有価証券届出書(新規公開時)

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2020/11/18 15:00
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152項目

事業等のリスク

以下において、当社グループの事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社の財政状態、経営成績等に与える影響の内容につきましては、合理的に予見することが困難であるものについては具体的には記載しておりません。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
①市場について
当社グループが提供するUX・動画・DXソリューションの対象市場として、国内コンサルティングサービス市場、動画広告市場、DX市場を想定しております。
国内コンサルティングサービスの2019年の市場規模は8,217億円であり、2024年には1兆円に達するものと推定されています(出典:International Data Corporation (IDC) 「国内ビジネスコンサルティング市場予測、2020年〜2024年」)。
また、動画広告市場は2020年に3,289億円、2023年には5,065億円と引き続き拡大傾向が続く見込みです(出典:㈱サイバーエージェント、㈱デジタルインファクト「国内動画広告の市場動向調査」)。
さらに、国内DX市場は、2019年に7,912億円の規模と想定され、2030年には3兆425億円の規模にまで成長すると予測されています(出典:富士キメラ総研「2020 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」)
当社グループでは、今後も市場の順調な成長を見込んでおりますが、上記の予測通りに市場が拡大しなかった場合には、当社グループの事業展開及び財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②競合他社の動向について
現在、当社グループがサービス提供を行う市場をターゲットとした事業を展開する競合企業が複数存在しており、また、今後の市場規模拡大に伴い新規参入が相次ぐと考えております。当社グループは幅広い顧客ニーズに対応できるサービスラインナップの拡充を進め、積極的なマーケティング活動やカスタマーサポートの充実に取り組むとともに、グロースハッカーネットワークを創出することで市場における優位性を構築し、競争力を向上させてまいりました。今後も顧客目線に立ってサービスをより充実させていくと同時に、知名度向上に向けた取り組みを積極的に行ってまいりますが、他に優れたビジネスモデルの競合会社が現れた場合等には、既存事業者や新規参入事業者を含めた競争の激化により、当社グループの事業展開及び財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③技術革新への対応について
当社グループのサービスは、技術革新のスピードが早く、先端のニーズに合致させたシステムソリューションの構築を行うためには、常に先進の技術ノウハウを把握し、当社グループの技術に取り入れていく必要があります。
このため、当社グループは、エンジニアの採用・育成や創造的な職場環境の整備、技術、知見、ノウハウの取得に注力するとともに、開発環境の整備等を進めております。しかしながら、係る知見やノウハウの獲得に困難が生じた場合、また技術革新に対する当社グループの対応が遅れた場合には、当社グループの競争力が低下する可能性があります。更に、新技術への対応のために追加的なシステム、人件費などの支出が拡大する可能性があります。このような場合には、当社グループの技術力低下、それに伴うサービスの質の低下、そして競争力の低下を招き、当社グループの事業展開及び財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④システムトラブルについて
当社グループの事業は、すべてインターネットを介して行われており、そのサービス基盤はインターネットに接続するための通信ネットワークに依存をしております。安定的なサービス運営を行うために、サーバー設備等の強化や社内体制の構築を行っておりますが、アクセスの急激な増加等による負荷の拡大、地震等の自然災害や事故等により予期せぬトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こった場合には、当社グループの事業展開及び財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤サイトソリューション事業への依存について
当社グループの売上高は、主力事業であるサイトソリューション事業への依存が大きくなっております。サイトソリューション事業を展開している市場が拡大していることに加え、クライアント数の増加やサービスの拡充等により、今後もサイトソリューション事業は拡大していくものと考えておりますが、クライアント数の減少や市場規模の縮小等の要因によりサイトソリューション事業の売上高が減少した場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥Kaizen Video事業について
当社グループでは、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、新規事業への取り組みを進めていく方針であります。
その取り組みの一環として、2016年8月よりインターネット広告のクリエイティブを改善する「Kaizen Ad」の提供を開始し、Kaizen Video事業の運営を開始しておりますが、その売上規模は全体の28%程度(2019年度)であり、また本事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間を要することが予想され、全体の利益率を低下させる可能性があります。
また、将来の事業環境の変化等により、本事業が当社の目論見どおりに推移せず、本事業への投資に対し、十分な回収を行うことができなかった場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大による経済的影響について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大に伴い、当社グループではリモートワークの推奨や会議室における座席間隔の確保等を実施し、柔軟に事業を継続できる体制の整備に努めておりますが、国内及び海外主要各国において終息に向かわず、拡大が今後数年間にわたり続いた場合は、深刻な経済的影響が生じ、市場の縮小や個人消費の冷え込みに繋がることが予想されます。今後、事態がさらに深刻化、長期化した場合には、当社グループの事業展開及び財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業体制に関するリスクについて
①優秀な人材の獲得・育成について
当社グループは、今後急速な成長が見込まれる事業の展開や企業規模の拡大に伴い、継続的に幅広く優秀な人材を採用し続けることが必須であると認識しております。質の高いサービスの安定稼働や競争力の向上に当たっては、開発部門を中心に高度な技術力・企画力を有する人材が要求されていることから、一定以上の水準を満たす優秀な人材を継続的に採用すると共に、成長ポテンシャルの高い人材の採用及び既存の人材の更なる育成・維持に積極的に努めていく必要性を強く認識しております。
しかしながら、当社グループの採用基準を満たす優秀な人材の確保や人材育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②内部管理体制の構築について
当社グループは、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、更に法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③特定人物への依存について
当社の代表取締役である須藤憲司は、創業者であると同時に創業以来当社グループの経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を果たしております。当社グループでは、取締役会やその他会議体において役員及び社員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。
しかしながら、現状では何らかの理由により同氏が当社グループの経営執行を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④海外展開に関するリスク
当社グループは、収益機会の拡大に向けて米国で「Kaizen Ad」を展開しており、今後とも海外展開の強化を図っていく予定であります。
他方、海外展開にあたっては、法律・税制を含む各種規制、経済的・政治的不安、文化・クライアントの嗜好・商慣習の違い、為替変動等の様々な潜在的リスク、事業展開に必要な人材の確保の困難性、及び展開国において競争力を有する競合他社との競争リスクが存在します。当社グループがこのようなリスクに対処できない場合、当社グループの事業展開及び財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)会社組織に関するリスク
①個人情報の保護について
当社グループは、グロースハッカー登録情報をはじめとする個人情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けております。これらの個人情報については、個人情報保護方針及び個人情報保護規程を定めており、社内教育の徹底と管理体制の構築を行っております。しかしながら、何らかの理由でこれらの個人情報が外部に流出し、悪用されるといった事態が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績並びに企業グループとしての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
②法的規制について
当社グループが運営・提供する「Kaizen Platform」及び「Kaizen Ad」では、「著作権法」、「個人情報の保護に関する法律」、「下請代金支払遅延防止法」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定電子メールの送信の適正化に関する法律」といった法規制の対象となっております。
当社グループは、これらの法規制を遵守した運営を行ってきており、今後も社内教育や体制の構築等を行っていく予定であります。しかしながら、今後新たな法令の制定や、既存法令の強化等が行われ、当社グループが運営する事業が規制の対象になる等制約を受ける場合には、当社グループの事業展開及び財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③知的財産権の管理について
当社グループは、運営するサービスに関する知的財産権の獲得に努めております。また、第三者の知的財産権の侵害を防ぐ体制として、当社グループの経営管理部門及び顧問弁護士への委託等による事前調査を行っております。
しかしながら、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者から損害賠償請求や使用差止請求等の訴えを起こされる可能性があり、これらに対する対価の支払い等が発生する可能性があります。また、当社グループが保有する知的財産権について、第三者により侵害される可能性があります。こうした場合、当社グループの事業展開及び財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他のリスクについて
①継続的な投資と赤字計上について
当社グループは、継続的な成長のため、認知度の向上、グロースハッカー数の拡大、大企業を中心としたクライアントの開拓・深耕などに取り組んでいかなければならないと考えております。創業以来、これらの取り組みを積極的に進めていることもあり、2019年12月期以降の四半期毎の業績は以下のとおり推移しております。
(2019年12月期) (単位:千円)
第1四半期
連結会計期間
(自 2019年1月1日
至 2019年3月31日)
第2四半期
連結会計期間
(自 2019年4月1日
至 2019年6月30日)
第3四半期
連結会計期間
(自 2019年7月1日
至 2019年9月30日)
第4四半期
連結会計期間
(自 2019年10月1日
至 2019年12月31日)
連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
売上高372,109312,764345,150324,9221,354,946
売上総利益195,796133,387153,80599,155582,145
営業利益又は営業損失
(△)
19,775△60,479△38,864△82,715△162,284

(2020年12月期) (単位:千円)
第1四半期
連結会計期間
(自 2020年1月1日
至 2020年3月31日)
第2四半期
連結会計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年6月30日)
第3四半期
連結会計期間
(自 2020年7月1日
至 2020年9月30日)
売上高396,431349,147447,353
売上総利益189,352146,974232,595
営業利益又は営業損失
(△)
△27,397△34,88363,240

(注)1.2019年12月期の各四半期連結会計期間の数値については、監査法人による四半期レビューを受けておりません。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
今後も、これまで以上に営業や開発などにおける優秀な人材の採用を積極的に行うとともに、知名度と信頼度の向上のために広報・PR活動、クライアント獲得のためのマーケティングコスト投下などを積極的に進め、売上高拡大に向けた取り組みを行っていく方針であります。
なお、想定どおりの採用が進まない場合、広報・PR活動及びマーケティング活動の効果が得られない場合には、中期経営計画が達成できない可能性や、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②資金使途について
今回計画している公募増資による調達資金の使途につきましては、事業拡大に伴い増加する人件費やマーケティング費等の運転資金に充当する予定であります。
しかしながら、経営環境の急激な変化等により、上記の資金使途へ予定どおり資金を投入したとしても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。また、市場環境の変化が激しく、計画の変更を迫られ調達資金を上記以外の目的で使用する可能性がありますが、その場合は速やかに資金使途の変更について開示を行う予定であります。
③新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社グループは、当社グループの役員及び従業員等に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。また、今後においても新株予約権を利用したインセンティブプランを活用していく方針であります。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日時点でこれらの新株予約権による潜在株式数は2,012,318株であり、発行済株式総数13,874,473株の14.5%に相当しております。
④ベンチャーキャピタルの株式保有割合について
本書提出日現在における当社の発行済株式総数は13,874,473株であり、このうち5,963,336株(発行済株式の43.0%、潜在株式を含めると総数15,886,791株に対して5,963,336株保有の37.5%)についてはベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下「ベンチャーキャピタル」という。)が保有しております。
一般的に、ベンチャーキャピタルが未上場会社の株式を取得する場合、上場後に保有する株式を売却しキャピタルゲインを得ることがその目的のひとつであり、当社におきましても、上場後にベンチャーキャピタルにより株式が売却される可能性があります。そのような場合には、短期的に需給が悪化し当社の株価が低下する可能性があります。
⑤配当政策について
当社は株主還元を適切に行っていくことが重要であると認識しており、剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切な配当の実施をしていくことを基本方針としております。しかしながら、本書提出日現在では事業も成長段階にあることから内部留保が重要であると考え、配当を行っておらず、今後の配当実施可能性及び実施時期については未定であります。
⑥税務上の繰越欠損金について
2019年12月期末には、当社グループに税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の経営成績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上され支払われることになり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を及ぼします。