有価証券届出書(新規公開時)

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2021/11/11 15:00
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事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、以下のようなものがあります。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
① 経済環境、特にEC市場の成長鈍化リスク
当社グループの提供する決済サービスは、BtoC及びBtoBそれぞれにおける経済活動に付随するものです。従って、国内を中心とした経済活動が停滞する場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社サービスのうち特に「NP後払い」はECを対象としたサービスです。足許はEC市場の拡大により順調に成長していますが、今後EC市場の成長が鈍化した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う経済環境への影響については後記「⑥ 自然災害等」をご参照ください。
② BNPL決済市場の成長鈍化リスク
当社グループの提供する決済サービスは「後払い」を強みとしたものであり、売り手である加盟店には販売代金の早期回収を、購入者には購入代金支払いタイミングの長期化を提供することで、商流の活性化を促していると認識しています。一方で決済手段には、従来の現金決済、プリペイド方式及びデビットカード等の消費者がすぐに取引プロセスを完了できる方法や、クレジットカード及びQRコード決済等の消費者が支払いを先延ばしにできる方法が存在し、BNPL決済は両方の方法での競争に直面し続けることになります。当社グループの提供するサービスは上述のとおり、購入者は商品到着後、内容を確認してから代金を支払えるため、商品に係るトラブルを避けることができ、加盟店はその購入者ニーズを満たすことで新規注文及び追加注文等を期待でき売上拡大に寄与するとの観点から、購入者及び加盟店双方の利用者に付加価値のあるものであり、商品到着前に支払いを完了する必要がある他の決済サービス対比で十分競争力のあるものであると判断していますが、今後決済手段として他の方式が拡大することで当社対象市場が奪われるような事態になれば、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ BNPL決済市場における競争の激化
足許、世界的なBNPL決済サービスの拡大もあり、当社グループの提供するBNPL決済方式と類似のサービスを提供する事業者が増加しているものと認識しています。当社グループは当該市場にいち早く進出し、与信判断システムや決済オペレーションフロー等の独自の仕組みを構築することで、与信通過率約97%ながら未払い率0.6%未満にコントロールできており、利便性と収益性を兼ね備えている点において、高い競争力を有するサービス提供を行っているものと認識しています。しかしながら今後、新規参入する他社との競争が激化し、手数料の減額や顧客離れが生ずる場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 法規制強化の可能性
BNPL決済サービスの関係する法令には、「貸金業法」「資金決済法」「割賦販売法」「債権回収業に関する特別措置法」「弁護士法」「犯罪による収益の移転防止に関する法律」等がありますが、当社グループの現在のビジネスフローでは、いずれの法令における規制にも該当する事項はないことを、顧問弁護士及び(顧問弁護士を通じて)監督官庁に確認しています。しかしながら当社グループの提供するサービスは我が国では新しいとされる「フィンテック」ビジネスに該当すると考えられるため、今後これら法令の改正や法解釈の変更、あるいは新しい法令の制定により何等かの規制が加わる場合には、現行のままでのサービス提供が困難となる可能性があります。そうした場合は、オペレーションの変更やサービス内容の変更等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 「atone」事業に係るリスク
「atone」は、購入者が自身の保有するスマートフォン等で無料の会員登録をすることで、EC及び実店舗にてキャッシュレスでの売買(BNPL決済)を可能とするサービスですが、会員登録が必要である点で、「NP後払い」に比べ購入者の獲得のためのハードルが高くなります。また、デジタル商品の購入に利用可能な「atone」は、購入者が実際の住所を入力しない可能性が高くなるため、詐欺的な取引が発生する可能性が高まります。また、「atone」を利用する購入者はNP後払いに比べて若年層となる傾向があり、一般的に不払いのリスクが高まるとともに、与信審査の精度が低くなる傾向があります。これらの要因により「atone」事業において予想以上の貸倒れが発生する場合や、詐欺的取引の未然防止が想定通りの結果とならない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 自然災害等
当社グループでは、自然災害及び事故等に備え、サービスの定期的バックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めておりますが、大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、開発・運用業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限、混乱等の不測の事態が発生した場合には、当社グループによるサービス提供の継続が困難となる可能性があり、ひいては当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大に伴い、当社グループでは、コロナ禍による消費者の巣ごもり消費の増加によるEC市場の活性化により当社グループの経営成績には追い風となり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が当社グループ経営成績に及ぼす影響は限定的なものであります。しかしながら、国内及び海外主要各国において、経済活動が停滞するような深刻な経済的影響が生じる事態となった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)提供サービスに係るリスク
① 貸倒れ及び詐欺的取引発生リスク
当社グループの提供するBNPL決済サービスは、商行為における売り手(加盟店)に対して購入代金支払いを行い、購入者に対する債権を当社グループが買い取ることで成立しています。こうしたビジネスモデルから当社グループの提供するサービスを利用した商行為にかかる債権の貸倒れリスクを全て当社グループが負うとともに、詐欺的な取引が発生する可能性があるため、事業継続上高い個別与信判断能力が求められます。当社グループでは2002年より本ビジネスを展開し蓄積した情報を最大限活用し、全ての取引について商材の特性や購入者の情報等をベースに詐欺的取引目的でないか等を判断した上で与信判断を行い詐欺的取引の未然防止を図ると共に、未払い率をモニタリングすることにより事後的に速やかに検知の上対応できるように努めていますが、予想以上の貸倒れが発生する場合や、詐欺的取引の未然防止が想定通りの結果とならない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 加盟店獲得に係るリスク
「NP後払い」をはじめとする当社のBtoC向け取引サービスの成長は、当社の決済サービスを提供する加盟店の数を増やし、当社の決済サービスを利用した販売量を増加させることができるかどうかにかかっています。従って、加盟店獲得が想定通りの結果とならない場合や主要な加盟店との関係が悪化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社のBtoB向け取引サービスである「NP掛け払い」の成長は、債権を管理する売り手(加盟店)の数の増加に依存していますが、加盟店獲得が想定通りの結果とならない場合や主要な加盟店との関係が悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 海外展開におけるリスク
当社グループでは現在、台湾に恩沛科技股份有限公司(NP Taiwan, Inc.)を設立し台湾現地でのBNPL決済サービスを開始しています。現在のところオペレーションにおいて大きな問題は発生しておらず、今後の業容拡大に備えて外注先の活用も含めて対応する人員の拡充を計画していますが、用意が間に合わない場合や、用意できたとしてもオペレーション量に対して十分な育成が間に合わないような場合は、オペレーションが滞ったり、人為的なミスが発生したりすることで当社グループのレピュテーションが悪化し、ひいては当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、台湾の経済情勢及び政治情勢の悪化、法律・規則、税制、外資規制等の差異及び変更、商慣習や文化の相違、自然災害や感染症の発生、為替変動等の可能性があり、これらの要因により事業の遂行及び推進が困難になる場合には、当社グループの経営戦略が変更となることに加え、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループは更なる事業展開も視野に経営戦略を検討していますが、現状において台湾以外の具体的な参入予定国は決まっておりません。
④ 郵送費、収納費等の原価上昇リスク
当社グループの提供するBNPL決済サービスでは、購入者に対する請求にあたって請求書の郵送を行ったり、購入者からの入金にあたって収納代行を利用したりするなど、債権の回収にあたって必要なサービスを利用しており、これによって生じている原価費用があります。当社グループが購入者から債権を回収するにあたって必要とするサービスにつき、当 社グループでは、当該サービスを提供する事業者と交渉を行う等原価上昇の抑制に努めますが、当該サービス提供料が上昇する場合には、当社グループに生じる原価が上昇し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 新規事業に係るリスク
当社グループにおける事業は主にBNPL決済サービスに焦点を当ててきましたが、これまでの各決済サービスにおける取引データの蓄積は、必ずしもBNPL決済サービスや一般的な決済サービスとは関係のない、新しいサービスを開発する機会に繋がり得ると考えております。現時点で追加のサービスを導入する予定はありませんが、新規のサービスは、当社グループの従来の専門分野とは異なる可能性があり、また、BNPL決済サービス市場における当社の知識や経験が、これらの新規サービスとは特に関連しない可能性があります。従って、当社グループはこれらの新規サービスが直面する可能性のある課題を予測することができない可能性があり、また、そのような課題に効率的に対処するための十分な能力を有していない可能性があります。
(3)情報システム及び情報管理に係るリスク
① システムトラブル
当社グループのBNPL決済サービスは、SaaS(Software as a Service)形式で提供しています。また、当社グループ内の与信判断システムは過去の蓄積データ等との照合において大部分がシステム化されています。当社グループでは、外部のデータセンター及びクラウドインフラにサーバーを配置し複数のサーバーを使用することによる分散化を図り、定期的にサーバーデータのバックアップを取得すると共に、現状のシステムの稼働状況について適時確認し、システムの冗長化により、不備等が発生しないよう万全の注意を払っています。障害が発生した場合に備え、社内マニュアルを整備の上、リアルタイムのシステムの稼働状況及びサーバーのログチェックを確認する体制を構築しております。しかしながら、自然災害又は事故・外部からの不正な手段によるコンピュータへの侵入・コンピュータウイルス・サイバー攻撃等により、通信ネットワークの切断やアプリケーションの動作不良、クラウドサーバーの利用停止など、今後何等かのシステムトラブルが発生する場合には、当社グループのレピュテーションが悪化すること(注1)に加え、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注1)企業に対する批判的な評価や評判が広まることで、ブランド価値や企業の信用が低下し、損失を被ることをいいます。
② 情報漏洩リスク
当社グループでは、過去の取引情報や請求先情報等、様々な個人情報並びに企業情報を保有しています。当該情報については、外部からのアクセスを隔離すると共に社内アクセスについても重要情報には対象者を限定した上でアクセス制限を付す等適切なウォールを敷く等の対応により漏洩を防止しています。当社グループでは、プライバシーマークやPCI DSS(注2)といったセキュリティ基準に準拠しながらサービス提供・組織運営を行うとともに、システム部署において情報セキュリティにおける国際標準規格であるISO27001(ISMS認証)の認定も受けています。さらに、情報セキュリティに係る社内規程を整備し、役職員等に対して定期的に研修を実施することで情報漏洩と不正使用を未然に防止するよう努めております。しかしながら、当社グループ及びその委託先における人為的なミスや内外からの何らかの不正な方法でこれらの顧客情報が外部に流出する場合、当社グループのレピュテーションが悪化することに加え、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注2)PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)は国際的なクレジット産業向けのデータセキュリティ基準です。
③ システム開発と陳腐化リスク
前述のとおり、当社グループの決済サービスはSaaS形式での提供となっており、特にECにおいては、ユーザーインターフェースとなるカート事業者とのシステム連携が円滑になされることが重要な要素となります。当社グループではカート事業者各社のシステム改修や新サービス等によってこの連携が損なわれることのないよう、継続的に必要なシステム開発・改修を行っています。しかしながら、今後全く新しいカート事業者が導入され、当該システムに対応できない場合等技術革新に対応できない場合においては、当社グループのこれまでのシステム開発が陳腐化すると共に、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに係るリスク
① 貸倒引当金の計上方法
当社グループでは、支払期日までに支払がなされない未収入金に対して、所定の期間にわたり所定の督促業務を実施した後に、回収不能であった未収入金について貸倒損失又は債権売却損を計上しております。貸倒損失又は債権売却損の計上前の未収入金の残高に対して過去の回収実績を勘案した貸倒引当率を乗じることで貸倒引当金を計上しています。具体的には、貸倒引当率は過去における月別での経過年月別未収入金に対する平均貸倒実績率を計算することで算出し、これを期末の経過月別の未収入金残高に乗ずることで貸倒引当金を算定しています。
2021年3月期における貸倒引当金は4,749百万円となっており、当該期末の未収入金対比で19.9%となっています。なお、2021年3月期の年間取扱高4,381億円に対する比率としては1.1%未満となっています。また、2021年3月期より、未払い率の改善を図るために外部の督促委託を追加し、督促回数を増加させております。これにより回収期間が延長され、また回収の改善が図られた結果、貸倒損失の発生率が低下し、結果的に未収入金の残高増加に比較して貸倒引当金の計上額を抑制させることができております。なお、当該施策に伴い2021年3月期においては一部の未収入金について貸倒損失の計上が翌連結会計年度に繰り延べられたため、貸倒損失の水準は前連結会計年度比で抑制されております。当該未収入金に対しては貸倒引当金を計上しているため、貸倒引当金の残高水準では前連結会計年度比で増加しております。
当社グループでは、これまでの利用実績データを用いた詐欺等の貸倒懸念先の排除や、貸倒実績のある顧客の利用禁止、支払遅延先への外部業者も活用した回収促進によって、貸倒の発生の低減に努めております。しかしながら会計処理としては、期末時点での直近の貸倒実績を踏まえた引当金を計上するため、新規サービス・顧客の増加により一時的に貸倒実績が増加する場合等において、結果的に過年度の実績や当社の想定以上に貸倒引当金額を計上する可能性があります。そのような場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② のれんの減損リスク
当社グループでは2019年3月期より国際会計基準(IFRS)を適用しております。そのため、IFRSの初度適用に伴い本書では2018年3月期初よりIFRSを適用したものとして各財務数値を作成しております。現在の日本の会計基準と異なり、IFRSではのれん計上額について定額償却は行わず、のれんの価値がないと判断した場合に減損処理をすることとなっております。後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表 注記12.のれん及びその他の無形資産」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表 注記13.非金融資産の減損」に記載の通り、足許では事業収益性が低下し減損処理を行うような状況にはありませんが、今後当社グループの経営計画が悪化した場合は、減損を認識することにより経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいては、のれんの減損に係るリスクを低減するため、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題」に記載の通り、事業の収益力強化に努めており、与信システムの深化等継続的なサービスの品質の向上、営業体制及びアライアンスの強化を通じ、取扱高及び営業収益の拡大に取り組んでまいります。なお、当社グループののれんは、2016年7月に株式会社AP53(現株式会社ネットプロテクションズ)が実施した株式会社ネットプロテクションズの株式取得により発生し、2021年3月期におけるのれん計上額は連結財政状態計算書上11,608百万円となっており、連結総資産の25.8%、連結資本合計の110.5%を占めております。
③ 多額の借入金、金利の変動及び財務制限条項
当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し多額の借入を行っており、2021年3月期末時点での連結総資産額に占める有利子負債額は15.1%となっています(注1)。当社グループでは、金利変動等によるリスクを低減するため、金融機関との交渉により金銭消費貸借契約のスプレッドの引き下げなどの施策は講じておりますが、当該借入金の支払い利息の大部分は変動金利となっているため、市場金利が上昇する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが締結している借入契約の中には、財務制限条項が付されているものがあります。かかる財務制限条項については、ネット・レバレッジ・レシオ(ネット有利子負債/EBITDA等による比率)等の具体的な数値基準が設けられており、これに抵触する場合、貸付人の請求があれば当該契約上の期限の利益を失うため、ただちに債務の弁済をするための資金の確保が必要となります。当社グループは、財務制限条項への抵触による一括返済リスクに対応するため、余剰資金による期限前弁済や財務コベナンツに係る各種数値の定期チェック等を実施すると共に、継続的に収益体質の改善による安定的な利益の確保や運転資金の効率化等を図っておりますが、万が一何らかの事象によって当該財務制限条項への抵触が生じる場合は、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があるとともに、かかる資金の確保ができない場合は、当社グループの他の借入についても期限の利益を喪失することが予測され、当社グループの存続に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、財務制限条項は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表 注記15.借入金」に記載しています。
(注1)連結財政状態計算書上、その他の金融負債に含まれる優先株式の残高については、上記の有利子負債額の定義には含めておりません。
④ 配当について
当社グループは、株主に対する利益還元と同時に、財務体質の強化及び競争力の確保を経営の重要課題として位置づけています。現時点では、当社グループは成長力を維持するために、内部留保の充実を図り、事業拡大と事業の効率化のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えています。足許では、当面の間は内部留保の充実を図る方針です。将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針ですが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定です。
(5)その他
① 株主の状況
当社グループは、アドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンドから、純投資を目的とした出資を受けており、本書提出日現在、投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅤ号、AP Cayman Partners Ⅲ-Ⅰ, L.P.、AP Cayman Partners Ⅲ, L.P.、Japan Fund Ⅴ,L.P.、アドバンテッジパートナーズ投資組合67号が合計で当社株式を62,157,000株(発行済株式総数対比67.2%)を保有しています。また、当社取締役である喜多慎一郎及び当社社外取締役かつ監査等委員である小坂雄介は、アドバンテッジパートナーズより派遣されています。アドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンドは当社株式の上場時において、所有する当社株式の大半を売却する予定でありますが、上場後においても一定の当社株式を保有する見込みとなっています。当社ではアドバンテッジパートナーズより、当該株式の将来的な処分時期や方法については未定であるものの、市場価格への影響を極力抑えた形で対応する旨聴取していますが、今後の保有・処分方針によっては、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの経営その他の事項に関するアドバンテッジパートナーズの利益は、他の株主の利益とは異なる可能性があります。
② 当社グループ組織特性に合致した従業員の採用・成長が果たせないリスク
当社グループのBNPL決済サービスの開発や推進のためには、特定の専門知識を有する熟練した従業員を雇用し、雇用を維持する必要があり、また、当社グループの経営は経験豊富な経営陣に支えられています。これらの人材が確保できなかった場合や人材流出が進んだ場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは、従業員一人一人が個人の特性や希望に合わせた自己実現を仕事を通じて果たしていくことこそが、各人の業務へのモチベーション、ひいては当社グループとしての経営成績の最大化を図る上で最適であると判断しており、「ティール組織」を採用しています。本組織では、従業員それぞれが将来の経営幹部候補として、リーダーシップと責任を持って自発的な業務遂行を行っている一方で、必要に応じて組織の枠を超えた協力体制をとることも可能となっており、「自立・分散・協調を実現」する組織運営が可能と考えております。
しかしながら、当該組織運営の継続的な遂行のためには、現在の社風に合致した人材を厳選して採用し、教育していくことが不可欠です。こうした背景から、業容の拡大に伴い必要な人材を十分確保できないリスクがあり、その場合は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 企業買収及び事業提携リスク
当社グループは、事業の拡大・成長に向けた手段のひとつとして、企業買収や事業提携を実施することがありますが、企業買収及び事業提携の適切な機会を見出せない場合や対象先との間で企業買収等に係る条件に合意できない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、企業買収及び事業提携においては、対象先の経営状況、事業内容、財務内容、法令順守や契約関係等について詳細な事前調査を行い、リスクを吟味した上で決定してまいりますが、事前調査にて検出されなかった問題が生じた場合や買収後の統合作業において当初見積もっていた以上の経営資源の集中や期間を要する必要性が生じた場合、買収時点では予期していなかった事業環境の変化や買収時ののれん等の減損処理を行う必要が生じた場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 内部統制に係るリスク
当社グループは、財務報告の適正性と信頼性を確保するための内部統制システムを構築していますが、様々な要因により内部統制システムが機能しなくなる可能性があります。このような事象に適切に対処できない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 中期経営計画
当社グループは2021年6月に「2021年度-2025年度 中期経営計画」(以下、「中期経営計画」という。)を策定しており、BNPL決済サービス総合プラットフォーマーとして個人及び企業から取得・蓄積してきたユニークなデータを有機的に活用することで、市場のBNPL決済ニーズを満たすことで更なる成長を目指し、その結果取得・蓄積する膨大な決済関連データを有機的に活用することで金融サービス、販売促進、広告等の決済領域に近接するバリューチェーン上の事業者との更なる連携を推進し、インフラとしての地位強化・事業領域の拡大を目指すことを掲げています。
しかしながら、中期経営計画を策定するための各種の前提(EC市場の成長予測、既存加盟店の平均成長率、郵送費・収納費等の原価)が変化した際に、当社グループがかかる変化に対応した成長戦略又は事業運営を立案又は実行することができない場合には、中期経営計画を達成できない可能性があります。