有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/08/21 15:00
【資料】
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【項目】
159項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境について
① 経営環境の変化について
当社グループはITビジネスソリューション事業を展開しており、法人を主要顧客としております。また、当社グループは主力サービスとして、法人向けグループウェア「rakumo」を展開しており、勤怠管理やカレンダー、経費精算、稟議申請、社内掲示板等、顧客企業が日常的に使用する機能を幅広く提供しております。グループウェアの入れ替えには全社的な対応が必要となることも多く、容易に解約される性質の製品ではないと考えられ、ライセンスの販売額に対する月間解約率は低位(2020年上期平均1%未満)で推移しております。
また、サービス料金を顧客企業の使用期間及びユーザー数に応じて定期定額契約(サブスクリプション)として課金することで、継続的な収益(リカーリングレベニュー)を得ることができる「サブスクリプション型リカーリングレベニューモデル」を採用しております。
これらにより、サービスが複数年に渡り継続して利用されることで、解約数が新規契約数を上回らない限り、収益が前年度を上回るというストック型ビジネスとしての安定性がありながら、新規契約数の増加に伴う高い成長をも目指すことができるビジネスを展開しております。
しかしながら、今後の経済情勢や景気動向の変化等により、顧客企業の情報化への投資が抑制されるような場合、新規・追加受注が想定通り進まない場合又は解約率が当社の想定を上回った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② クラウド市場の動向について
当社グループは、法人向けグループウェア「rakumo」を展開しており、クラウド型でのサービス提供を行っております。クラウド市場は急速な成長を続けており、当社グループは今後もこの傾向は継続するものと見込んでおり、同市場でのさらなる事業展開を図っていく計画であります。
しかしながら、経済情勢や景気動向の変化による企業の情報化投資の抑制や、規制の導入等予期せぬ要因によりクラウド市場の成長が鈍化するような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 技術革新への対応について
当社グループが属するインターネット業界においては、新技術の開発や新サービス出現のスピードが早く、顧客ニーズも早期に変化する等、変化の激しい業界となっております。当社グループでは、最新の技術動向や環境変化に関する情報収集、優秀な人材の確保や教育によるノウハウの蓄積等に積極的に取り組み、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。
しかしながら、何らかの理由で技術革新や顧客ニーズへの対応が遅れた場合や、新技術への対応のため想定を超える投資が必要となった場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 競合について
当社グループが事業を展開する法人向けグループウェア市場は、競合企業が複数存在しており、今後クラウド市場の普及に伴い、規模の大小を問わず競合企業の新規参入が予測されます。これら競合他社の中には、当社グループに比べ大きな資本力や技術力、販売力等の経営資源及び顧客基盤等を保有している企業が含まれます。
当社グループは、製品開発力の強化や継続的な製品改修・サービス品質の向上等により、競争力の維持に努めておりますが、競合企業や新規参入企業との競争激化により、当社グループが想定している事業展開が図れない場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 海外展開について
当社グループは、高い成長を実現するため海外展開を進めていく方針ですが、海外におけるグループウェアに関わる商習慣や事業環境の差異等を含め、国内における事業展開以上に高いリスクが存在することは否めず、そのリスクに対応しきれない場合や、国内と比較してマーケットの開拓や収益化が想定通り進まない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ ソフトウエアの減損について
当社グループでは、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた開発費用をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として資産計上しております。このソフトウエアについて、重大な将来計画、使用状況等の変更やサービスの陳腐化等により、収益獲得又は費用削減効果が大幅に損なわれ、ソフトウエアの減損が必要となる場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業及びサービス展開について
① Google社及びsalesforce.com社との関係について
当社が顧客に提供しているアプリケーションは、Google社が提供するクラウドプラットフォーム及びsalesforce.com社が提供するクラウドプラットフォーム上に構築されております。
また、当社は、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社とG Suiteに関する再販売代理店契約を締結しており、株式会社セールスフォース・ドットコムとの間でも当社の製品と結合したソリューションの一部として、同社グループサービスの再販を可能とする契約をそれぞれ締結しております。
現時点において両社が日本から撤退する予定はなく、また、当社としては、両社と円滑な関係を維持できていると考えていることから、今後の契約関係も安定して継続するものと考えております。
しかしながら、両社の経営戦略の変更により日本でのプラットフォームの提供が廃止・停止となった場合、プラットフォームの機能に障害が発生して当社のアプリケーションに影響が生じた場合、プラットフォームの競争優位性が失われた場合、プラットフォーム利用料及び各サービスの引上げを要求された場合、当社が解除事由に抵触したこと等を理由に契約を解除された場合には、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 組織規模について
当社グループの従業員数は90名(2020年7月31日現在)であり、小規模な組織であると認識しております。現時点においては、当社グループの規模に対して適切な人員体制が構築出来ているものと考えておりますが、今後の事業拡大に応じて、人員増強、内部管理体制の充実を図っていく必要があると考えております。
しかしながら、事業の拡大に応じた人員増強が順調に進まなかった場合や内部管理体制の充実がなされなかった場合には、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、本書提出日現在までに人員面については一定程度の基盤を整えたことから、2021年12月期においては、当社単体では若干名の採用を予定しております。
③ 人材の確保や育成について
当社グループが継続して事業拡大を進めていくためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が不可欠であると認識しております。そのため、継続的な人材採用や育成に加え、定着率向上に向けた各種施策を行っております。
しかしながら、優秀な人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合等には、経常的な業務運営及び事業拡大等に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ システムトラブルについて
当社グループが顧客に提供しているアプリケーションは、クラウドという特性上、インターネットを経由して行われており、インターネットに接続するための通信ネットワークやインフラストラクチャーに依存しております。当社はシステムトラブルを最大限回避すべく、企業向けクラウドプラットフォームとして信頼されているGoogle社が提供するクラウドプラットフォーム及びsalesforce.com社が提供するクラウドプラットフォーム上にアプリケーションを構築しております。
しかしながら、自然災害や事故、プログラム不良、不正アクセス、その他何らかの要因により予期しえないトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こるような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 情報管理体制について
当社グループは、提供するサービスに関連して多数の顧客企業に関する情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産の保護や漏洩リスクを回避するため、情報セキュリティ基本方針を定め、関連規程を整備・運用しております。しかしながら、何らかの理由により重要な情報資産の漏洩、消失、不正利用等が発生した場合、当社グループの信用失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)その他
① 配当政策について
当社は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しておりますが、当社は現在、成長過程にあると考えており、事業の効率化と事業拡大のための投資等に内部留保資金を充当し、なお一層の業容拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。
そのため、今後の事業展開及び財務基盤強化のために必要な内部留保の確保を優先し、当面は無配を予定しておりますが、今後の経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益配当についても検討してまいります。なお、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。
② 過年度の経営成績について
当社グループの主要なサービスは、継続的に当社グループサービスを利用する顧客を増加させることで収益を積み上げ、投資回収を図る形態となっております。当社グループは、継続的な成長のため、サービス開発力の強化や優秀な人材の確保・育成、認知度の向上等に努めてまいりました。近年、これらの取り組みを積極的に進めていることもあり、第11期から第15期事業年度において、経常損失及び当期純損失を計上しております。また、第15期連結会計年度において、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。
今後も引き続き、サービス開発力の強化や優秀な人材の確保・育成、認知度の向上等に努めてまいりますが、一方で、経常利益や当期純利益を定常的に計上するべく、各種経営指標を注視しながら事業運営を行ってまいります。しかしながら、想定通りに効果が得られない場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、第16期連結会計年度及び第16期事業年度においては、営業利益及び経常利益を計上しており、利益を創出できるフェーズに入っていると認識しております。
③ 税務上の繰越欠損金について
当社は第16期事業年度末時点において、税務上の繰越欠損金を有しております。繰越欠損金は、一般的に将来の課税所得から控除することが可能であり、将来の税額を減額することができますが、今後の税制改正の内容によっては、納税負担額を軽減できない可能性もあります。
また、当社グループの経営成績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
④ 新株予約権の行使による株式の希薄化について
当社では、当社グループの役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しており、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は8.7%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
⑤ ベンチャーキャピタル等の当社株式保有割合について
本書提出日現在における当社の発行済株式総数は5,026,500株であり、そのうちベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合等(以下、「VC等」という。)が保有する株式数は2,790,100株、当社株式の公募増資前の発行済株式総数に対する割合は55.5%であります。
一般的に、VC等が未上場会社の株式を取得する場合、上場後に保有株式を売却しキャピタルゲインを得ることがその目的のひとつであり、VC等は当社の株式上場後に、それまで保有していた株式の一部または全部を売却することが想定されます。当該株式の売却によっては、当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、株価の形成に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 新型コロナウイルス感染症に関するリスク
現時点で当社はクラウド製品を扱っていることもあり、当該ビジネスの特性から新型コロナウイルス感染症による主要サービスに関する経営成績や財務状況へのマイナスの影響は、当社が認識している限り生じておりません。
一方、新型コロナウイルス感染症等の感染症が長期間にわたり拡大・蔓延した場合、当社グループの従業員の感染リスクや人材の確保への影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらの影響を回避又は軽減するために、事業所内における感染防止対策を徹底し、従業員の安全確保に務めるとともに、感染者が発生した場合の対応を検討する等、危機管理の徹底に取り組んでおります。また、在宅環境における業務・開発環境の整備を行う等、テレワークの推進にあたっております。