有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/05 15:00
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【項目】
122項目

事業等のリスク

当社の営業活動その他に係るリスク要因について、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。但し、当社の事業活動全てのリスクを網羅したものではなく、業績に影響を与えうるリスク要因はこれらに限定されるものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)エンジニアの採用
エンジニア派遣サービスが売上高の大半を占めている当社にとって、十分な数のエンジニアを採用しこれを維持することは業容拡大の必須事項であります。当社は、機電系エンジニア人材市場全体を網羅し、人工知能 (AI)を活用したマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」により、派遣社員・正社員・理工系学生と、全ての求職者との直接的な接点を持つサービスを展開しており、今後も当社のブランドや当社のエンジニア派遣サービスの知名度を高めるための施策等を実施し、エンジニアの確保に努めていく予定です。
しかしながら、国内におけるエンジニア人材の減少、派遣労働者としての就職を希望するエンジニア人材の減少、メーカーによるエンジニアの直接雇用の拡大や、同業者による採用競争の激化、当社の知名度を高めるための施策等が奏功しないこと、エンジニア業界における当社のレピュテーションの低下等によりエンジニアの確保が困難となった場合や、エンジニアの採用競争の激化等に伴うエンジニア人材の給与上昇等に対し、これに応じた派遣料金を設定できない場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は「コグナビ 新卒」のサービス提供を始めたことから、新卒のエンジニア採用を差し控える方針を採用いたしました。そのため、当社では新卒のエンジニア採用を見込んでいないことから十分なエンジニアを確保することが難しくなった場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、日本国内における人口減少等に伴い、エンジニア人材市場の規模は今後縮小傾向にあるため、それを克服する施策が不十分である場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)市場の景気動向及び顧客企業の景況感
当社では、「コグナビ」の仕組みを活用し、客観的な評価、分析によりエンジニアに最適な就業先を選び出すことで、2019年3月期のエンジニアの平均稼働率は96.9%、2020年3月期第3四半期累計期間の平均で95.0%の稼働率となっております。
しかしながら、金融危機や大規模な自然災害等の事象により景気が悪化した場合、特に当社の特化する機電系8業種の製造業企業に悪影響を与える事象が発生した場合には、顧客企業における経費の削減や人事方針の転換、派遣エンジニアの需要の減少等により、派遣エンジニア数の減少及び稼働率の低下、稼働時間の減少、契約条件の悪化等が起こる可能性があります。また、当社のエンジニア派遣に係る契約期間は原則として3か月であるため、景気が急激に悪化した場合には短期間のうちに多くの契約が終了する可能性があります。これらの状況が起こった場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社がエンジニア派遣のターゲットとする製造業大手企業は、国際的なマクロ経済及び地政学上の不安定さから、当社の技術社員を受け入れることに対してより慎重になっており、直近の技術社員の稼働数は下落傾向にあり、このような状況が継続すると、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)当社事業に関する許認可及び法的規制等
当社は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)、職業安定法に基づき、下記のとおり厚生労働大臣より労働者派遣事業、有料職業紹介事業の許可を取得しています。
許可事業届出官庁事業許可番号許可年月日有効期限
労働者派遣事業厚生労働省派13-3044052009年7月1日2022年6月30日
有料職業紹介事業厚生労働省13-ユ-3041682009年7月1日2022年6月30日

当社は、取得した事業許可に従い、エンジニア派遣及び有料職業紹介を行っておりますが、禁止業務への派遣や当局による是正指導に従わない等、関係諸法令に違反した場合には、事業の許可取消、事業停止等の処分を受け、又は違反の事実が公表されるなどのおそれがありますが、現時点でそのような問題はありません。当社では、社内規程の整備、運用の徹底により法令遵守の体制を構築しておりますが、関連諸法令に抵触する行為が発生した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、労働者派遣法をはじめとする関係諸法令は、経済環境、社会情勢の変化に伴い、その内容の見直しが行われており、当社事業に著しく不利な改正が実施された場合には、当該改正に対応するための追加的な支出が必要となり、また、顧客企業の派遣エンジニアに対する需要自体が減少する可能性もあり、これらの場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
労働者派遣法の改正により、2020年4月から、正規労働者と非正規労働者の待遇格差を是正するためのいわゆる「同一労働同一賃金」が導入される予定です。かかる改正により、当社が派遣エンジニアに支払う給与の金額は増加する見込みですが、かかる増加に応じた派遣料金の改定を実施できない場合、又は、派遣料金の改定により顧客企業の派遣エンジニアに対する需要自体が減少した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、「同一労働同一賃金」に係る規制を遵守するために、派遣元事業主において労働者の過半数代表者又は労働者の過半数により組織された労働組合との間で、派遣労働者の待遇に関し法令の要件を満たす労使協定を締結する方法によることが認められていますが、当該労使協定においては、派遣エンジニアに支払う給与の金額が「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」と同等以上となることを定める必要があります。かかる平均的な賃金の額が上昇した場合には、当社が支払う給与の金額がその分増加することになり、かかる増加に応じた派遣料金の改定を実施できない場合や派遣料金の改定により顧客企業の派遣エンジニアに対する需要自体が減少した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)競争状況
当社が属するエンジニア派遣・紹介市場は、激しい競争にさらされており、その競争は近年激化しています。
エンジニア派遣サービスにおける競合企業は、規模、派遣料金、資金力、営業力、マーケティング力、顧客基盤、エンジニアへのアクセス及び技術力等の点において当社より優れている場合があります。また、当社は、エンジニア紹介サービスにおいて、オンラインで求人情報を提供する企業とも競合しています。これらの競合企業が「コグナビ」と類似のマッチング機能を使用したサービスを導入する可能性もあります。
当社が技術革新に対応できず、また、顧客企業及びエンジニアのニーズを満たせなかった場合や競合企業の再編・統合が起きた場合、規制の状況に変化があった場合等には、これらの競合企業やその他の競合するサービスに対する競争力を維持することができず、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)新規事業の成否
当社は、従来からの主業であり、現在の当社の売上高の大半を占める「コグナビ 派遣」(エンジニア派遣サービス)に加えて、「コグナビ」プラットフォームをベースとした下記の4種類の新規サービスを準備してきましたが、2019年10月にこれら4種類全てが出揃いました。(詳細につきましては前記「第1 企業の概況 3 事業の内容」の記載をご参照ください。)
●コグナビ 転職(機電系エンジニア人材紹介サービス、2018年7月開始)
●コグナビ 新卒(新卒理工系学生就職紹介サービス、2019年7月開始)
●コグナビ タレントマネジメント(企業内エンジニア配置最適化サービス、2019年10月開始)
●コグナビ カレッジ(企業内エンジニア向け研修仲介サービス、2019年2月開始)
さらに、2021年3月期には「コグナビ 転職」に、新たにITエンジニア向けのサービスを追加する計画としております。
●コグナビ 転職 IT(IT系エンジニア人材紹介サービス、今後サービス提供予定)
しかしながら、これら新規サービスで予定どおりの機能が実現できないなどにより計画どおりサービスを提供できない状況となった場合や、新規サービスの知名度を高めることを目的として行うことを予定している広告等が想定されているようなエンジニア人材や顧客の獲得につながらなかった場合、サービスの開始に遅延又は障害が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、新規サービスに係る各分野における当社の経験の不足や競合企業の存在、当社及び「コグナビ」の知名度や評価の低迷、その他本「事業等のリスク」に記載のリスクの顕在化等により、サービスが計画どおりに普及しない場合やシステム利用料の徴収等当社の意図する料金体系を導入できない場合などには、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)経営陣への依存
当社の事業戦略の策定及び実行は、代表取締役社長の佐藤勉や常務取締役の竹内政博をはじめとする当社の経営陣に大きく依存しており、当社の成長には、経営陣をはじめとする人材の確保が不可欠です。
しかしながら、かかる人材を確保し維持し続けられる保証はなく、当社の主要な経営陣の業務の継続が困難になった場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)情報の管理及びセキュリティ
①顧客情報の管理
当社は、多数のエンジニアを顧客企業に派遣しており、当社の事業に係る情報のほか、顧客企業の組織に関する情報も取り扱っています。また、それぞれのエンジニアが顧客企業の機密情報に触れる機会が頻繁にあります。特に開発部門等は機密性の高い業務に関与する機会が多く、就業規則やマニュアル等で機密情報の管理を周知徹底しておりますが、これらの情報について漏洩が発生した場合には、顧客企業からの信用を損なうリスクや法的責任を負うリスクが大きいと認識しております。
②個人情報の管理
当社は、エンジニア派遣・紹介事業を主たる事業としており、エンジニア及び理工系学生を始めとした多くの個人情報を取り扱っております。当社事業の性格に鑑みると、個人情報を適正に管理・保管し、利用することが、特に重要であると考えております。
また、当社はプライバシーマークを取得し、個人情報の管理に関しては常に細心の注意を払っております。
これらの施策にも関わらず、顧客企業の機密情報や個人情報の外部流出が発生した場合やそれらの情報を違法又は不適切に管理又は利用したものとみなされた場合には、当社の社会的信用が失われるほか、損害賠償請求等により当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の情報システムにおけるデータ損失や漏洩により、当社の業務運営に支障が生じる可能性があります。
さらに、将来的に機密情報や個人情報の取扱いに係る規制又はその運用が厳格化された場合、当社の提供するサービスの質や利便性の低下等をもたらし、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)ITシステム障害
当社は、「コグナビ」の各サービスでITを駆使したビジネスモデルを構築し、効率的に事業を推進しております。したがって、情報システムの停止、ネットワークのトラブルや大規模な自然災害等によるシステム障害が発生した場合、それらの復旧作業による直接・間接コストの発生や業務の停滞、当社の社会的信用の低下や法的責任が生じる可能性があります。当社は、システム障害リスクを検討し、障害を未然に防ぐ体制を整備しております。
しかしながら、当社の想定を超えた事態により、システム障害が発生した場合には、事業活動が停滞し、又は情報システムの整備に係る費用が増加することにより、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、「コグナビ」によるマッチング機能の開発及び管理の一部について、第三者が提供するシステムやソフトウエアに依存しています。そのほか、当社は、当社のサービスに関するデータの保存について、第三者が提供するクラウド等のサービスに依存しています。
したがって、当社が当該第三者のサービスを利用できなくなった場合には、当社のサービスの運営が困難となり、また、他の代替的サービスを利用するための費用が生じるため、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)エンジニアの正社員雇用
当社は、2019年12月31日現在で4,628名の技術社員を正社員として雇用しております。
当社は、エンジニアを原則として正社員として雇用しており、解雇は容易でないうえに、顧客企業に派遣されていない技術社員についても、法令上一定割合の給与を支払う必要があります。そのため、エンジニア需要の減少、紛争、法規制の変化、経済危機などの急激な社会情勢の変化、競業他社との競合の激化等により、エンジニアの派遣者数の減少やエンジニア派遣に係る契約期間の短縮、稼働率・稼働時間・稼働日数の低下等が発生した場合には、原価率が上昇し、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)労務
当社は、前項に記載のとおり多くのエンジニアを正社員として雇用しており、労働環境に配慮した労務管理を行っているほか、教育研修体制の強化などにより、エンジニアのスキルアップにも力を入れております。
しかしながら、給与や就業時間をはじめとした雇用条件等に関して従業員との間で紛争が発生する可能性があります。このような場合、とりわけ当社の社会的信用が失われることにより、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)コンプライアンス
当社は、コンプライアンス規程に基づきコンプライアンスの徹底を図っておりますが、業務遂行の過程で取得した機密情報の漏えい等により紛争等が発生する可能性があります。
また、当社は多数のエンジニアが顧客の事業所内で派遣業務に従事していることから、顧客企業との間に紛争等が発生する可能性があります。
さらに当社は、顧客企業に対しても、契約に基づく労働時間の管理や必要な手続きを徹底していただくなど、エンジニア派遣に関する法令遵守を働きかけています。
しかしながら、これらの取組みにもかかわらず、コンプライアンスに反する行為が当社役職員により行われた場合、直接的な損害への賠償に加え、当社の社会的評価の悪化等により顧客企業との取引の停止やエンジニアの採用が困難になるなど、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、上記紛争等が訴訟に発展するなど、その推移によっては損害賠償義務が発生したり、社会的信用が失われる可能性があり、そのような場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)自然災害・事故
当社は、全国に事業拠点を有しております。自然災害や事故については、全役職員の安否確認システムを導入するほか、損害保険等による被害の補てん対策を講じております。
しかしながら、地震や風水害等の自然災害や予期せぬ事故等により、当社あるいは顧客企業の施設や設備が損壊する等の被害が発生した場合には、サービスの提供を継続することができなくなるなどの可能性があり、そのような場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)固定資産の減損
当社では、将来の収益獲得、費用削減が確実であると認められた開発費用については無形固定資産(ソフトウエア又はソフトウエア仮勘定)に計上しております。「固定資産の減損に係る会計基準」では、減損の兆候が認められる資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減額した当該金額を減損損失として損益計算書に計上することとされています。今後の無形固定資産に関する費用削減効果や収益状況によって減損損失を計上することとなる場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、2020年3月期第3四半期累計期間において、エンジニア紹介サービスにおける「コグナビ 転職」及び「コグナビ 新卒」に係るソフトウエア等について、当社が当初想定していたキャッシュ・フローが見込めないとの判断に基づき、減損損失655,906千円を計上しました。詳細については、「第5 経理の状況 1.財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(四半期損益計算書関係)」をご参照ください。
(14)知的財産権
当社は、知的財産権の申請を行うことがありますが、それによって競合他社による当社の知的財産権の不適切な使用を防止できる保証はなく、競合他社が独自に類似の技術を開発する可能性もあります。また、当社が万が一、第三者の知的財産権を侵害した場合、当該第三者から訴訟等を提起され補償等の支出が必要となる可能性があるほか、社会的信用の低下や当該知的財産権を利用したサービスの停止等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15)大株主との関係
本書提出日現在、当社株式の大部分は、創業者の大久保泉氏及びその親族並びにその資産管理会社である株式会社ラテール・エンタプライズにより保有されています。
かかる大株主の一部は、当社株式の上場時において、その保有する当社株式を一定程度売却する予定ではありますが、当社株式の上場後においても相当数の当社株式を保有する予定です。大株主が当社の事業その他に関して有する利益は他の株主の利益と異なる可能性があり、その保有方針や議決権の行使方針によっては、取締役の選解任、企業結合取引等の当社の重要な決定に影響を与えるなど、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。