有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/01/30 15:00
【資料】
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【項目】
97項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「葬儀再生は、日本再生」を企業理念とし、葬儀を通じて改めて人との結びつきに価値を感じて生きようとする人であふれる世の中の実現を目指し、家族葬を提供することで人と人との絆をつなげ、これを以て社会貢献とすることを経営の基本方針としております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループの収益力の向上のためには、葬儀ご依頼件数の増加と葬儀単価の向上が重要となります。このためご依頼件数増加につながる「来館からのご依頼数」及び「ウェブからの事後入電数」、並びに葬儀単価の向上につながる「オリジナルプラン葬儀件数」の3つを重要業績評価指標(KPI)とし、これらの数値を向上させる施策を通じて、収益力の向上に取り組んでおります。
(注)来館からのご依頼数とは、葬儀相談のためにホールに来館頂き、そこから受注につながった件数で、件数増加の指標としています。
ウェブからの事後入電数とは、故人が逝去された後(事後)にご遺族が当社グループのウェブサイトを閲覧し、表示された電話番号から問い合わせや相談を受けた件数で、件数増加の指標としています。
オリジナルプラン葬儀件数とは、通常のセットプランよりも高額の葬儀単価が見込めるオリジナルプランの受注件数で、葬儀単価上昇の指標としています。
(3) 経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境は、日本の人口動態に密接に関係しております。日本の人口は戦後一貫して増加を続け、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じましたが、高齢化の進展に伴い、人口千人あたりの死亡率は10人を超え、死亡数は引き続き増加を続けており、葬儀の需要も拡大を続けると予想されます。
日本における死亡数と死亡率の推移
1990年1995年2000年2005年2010年2015年
死亡数
(単位:千人)
820.305922.139961.6531083.7961197.0121290.444
人口千人あたり
死亡率
(単位:人)
6.77.47.78.69.510.3

(注)総務省統計局「人口統計 長期時系列データ 平成29年」及び厚生労働省「平成30年 我が国の人口動態」より
そのような環境の中、当社グループが2つのビジネスモデル(葬儀施行業、ネット集客業)を構築するに至った背景は、①会葬者数の減少、②不透明な業界慣行、③儀礼儀式に止まった葬儀、④零細事業者が多い葬儀業界構造、の4つの事業環境に対応する必要性を認識したためであります。
それぞれの事業環境への対応策は以下のとおりであります。
①会葬者数の減少
少子高齢化の進展や地域コミュニティの関係性の希薄化に伴い、葬儀における会葬者数は減少の一途を辿っています。その中で、従来のように百名を超える会葬者を想定した大ホールにて少人数の葬儀を行うことは「寂しい葬儀」という芳しくない印象を与えて故人や喪主の尊厳を損ないかねません。また、投資効率の観点からみても、大規模ホールは投資回収が長期間にわたり維持費が高額になる等、投資効率が悪く大きなリスクが内在します。そこで当社グループは、葬儀施行業において「家族葬」という葬儀カテゴリーに注力し、「一日一組」限定で葬儀を行うことで顧客満足を得るとともに、会葬者数の変化に対応した小規模ホールを展開することで投資効率を高める直営モデルを推進しております。
但し、自社ホール出店では十分な投資効率を得られない地域もあり、このような地域については、「第二部 企業情報 第1 企業の概況 3事業の内容」に記載している委託モデルも活用しながら、「家族葬のファミーユ」ブランドの展開を拡大してまいります。
②不透明な業界慣行
生活者が葬儀内容や価格に詳しくないという状況のなかで、不要なアイテムや高価格のアイテムを売り込むといった従来の葬儀業界の悪しき慣習が一部で残っております。このような状況を打破し、生活者の支持を得る必要があると考えた当社グループでは、アイテム選択の煩わしさと価格の不透明さからお客様を解放するためのシンプルで明瞭な葬儀プランを提供することで、お客様の納得感を高めております。
③儀礼儀式に止まった葬儀
従来の葬儀は儀礼儀式を滞りなく行うことのみに重きが置かれていました。しかし、葬儀は本来、故人を心を込めてお見送りし、残されたご家族が「家族のきずな」を再確認する機会であるべきだと考えております。このような儀礼儀式に止まっている従来の葬儀からの脱却の必要性を当社グループは認識し、徹底的にお客様のお気持ちに耳を傾け、ご家族の故人に対する弔いの心情を理解し、お客様ごとに異なるそれらの想いを葬儀に表現する「オリジナルプラン」というサービスを開発するなど、従来の葬儀に囚われない新たな葬儀サービスの提案を行っております。
④零細事業者が多い葬儀業界構造
2018年の葬儀業界の市場規模は1兆8千億円と推計されていますが、最大手の企業でもシェアは約3%、上位10社を合わせても20%に満たず(注)、多くの小規模の企業がそれぞれの地域で葬儀を担っております。一方、顧客ニーズの多様化があらゆる業界で起こり、またインターネットの普及により情報が拡散するようになった環境において、IT業界をはじめとした他業種からの参入も進んでおります。係る状況下において、葬儀業界も、これまでのような地域に閉ざされた営業範囲のみで経営ができる時代ではなくなってきていると考えております。当社グループは、このような構造変化を成長の機会と捉えており、M&Aを活用して零細事業者を事業承継していくことで、直営ホールエリアの全国展開を推進してまいります。
(注)株式会社矢野経済研究所「フューネラルビジネスの実態と将来展望2019年版」より