有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/01/24 15:00
【資料】
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【項目】
137項目

事業等のリスク

以下において、当社グループの事業展開等に関するリスク要因となる可能性がある主要な事項を記載しております。また、必ずしも事業展開上のリスクに該当しないと考えられる事項についても、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。
なお、以下の記載事項は特に断りがない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 子育て支援における国や自治体の方針変更や関連法令等の改正等について
2000年に認可保育所の運営に株式会社を含む多様な運営形態が認められて以降、様々な事業者がその運営に乗り出しました。子ども・子育て支援制度において、国や自治体は待機児童解消に向けて多様な支援策を講じ、各事業者は業容を拡大しております。
また、当社グループが現在運営する事業は、児童福祉法、子ども・子育て支援法、及び食品衛生法等の法規制が存在します。
当社グループは今後も国の方針に基づき、各自治体との連携を深め業容拡大に邁進してまいりますが、国や自治体の方針が変更され、補助金の削減や株式会社による保育所の開設が制限される場合、または、関連法令の制定・改廃が行われた場合、当社グループの事業活動が制約を受け、業績に影響を与える可能性があります。
(2) 認可事業であることについて
当社グループが運営する保育所の多くは、児童福祉法に基づき施設ごとに所轄する自治体宛に保育所開設の申請を行い、審査を経て許可等を受け運営されております。当社グループの運営保育所において、過去に認可等の取消事例はありませんが、今後、何らかの事由により認可等が取り消される場合や、新規施設の認可等が得られない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(3) 子ども・子育て支援事業の依存について
当社グループの事業は、認可等を受けた保育所の運営を主体とする子ども・子育て支援に関する事業であります。従って、子ども・子育て支援に関する政策や市場の動向が、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。
厚生労働省より、2013年4月に、待機児童解消に向けた「待機児童解消加速化プラン」が公表され、多数の事業者が新規参入し保育所を開設しております。厚生労働省が発表した「H31.4.1時点保育所等整備量・待機児童数の公表について」によると、2019年4月1日現在における待機児童数は16,772人であり、待機児童数はいまだ高水準であると言えます。従って、国や自治体のその解消に向けた積極的な取り組みは今後も継続していくと考えられます。
一方で、少子化が進んでいることも事実であり、想定した園児数を確保できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 人材の確保及びその育成について
当社グループでは、運営施設数の増加に伴い、保育士資格を有する保育士や指導員・スタッフの確保が急務となっております。このため、当社グループでは、採用活動を強化しており、人事部門の強化、社員紹介制度の構築、保育士専門の人材紹介会社からの紹介強化等の施策を実施しております。また、教育研修制度や人事評価制度の充実を図り、人材確保と離職率の低下に向けた制度の充実も図っております。
しかしながら、予定した職員数が確保できない場合、新規施設開園計画の遅延や既存施設の運営計画に支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(5) 施設開園場所の確保について
当社グループが開園する保育所の多くは、不動産所有者が、当社グループの保育所仕様に基づいて建設した施設を賃貸して運営しております。待機児童が多い自治体においては、その解消に向け新規保育所に対する期待も大きく、当社グループにおいても積極的に新規開園を進めていく所存であります。そのためには、新規開設候補地を短期間で探し出さなければならず、不動産開発業者や不動産所有者とのネットワークが重要となってまいります。当社グループでは金融機関や不動産開発業者等と常に必要な不動産情報が交換できる関係を構築しており、その確保に全力を尽くしております。
しかしながら、候補地選定の難航、近隣住民の反対運動の発生による開園遅延あるいは開園を断念するに至った場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(6) 食の安全性について
当社グループは、各施設の園児に対して、必要な栄養量が確保できるように献立を作成し、各施設にて調理・提供しております。そのために、食品衛生法に基づき、厳選した食材管理及び衛生管理を実施し、食中毒や賞味期限切れ食材の使用、異物混入等の事故を起こさないよう努力しております。しかしながら、何らかの理由により食の安全に関する重大な事故が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(7) 感染症について
当社グループでは安全な保育環境を確保し、保育の質を向上するため、施設全体について定期的に消毒を実施しており、感染症に対するマニュアルに基づいた対策を実施しております。しかしながら、新型インフルエンザやノロウィルス等の感染症が発生し、当該施設に従事する保育士やスタッフ・児童が多数感染した場合、施設運営に支障が出る可能性があります。このような場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8) 運営施設における事故のリスクについて
当社グループでは、施設の運営に関し事故等が起こらないよう万全の体制で臨んでおりますが、万が一重大な事故やトラブルが発生した場合には、行政処分による営業停止や園児の転園等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(9) 大規模災害について
当社グループの運営する施設は東京都・神奈川県に集中しております。このため、これらの地域において大規模な地震や火災・集中豪雨等による水害等の発生により、園児や従業員、施設の建物が被害を受けた場合、当該施設の運営が困難となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(10) 個人情報保護について
当社グループでは、園児及びその保護者の氏名や住所等多くの個人情報を保持しております。これら顧客の個人情報の保管・取扱いについては規程に基づく管理体制を構築することに努めておりますが、万が一漏洩事故が発生した場合、顧客からだけではなく、広く社会的な信用失墜を招き、施設の運営に支障が生じる等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(11) 資金調達について
当社グループでは、施設の新規開園に関する設備資金を金融機関からの借入により調達しており、総資産に対する有利子負債合計の割合は、2019年3月期45.4%、2020年3月期第2四半期連結会計期間末30.4%と高い比率で推移しております。従って、借入金利の上昇等の金融情勢の変化、または取引金融機関の方針変更等により予定必要資金の調達が困難となり、新規施設の開園が遅延または中止となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(12) 創業者への依存について
当社の代表取締役社長である中西正文は、株式会社Kids Smile Projectの創業者及び創業以来最高経営責任者であり、中西正文の資産管理会社である株式会社エーエムカンパニーとあわせて、当連結会計年度末現在、当社株式を100.0%所有する大株主であります。また同氏の配偶者である取締役副社長土居亜由美(戸籍名:中西亜由美)についても創業以来当社グループの施設開園及び運営に携わり、副社長としての任を担っております。
両氏ともに保育業界に精通しており、施設や教育プログラム開発・経営方針・経営戦略において重要な役割を果たしております。
当社グループでは、業務運営を司る取締役に対する権限移譲や、幹部社員に対する教育・研修を徹底させることにより、両氏に依存しない経営体制を早期に構築していく所存でありますが、何らかの影響により両氏ともに、あるいは一方でも当社グループの経営を継続することが出来なくなった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(13) 固定資産の減損について
当社グループが運営する施設の業績が悪化し、その回復の見込みがない場合、あるいは新規開園から一定期間を経過しても業績改善の見込みがない場合、有形固定資産の減損処理が必要となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(14) 新たに保育所等を開設した場合の経営成績に与える影響について
新たに保育所等の施設を開設した場合の当社グループの経営成績に与える影響を個々の施設ごとに見ると、一般的に以下のような特徴があります。
営業損益・・・・開設時には3歳~5歳児等が必ずしも定員を満たさない場合があるため、開設初年度から数年間は営業赤字になる可能性がありますが、児童年齢の持ち上がりとともに年々、改善される傾向にあります。
また、新規開設資金のうち費用処理されたものは販売費及び一般管理費に計上されます。
営業外収益・・・新規開設資金のうち内装工事費等に対して自治体より補助金が交付された場合、営業外収益の「補助金収入」に計上されます。

このため、新規開設施設の件数増加等により、一時的に営業損益の悪化要因になる傾向がありますが、補助金収入(営業外収益)の増加要因となります。一方、新規開設施設の件数減少等は一時的に営業損益の改善となりますが、補助金収入(営業外収益)は減少いたします。
当社グループはこれまで積極的に新規開設を行っており、経営成績における新規開設の影響が大きくなっております。しかしながら、運営施設数に対する新規開設施設数の割合が減少するに伴い、今後は3歳~5歳児が定員を満たさないことによる営業損益の悪化及び新規開設に伴う開設補助金(営業外損益)の減少等の影響が徐々に緩和するものと考えられます。
(15) 補助金により固定資産を取得した場合の会計処理について
自治体からの補助金により固定資産を取得した場合、税務上、固定資産の取得価額から補助金の額を控除する圧縮記帳を行うことが認められております。財務会計において圧縮記帳の方法は、補助金の額を控除した残額を固定資産に計上し毎期の減価償却も控除後の額をもとに計上する直接減額方式と、補助金を収益計上し、固定資産を取得価額で計上する剰余金処分方式とがあります。
当社グループは剰余金処分方式を採用しており、直接減額方式と比較して、新たに保育所を開設した事業年度においては補助金収入が計上されるものの、その後の減価償却費は多額に計上されることになります。当社グループでは保育所等の減価償却費を売上原価に計上し、補助金収入を営業外収益に計上しているため、減価償却費の負担等により営業損失を計上し、営業外収益の補助金収入等にて経常利益を計上しております。
なお、剰余金処分方式においても、利益剰余金と税額の計算により、税務上の効果は直接減額方式と同様となります。
(16) 四半期別業績変動要因について
当社グループにおける保育所等は4月に新規開設されるものが大部分となっております。そのため、第1四半期連結会計期間(4月~6月)において、多額の新規開設費用、補助金収入が計上される傾向にあります。