有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/05/18 15:00
【資料】
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【項目】
168項目

本書に記載すべき最近連結会計年度に係る連結財務諸表は2022年3月31日に終了した連結会計年度に係る連結財務諸表であるため、本書について「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(2023年1月31日内閣府令第11号)による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式記載上の注意(30-2)の規定の適用はありませんが、以下同規定に沿って一部の内容について記載しています。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)当社が目指すサステナビリティ経営
当社グループは、「医療という希望を創る。」をミッションとして掲げ、患者・医療従事者・社会の不と負を解消し、希望を創り出す事業を目指しています。
患者様に寄り添った医療を追求し、ひとりでも多くの方がこころから安心して暮らせる社会を創ること、そして、その社会を持続可能なかたちで子どもたちが生きる未来に繋いでいくことを使命としています。
① マテリアリティ(重要項目)
当社はミッションである「医療という希望を創る。」をサステナブルな形で達成するために、SASBスタンダード(注1)、GRIスタンダード(注2)などの各種報告基準を参考に、社内取締役、執行役員、幹部社員が社会・ステークホルダーにとっての重要度と当社にとっての重要度を複合的に議論することにより、経営理念を実現するために必要な以下の5つのマテリアリティを特定しました。また、各マテリアリティに対して専任の担当取締役又は執行役員を任命し、長期的な価値の創造に向けて、これらのマテリアリティへの取り組みを推進しています。
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(注)1.SASBスタンダード:サステナビリティ会計基準審議会(SASB:Sustainability Accounting Standards Board)が2018年に公開した非財務情報公開の標準化に向けた基準。
2.GRIスタンダード:GRI(Global Reporting Initiative)により定められた国際基準。組織が経済、環境、社会に与えるインパクトを一般に報告する際に用いられる。
② SDGsアクション
「医療という希望」は、患者様の希望、医療従事者の希望、社会の希望、という3つの希望を創ることにより実現します。3つの希望を創る私たちの活動は「持続可能な開発目標(SDGs)」(注)を実現する道と同義であると捉えています。
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(注)持続可能な開発目標(SDGs):2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発のための2030アジェンダで掲げられる国際目標。
(2)ガバナンス体制
当社は、グループの長期的な成長を支えるサステナビリティを重視しており、その達成のためにグループ主要各社横断でサステナビリティプロジェクトという取り組みを実施しており、当社代表取締役がプロジェクトオーナーを、当社執行役員がプロジェクトリーダーを務めています。サステナビリティプロジェクトでの協議事項やマテリアリティ毎の取組状況について取締役会に適宜報告することにより、取締役会が当社グループのサステナビリティ経営に関して監視の機能を持つことになります。
(3)リスク管理
当社グループのマテリアリティを選定する過程においては、当社の常勤社内取締役、執行役員、幹部社員による複数回の検討会議を開催しました。会議の場では2030年までの政治経済、人口動態、環境、社会情勢、テクノロジー等の分野におけるメガトレンド、それらメガトレンドを踏まえた当社グループ及び当社グループのステークホルダーにとっての機会とリスクについて議論を行い、当社グループのマテリアリティを導き出しています。当社グループでは各マテリアリティの担当取締役又は執行役員が、各マテリアリティに紐づくリスクについて責任をもってグループ各社における対応方針を検討し、グループ各社、各部門が中心となって対応を進めています。また、当社グループではリスク・コンプライアンス委員会にて、リスクの適切な管理及びコンプライアンスの遵守やその体制整備のための意思決定を行っています。
(4)人的資本経営に関する取組
① 行動指針「CUC Partners Way」の設定と浸透の徹底
当社グループではミッションである「医療という希望を創る。」を達成するために、行動指針である「CUC Partners Way」を設定しています。具体的には1.「自分の立場」ではなく「患者様の気持ち」で考える、2.「できない理由」ではなく「できる方法」を探して実行する、3.「既成概念」にとらわれず「理想」を追求する、4.「専門性」の前に「人間性」を重視する、5.「上下」ではなく「ひとつのチーム」として手を重ねる、の5つです。
これらの行動指針を当社グループに浸透させるために、行動指針の採用基準への導入、入社時研修や入社3か月後、1年後研修における行動指針の教育、半年毎の社内取締役・執行役員・幹部社員・管理職に対する行動指針実践度の匿名フィードバック等の施策を実施しています。それらの取り組みの成果として、毎月当社社員を対象に計測している社員サーベイ(2023年3月実施分の回答率:93%)で確認できる行動指針の認知率は95%以上(注1)、共感率は70%以上(注2)となっています。
(注)1.行動指針について「5.実践している」、「4.共感している」、「3.理解している」、「2.認知している」、「1.内容を知らない」の選択肢のうち、5、4、3、2を選んだ比率。
2.行動指針について「5.実践している」、「4.共感している」、「3.理解している」、「2.認知している」、「1.内容を知らない」の選択肢のうち、5、4を選んだ比率。
② 医療現場の働き方改革から生まれる、多様で柔軟な職場環境
当社グループでは、看護師やセラピスト、介護職といった医療現場の最前線で働く医療従事者のスタッフが数多く在籍しています。少子高齢化により医療従事者の役割が増えているにも関わらず、医療現場の人材不足は深刻化しています。
当社グループが目指すのは、患者や利用者の一番近くで働く医療従事者が、働きがいを持って医療現場に立ち続けられることです。そのために、当社グループは労働環境の整備やキャリア支援など、働き方改革を進めています。医療現場に多くの笑顔を増やすことで、患者や利用者へより良い医療を届けていきます。
一例として、当社子会社であるソフィアメディ株式会社では働き方改革「ソフィアメディWOW!(Work for Our Wonderful life!)」と銘打ち、1時間単位の有給休暇、時短勤務制度拡充、ベビーシッター料金補助、LGBTQの結婚・育児・就労支援等の制度を設定し、異なるライフステージに移行した医療従事者が仕事を継続しやすい環境を整備しています。
当社グループにおける医療従事者数(注)
・看護師 935人
・セラピスト 451人
・介護職 423人
(注)2023年3月期における臨時従業員を除く人数。
③ グループ内公募制度「Dream」による幅広いキャリアの選択肢の提供
「Dream」は半年に一度行われている当社グループの各社・各事業部への異動を可能とするグループ内公募制度です。人材を求める部署やプロジェクトの募集に対して、上長の許可を問わずに面談を経て希望の会社・事業部へと異動を叶えることができます。社員一人ひとりの「挑戦したい」という気持ちを汲み、新たな挑戦を後押しする機会を提供しています。毎回多くの異動が実現しており、医療職からビジネス職への異動も行われる等、社員が前向きにキャリアの幅を広げることができています。
④ 称賛の文化によるポジティブな職場環境
当社グループは創業以来、ミッション「医療という希望を創る。」を体現した社員や取り組みにスポットライトを当てる称賛の文化を大切にしています。年一回行われる当社グループ全体の大規模な表彰の場をはじめ、グループ各社や各事業部内でのベストプラクティスの共有会、月に一度の感謝メッセージ送付の仕組みなど、多くの称賛の機会を設けています。医療職からビジネス職まで、多様な職種が混在する当社グループでは、こうした取り組みによって異なる環境の社員同士で互いの仕事内容を知り、一体感を醸成しています。今後も、称賛の舞台を通して、グループの社員一人ひとりの士気を高め、前向きに成長できる環境を積極的に作っていきます。
⑤ グループ横断の能力開発プログラム
経営環境が大きく変化し、当社グループ横断での事業シナジー追及が求められる現在の環境下では、グループ各社の役職員の強固な人間関係構築や事業環境についての共通理解が求められています。そのために経営陣、マネジャー等の階層別に、グループ会社横断でリーダーシップやマネジメント力を高める研修プログラムを実施しています。現在「新任マネジャー向けのリーダーシップ初級研修」、「社内でお互い教え、学びあう自律学習」、「社外有識者から最新知見を学ぶ研修」等の新規能力開発プログラムを準備しており、2024年3月期中に順次展開する予定です。

(5)新型コロナウイルス感染症対策における取り組み
国内初の緊急事態宣言が発令された2020年4月、当社は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目指す「チャレンジコロナプロジェクト」を発足させました。
最初の一歩として始めたのが、大規模PCR検査ラボの開設支援です。2020年4月当時、国内の感染者急増により、PCR検査が追いつかず、陽性者の隔離を適切に行えないケースが相次いでいました。そこで当社は、国内に多くの支援先医療機関を持つ強みを活かし、PCRラボの立ち上げ支援を実施しました。1日1,200件の大規模検査が可能な検査体制を確立し、地域の人々がいつでもPCR検査を受けられる状態を目指しました。
この時、当社が培ったPCR検査体制構築支援の経験を活かし、2021年6月当時に陽性患者のPCR検査体制がパンクしていたベトナムにおいて、検査ラボの急速立ち上げを支援し、2022年6月時点で累計約10万件の検査(抗原検査・PCR検査)を実施しました。
2020年10月以降訪れた新型コロナウイルス感染症第3波では、自宅療養を余儀なくされる方が増加し、日本全国で医療体制のひっ迫が大きな課題でした。そうした状況を受けて、当社グループのソフィアメディ株式会社は、全国の行政機関と協働し、適切な療養生活のための情報提供や、看護師による電話での健康観察、重症化が認められた際の訪問看護、オンライン診療などの仕組みを構築しました。
2021年6月、東京を含む多くの地域で緊急事態宣言が延長される中、当社グループは、自治体及び企業のワクチン接種会場のオペレーション支援を開始し、ワクチン接種会場の設営から、必要な医療物資の手配、医療職を含む当日の運営スタッフの調整まで包括的に支援しました。その結果、全国の22の自治体や25の企業が主催する接種会場にて388万回接種契約枠数の運営支援を実施しました(2023年3月までの累計)。