有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/01/21 15:00
【資料】
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【項目】
125項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「もっと、面白く」を企業理念に掲げ、モバイルオンラインゲームの企画・開発及び運営を軸に、自社IPを利用した事業を展開しております。
上記理念のもと、エンターテインメントで溢れる世の中を「より一層」豊かにするために、当社は、活動の可能性を制限せず、そして社員それぞれの思い描く、信じるところを尊重し、面白いものを集め、知り、そして創出する企業を目指しております。
(2) 経営戦略等
当社は、安定的かつ継続的な企業価値向上を目指し、2021年1月期から2023年1月期までの中期経営計画の基本方針を、次の経営戦略に基づき策定しております。
・徹底的な品質への挑戦による面白いコンテンツの創造
当社は、開発に携わる一人ひとりが最大限の力を発揮して妥協のないものを発信していくことでこそ、企業理念に掲げる「もっと、面白く」を実現できるという考えのもと、今後も徹底的に品質にこだわり、ターゲット層に向けた新たなタイトルを展開してまいります
また、当社は創業以来IPの自社開発によるコンテンツ事業を行ってまいりましたが、今後は当社の開発運営ノウハウを活かした他社IPのゲーム化等、新たな取り組みにより、更なる安定成長を目指してまいります。
・1タイトルあたりの収益源の多様化
当社は現在、3タイトルの運営を行っておりますが、今後は新規タイトルの創出に加え、既存タイトルの続編展開等により、1IPあたりの長期的な成長を目指してまいります。
また、当社は現在、モバイルオンラインゲームを軸に自社開発したタイトルを主にグッズ販売や他社商品等への権利許諾、一部タイトルでのアニメ化等を中心に活用しておりますが、今後は複数タイトルでのアニメ化、舞台化、コミカライズ等の積極的なメディアミックス展開により、収益源の多様化を図ってまいります。
・展開エリアの拡大
当社は現在、韓国及び台湾にて、韓国版「ドラッグ王子とマトリ姫」、繁体字版「スタンドマイヒーローズ」を展開しておりますが、今後はさらなる海外展開を進めてまいります。特に、中国圏は女性向けゲーム市場の成長が著しく、2018年から2023年の年平均成長率は18.4%、2023年には日本円にして約1兆4,000億円の規模まで拡大されると推測されております(注1)。また、ユーザーによるファン活動の様子から、 日本市場と文化的に共通する市場であると考え、現地企業との協業等、適切なローカライズにより進出余地があると考えております。
また、文化的に親和性の高い東アジアを足掛かりとし、将来的には北米をはじめとしたエリアへの拡大も目指してまいります。
(注1)出典:Frost & Sullivan社調べ
これらの方針のもと、以下の3つの基本戦略を推進し、目標達成を目指してまいります。
① 販売基本戦略
・既存タイトルの安定運営と「スタンドマイヒーローズ」及び「魔法使いの約束」と同規模の大型タイトルのコンスタントな市場投入
・中小規模タイトルの拡充
・商品ラインナップ拡充(グッズ商材及びモバイルオンラインゲーム多言語化等)、メディアミックス(アニメ化、舞台化等)、物販イベント規模拡大等による収益最大化
② 開発・運営基本戦略
・ターゲット層を絞り込み、1つ1つの作品の品質を高める(数は打たない)
・運営の効率化(既存タイトルの運営長期化に伴って蓄積されたナレッジの新規開発タイトルへの共有のための仕組みづくりを強化)
・積極的な採用投資による有能な人材の確保
・次タイトル創出に向けた開発投資拡大
③ 組織運営基本戦略
・広報体制強化及び広告投資拡大による市場開拓
・内部管理体制及びリスク管理体制強化
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、企業価値を向上させ株主価値を高めることが重要であると考えており、そのためには、事業規模を拡大し収益性を向上させることが経営上重要であると認識し、客観的な経営指標として、売上高及び営業利益を重視しております。
(4) 経営環境
最近におけるわが国経済は、設備投資の増加や雇用・所得環境の改善がみられる一方で、消費税率引き上げ後の消費の落ち込みなどの影響に加え、米中貿易摩擦や欧州の政治リスク及び新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響など、景気の先行きは依然として不安定な状況が続いております。
当社が属する国内スマホゲーム市場においては、2012年より市場が拡大し、2014年以降はメーカー売上金額ベースで緩やかに成長しております。2021年には前年比100.2%の1兆2,720億円(注1)まで拡大が見込まれ、今後も底堅く推移するとみております。これに対し、国内女性向けゲーム市場は2016年より急激に拡大し、2019年の市場規模は約700億円と想定しております。一方、2020年に入って複数の大型ヒット作が登場したことで、市場に対する認知度向上及び本格的な市場の拡大に繋がり、市場規模は約800億円を超えて成長するものと予想しております(注2)。
今後は、競争の激化により高い製品品質が求められる傾向が強まることが想定されますが、さらなる有力タイトルの出現等により女性向けアプリの認知度が高まった場合には、マーケットの急激な拡大も生じる可能性があると考えております。
(注1)出典:「ファミ通ゲーム白書2020」(株式会社KADOKAWA Game Linkage)、国内オンラインプラットフォーム ゲームコンテンツ市場規模推移「ゲームアプリ(スマートデバイス+SNS)」
(注2)出典:App Store及びGoogle Playセールスランキング及びApp Apeを基に当社算出(女性ユーザー比率が80%を超えるモバイルオンラインゲームの売上高(当社推計値)の合計を市場規模として算出)
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① ターゲット層の拡大
当社が現在、主にターゲットとしている「夢女子」や「腐女子」を含む女性向けゲーム市場自体は拡大傾向にあり、2020年度には800億円を超える市場規模(注1)になると見込んでおりますが、2021年度に1兆2,720億円(注2)となる見込みである国内スマホゲーム市場全体の規模からするとニッチな市場であると言えます。そのため、競争が激化すると見込まれるモバイルオンラインゲーム市場において、当社がさらなる事業拡大を図るためには、ターゲット層の拡大が必要であると認識しております。市場環境を見極め、ターゲット層ごとの特性に即した戦略で、コンテンツを拡大してまいります。
(注1)出典:App Store及びGoogle Playセールスランキング及びApp Apeを基に当社算出(女性ユーザー比率が80%を超えるモバイルオンラインゲームの売上高(当社推計値)の合計を市場規模として算出)
(注2)出典:「ファミ通ゲーム白書2020」(株式会社KADOKAWA Game Linkage)、国内オンラインプラットフォーム ゲームコンテンツ市場規模推移「ゲームアプリ(スマートデバイス+SNS)」
② コンテンツラインナップの充実
当社は、ターゲット層に向けた魅力的なコンテンツの提供を継続していくことが、事業の成長につながると考えております。このため、ターゲットとする層が属する市場の情報収集・分析を行うことでニーズを汲み取った新規コンテンツの投入、既存コンテンツへのストーリー及び機能の追加・改善を行うことが重要な課題であります。ターゲット層を年齢や嗜好等でセグメント分けし、各層の興味や理想と現実との間において感じるであろう葛藤等に対応した魅力あるコンテンツを提供することで、コンテンツラインナップの充実を図ってまいります。
③ ユーザー獲得の強化
当社は、提供するコンテンツのユーザー数の増加がコンテンツ自体の盛り上がり感の醸成につながり、長期運営及びさらなる業績拡大のための重要な課題であると考えております。今後ユーザー獲得のため、当社のコンテンツの未利用ユーザーに向けたSNS等の新規広告媒体やメディア媒体への露出強化に加え、アニメ化・舞台化・コミカライズなどを通したメディアミックス展開といった積極的な広報宣伝活動を展開するとともに、複数のタイトルを同時に利用することによる特典を付与する等、当社のコンテンツ間での誘導施策を実施し 、ユーザー獲得の強化を図ってまいります。
④ 適正な配信プラットフォームの選択
当社は、コンテンツをターゲット層に届けるためのプラットフォームを適正に選択することが、事業の安定的な成長につながると考えております。昨今、モバイル業界では、端末、OS、プラットフォーム、課金システム等の分野で多数の事業者が世界規模の競争を行っており、著しい環境変化を引き起こしております。これに伴い、ターゲット層のメディア利用状況も刻々と変化しています。当社は、ターゲット層のメディア利用状況について日々情報収集を行うことで、その変化に的確に対応し、ビジネス効率を最大化すべく、適正な配信プラットフォームの選択に努めてまいります。
⑤ システム技術・インフラの強化
当社は、システム開発及びサーバー構築・保守にあたって、他社のサーバー等に関するサービスを機動的に利用しながら行っております。当社のコンテンツは、スマートフォン等のモバイル端末を通じたインターネット上で提供していることから、システムの安定的な稼働、及びモバイル端末の技術革新への対応が重要な課題と考えております。これに対して、当社はサーバー等のシステムインフラについて、継続的な基盤強化を進めるとともに、システム開発につきましても、開発プログラムのユニット化や標準化を進めることで生産性を向上させ、技術革新にも迅速に対応できる体制作りに努めてまいります。
⑥ コンテンツ事業における領域拡大
当社は、さらなる事業拡大のため、コンテンツ事業における収益源の多様化が重要な課題と考えております。そのため、当社がこれまで培ってきたノウハウを活かしつつ、専門企業との連携も含めて、当社コンテンツ及びユーザーとシナジーのあるアニメーション・出版物の制作や舞台・イベントの実施、グッズの販売、VR展開等にIPをマルチユースしてまいります。
⑦ 優秀な人材の確保と組織体制の強化
当社は、今後のさらなる成長のために、優秀な人材の確保、及び当社の成長フェーズに沿った組織体制の強化が不可欠であると認識しております。人材確保においては、新卒採用を中心に行っており、必要に応じて中途採用も実施し、当社の求める資質を兼ね備えつつ、当社の企業風土にあった人材の登用に努めてまいります。同時に、従業員の職種・職階等にあわせた社内外の研修プログラムの積極的な受講によって、各人のスキル向上を促してまいります。また、組織体制につきましては、個々のチーム・従業員が最大限のパフォーマンスを出せるよう、計数指標管理に基づいた組織マネジメントを図ってまいります。