有価証券届出書(新規公開時)

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2019/11/15 15:00
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事業等のリスク

以下において、当社の事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 事業環境に関するリスク
① シェアリングエコノミーサービス市場について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営環境」に記載のとおり、当社では、今後もシェアリングエコノミーサービス市場におけるスペースシェア市場の堅調な成長を見込んでおりますが、予測通りに市場が拡大しなかった場合には、中期経営計画を達成できない可能性や、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合他社の動向について
現在、スペースシェアリングをターゲットとした事業を展開する競合企業が複数存在しており、また、今後の市場規模拡大に伴い新規参入もあり得ると考えております。当社は幅広い顧客ニーズに対応できる掲載スペースのラインナップの拡充を進めるとともに、積極的なマーケティング活動やカスタマーサポートの充実に取り組んでおり、市場における優位性を構築し、競争力を向上させてまいりました。今後も顧客目線に立ってサービスをより充実させていくと同時に、知名度向上に向けた取り組みを積極的に行ってまいりますが、他に優れたビジネスモデルや競争力のある条件でサービスを提供する競合会社が現れた場合等には、既存事業者や新規参入事業者を含めた競争の激化により、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
当社が運営する「スペースマーケット」では、旅館業法に基づく許可を取得している旅館やホテルを仲介する「宿泊」カテゴリーを2016年から開始しております。そのため、当社は旅行業法の第三種国内旅行業登録を受けており、同法を遵守して業務を行なっております。なお、現状において取消事由となるような事象は発生しておりません。
許認可等の名称第三種国内旅行業登録
所轄官庁等東京都
取得年月2016年6月
許認可等の内容東京都知事:3-7179号
有効期限取得より5年間
取消事由旅行業法第19条

当社は、各種法規制遵守のため、法規制の改正動向等を踏まえ、適切に対応しておりますが、かかる動向を全て事前に正確に予測することは不可能又は著しく困難な場合もあり、当社がこれに適時かつ適切に対応できない場合には、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社が、法規制等に抵触しているとして何らかの行政処分を受けた場合、及び新たな法規制の適用又は規制当局の対応の重要な変更等により、当社が展開する「スペースマーケット」の運営に何らかの制約が生じた場合には、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 技術革新への対応について
当社のサービスは技術革新のスピードが早く、先端のニーズに合致させたシステム・ソリューションの構築を行うためには、常に先進の技術・ノウハウを把握し、取り入れていく必要があります。
このため、当社は、エンジニアの採用・育成や創造的な職場環境の整備、技術、知見、ノウハウの取得に注力するとともに、開発環境の整備等を進めております。しかしながら、係る知見やノウハウの獲得に困難が生じた場合、また技術革新に対する当社の対応が遅れた場合には、当社の競争力が低下する可能性があります。更に、新技術への対応のために追加的なシステム、人件費などの支出が拡大する可能性があります。このような場合には、当社の技術力低下、それに伴うサービスの質の低下、そして競争力の低下を招き、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業に関するリスク
① サービスの健全性の維持について
当社が展開するサービスは、取引の場であるマーケットプレイスを提供することをその基本的性質としております。このため当社では、マーケットプレイスの健全性確保のため、サービス内における禁止事項を利用規約に明記することにより、法令や公序良俗に反する行為の排除に努めております。また、監視・通報制度の強化により、問題発見及び対処の一層の迅速化を進める予定であります。
しかしながら、当社のサービスにおいて、公序良俗に違反するようなスペースの利用がされた場合や、第三者の知的財産権を侵害する行為、詐欺その他の法令違反行為等が行われた場合には、当社又は当社が提供するサービスに対する信頼性が低下し、ユーザ離れにつながる可能性があります。更に、問題となる行為を行った当事者だけでなく、当社もプラットフォームを提供する者としての責任を問われた場合、当社の企業イメージ、信頼性の毀損、ひいては当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 業績の季節変動について
当社の業績は、パーティーやイベント用途での貸しスペース利用需要が増えることに伴う季節変動があり、クリスマス、忘年会等での利用が増加する第4四半期(10月~12月)の売上が他の四半期に比べて高くなる傾向があります。
当社では、主に法人による会議室利用の促進等により売上の平準化を図っておりますが、上記需要を取り込めなかった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 認知度向上、新規ゲスト・法人ゲスト獲得、アライアンス拡充、スペース開拓が奏功しないリスク
当社は、当社サービスの認知度向上による新規顧客獲得や、法人顧客獲得やアライアンス拡充による顧客基盤拡大、および提供サービスの価値向上のためのさらなるスペース開拓等の施策を行なっておりますが、これらの施策が想定通りに奏功しなかった場合には、中期経営計画を達成できない可能性や、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 訴訟等の可能性
ホストもしくはゲストによる違法行為やトラブル、第三者の権利侵害があった場合等には、当社はホストもしくはゲストその他の第三者に対して賠償責任を負わない旨を利用規約等で定めているものの、当社に対してホストもしくはゲストその他の第三者から訴訟その他の請求を提起される可能性があります。
一方、当社が第三者に何らかの権利を侵害され、又は損害を被った場合には、訴訟等による当社の権利保護のために多大な費用を要する可能性もあります。
このような場合には、その訴訟等の内容又は請求額によっては、当社の事業及び業績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 知的財産権の管理について
当社は、運営するコンテンツ及びサービスに関する知的財産権の獲得に努めております。また、第三者の知的財産権の侵害を防ぐ体制として、当社のコーポレート部及び顧問弁護士への委託等による事前調査を行っております。
しかしながら、万が一、当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者から損害賠償請求や使用差止請求等の訴えを起こされる可能性があり、これらに対する対価の支払い等が発生する可能性があります。また、当社が保有する知的財産権について、第三者により侵害される可能性があるほか、当社が保有する権利の権利化が出来ない場合もあります。こうした場合、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 会社組織に関するリスク
① 優秀な人材の獲得・育成について
当社は、今後急速な成長が見込まれる事業の展開や企業規模の拡大に伴い、継続的に幅広く優秀な人材を採用し続けることが必須であると認識しております。質の高いサービスの安定稼働や競争力の向上に当たっては、開発部門を中心に極めて高度な技術力・企画力を有する人材が要求されていることから、一定以上の水準を満たす優秀な人材を継続的に採用すると共に、既存の人材の更なる育成・維持に積極的に努めていく必要性を強く認識しております。
しかしながら、当社の採用基準を満たす優秀な人材の確保や人材育成が計画通りに進まなかった場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 内部管理体制の構築について
当社は、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、更に法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
③ 特定人物への依存について
当社の代表取締役社長である重松大輔は、創業者であると同時に、創業以来当社の経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を果たしております。当社では、取締役会やその他会議体において役員及び社員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。
しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の経営執行を継続することが困難になった場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 個人情報の保護について
当社は、ゲスト・ホストの個人情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けております。これらの個人情報については、「プライバシーポリシー」及び「個人情報保護規程」を定めており、社内教育の徹底と管理体制の構築を行っております。しかしながら、何らかの理由でこれらの個人情報が外部に流出し、悪用されるといった事態が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
(4) その他のリスクについて
① 社歴の浅さについて
当社は、2014年1月に設立されており、設立後の経過期間は5年程度の社歴の浅い会社であります。当社が事業を展開するシェアリングエコノミー業界を取り巻く環境はスピードが速く流動的であるため、当社における経営計画の策定には不確定事象が含まれざるを得ない状況にあります。また、過年度の業績については当期純損失を計上していることや、急速な成長過程にあることも考慮すると、過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の業績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。
また、GMVその他の指標については、当社内において合理的と考える方法により算定したものであり、他社との比較可能性が必ずしもあるとは限らないことに加え、上記のような事情から過去の数値が今後の動向を判断する材料としては不十分な可能性があります。
② 継続的な投資・経常損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローについて
当社は、継続的な成長過程にあるため、認知度の向上、企業を中心とした顧客の開拓・深耕などに取り組んでいかなければならないと考えております。これらの取り組みを積極的に進めていることもあり、継続的に経常損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローが発生しております。
具体的には、サービスの提供初期から開発人員及びカスタマーサポート人員を中心とした採用活動を積極的に行っており、またプラットフォームにおけるゲスト・ホストの増加を促進するために各種マーケティング費用の投資を行っていることから、人件費及びマーケティング費用が先行投資として発生しており、第5期事業年度までの経営成績は営業赤字を継続しております。
先行投資の主な内訳としては、第4期事業年度において人件費が218,121千円、広告宣伝費及び販売促進費の合計が54,937千円、第5期事業年度において人件費が267,747千円、広告宣伝費及び販売促進費の合計が275,672千円となっており、第4期事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは△153,698千円、第5期事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは△278,964千円となっております。
一方で、上記のような先行投資が奏功したことで売上高及び売上総利益は継続して増加しており、第6期事業年度第3四半期累計期間においては6,869千円の営業黒字を計上しており、収益力の改善が進んでいる状況にあります。
今後も、これまで以上にカスタマーサポート部門や開発部門などにおける優秀な人材の採用を積極的に行うとともに、知名度と信頼度の向上のために広報・PR活動、顧客獲得のためのマーケティングコスト投下などを積極的に進め、売上高拡大に向けた取り組みを行っていく方針であります。
なお、想定どおりの採用が進まない場合、マーケティングPR等活動の効果が得られない場合には、計画通りに事業が伸長しない可能性や中期経営計画を達成できない可能性があり、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
③ ソフトウェアの資産計上の可能性について
当社では、現時点において、ソフトウェア開発に係るコストを全額費用として計上しております。しかしながら、当社業績が継続的に拡大し黒字転換を実現したことを踏まえ、「研究開発費に係る会計基準」に従って資産計上することが適切であると判断した場合には、当該コストを資産として計上する可能性があります。
その場合には、当該費用が減少する一方で、資産計上額及びそれに伴う減価償却費が増加し、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、資産計上後に、開発計画に変更が生じた場合や、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、除却あるいは減損の対象となる可能性があり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ システムトラブルについて
当社の事業は、すべてインターネットを介して行われており、そのサービス基盤はインターネットに接続するための通信ネットワークに依存をしております。安定的なサービス運営を行うために、サーバー設備等の強化や社内体制の構築を行っておりますが、アクセスの急激な増加等による負荷の拡大、地震等の自然災害や事故等により予期せぬトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こった場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 自然災害等について
地震等の自然災害及びテロ等の人災が発生した場合、当社の開発・運用業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限等により当社サービス提供に支障が生じる可能性のほか、被災に伴う掲載スペースの減少及びスペース利用需要の縮小に伴い、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 当社プラットフォームへの集客における外部検索エンジンへの依存について
当社が今後も高い成長率を持続していくためには、当社サービスの認知度を向上させ、新規顧客を獲得することが必要不可欠であると考えております。当社はSEOやSNS・リファラル施策を始めとしたマーケティング施策により継続してサイトの認知度向上に取り組んでおりますが、今後、検索エンジンの運営者が検索結果を表示するロジックを変更するなどして、それまで有効であったSEO対策が機能しなくなった場合には、当社における集客力が低下し、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 第三者への依存について
当社はユーザにスマートフォン向けアプリを提供していることから、Apple Inc.及びGoogle Inc.が運営するプラットフォームを通じてアプリを提供することが、現段階の当社の事業にとって重要な前提条件となっております。また、当社は、ユーザの決済手段として、クレジットカード決済、後払い決済等の外部の事業者が提供するサービスを導入しております。したがって、これらの事業者の動向、事業戦略及び当社との関係等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 資金使途について
今回計画している公募増資による調達資金の使途につきましては、プラットフォームサービスに係る無形固定資産の取得等に充当する予定であります。
しかしながら、経営環境の急激な変化等により、上記の資金使途へ予定どおり資金を投入したとしても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。また、市場環境の変化が激しく、計画の変更を迫られ調達資金を上記以外の目的で使用する可能性がありますが、その場合は速やかに資金使途の変更について開示を行う予定であります。
⑨ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、当社の役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。また、今後においても新株予約権を活用したインセンティブプランを活用していく方針であります。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日時点でこれらの新株予約権による潜在株式数は1,032,600株であり、潜在株式込みの発行済株式総数11,726,400株の8.8%に相当しております。
⑩ 配当政策について
当社は株主還元を適切に行っていくことが重要であると認識しており、剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切な配当の実施をしていくことを基本方針としております。しかしながら、本書提出日現在では事業も成長段階にあることから内部留保が重要であると考え、配当を行っておらず、今後の配当実施可能性及び実施時期については未定であります。
⑪ 税務上の繰越欠損金について
2018年12月期末には、当社に税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の経営成績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることになり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
⑫ ベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合による株式売却リスクについて
本書提出日現在における当社の発行済株式総数は10,693,800株であり、このうち3,283,500株(議決権比率ベースで所有割合30.7%)をベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下、「ベンチャーキャピタル等」という。)が所有しております。当社の株式公開後において、当社株式の株価推移によっては、ベンチャーキャピタル等が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性が考えられ、その場合、株式市場における当社株式の需給バランスが短期的に悪化し、当社株式の株価形成に影響を及ぼす可能性があります。