有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/10 15:00
【資料】
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【項目】
145項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「少子高齢化社会の課題に挑戦し、地域社会を明るく元気にする」を経営理念として、0歳から高齢者までの健康と生活を守る企業として社会に貢献し、医薬、介護、保育事業の連携により「地域包括ケアシステム」の実現をコア・コンピタンスとして、利用者様や地域社会の信頼を確立してまいりたいと考えております。
(2) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社の経営環境は「少子高齢化社会」で表現されるように、団塊の世代が75歳になる2025年には全人口の3人に1人が高齢者となり、高齢者はその後も増加していくと推計されています。又、少子化により児童数は減少していますが、働く女性が増え東京圏に人口が集中していることから東京圏では待機児童が発生し、政府も待機児童の解消に向けて予算を大幅に増額するなど、保育ニーズは高い状況にあります。
現在、厚生労働省は高齢化社会への対応策として「地域包括ケアシステム」を推進し、医療、介護、生活支援、高齢者住宅の整備に取り組んでおり、当社はこうした市場環境を活かし、「地域包括ケアシステム」の担い手として、当社経営理念である「少子高齢化社会の課題に挑戦し、地域社会を明るく元気にする」の実現に向け、当社の医薬、介護、保育事業の連携により、「地域包括ケアシステム」を実現し、「命を支える企業」として信頼のブランドを確立させるべく、行政方針に沿った経営戦略をいち早く採用することで事業の成長を実現する方針です。
地域包括ケアシステムの実践例として、当社はこれまでに、日生オアシス和光(官民協働モデル)、日生ケアヴィレッジひばりが丘(団地再生モデル)の実績があります。国策に沿った複合的なサービスを一体提供することによって「地域包括ケアシステム」を実現できることは3事業を展開している当社の特徴であると考えております。この当社の特徴を活かしつつ、行政や大手デベロッパーと協力して、高い収益性を確保できる地域包括ケアシステムのさらなる開発を推進し、少子高齢化社会の課題解決をもって地域社会に貢献してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、事業計画の達成状況に関するチェックと対策に月次単位で取り組んでおり、具体的には、損益報告による計画と実績の差異について検討と対策を実施し、併せて事業本部別に計画達成のキーとなるKPIを設定して、計画と実績の差異について検討と対策を実施しています。
以下、事業セグメント別のKPIについて説明いたします。
①医薬事業
a 処方箋枚数
来客数を表すKPIです。
b 処方単価
客単価を表すKPIです。なお、処方単価は大きく分けて、薬剤料単価(医薬品自体の売価)と技術料単価(各種調剤加算)に分解されます。
c 後発品調剤率
調剤のうち、後発品(ジェネリック医薬品)を処方した割合です。国の方針として、80%の後発品調剤率を目指しており、診療報酬もこれに応じた設定がなされております。国が定める率を満たすことで、後発医薬品調剤体制加算がとれ、技術料単価が上昇することからKPIとしております。
d かかりつけ薬剤師指導料(件数)
国が方針として掲げる「かかりつけ薬剤師」としての調剤を行った際に得られる加算(技術料)です。勤続年数等の一定の基準を満たした薬剤師が患者様から「かかりつけ薬剤師」の同意書を得ることにより算定できます。かかりつけ薬剤師としての処方件数が増えることで、技術料の増加につながるとともに、リピーターの増加にもつながることからKPIとしております。
e 在宅処方件数
地域包括ケアシステムを推進する中では、来局した患者様に対する対応だけではなく、介護施設や患者様のご自宅へ薬剤師が訪問し、在宅処方を行うことが求められます。一定以上の在宅処方を行うことで、技術料の増加につながることからKPIとしております。
②介護事業
a サービス付き高齢者向け住宅の入居率
サービス付き高齢者向け住宅(日生オアシス)を地域拠点としたドミナント方式の事業展開を図る当社にとって、入居率の向上と安定推移は、付帯する介護サービス(デイサービス、訪問介護等)の利用者数増加につながるため、KPIとしております。
b 平均要介護度
介護報酬の金額は要介護度によって決定されるため、KPIとしております。
c デイサービス(通所介護)の利用者数
デイサービスは、施設規模に対する利用者数が適正に高い水準であることが重要になるため、KPIとしております。
③保育事業
a 受入児童数
保育園は児童の年齢別に定員が設定されており、受入児童数が定員に近い水準で推移することが経営上も重要であるためKPIとしております。
b 保育士採用におけるエントリー数、園見学数、選考面接数
保育士の採用について、採用説明会等へのエントリーを増やし、園見学へとつなげ、選考面接・内定への成約数を向上させることで、安定的な園運営、及び保育園数の拡大が可能になるため、KPIとしております。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
①少子高齢化社会の到来に伴う国の財政逼迫と各種政策補助の減少
少子高齢化社会の到来による高齢化率の上昇は、医療費・介護費の増大を招き、国は医療費・介護費を抑制しています。国の財政難による薬価や介護報酬引き下げは、調剤薬局と介護事業を運営する当社の売上の減少という形で経営に大きく影響することから、国の方針への早期対応により調剤報酬・介護報酬の各加算項目の早期取得を志向し、医薬・介護・保育事業の機能をワンストップで提供することによって、売上を伸ばす必要があるものと認識しております。
②待機児童の減少
少子化による待機児童の減少によって保育園の入園希望者が減少する懸念があります。当社は、待機児童率が高い市区町村(特に東京圏の駅前立地)を条件として計画的に認可保育園の開園を進めつつ、公設保育園の民間委託や学童保育といった、多様な保育サービスのバランスある展開を進めてまいります。
③有資格者の確保
当社事業においては、薬剤師、介護福祉士、保育士といった有資格者の確保が必要不可欠であります。新卒・中途問わず、地方における採用を強化し、各資格者の専門性を活かした事業本部別の就業体系を構築し、柔軟な勤務環境を整備することで人財の育成・強化を図ります。
④企業競争力の強化
ブランディングプロジェクトを立ち上げ、各事業本部のコンセプトを明確にした活動に取り組み、地域集中出店(ドミナント出店)を意識した開発を行うことにより、地域の認知度を高め、ブランド力を強化いたします。
⑤女性管理者の育成
店舗及び施設管理のための管理者の育成が課題であります。当社の職員は薬剤師・介護福祉士・保育士等の資格を持つ女性が多い点が特徴であり、女性管理者の登用のために、積極的に管理者教育を進めてまいります。
⑥業務の効率化
労働集約型の事業、併せて多店舗展開を行っている当社にとって、各拠点で行う業務の効率化と本社部門で行うデータの収集・分析は収益に直結することから、IT化による業務の効率化が課題と考えております。
⑦自己資本比率の向上
財務上の課題として自己資本比率の向上が必要と考えており、有利子負債を圧縮することによる総資産の軽減に取り組み、併せて戦略的投資による成長分野の収益拡大とキャッシュ・フローの充実を行い、着実な利益拡大により自己資本比率の向上を図ります。