有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/08/27 15:00
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【項目】
79項目

事業等のリスク

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。
また、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社は、これらのリスクに対し発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針であります。
なお、本項記載の将来に関する事項は本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)経済、市場の動向について
当社が提供するサービスの主要顧客は主に資産運用を行う国内金融機関であります。現在、資産運用会社の運用残高は、「貯蓄から資産形成へ」という政策の後押しによって大きくなり、資産運用業界は堅調な事業環境にあると考えております。また、金融機関のIT投資についても、金融規制への対応やグループの統廃合によるシステムの統廃合、AI・IoT・ビッグデータ・RPAといった新たなテクノロジーの組み込みなど、業界全体として継続的に投資ニーズが存在しているものと考えております。しかしながら、国内外の景気動向の悪化等により、当該顧客のIT投資が大幅に抑制された場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、2018年8月より提供を開始したRPA関連サービスについては、日本国内RPA市場は2017年度の17,800百万円から2022年度には80,270百万円(注)と4.5倍まで拡大すると試算されており今後の需要は拡大していくものと考えておりますが、RPA市場の成長が期待されている水準よりも鈍化した場合、もしくは当社が高まるニーズを十分に取り込めない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(注)出典:株式会社矢野経済研究所「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場に関する調査(2018年)」(2019年2月14日発表)
(2)資産運用ビジネスへの依存度について
当社は、主に資産運用ビジネスを行う企業にサービスを提供しており、その顧客は当該事業を営む金融機関であります。金融ビジネスは景気に左右されやすいものの、顧客金融機関は、その大多数が国内外に上場している、または上場会社のグループ会社であり、基本的には強固な財務体質を備えております。
今後は、RPAの導入支援などで金融機関以外の幅広い業界に向けても事業を展開していく予定でありますが、当社が想定している通り金融機関以外の顧客開拓が進展する保証はありません。さらに、リーマン・ショックに代表されるような全世界規模での金融恐慌的な事態が発生した場合、また、金融機関グループの合併・統廃合等大幅な再編が行われた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)競合について
当社は、顧客のビジネス部門にて業務上ストレスなく作業が遂行できるよう最適化を行うことにより、同業他社との差別化を図っているものと考えておりますが、顧客企業においては、当社同様のシステムの受託開発等を行っているSIerとの取引を既に有していることから、当社とこれらの業者との間に競合が生じる可能性があります。また、顧客自身におけるシステムの開発及び運用も当社の事業機会を減少させる要因となります。
当社といたしましては、顧客システムの改善事項の抽出、顧客に対する有効な改善提案等を行うことにより、顧客から継続的な受注の確保、複数部署との取引等、サービス提供の拡大を図っております。
しかしながら、競合企業及び顧客企業のサービス力の向上等により、当社の競争力が相対的に低下し、受注が減少した場合や受注条件が悪化した場合等には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)IT業界における技術革新への対応について
当社の主要顧客である金融機関において使用されているシステムは、特に安定性及び継続性が重視されております。そのため、顧客が新規システムを導入する、もしくは既存のシステムを改修、更新する場合であっても、当社が未知であるソフトウェアを使用したシステム等、従来とは全く異なる規格のものが採用される可能性は高くないものと判断しておりますが、周辺機器なども含んだコンピュータハードウェア及びソフトウェアの機能は、日々向上しており、顧客が新たに導入したシステム等に対して、当社がただちに順応できない可能性もあります。
当社といたしましては、社内における情報共有、研修の実施等により、最新の技術の修得を図っているだけでなく、RPA等、重点分野を定めて新しい技術の習得にも努めております。
ただし、当社が、顧客が導入した新たなシステム等に対応できる技術を十分に習得できず、新規案件を失注した場合や、当社の対応が遅延し、プロジェクト自体の採算性が悪化した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)特定の顧客への高い依存度について
当社は、野村グループ(注)に対する依存度が相対的に高く、2018年12月期における売上高に占める同グループ(航空券手配代行サービスのみを提供している企業を除く)に対する割合は、54.0%となっております。当該取引比率は、同グループが国内の資産運用金融機関として、また、関連システムにおいて相当程度のシェアを有していたため、当社は設立時から取引の拡大を図ってきた結果であると考えております。同社グループの各社とは独立して契約を締結しており、また、当社は、今後においても、取引顧客基盤の一層の拡大等に努める方針でありますが、同社グループの受注が大幅に減少した場合や受注条件が大幅に悪化した場合には、当社の業績や財政状態に大きな影響を与える可能性があります。
なお、各社の2018年12月期の売上高の構成比はそれぞれ、NRIプロセスイノベーション株式会社22.9%、野村アセットマネジメント株式会社13.4%、野村ホールディングス株式会社6.8%、株式会社野村総合研究所6.8%、野村信託銀行株式会社4.0%、野村證券株式会社0.0%であります。
(注)野村グループ
野村ホールディングス株式会社(第115期 平成30年4月1日~平成31年3月31日)及び株式会社野村総合研究所(第54期 平成30年4月1日~平成31年3月31日)の有価証券報告書において関係会社として記載されている企業。
(6)検収時期等の遅延による業績見通しへの影響について
当社は収益認識基準として、工事進行基準や検収基準等を採用しております。
工事進行基準は、案件の進捗率に応じて収益を計上する方法であり、具体的には、見積総原価に対する発生原価の割合を持って売上高を計上しております。当社は、案件ごとに継続的に進捗状況に応じて見積総原価や予定案件期間の見直しを実施するなど適切な原価管理に取り組んでおりますが、その見積総原価や案件の進捗率は見通しに基づき計上しているため、修正される可能性があり、それらの見直しが必要になった場合は、売上計上時期の変更等により、当社の期間損益に影響を及ぼす可能性があります。
また、検収基準を採用する案件については、開発作業が完了した後に顧客の検収を受けます。当社では、各プロジェクトの進捗管理を定期的に実施しており、問題が生じれば即座に対応できる体制が構築されており、計画通り納品または検収できるよう努めております。しかしながら、今後、期末付近に検収が予定されている場合などにおいて、開発スケジュールや顧客の検収タイミング等が何らかの事情により検収が遅延し、収益計上に期ずれが生じた場合には、当社の期間損益に影響を及ぼす可能性があります。
(7)不採算プロジェクトの発生について
当社は、各プロジェクトについて想定される難易度及び工数に基づき見積りを作成し、適正な利益率を確保した上で、プロジェクトを受注しております。顧客企業の要求する仕様や想定される工数に乖離が生じないよう、要員管理、進捗管理及び予算管理を行っておりますが、予期し得ない不具合の発生等により、開発工数が大幅に増加し、不採算プロジェクトが発生するような場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)人材の確保と育成について
当社は、優秀な人材に裏付けられた高い技術力と提案力により業績を拡大してまいりました。今後も業容拡大のために、優秀な人材を確保し、教育・育成していくことが必要不可欠であり、採用活動の強化と教育研修の充実を推進してまいります。
例えば当社ではUiPath社の製品を活用できるRPA技術者を積極的に育成するために「UiPathアカデミートレーニング修了者」を2019年7月末現在に58名、また「UiPathアカデミー RPAディベロッパー認定資格保有者」を2019年7月末現在に11名とするなど、重点分野を定め戦略的に人材の確保と育成を図っています。
しかしながら、優秀な人材の採用・確保及び教育・育成が計画通りに進まない場合や、優秀な人材が社外流出した場合には、事業規模拡大の制約、顧客に提供するサービスの質の低下、それに起因する競争力の低下等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が受注するサービスの一部では、当社の人的資源の制約からビジネスパートナー等に対し、技術者派遣の要請や再委託を行っています。当該ビジネスパートナー等において優秀な人材確保が困難となった場合には、外注人員の単価高騰、外注人員の先行確保による先行費用発生、顧客に提供するサービスの制約及びそれに起因するサービスの質の低下等により、また外注で人員を確保した場合においても、当社の受注が減少する局面においては外注人員の調整に一定期間を要することが想定され、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)長時間労働について
当社が提供するサービスやシステム開発の体制や労働集約的な業務特性、属人性の高さから、従業員に長時間労働や過重労働が発生する可能性があります。当社では、長時間労働が発生しないよう採用による労働力の確保、経営層による長時間労働削減の呼びかけや、有給休暇取得奨励を行っているほか、勤怠管理システムを利用した労働時間管理、経営層への情報共有を行っています。しかしながら、当社のこうした努力にも拘わらず、過重労働やそれらを起因とした健康問題の発生やそれに伴う訴訟の提起、または生産性の低下などが生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法的規制等について
当社は、事業展開の必要上、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)及び「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」(労働者改正法)で定められた労働者派遣事業に該当するものがあります。
当社は、これらの法規制のみならず、業務に関連する諸法令を遵守し事業運営を行っておりますが、運用の不備等により法令義務違反が発生した場合には、当社の社会的信用の失墜等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)情報管理体制について
当社は、資産運用ビジネスを展開している金融機関に対して主に業務コンサルティング・システム設計・開発・運用保守を行っており、その過程において当該顧客の機密情報や個人情報を有することがあります。当社では、情報セキュリティに関するルールや基準を定め、厳格に運用するとともに、全役職員に対し、守秘義務の遵守、機密情報や個人情報の管理を徹底するよう常時教育研修、啓蒙活動を行っております。
しかしながら、不測の事態により、当該情報が外部に漏洩した場合には、当社の社会的信用の失墜、取引先顧客との取引停止等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)研究開発費について
当社は投資信託の運用レポートのファンドマネージャーのコメント生成やそのサポートを行うAIの開発等の研究開発活動を行っております。これらの先端技術の技術革新のスピードは速く、また競争も激しさを増しているため、今後の研究開発活動の進捗状況や計画に対する遅延の発生等により、当初想定よりも研究開発費が増加した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)創業者への依存について
当社の代表取締役社長である佐藤成信は、当社設立以来、当社の経営方針や経営戦略の決定をはじめ、事業構築や顧客獲得等において重要な役割を担ってまいりました。また、佐藤成信及び同氏の資産管理会社である合同会社未来企画の当社保有株式は、本書提出日現在当社発行済株式総数の38.2%であります。
当社は業容拡大の過程において人材の確保と育成に努めてきており、代表取締役社長に依存しない経営体質の構築・強化を進めております。
しかしながら、現段階においては、不測の事態により代表取締役社長が退任するような事態が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)情報システムのトラブルについて
当社は社内のコンピュータシステムに関して、バックアップ体制を確立することによる災害対策を講じておりますが、コンピュータウィルス、電気供給の停止、通信障害、通信事業者に起因するサービスの長期にわたる中断や停止等、現段階では予測不可能な事由によるシステムトラブルが生じた場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)自然災害について
大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、開発や業務の停止、設備の損壊、通信ネットワークの遮断や電力共有の制限等の不測の事態が発生した場合には、当社によるサービス提供に支障が生じる可能性があり、ひいては当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)配当政策について
当社は設立以来、当期純利益を計上した場合においても、経営基盤の強化及び積極的な事業展開のために内部留保の充実を図り、財務体質の強化と事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考え、配当を実施した実績はありません。
当社は、株主のへの利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、配当については、今後の経営成績及び財政状態、事業環境などを総合的に勘案し、内部留保とのバランスをとりつつ検討していく方針であります。ただし、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点で未定であります。
(17)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、当社取締役、監査役及び従業員に対するストック・オプション制度を採用しております。そのため、付与されている新株予約権の行使が行われた場合には、保有株式の株式価値が希薄化する可能性があります。本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は12.2%となっております。