有価証券届出書(新規公開時)

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2020/07/20 15:00
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124項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示をしております。当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書の本項以外の記載内容も併せて慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項につきましては、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)市場および事業環境に関するリスク
①EC市場の動向
当社はECサイト構築を主たる事業としていることから、BtoBおよびBtoCのEC市場のさらなる増大(流通総額の増大)が成長の基本的な条件と考えております。
経済産業省が2019年5月に公表した「平成30年度電子商取引に関する市場調査」によると、日本国内のBtoBおよびBtoCのEC市場は順調に拡大をしておりますが、セキュリティの脅威や法規制、その他予期せぬ要因等によって、EC市場が順調に成長しない場合または、インターネット市場そのものが成長しない場合は、当社の業績に影響を与える可能性があります。
②技術革新について
インターネットにおいては絶え間なく技術革新が起こっており、当社が属するサービス分野でも新しい技術やデバイスを利用したシステムが登場し続けております。これら新しいシステムは、従来は不可能であった機能や、より高度な機能を実装したサービスとして提供することが可能であります。
当社では、常に最新の技術動向へ目を向け、新機能の開発や新サービスの提供に新しい技術等を積極的に導入することにより、当サービスの技術的優位性を維持する努力をしております。
しかしながら、インターネットの技術革新に追随しながら新機能や新サービスを提供し続けるためには、それを可能にする従業員の確保や育成など、開発体制の強化と維持を欠かすことができず、何らかの要因により当社がそれに耐えうる開発体制の強化と維持が困難になる場合は、技術的優位性を発揮できなくなり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③ソフトウエアの減損について
当社は固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。当社は新たに開発した機能等を固定資産に計上しておりますが、将来、技術革新や市場動向の変化等により技術の陳腐化やサービスの販売鈍化が発生することで経営環境が著しく悪化し、収益性の低下等減損の兆候が認められ、減損損失を認識すべきであると判定された場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、開発した機能等に資産性が無いと判断された場合、資産計上は認められず、一括費用処理することとなり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容および当社サービスに関するリスク
①特定のサービスへの依存について
当社はクラウド型ECサイトプラットフォーム「ebisumart」の運用をしており、主たる収益はECサイトの新規構築時の構築収入(フロー)および、サービス運用に伴う課金収入(ストック)であります。当事業年度における売上高のほとんどは、構築収入およびサービス課金収入に依存しております。今後、新たな技術革新、社会情勢の変化、法的規制の導入や予期せぬ事象の発生等により、サービスの競争力の低下による獲得店舗数の減少や、サービス運営が困難となった場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②競合との競争激化によるリスク
当社サービスの技術的な側面からみた参入障壁は、著しく高いものとは言えず、したがって、資金力、ブランド力を有する大手企業をはじめとする競合他社が参入し、類似サービスを提供する事業者の増加が予想されます。当社といたしましてはAPIを公開してパートナー企業が参加しやすい環境を構築することで業界での地位確立に努めておりますが、価格競争など市場競争が一層激化し、サービス価格の引き下げを強いられる、または市場シェアが低下するなどにより、業績に悪影響を与える可能性があります。あるいは、全く新しい発想や技術を活用した競合サービスが登場し、かつそれが市場に支持されることにより、当社サービスの相対的な優位性が低下した場合、当社の事業及び業績に悪影響を与える可能性があります。
③SLA(サービスレベルアグリーメント)賠償適用によるリスク
当社は、当社サービスの月間の稼働時間及び一定時間あたりの処理速度(一定時間あたりのアクセス数)等の技術的なサービス提供能力について、顧客に対して一定の保証水準を設けており、「利用規約」に定め、あらかじめこれを提示しております。当社は、SLAに定める保証水準を達成できなかった場合には、SLAの賠償条項に基づき、月次利用料金の範囲内で利用料金を減額しなければならず、かかる減額が多額になった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
④システム受託開発売上について
当社の売上のうち、システム受託開発に関する売上につきましては、プロジェクト・マネジメント制を採用しシステムの導入から運用保守まで一貫して1つのチームが対応することによりきめ細かな対応を行うよう努めておりますが、顧客の要望による仕様変更やトラブル等により納期が遅れた場合、売上の計上が遅れ、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、顧客の要望と当社の認識に著しい差異があった場合に、大幅な仕様変更等が必要になることがあり、利益率の低下につながる可能性があります。
(3)システム障害に関するリスク
①システム障害・通信トラブルについて
当社の事業では、サービスの安定的な提供を維持するため、外部の提供するクラウドサービスを通じて当社サービスを提供しております。
当社は、外部のクラウドサービスを、地震、落雷、火災等の災害に対して十分な耐性を有すると判断される施設に限定し、慎重に検討した上で選定しております。
しかしながら、自然災害、火災、コンピュータウィルス、通信トラブル、第三者による不正行為、サーバーへの過剰負荷、人為的ミス等あらゆる原因によりサーバー及びシステムが正常に稼働できなくなった場合、あるいは当社が過去に蓄積してきた商品及び価格情報が消失した場合、当社のサービスが停止する可能性があります。
上記の理由により当社のサービスが停止した場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②プログラム不良によるリスク
開発したプログラムの不具合を原因として、システムに動作不良等が発生し、当社の提供するサービスが中断または停止する可能性があります。
当社では、システムの開発にあたり、綿密な開発計画の策定からテストの実施まで十分な管理を行っており、可能な限りこのような事態の発生を未然に防ぐための開発体制の構築に努めております。
しかしながら、このような事態が頻繁に発生した場合には、当サービスに対する信頼性が失われ、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③特定のサーバーへの依存によるリスク
当社のサービスにおいては、AWS(Amazon Web Services,Inc.)をデータセンターとして利用しており、第16期(自 2018年6月1日 至 2019年5月31日)におけるAWSに対するサーバー費用は154,066千円でありますが、今後も事業拡大に伴いサーバー費用が増加することが想定されます。障害が生じ代替手段の構築ができずに、サービスが長時間にわたり中断する等の事象が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)法的規制及び知的財産等に関するリスク
①法的規制について
当社がサービスを提供する場合、又はサービス提供の全部又は一部を他の事業者に委託する場合に、深く関与する法律の一例として、以下のような法律があります。
「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」
「特定商取引に関する法律」
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」
「個人情報の保護に関する法律」
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」
「下請代金支払遅延等防止法」
当社は、これらの法律を遵守するために必要な社内体制の整備、当社サービスの利用規約の整備等を行っておりますが、法律改正等により当社の整備状況に不足が生じ、または当社が受ける規制や責任の範囲が拡大した場合、その後の当社事業及び業績に影響を与える可能性があります。
②個人情報の取り扱いについて
当社サービス内に格納された顧客が保有する個人情報等のデータについては、その閲覧、編集、削除等の一切の管理を顧客が自ら行うものとし、当社は、これらの情報資産を安全にかつ効率的に管理するためのプラットフォームを顧客に提供するのみで、当社が自ら顧客のデータの閲覧、編集、削除等の管理を行うことはありません。
しかしながら、当社は、あらかじめ顧客の同意を得て、その依頼に基づき、一時的に顧客保有の個人情報等を預かり、編集等を行うことがあります。
当社は個人情報の取扱いに関する重要性、危険性を十分に認識し、個人情報の適切な管理を実現するために、「個人情報保護規程」を整備しております。さらに、当社のホームページに「個人情報保護方針」を公開し、これら規程及び方針に準拠した行動指針やガイドラインを制定するとともに、役職員への教育、研修を通じて、個人情報を適正に管理する体制の構築に注力しております。
なお、当社は、2015年8月にISO/IEC27001の認証を取得しており、その後継続して更新しておりますが、個人情報の収集や管理の過程等において、不測の事態により個人情報の漏洩等が発生した場合、当社への多額の損害賠償請求やISO/IEC27001認証取消処分または罰金等が課されるなど、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③情報セキュリティ対策の不備によるリスク
当社は、当サービスを提供することで、顧客が保有する多くの情報資産を安全かつ効率的に管理することができるプラットフォームを提供しております。
また当社も事業運営に必要なさまざまな情報資産を保有しており、情報資産を安全に管理することは、重要な経営課題として認識し、適切なセキュリティ対策を講じるよう努めております。
当社では、情報セキュリティマネジメントシステムの整備を進めており、適切な情報セキュリティの実現を図っております。
しかしながら、当社の予測を超える当社サービスへの不正アクセス、データの盗難、紛失等により、または情報セキュリティ対策の不備により、情報資産の漏洩、紛失、改竄等があった場合、当社への多額の損害賠償請求や認証資格の取消処分または罰金等が課される可能性があり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④知的財産権について
当社は、知的財産権の保護をコンプライアンスの観点から重要な課題であると認識しており、専門家と連携して可能な範囲で調査対応を行っております。当社が提供する「ebisumart」の一部について第三者が所有権を有するソフトウエアを使用しておりますが、当該第三者との間で使用許諾に係る覚書を締結しており、第三者の特許権、著作権等の知的財産権の侵害は無いと認識しております。しかしながら、ソフトウエア開発事業において第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社の事業領域に関連する知的財産権について第三者の特許取得が認められた場合、あるいは将来特許取得が認められた場合、当社の事業遂行の必要上これらの特許権者に対して使用料を負担する等の対応を余儀なくされる可能性があります。この場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)新製品開発に係る投資によるリスク
当社では、新機能の開発及び新サービスの提供を目的として、積極的に「ebisumart」に係る開発活動を実施しております。
しかしながら、予測不能な外部環境の変化により、開発した新機能や新サービスが期待どおりの成果をあげられない可能性があり、この場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(6)事業運営体制に係わるリスク
①特定の人物への依存について
当社の創業者であり大株主でもある代表取締役社長兼CEO蕪木 登は、当社の強みである事業の創出やノウハウを蓄積しており、事業の推進において重要な役割を果たしております。
当社は、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を目指し、幹部人材の育成及び強化を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の業務執行ができない事態となった場合には、当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
②人材の確保及び育成
当社において優秀な人材の確保、育成及び定着は今後の業容拡大のための重要課題であります。新入社員及び中途入社社員に対する研修の実施をはじめ、リーダー層となる中堅社員への幹部教育を通じ、将来を担う優秀な人材の確保・育成に努め、社内研修等を通じて役職員間のコミュニケーションを図ることで、定着率の向上を図っております。しかしながら、これらの施策が効果的である保証はなく、必要な人材を採用できない場合、また採用し育成した役職員が当社の事業に寄与しなかった場合、あるいは育成した役職員が社外流出した場合には、優秀な人材の確保に支障をきたし、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)その他リスク
①新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。
これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。また、当社では今後も新株予約権の付与を行う可能性があり、この場合、さらに1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
なお、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は211,600株(発行済株式総数3,220,000株の6.6%)であり、当社は今後もストックオプション制度を活用していく方針であります。
②配当政策について
当社では、利益配分につきましては、経営成績及び財政状態を勘案して、株主への利益配当を実現することを基本方針としております。しかしながら、当社は本書提出日現在成長過程にあり、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先して、創業以来無配当としてまいりました。
現在は、内部留保の充実に努めておりますが、将来的には、経営成績及び財政状態を勘案しながら株主への利益の配当を検討する方針であります。ただし、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。
③資金使途について
今回計画している公募増資による調達資金の使途につきましては、当社サービスの認知度を向上させるためのマーケティング費用、事業拡大のために必要なソフトウエア開発費用、事業規模拡大による人員増加に対応するための事務所増床関連費用、借入金の返済資金の一部に充当する予定であります。しかしながら、変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点での計画以外の使途にも充当される可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性もあります。
④SMBCベンチャーキャピタル1号投資事業有限責任組合との関係
本書提出日現在、SMBCベンチャーキャピタル1号投資事業有限責任組合が議決権の31.1%を保有しております。同組合は、株式会社三井住友フィナンシャルグループの完全子会社である株式会社三井住友銀行が出資する投資事業組合であります。
同組合による当社株式取得は純投資であり、当社と同組合の間に人的関係・営業上の取引関係はありません。なお、当社は、株式会社三井住友銀行とは、預金・融資等の通常の銀行取引はありますが、それ以外の営業上の取引関係はなく、人的関係もありません。
同組合は、上場後ロックアップ期間の経過後においては当社株式を売却する可能性があるため、当社株式の株価形成に影響を与える可能性があります。また、株式会社三井住友フィナンシャルグループの完全子会社であり、本募集及び売出しの主幹事証券であるSMBC日興証券株式会社は、その業務上、当社株式について、別途自己勘定での売買取引又は顧客に対する投資勧誘等を行う場合があります。
⑤自然災害、事故等について
当社では、自然災害、事故等に備え、定期的バックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めておりますが、当社所在地又はインターネットデータセンター所在地近辺において、大地震等の自然災害が発生した場合、当社設備の環境や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生して、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑥新型コロナウィルスの影響について
新型コロナウィルス等の感染症、伝染病等の流行等の影響により経済活動が停滞し、国内消費が悪化する可能性があります。このような環境のなか、当社が属するEC業界におきましては外出自粛に伴う巣籠消費の増加等によりECサービスの利用が増加したこともあり、業績に影響を与えるような事象は現在のところ発生しておりません。今後につきましても在宅勤務や巣籠消費等の定着により継続的な需要が期待できるものと考えており、当社としましてはオンラインでの顧客面談やセミナーの開催等により営業活動を進めてまいる所存であります。しかしながら、経済活動の停滞が長期化した場合は当社の顧客であるEC事業者の業績悪化が拡大し、顧客の経営方針が変更となり、商談中の案件が失注となる可能性があるほか、テレワークの影響により問い合わせから契約成立までのリードタイムが長期化し売上の計上時期が遅れ、業績に影響を及ぼす可能性があります。