有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/05/31 15:00
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【項目】
80項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
(1)インターネット広告市場について
当社はデジタルマーケティング関連サービスを主力事業としており、当社が属するインターネット広告市場は、利用者の増加、端末の普及、企業等の活動におけるインターネットの利用増加により急速に拡大を続けてまいりました。今後もインターネット広告市場規模の拡大は継続し、2022年度には約2兆4千億円にまで拡大することが予測されております(矢野経済研究所調べ 2018年8月)。当社においても、今後もこのような成長傾向が継続していくものと考えており、デジタルマーケティング関連サービスを多角的に展開する予定です。
しかしながら、広告市場は企業の景気動向に敏感であり、景気の変動等による業況感の悪化や企業の広告戦略の変化などによる影響を受け易い状況にあるため、顧客企業における広告予算又は広告媒体別の予算配分方針に変更が生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)技術革新について
当社が事業展開しているデジタルマーケティング領域では、技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が非常に早く、新しいテクノロジーや広告手法が次々と開発され、それに基づく新サービスが常に生み出されております。当社においても、優秀なエンジニアの採用・育成や創造的な職場環境の整備に加え、毎年開催されている「Ruby Kaigi」(注1)や「AWS Summit」(注2)等外部イベントへの参加やオープンな技術勉強会の開催等により最新の技術動向や環境変化を把握できる体制を構築することで、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。
しかしながら、何らかの理由により新たな技術やサービスへの対応が遅れた場合、又は当社のサービスもしくは使用している技術等が陳腐化した場合や顧客ニーズへの対応遅れが生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)法的規制について
現時点において、当社の主力事業であるデジタルマーケティング関連サービスに関して、事業継続に著しく影響を及ぼす法的規制はないものと認識しております。
しかしながら、インターネット利用の普及に伴って、個人の購買・閲覧履歴や属性データを活用した広告出稿手法に関する法的規制の在り方等については様々な問題提起がなされている状況にあり、今後インターネットの利用者及び事業者を規制対象とする法令、行政指導、その他の規制等が制定された場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)知的財産権について
当社では、「フィードフォース」、「ソーシャルPLUS」等の社名及びサービス名について商標登録を行っており、今後も知的財産権の保全に積極的に取り組む予定です。
しかしながら、当社の知的財産権が第三者に侵害された場合には、解決までに多くの時間及び費用がかかるなど、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は、第三者の知的財産権侵害の可能性については、専門家と連携を取り調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域において第三者が保有する知的財産権を完全に把握することは困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、損害賠償請求、使用差止請求や当社の社会的信用を失うこと等が想定され、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)情報セキュリティ管理体制について
当社は、「ソーシャルPLUS」において、Facebook、LINE、Yahoo! JAPAN等のアカウント情報を活用して会員登録やWebサイトログインを容易にする仕組みをクラウドサービス(SaaS)として利用企業に提供しております。本サービスにあたっては利用環境をクラウドサービスとして提供するのみであり、当社ではこれらの個人情報を取扱っていませんが、役職員を対象とした個人情報の取扱いに関する社内研修の実施、社内でのアクセス権限の設定、アクセスログの保存、データセンターでの適切な情報管理等クラウドサービス提供者として常時情報セキュリティの確保に努めております。
しかしながら、万一外部からの不正アクセスやその他想定外の事態の発生により情報の外部流出等が発生した場合には、当社への損害賠償の請求や当社の社会的信用を失うこと等が想定され、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)システムの安定性について
当社の運営するサービスは、基盤をインターネット通信網に依存しており、システムの安定的な稼働が業務執行上必要不可欠な事項となっております。そのため、当社では継続的にシステムインフラの規模を増強するだけではなく、設備及びネットワークの監視や冗長化、定期的なデータのバックアップなど、システム障害の発生防止に努めております。
しかしながら、アクセスの急増、コンピュータウィルスや人的な破壊行為、ソフトウエアの不具合、地震や水害等の自然災害、その他予期せぬ重大な事象の発生によりシステムが停止し、収益機会の喪失を招く恐れがあります。このような事態が発生した場合には、サービスの停止に伴い当社が社会的信用を失うこと等が想定され、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)競合について
当社は、データフィードの提供及びこれを活用したインターネット広告運用の受託等をプロフェッショナルサービス事業として、プラットフォームがAPI等により提供する機能を活用したツールの提供をSaaS事業として事業展開しております。
しかしながら、いずれのセグメントにおいても競合他社が国内外に存在しており、現時点において競争上優位にあると考えられるサービスにおいても新規参入等により競争激化する可能性があることから、将来的に当社の提供するサービスにおいて優位性が保てなくなった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)特定媒体等への集中度の高さについて
当社は、取引先企業のニーズに応じてFacebookやGoogleが運営する広告媒体及びCriteoが運営する広告サービスの配信先媒体への広告配信を行っており、2019年5月期第3四半期累計期間において、当社の広告出稿額に占める各媒体の構成比は、Facebookが5割程度と高く、続いてCriteoが2割程度、Googleが1割程度の水準にあります。当社はこれらの各プラットフォームとの良好な関係を構築しており、新機能開発についても積極的に協議しており、更なる関係強化に努める方針です。また、LINEをはじめ、他のプラットフォームとの関係強化にも取り組んでおり、リスクの逓減に努めております。
しかしながら、これら運営者側の広告掲載可否基準の変更や何らかの方針転換により、広告配信量が減少した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)新規事業について
当社は、今後も引き続き積極的に新サービスもしくは新規事業に取り組んでいく方針であります。現状において構想しているサービスとしては、これまで当社が広告最適化において蓄積した構造化データやそのノウハウを活用してデジタルプラットフォーマーが展開する多様なサービスに対応・配信していくことに加え、これらの構造化データを機械学習に活用することで配信効果のより精緻な測定や媒体毎の予算配分の自動化等を目指しております。
しかしながら、新規事業においては、採算性に不透明な点が多く結果的に当初予想した収益が得られず不採算となった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)内部管理体制の充実について
当社は今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制のより一層の充実を図る必要があると認識しており、今後、事業規模の拡大に合わせて内部管理体制も充実・強化させていく方針です。
しかしながら、事業の急速な拡大等により事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)特定の人物への依存について
当社の代表取締役社長である塚田耕司は、当社の創業者であり、2006年の創業以来代表取締役を務めております。同氏は、当社創業前においてもWeb制作会社の経営を10年近く行ってきているなど経営経験が豊富であり、かつインターネット及びデジタルマーケティングに関する豊富な知識と経験を有していることから、経営戦略の構築やその実行に際して重要な役割を果たしております。
当社は、豊富な経験や知識を有する人材を経営メンバーとして招聘することで経営体制の強化を図るとともに、各事業部門のリーダーに権限委譲を適宜行っていくことで、同氏に過度に依存しない体制の整備を進めております。
しかしながら、現状では何らかの理由により同氏が当社の業務を行うことが困難となった場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人材の確保・育成について
当社は、今後の更なる事業拡大に対応するため、優秀な人材の確保と育成を重要課題の一つであると位置づけております。とくに、エンジニアをはじめとした技術系職員の採用においては、他社との獲得競争が激しさを増し、人材の流動性は高い状況が続くものと思われます。当社では、魅力のある職場環境を構築し、社員の能力やモチベーション向上に資するため、人材育成プログラムの確立や、福利厚生の充実、人事制度の整備・運用に取り組んでいく方針であります。
しかしながら、当社の計画どおりに人員が確保・育成できず、適正な人材配置が困難となった場合、競争力の低下や一層の業容拡大の制約要因が生じ、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)訴訟等の可能性について
当社は、顧客と契約を締結する際に、事前にトラブル時の責任範囲を限定的にするなど、過大な損害賠償の請求をされないようリスク管理を行っております。
しかしながら、契約時に想定していないトラブルの発生等取引先等との何らかの問題が生じた場合、これらに起因する損害賠償を請求される、あるいは訴訟を提起されるリスクがあります。かかる損害賠償の金額、訴訟の内容及び結果によっては、当社の社会的信用及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)損失の継続計上及び営業活動によるキャッシュ・フローのマイナス計上について
当社は、第11期事業年度(2015年6月1日から2016年5月31日まで)から第13期事業年度(2017年6月1日から2018年5月31日まで)にかけて3期連続して当期純損失を計上しており、また、第12期事業年度(2016年6月1日から2017年5月31日まで)及び第13期事業年度(2017年6月1日から2018年5月31日まで)において営業活動によるキャッシュ・フローも連続してマイナス計上しております。プロフェッショナルサービス事業においては第12期事業年度及び第13期事業年度に連続してセグメント利益を計上しているものの、SaaS事業においては新サービスの開発に伴う費用計上等により第12期事業年度及び第13期事業年度に連続してセグメント損失を計上したことが主な理由です。一方で、当社が展開する事業領域は継続して広がっており、売上高は一貫して増加し、現時点においては売上高の増加に伴い損益も改善しているため、経営戦略上も、今後の売上高の継続な成長とともに黒字の継続及び拡大並びに収益性の改善を前提とし、営業活動によるキャッシュ・フローも継続してプラスとなることを前提としております。
しかしながら、更なる売上拡大のための先行投資が想定以上にかさむ場合や、期待ほどの売上成長が見込めなかった場合、当社の業績及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
(15)借入比率について
当社は、創業以来必要最小限の運転資金と開発資金を確保するにとどめており、特に運転資金については複数の金融機関から借入れにより資金を調達し、資本効率の確保に努めてきました。
しかしながら、これらの借入れにより純資産に対して有利子負債の残高は高い水準にあることから、金融機関の融資方針や借入金利が変動した場合、当社の業績及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
(16)資金使途について
今回の新規株式公開において当社が計画する公募増資による資金調達の使途については、将来の成長や事業拡大に寄与すると考えられる新サービス展開を踏まえた研究開発費、人件費等に充当する計画としております。
しかしながら、当社の所属する業界の環境変化や、これに伴う今後の事業計画の見直し等により、投資による期待どおりの効果があげられなくなる可能性や、場合によっては資金使途の変更が生ずる可能性があります。この場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)配当政策について
当社は、株主への利益還元を経営の重要課題と位置付けておりますが、新規事業の開発のために必要な資金確保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。当面は内部留保を充実させ、大きな成長が見込める開発案件や新規事業展開への投資を優先していく方針です。
将来的には、財政状態及び投資機会等との比較衡量のうえ、株主への還元も検討していくこととしますが、配当実施の可能性及びその実施時期等については未定です。
(注) 1.Ruby Kaigiとは、日本で開催されているプログラミング言語Rubyに関する年次イベントのこと。
2.AWS Summitとは、アマゾンウェブサービスに関する日本最大のカンファレンスイベントのこと。