータフィードの構築やプラットフォームへの広告配信受託を行っております。一方で、SaaS事業においては、SMB(注8)と言われるような中小規模事業者もターゲットとして含め、SaaS型でのデータフィード統合管理ツールや自動広告出稿ツール等を提供しております。
プロフェッショナルサービス事業にて大手を中心とした先進的な顧客のニーズにテイラーメイドで対応することで当社としてのノウハウを蓄積し、当該知見をSaaS事業の各サービスの機能に適宜組み込んでいくことで幅広い顧客に対して高品質なサービスの提供が可能となっている一方で、プロフェッショナルサービス事業におけるサービス提供にあたりSaaS事業のサービスや機能を一部利用するなど、両事業セグメントは相互補完関係にあると考えております。
各事業セグメントにおける提供サービスの内容、特徴は以下のとおりです。
なお、これら事業セグメントは「第二部 企業情報 第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
(1)プロフェッショナルサービス事業
当社のプロフェッショナルサービス事業は、エンタープライズを中心にデータフィードマーケティングの支援を行っております。具体的なサービスは以下のとおりです。
① DF PLUS
「DF PLUS」は、データフィード管理のアウトソーシング・サービスです。Criteo、Google(「ショッピング広告」及び「動的リマーケティング広告」)、Facebook / Instagram、Yahoo! JAPAN、Indeed など多数の広告媒体をはじめ、DMP(注9)、価格比較サイト、Instagram ショッピング機能まで、50社以上のインターネット媒体に対応しております。大手広告代理店でも多数採用されているなど豊富な導入実績があり、出稿までに必要な準備作業をスムーズにサポートします。
② Feedmatic
「Feedmatic」は、当社が各種アドテクノロジーサービスを開発してきた技術的な強みを活かし、機械学習による効果最大化を前提としたコンサルティング型広告運用サービスであり、データフィード広告(注10)を中心としたコンサルティング型の広告運用代理業務及び企業内でのインハウス広告運用支援を行っております。特に、大量の商品・案件データを保有・更新する必要があるEC(注11)、人材、不動産、旅行業界といった業種において高い成果実績を有しております。
③ Contents Feeder
「Contents Feeder」は、ロングテール(注12)キーワードに適合したサテライトサイト(注13)を生成・自動運用するSEO支援サービスです。ただキーワードを詰め込んだ機械的なページを生成するのではなく、RSS(注14)フィードやメタデータ(注15)の活用支援をする中で培ってきたノウハウを活かし、ユーザーにとって価値のあるページの生成や自動運用を実現します。
(2)SaaS事業
当社のSaaS事業は、エンタープライズ企業からSMBまで幅広い企業に対し、セルフサービスで高度なマーケティングが実施できるシステムとして、データフィードマーケティングの管理システムやソーシャルログインシステム(注16)等をSaaSにより提供しております。具体的なサービスは以下のとおりです。
① dfplus.io
「dfplus.io」は、データフィードの作成、管理、最適化を広告担当者自身で行うことができるデータフィード統合管理ツールです。ユーザービリティの高いUI/UX(注17)の実装により、広告担当者は、柔軟で強力なルール設定が可能となり、企業の保有する商材データをGoogle ショッピング広告やCriteo、Facebookなどのデータフィード広告を含む多様な媒体に最適化することができます。
② EC Booster
「EC Booster」は、事業者が運営するECサイトの商品情報を自動的に取得及び最適化し、検索結果として商品画像が表示されることが特徴である「Google ショッピング広告」に自動配信するサービスです。ECサイト運営者は小規模組織が圧倒的に多数を占めていることから、マーケティングや広告にかけられる予算も少なく、人的リソースも限られているのが実情です。このような実情を踏まえ、少額の広告予算でも広告成果を上げることができ、一旦Webサイト上から簡単な初期登録及び設定を行った後は、必要に応じて広告成果の確認と広告予算変更を行う程度で継続的な自動広告配信ができるように配慮し開発したツールです。
③ ソーシャルPLUS
「ソーシャルPLUS」は、Facebook、Google、LINE、Yahoo! JAPANなどのアカウント情報を活用し、自社サイトへの会員登録やログインの簡素化をAPIを経由して実現するサービスです。サイトの会員登録数・購買のコンバージョン率の最大化を支援し、顧客接点の拡大から売上向上まで一気通貫で実現するマーケティング基盤を提供し、導入企業にとってはマーケティング上有用な情報を取得することが可能となります。
また、あわせてLINEログインオプションを導入することにより、自社のWebサービスとLINEアカウントを連携させ、日常的にメールを使わないユーザーに対しても個別にLINEメッセージの配信ができるなど、LINEアカウントを起点に集客・アクション誘導・リピート促進までシームレスに完結させることができます。
(注) 1.構造化データとは、一定のルールに従って記述され、何らかの意味が付加されたデータのこと。例えば衣料ECサイトでは、カテゴリー、ブランド、サイズ、金額などを分類するための標準化されたデータ形式により、ページコンテンツに関する情報を提供できる。
2.ID連携とは、様々なWebサイトや企業によって管理されているアカウントIDを認証を経て結び付けること。
3.メッセンジャーアプリとは、リアルタイムでのメッセージ送受信や、無料IP電話などの機能を提供するアプリケーションの総称。
4.フラグメンテーションとは、生活者の利用するデバイスやメディアが分散化すること。
5.APIとは、Application Programming Interfaceの省略表記で、アプリケーションの機能やデータ等を他のアプリケーションから呼び出して利用するための接続仕様・仕組みのこと。
6.SaaSとは、Software as a Serviceの省略表記で、従来のパッケージソフトウェアの機能をウェブブラウザなどインターネットを通じて提供するクラウドサービスのこと。
7.エンタープライズとは、大規模企業のこと。
8.SMBとは、Small to Medium Businessの省略表記。
9.DMPとは、Data Management Platformの省略表記で、インターネット上に蓄積されたビッグデータなどの情報データを一元管理するためのプラットフォームのこと。
10.データフィード広告とは、ユーザー一人一人の興味関心に合わせて表示される広告のこと。
11.ECとは、Electronic Commerceの省略表記で、インターネット上で物品やサービスを売買する商取引のこと。
12.ロングテールとは、販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えたり、対象となる顧客の総数を増やすことで、総体としての売上を増加させる概念や手法のこと。
13.サテライトサイトとは、メインサイトのターゲット層拡大のために、インターネットでの幅広いキーワード検索に対応したメインサイトとは別に立ち上げたWebサイトのこと。
14.RSSとは、Really Simple Syndicationの省略表記で、ニュースやブログなどのWebサイトの更新情報を配信する文書フォーマットのこと。
15.メタデータとは、あるデータに付随するそのデータ自身についての付加的なデータのこと。
16.ソーシャルログインシステムとは、SNSアカウントを使用してWebサイトにログインできる機能のこと。会員登録やサイトへのログインが容易になる。
17.UI/UXとは、User Interface/User Experienceの省略表記で、UIとはデザイン、フォントや外観などユーザーの視覚に触れるすべての情報のことであり、UXとはユーザーがこれらのUIを実装したサービスを通じて得られる体験のこと。
[事業系統図]
0201010_002.png