有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/05/21 15:00
【資料】
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【項目】
139項目

事業等のリスク

当社グループの事業内容、経営成績及び財政状態等に関するリスク要因について、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。
なお、本項目の記載はすべてのリスク要因を網羅したものではなく、業績等に影響を与えうるリスク要因は下記の項目に限定されるものではありません。また、本項における将来に関する事項については、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループにおいて合理的であると判断したものです。
事業活動にかかるもの
(1) 銅材料価格について
当社グループの製品は、純度の高い銅材料を主原料としております。銅材の仕入価格は、国際商品市場における銅価格にもとづき決定されるため、市況変動による影響を受けます。
主要顧客との営業取引において、銅の相場価格を基準として販売価格を決定する「銅価スライド制」を導入する等、銅材料価格の変動リスク回避に努めておりますが、実際に銅価格が変動してから販売価格に反映されるまでにタイムラグがあり、必ずしも価格変動リスクが全て回避できる訳ではありません。
これらの施策により銅材料の変動に対応しきれない場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替リスクについて
当社グループの販売活動において、一部の在外顧客への販売は外貨建てにより行っております。2020年3月期決算における外貨建て販売の総売上高に占める割合は0.1%です。当社では、外貨建ての債権債務が発生した場合や、在外子会社への投資を実行する場合には、為替予約の実行等により為替変動リスクをヘッジしております。
また決算時においては、当社及び在外連結子会社の外貨建て資産、負債、収益ならびに費用は、為替換算ルールに基づき各々円貨換算されます。その円貨換算額は、為替換算レートに応じて増減するため、為替相場の状況によっては、当社グループの財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 世界的な経済情勢や地政学的リスクについて
当社グループの製品は日本及び米国で生産され、日本、米国、欧州並びにアジアで消費されます。これらの国または地域における経済活動や景気変動の状況、政治及び政策に関する動向は、当社グループ製品の需要や生産・販売動向に重要な影響を及ぼす可能性があります。
2020年度には米国や欧州における経済活動の停滞や米中貿易摩擦の長期化により、米国子会社において製品需要の低迷が認められました。
(4) 特定の販売先への取引依存について
当社グループの主要販売先のうち、㈱日立ハイテク及びパナソニック㈱の2社への販売実績が連結売上高に占める割合は、最近2連結会計年度で約8割、第5期第3四半期連結累計期間で約6割を占める状況にあります。最近2連結会計年度及び第5期第3四半期連結累計期間におけるこれら2社への販売金額及び当該販売実績の年度売上高に対する割合は下表の通りです。
相手先名第3期
連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
第4期
連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
第5期
第3四半期連結累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年12月31日)
販売高
(百万円)
割合販売高
(百万円)
割合販売高
(百万円)
割合
㈱日立ハイテク8,54278.6%5,77246.3%
パナソニック㈱2952.7%4,35534.9%5,95756.8%


現時点において、これら取引先との関係は良好であり、当社グループは今後も友好的関係を維持し、安定的な取引関係を継続する方針ですが、今後将来の時点において、何らかの理由により取引契約が更新されない場合や、取引条件の変更等が生じた場合には、今後の事業運営や経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社と㈱日立ハイテクとの間では、同社を経由しパナソニック㈱に当社製品を販売する商流がありましたが、当社、㈱日立ハイテク、パナソニック㈱の3社の合意に基づき、2019年11月以降は当社よりパナソニック㈱に直接販売する商流に切り替わっております。
当社グループでは、今後の成長が見込まれる高付加価値領域や、海外顧客の獲得も視野に入れた販路拡大に取り組むことにより、特定の取引先への取引依存度は順次低減させる方針です。
(5) 法的規制について
当社グループが主要業務として手掛ける電解銅箔製造事業に対する固有の法的規制はありませんが、本社工場の設置や操業に関わる法令として、工場立地法、水質汚濁防止法、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、電気事業法、エネルギーの使用の合理化等に関する法律等があります。これらの規制については、環境保全や生体系への影響に対する世界的な意識の高まりを受け、年々厳格化される傾向にあり、今後将来の時点において、法令の改正内容によっては当社グループの事業活動が制約を受け、ないしはその対策費用の発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 品質リスクについて
当社グループは、顧客の求める品質で製品を安定的に供給することを基本方針としております。そのため、品質マネジメントシステムの認証取得に基づく品質保証体制を確立し、その維持及び継続的な改善による品質管理に万全を期しております。しかしながら万が一、品質不良、品質事故等が発生した場合には、対応コストの発生や当社グループの製品に対する評価の低下により、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
(7) 研究開発に係るリスク
当社グループの製品販売先の一つである電子機器業界は、技術的な進歩が急速であり、当社グループでは常に技術革新に対応できる最先端の材料開発に努めております。しかしながら、当社グループが顧客企業又は市場のニーズにマッチした製品をタイムリーに提供できない場合、もしくは競合他社が先んじた製品を開発した場合には、当社グループの製品の競争力が鈍化し、今後の経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(8) 知的財産について
当社グループは、製品の技術的優位を確保するため、当社グループ独自の技術やノウハウ等については特許等の出願による保護を図っております。
当社グループでは、保有する知的財産権の管理を厳正に行なっており、また他者の知的財産権を侵害することがないよう充分に留意しておりますが、今後将来の時点において、当社グループの技術やノウハウ等を模倣した不正商品が流通した場合や、知的財産を巡って他社との紛争が生じた場合には、当社グループの製品の競争力低下等により、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
(9) 新領域に係るリスク
当社グループでは、更なる回路基板用銅箔の需要獲得のため、5G、高周波領域の分野におけるニーズをとらえ、市場開拓や新製品開発に取り組む方針です。しかしながら当該分野は、市場ニーズや技術動向は急速に変化する可能性があり、また市場拡大スピードや成長規模によっては、当社グループが想定通りに収益等を獲得できない可能性もあります。このような場合には、今後の経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
(10) 安全リスクと環境保全について
当社グループは、製造現場を擁する企業として、安全確保と環境保全については事業運営上、最も重視すべき事項のひとつと認識し、設備保全や生産技術の改善、管理体制の強化、さらに役員及び社員を対象とした教育研修の実施等を通じて、安全かつ安定的な操業の維持と環境保全に万全を期しております。しかしながら、ひとたび操業中の事故、輸送・外部保管中の事故、化学薬品の漏出等が発生した場合には、操業の停止、対策コストの発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
(11) 情報取扱に関するリスク
当社グループでは、顧客情報をはじめ、事業運営にかかる多種の機密情報を有しております。その情報資産を適切に管理するため、社内システムへのセキュリティ対策を講じるとともに、情報管理に関する社内規則等を整備し、役員及び社員への教育研修を通じ情報管理の重要性を周知徹底しております。しかしながら、外部者によるハッキングあるいは、役員または社員の過失等により不測の情報漏洩が発生した場合には、信用失墜による営業機会の喪失や損害賠償費用の発生等も想定され、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
(12) 人材確保リスクについて
当社グループは、持続的成長を実現すべく、多様で優秀な人材の採用、育成に努めております。しかしながら、雇用情勢の悪化等により、必要な人材を確保できない場合には、今後の事業活動に制約が生じ、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
(13) M&Aや戦略的事業提携に関するリスク
当社グループは、より高度な付加価値サービスの提供や海外の製造拠点を確保するため、同業他社に対するM&Aや戦略的事業提携を行うことも、事業戦略上の選択肢の一つと認識しております。
M&Aや事業提携の個別案件については、事前に充分な検討や資産査定を行い、各種リスク要因の低減に努める方針ですが、事前に想定されなかった事象が発生した場合、またはM&Aや事業提携に見合う効果が創出されなかった場合には、今後の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
(14) 減損リスクについて
当社グループでは保有する資産を有効活用し、効用等の最大化に努めております。しかしながら、当社グループが保有する資産の一部に事業等の用途に供していないものもあり、これら遊休資産については減損会計を適用しております。今後将来の時点において、経営環境が著しく悪化し、収益性の低下や市場価格の下落等により減損処理が必要となる場合には、今後の財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
(15) 資金調達に関するリスク
当社グループでは、運転資金や設備資金の一部を金融機関からの借入により調達しており、有利子負債の額(借入金とリース債務の合計)は2020年3月末時点で6,459百万円(負債及び純資産合計に対する割合は47.0%)、2020年12月末時点で6,350百万円(負債及び純資産合計に対する割合は46.9%)となります。
今後、新たな設備投資の実行に伴い負債が増加する可能性があり、金利の急激な変動や金融情勢の変化によって計画どおり資金調達ができなかった場合には、設備投資や新規事業が制約されるなど当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(16) 株主との関係に関するリスク
当社グループは、MSD第一号投資事業有限責任組合より出資を受けており、本書提出日現在において、当社発行済株式総数の89.0%を保有しております。また、MSD第一号投資事業有限責任組合より非常勤取締役1名(安田浩)を派遣役員として受け入れております。なお、当社グループとMSD第一号投資事業有限責任組合との間に営業上の取引はありません。
MSD第一号投資事業有限責任組合は、当社の株式上場時において保有する当社株式の全部または一部を売却する予定ですが、当社株式を保有する可能性があります。したがって、当社株式の上場後においても、当社株式の保有・処分方針によっては、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。
偶発的リスクにかかるもの
(17) 自然災害リスクについて
当社グループでは、地震、落雷、大雨等による不測の生産設備等への被害を防ぐため、防災設備や防災体制の整備、防災訓練の実施などの対策に努め、リスク低減を図っております。しかしながら、これらの対策により自然災害による被害を完全に回避することは困難であり、万一、生産設備等が被災した場合には、操業の停止、対策コストの発生等により、今後の財政状態や経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
(18) 新型コロナウイルス感染症に関するリスク
2020年初頭頃より新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が急速に広がり、世界各国・地域では都市のロック・ダウンや営業活動の停止等により経済活動が停滞する状況が続いております。
第4期(2020年3月期)においては、COVID-19感染症による売上高等への影響はありませんでしたが、第5期(2021年3月期)第1四半期中には、自動車メーカーや電子機器メーカー等がCOVID-19感染症の拡大を予防するため工場の操業停止や稼働率を低下させたことに伴い、当社グループの製品においても需要の落ち込みが認められたため、操業の一時停止も含め、生産調整の実施等の対応を図りました。
その後、第5期第2四半期中には、当社グループを含むサプライチェーンにおける生産活動が徐々に再開され、当社グループ製品の需要は回復基調となり、第5期第3四半期中には、販売数量(㌧数)及び販売金額とも前年同期を上回る水準となりました。
しかしながら、今後将来の時点において、新型コロナウイルス感染症の更なる拡大により、世界的な経済活動の低迷が深刻化ないし長期化し、当社グループ製品の需要が再び低迷した場合には、今後の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。