有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/03/01 15:00
【資料】
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【項目】
136項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)顧客動向によるリスク
当社の顧客層は、医療機器、半導体、レーザなど世界各地のメーカーに拡がっております。様々な産業セクターへの営業活動を行い、これら顧客企業の個別の経営状態の変動による影響を極小化する努力をしております。しかしながら大幅な為替変動や、地政学的要因などにより、それらの産業全体が業績に悪影響を被る場合があります。当社が提供する製品需要は、常に次世代製品の先行開発投資に追随する性格のものであり、顧客企業での次世代投資、製品転換が遅れることで当社の財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
これに対して、当社では、経営会議や取締役会等において、当社顧客の業界動向の把握に努めており、仮に財政状態や業績に悪影響を及ぼす予兆を検知した場合には、遅滞なく経営判断を行う体制を構築しております。
(2)開発進捗遅延によるリスク
当社の開発投資は、自社での投資や顧客の支援による投資など様々な形態がありますが、顧客の開発スケジュールや生産計画または当社製品の代替技術の台頭などにより、当社の開発進捗が大幅に遅延あるいは変更となる場合には、当社の財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)品質課題によるリスク
単結晶やレーザなど製品については、顧客との間で品質仕様を定めて販売しておりますが、品質の欠陥によりリコールが発生しないという保証はありません。大規模な製品事故は、多額のコストや当社の評価に重大な影響を与え、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社では、そのような事態が発生した場合、経営陣に報告され、場合によっては顧客と協議の上、対応する体制となっております。
(4)資材調達によるリスク
当社は、様々な原材料や光学部品等を購入して使用していますが、その中には特殊な原材料や部品も含まれています。重要なものは複数ベンダーによる購買や在庫積み増し等の対策を講じて安定製造、安定供給に努めていますが、一部代替が利かないものも存在します。特に、ヘルスケア事業でシンチレータ単結晶の製造に使用する酸化ルテチウムの産出国は中国、ロシア、オーストラリアであり、当社は主に中国から調達しております。したがって、中国の国家政策等により、その調達に問題が発生した場合には、生産計画に支障が生じ、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(5)原材料価格の変動によるリスク
当社が製造で使用する原材料の中で、ヘルスケア事業にてシンチレータ単結晶の製造に使用する酸化ルテチウムは、レアアースであります。レアアースの価格は変動が大きく、価格の変動を販売価格に転嫁できない場合には、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
これに対して、当社では、経営会議や取締役会等において、レアアースの価格動向の把握に努めており、仮に価格変動の予兆を検知した場合には、原材料の前倒し仕入れ等の経営判断を遅滞なく行う体制を構築しております。
(6)特定の取引先への依存リスク
当社の2019年2月期、2020年2月期の販売先は、それぞれ130社超、140社超ありますが、そのうち、特定の5取引先に対する売上が、2019年2月期、2020年2月期それぞれにおいて81%超、75%超となっております。
当社の業績は、これらの販売先への販売次第で偏りが生じる場合があります。2020年2月期及び2021年2月期の両上半期は、営業以下各段階で赤字計上となっております。なお、2020年2月期は通期で黒字転換、2021年2月期は第3四半期累計期間で黒字転換となっております。
また、参考情報ですが、2019年2月期上半期全社売上1,304百万円に対する5社合計売上は1,087百万円、下半期全社売上1,304百万円に対する5社合計売上は1,036百万円、2020年2月期上半期全社売上1,391百万円に対する5社合計売上は1,098百万円、下半期全社売上1,673百万円に対する5社合計売上は1,210百万円となっております。
当社としましては、継続的に顧客開拓を実施することにより、特定の取引先への依存リスク低減に努めて参ります。
(7)知的財産管理に関するリスク
当社は、知的財産権が事業活動・製品競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、知的財産権の取得による自社権利の保護に努める一方で、他社の知的財産権を調査し、問題の発生防止を図っております。しかしながら、他社との間で知的財産権を巡る紛争が生じた場合や、他社から知的財産権を侵害された場合には、事業活動に支障が生じ、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(8)情報漏洩リスク
当社の事業の中には、秘密保持契約を締結した上で顧客の製品開発に関わる技術情報や営業情報を預かり、取り扱う業務があります。役職員にはこの重要性を知らしめ、啓発、教育を行い、秘密保持誓約を提出させる等、情報漏洩の防止には万全を期していますが、万が一情報の漏洩が発生した場合には、当社が賠償責任を負う可能性があります。
(9)コンプライアンスリスク
当社は、当社の役職員に対し、コンプライアンス研修の実施等を通してコンプライアンス意識の醸成を図っております。しかしながら、万が一、当社の役職員がコンプライアンスに違反する行為を行った場合には、当社の社会的信用、財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)固定資産の減損に関するリスク
当社は、キャッシュ・フローを生み出す資産又は資産グループの最小単位として、工場単位(第1・2工場、第3工場、横浜事業所)を基本とした資産のグルーピングを行なっております。
このため、当該資産又は資産グループが属する工場の経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(11)訴訟に関するリスク
当社の事業又は活動に関連して、知的財産権、製造物責任、環境、労務等、様々な訴訟、紛争、その他の法的手段が提起される可能性があります。現在、当社の業績と財政状態に重大な影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来において、重要な訴訟等が提起された場合には、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(12)金利変動リスク
当社は、将来に亘って必要な設備を新規あるいは更新のため、設備投資資金や運転資金を金融機関からの借入金により賄っております。有利子負債には変動金利条件となっているものがあります。変動金利による調達に関しましては、金利スワップ契約等を活用することで金利変動に伴うリスクの軽減に努めておりますが、今後の金利動向によっては、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(13)有利子負債に関するリスク
当社における2020年2月期末における有利子負債は総資産の63%となっております。当社は、金利上昇によるリスクを軽減するため、新規での長期借入を固定金利での契約を優先させ、また現預金を確保しつつ営業キャッシュ・フローによる借入金の返済促進などによる財務体質の強化に努めておりますが、今後、急激かつ大幅な金利上昇が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)人材確保に関するリスク
当社の事業継続及び拡大においては、光学関連技術者、管理体制強化に伴う管理部門、当社製品、技術を広く提供するための営業部門への有能な人材確保が必要です。
当社では、有能な技術者及び次世代経営幹部の採用を進めております。また、組織活性化と優秀な人材の定着を図っております。しかしながら、計画通りの採用が実現できず、技術者の確保が十分にできない場合には、人材確保に関する経費の増加や、適切な人材配置が困難となり事業拡大に制約が発生するなどにより、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(15)自然災害・事故災害の影響
当社の生産拠点の内、本社、第1・2工場及び第3工場は、山梨県北杜市に集中しております。生産活動の中断により生じる損害を最小限に抑えるため、製造設備に対し定期的な防災点検及び設備保守、また、安全のための設備投資等を行うとともに、生産拠点の複数化に努めております。しかしながら、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等の影響で、製造設備等が重大な損害を被った場合は、売上の大幅な減少や設備の修復等に多額の費用負担が発生することにより、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。また、情報管理、ネットワーク管理にも冗長性、災害対応等に対するバックアップ体制を構築しておりますが、大規模かつ長時間の停電発生や何らかの外的要因による情報ネットワークの遮断などによる事業活動の中断及び停止により、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(16)海外事業展開に関するリスク
当社は、材料・部品の調達及び当社製品の輸出等の海外との商取引を行っております。2020年2月期売上高のうち、約66%が海外売上となっております。当社の主要な販売国は、米国となっております。今後は、中国を含むアジア各国との取引が増勢となることが見込まれ、従って、取引先所在国との取引において、予測し得ない税制や法規制などの急激な変更、政治・経済情勢の混乱、テロ・紛争などの勃発、自然災害などによるリスクが顕在化した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して、当社では、経営会議や取締役会等において、販売対象地域の状況把握に努めており、仮に財政状態や業績に悪影響を及ぼす予兆を検知した場合には、遅滞なく経営判断を行う体制を構築しております。
(17)為替の変動に関するリスク
当社は、一部の海外との取引において日本円以外の通貨を用いて行っております。当該通貨の急激な為替変動があった場合には、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して、当社では、経営会議や取締役会等において、為替動向の把握に努めており、仮に財政状態や業績に悪影響を及ぼす予兆を検知した場合には、遅滞なく経営判断を行う体制を構築しております。
(18)新領域事業に関するリスク
当社は、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するため、また、光学分野での新たなマーケットを開拓するために、新領域事業への取り組みを進めていく方針であります。新領域事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間と投資を要することが予想され、全体の利益率を低下させる可能性があります。また、将来の事業環境の変化等により、新領域事業が当初の計画どおりに推移せず、新領域事業への投資に対する十分な回収を行うことができなかった場合、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
(19)配当政策
当社は、株主の皆様への利益還元を行うことを経営上の重要課題と捉え、将来の事業展開と経営基盤の強化を図るための内部留保資金を確保しつつ、配当を行うことを基本方針としております。こうした方針により、内部留保の充実を図るため設立以来現在に至るまで利益配当を実施しておりません。
現在の当社の規模や成長ステージにおいては、事業拡大のための再投資をおこなうことが、株主の皆さまの将来の利益につながるとの判断から、当面は配当を実施せず、研究開発の推進や事業拡大のための設備及び人材投資を実施していく方針であります。そのため現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。
(20)税務上の繰越欠損金が今後の利益水準に影響を与えるリスク
当社は、2020年2月29日現在において、233百万円の税務上の繰越欠損金を有しております。上記繰越金額により繰越期間において発生する課税所得金額に対する法人税等の負担は軽減されますが、繰越金額の解消ないし繰越期間の満了以降は、法人税等の負担軽減はなくなり、発生する課税所得金額に対する法人税等の負担は通常の水準となります。そのため当社の最終損益の水準に影響が出る可能性があります。
(21)特定の人物への依存によるリスク
当社の創業者であり、大株主でもあります代表取締役社長の古川保典が、当社の事業領域である光学業界に精通し、当社の強みである技術の目利き、事業創出のノウハウ等を蓄積しており、当社の事業推進に重要な役割を果たしております。創業以来20年を経過し、幹部人材の育成及び強化ならびに事業運営における組織的な対応に取り組んでおりますが、何らかの事情により同氏が当社の業務執行に携わることができなくなった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(22)ストック・オプションの行使による株式価値の希薄化について
当社は、取締役及び従業員等に対するインセンティブを目的として、ストック・オプションを付与しております。これらのストック・オプションが権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化することとなり、将来における株価に影響を及ぼす可能性があります。本書提出日現在のこれらのストック・オプションによる潜在株式数は、864,000株であり、発行済株式数3,781,500株の22.85%に相当しております。
(23)新型コロナウイルス感染症について
当社は、マスク配布、事業所内での体温計測励行、手指消毒、三密回避の環境構築、業務によるリモートワークの推進、時差出勤・多様な出勤方法の採用などにより感染防止に取り組んでおりますが、当社の役員・従業員に新型コロナウイルス罹患者が発生した場合、事業所等の閉鎖や操業停止により、当社の財政状態及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
製品販売の前提として製品引き渡しと同時に現地インストールが必要な一部の製品において、2020年3月より海外渡航が事実上困難な状況となったため、海外からの受注及び販売がリスケジュール及び延期となるなど影響が生じております。2020年2月期において同製品の海外向け売上割合は、3.9%であり、新型コロナウイルス感染症による業績への影響は限定的です。
新型コロナウイルス感染症の拡大規模や収束時期は依然として不透明であり、今後のさらなる感染拡大や長期化等によっては、上記のような一部製品をはじめ国内外の大学、研究機関の研究活動の停滞により、当社の財政状態及び業績に悪影響が拡大する可能性があります。