有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/16 15:00
【資料】
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【項目】
132項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針・経営戦略
当社は、ブランドメーカーのECビジネスへの参入障壁を解消し、主要ECプラットフォームから自社ECサイトまでECビジネスを総合支援する様々なサービスを展開しております。
EC市場規模自体は毎年拡大してきておりますが、当該EC市場規模の拡大においては、Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングなど主要ECプラットフォームの市場規模の拡大が寄与しています。主要ECプラットフォームの市場規模は、年々増加傾向にあり、富士経済「ECプラットフォームとの共存を模索するメーカーの通販チャネル戦略2019」によれば、2014年には市場全体の51.1%であったECプラットフォーム市場の割合は、2019年においては67.7%を占めるまでに成長しており、今後も成長が見込まれております。一方で、自社ECサイトのみでEC事業展開しているブランドメーカーもまだ多数存在します。また、ECプラットフォームに出店しているケースでも、ECビジネス売上構成比に占めるECプラットフォーム売上の割合は、自社ECサイトより低くEC市場規模の成長を反映した売上結果となっていないことが、特に大手メーカー企業には多い傾向です。
これらの背景から、今後は多数のブランドメーカーが、主要ECプラットフォームでのECビジネス展開に注力することが予測されており、複数ECプラットフォームに対応してサービス提供している当社にとっては、一層のビジネス機会と捉えています。
また、今後も拡大すると見込まれるEC市場と、コロナ禍を体験した大手・中小メーカー企業にとって、EC事業の成否は事業戦略上より重要な取り組みと位置づけられる背景から、新規参入及び一層の強化へ向けた多額の投資をしていくことが予想され、今後の当社にとって拡大余地が大いにあると捉えています。
① ECマーケットプレイスサービス
<成長戦略>a) 取扱いブランドの増加
複数のブランドを有する取引先の満足度向上により、契約ブランドを増やしてまいりました。引き続き取引先の満足度を高めるとともに、ブランドメーカー向け営業体制を拡充することにより、現在ECマーケットプレイスサービスで取引のあるブランドメーカーの、別ブランド契約、別プラットフォームへの出店支援を推進していくとともに、新規取引先のブランドメーカーとの契約を増やしてまいります。
b) 新しいサービスプランの提供
現在のECマーケットプレイスサービスは商品を仕入れて販売しておりますが、ブランドメーカーから仕入れを行わずに売上連動の報酬体系によりEC事業を代行するサービスを提供するなど、新しいサービスプランの提供を通じてブランドメーカーのEC支援を推進してまいります。
c) 越境ECサービスの拡大
現在、販売支援を開始している中国・ロシア・ASEANでの大手提携先ECプラットフォームとの関係性を強化し、今後はヨーロッパ・アメリカ・中東などの世界10カ国以上で販売できるグローバルな越境EC支援体制を早期に構築してまいります。また、海外へ早く、低コストで商品を届けるため、物流も強化してまいります。
② ECマーケティングサービス
<成長戦略>a) 平均単価の向上
一取引先に対する複数サービスの提供により、平均単価の向上を図ってまいります。当期よりカスタマーサクセス部門を新設しており、今後も人員を増員して既存取引先に対する満足度を高め、複数サービスの契約率向上を図ってまいります。
b) 大手企業向けの高単価サービスの提供
大手企業向けに、ECコンサルティングとマーケティング・クリエイティブを統合し、専任ディレクターを配置し手厚いサポートを提供することで高単価なサービスの提供を増加させてまいります。また、大手企業に対して新サービスであるECビッグデータの販売を強化してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では、売上高の成長を重要な指標とした経営を行なっております。ECマーケットプレイスサービスにおいては、売上高を重要な指標としております。ECマーケティングサービスにおいては、安定的な収益であるストック売上高を重要な指標としております。ストック売上高は、マーケティングサービスにおける売上高のうち、継続契約を締結している取引先に係る売上高を指しております。当該ストック売上高には、月額の固定課金に加え、従量課金による売上高が含まれております。
ECマーケティングサービス売上高に占めるストック売上高比率は、2020年3月期は86.4%、2021年3月期第2四半期累計期間は87.6%となっており、安定的な収益源となっております。
(3)経営環境
近年、インターネット、スマートフォンが普及したことにより、人々の購買活動は、リアル店舗からECへのシフトが進んでおります。2020年7月に経済産業省が発表した「令和元年度電子商取引に関する市場調査」によれば、2018年に6.22%であったBtoC-EC(消費者向け電子商取引)のEC化率は2019年には6.76%と増加傾向にあり、商取引の電子化が進展しております。また、EC化率の向上に伴い、国内のBtoC-EC市場規模は2019年には前年比7.7%増の19.4兆円に達しております。野村総合研究所が発表した「ITナビゲーター2020年版」によると、2025年には27.8兆円まで拡大するなど、引き続きEC市場の規模は拡大していく見通しが示されております。
一方で、2014年度国内BtoC向けEC市場における物販系分野では、富士経済が公表した「ECプラットフォームとの共存を模索するメーカーの通販チャネル戦略」によると、2014年ECプラットフォーム市場3.1兆円、自社EC市場3.0兆円とほぼ同等の市場規模でしたが、2015年を境に、その後の物販系EC市場規模の成長は、ECプラットフォーム市場が牽引しています。ECプラットフォーム市場は、2015年3.6兆円から2019年6.7兆円と、5年間で185.1%の成長に対して、自社EC市場は、102.7%とほぼ横ばいとなっております。このことから、今後もECプラットフォーム市場がEC市場の拡大を牽引していくと考えられます。この反面、消費者庁が公表した「デジタル・プラットフォーム利用者の意識・行動調査2020(詳細版)」によると、2018年度の大手企業のECビジネス売上構成比は、ECプラットフォーム8.8%、自社ECサイト91.2%と自社ECサイト中心のビジネス展開となっており、EC市場のトレンドを反映した売上結果となっていません。また、消費者庁がまとめたデジタル・プラットフォーム利用者の意識・行動調査によると、ある商品を買いたいとき、自社ECサイトとECプラットフォームにおいて同じ売主が同じ価格で販売している場合、回答者の76.6%は「ECプラットフォームで買い物をする」という結果となっています。
これらの背景から、今後は多数のブランドメーカーが、主要ECプラットフォームでのECビジネス展開に注力することが予測され、電通が公表した「物販系ECプラットフォーム広告費調査」によると、大手企業を中心に積極的な広告事業展開が確認されています。2018年に1,123億円(前年比120.6%)に達し、2019年には前年比128.3%の1,441億円にまで成長する見通しにあり、今後の当社にとって拡大余地が大いにあると捉えています。
また、日本国内におけるEC市場が成長する中、世界的には、ブランドメーカーが直接消費者に販売するD2Cの流れが加速しており、小売業者、ブランドメーカーは従来リアルなプラットフォームに投じていた投資などをD2Cへシフトしていくことが見込まれます。ブランドメーカーが中間流通を介さず、消費者との直接接点を拡大し、消費者とのつながりを強化し、消費者データの活用を進め、ブランド体験を向上させることが、今後日本においても重要なテーマになると考えています。また、現在一部のブランドメーカーでは既にD2Cを展開していますが、その場合であっても自社ECサイトでのみECビジネスを展開しているブランドメーカーが多く、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのECプラットフォームへの出店は進んでおりません。そこで当社では、祖業であるECビジネスにおけるコンサルティングサービスやクリエイティブ支援サービスに加え、上記ブランドメーカーのD2Cを支援し、デジタル上での競争力向上を支援するサービスを提供しております。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
① 提供サービスの強化
当社は、EC運営事業者に対して、事業戦略立案からショップの構築・運営、そして物流・配送までをワンストップで提供する「ECワンプラットフォーム構想」の実現を目指しております。ワンストップで支援することにより独自に積み上げてきたノウハウを、EC運営事業者への新規サービス提供を増やすだけでなく、サービスの契約継続にも活用してまいります。また、ビッグデータ解析技術の向上により従来では可視化できなかったECプラットフォーム上での各メーカーの市場シェアや広告出稿などのデータの活用を行い、当社サービスの更なる質の向上を図ってまいります。
② 優秀な人材の獲得及び育成
当社のサービス提供には、優秀な人材確保が必要不可欠であります。当社はAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、自社ECサイトや海外モールなど様々なプラットフォーム向けのサービスを提供しております。そのため、EC運営に関する知識や経験のある人材の採用を推進するだけでなく、従前より未経験者を採用し育成に努めておりますが、社内研修やOJTを通じて当社のノウハウを短期間で身につけることができる育成体制の強化に取り組んでおります。
③ 内部管理体制の強化
当社は、現在成長途上にあり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。
そのため、管理部門業務の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するための内部管理体制強化に取り組んでまいります。具体的には、関連法令に関する研修や定期的な内部監査の実施によるコンプライアンス体制の強化を行い、コーポレート・ガバナンス機能の充実等を図ってまいります。
④ グローバル展開
当社は現在、ロシア、東南アジア向けに越境EC支援業務を実施しております。日本で培ったECマーケティング、運用、物流のノウハウを土台として、日系メーカー企業のグローバル展開をサポートし、当社自身もグローバル市場での経験を重ねて、各地域にあったサポート体制の拡充を図ってまいります。