訂正有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/12/05 15:00
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136項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)継続企業の前提に関する重要事象等について
当社は、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により、第25期及び第26期において事業収益の減少や事業総損失の発生、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになる等、甚大な影響を受けました。加えて、当社は後記「(26)繰延税金資産について」に記載のとおり、第27期第2四半期累計期間末日において当社の事業計画に基づき17,395百万円の繰延税金資産を計上しており、これは同期間末日における株主資本合計6,889百万円と比較して多額となっております。これまでのかかる財務状況に照らして、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在していると外形的に判断されると考えておりますが、当該重要事象等を解消、改善するための対応策として、以下に掲げる手元流動性の確保、資本の増強、事業の収益改善及び費用削減等の施策を行い、財務状況の安定化を図って参りました。
例えば、当社では、金融機関とのシンジケート・ローン契約に基づき合計30,000百万円の借入を行い手元流動性を確保しました。この借入については感染症拡大の収束状況を適切に見極めた上で長期借入の借換をすべく、期間を1年間としておりましたが、足もとで継続的な収束の兆しが見えてきたため次年度以降長期借入への借換を行う方針であります。また、第26期において既存株主を引受先とする総額2,000百万円の第三者割当増資を実施するとともに、株式会社日本政策投資銀行及び株式会社商工組合中央金庫から合計3,000百万円の資本性劣後ローンの借入を行うなど資本増強にも努めております。加えて、航空機リース契約の見直し、国際線の休止継続、人件費の抑制、整備計画の精査及びその他徹底したコスト削減等の各種施策に取り組んできた結果、各種施策が奏功し、回復する移動需要に対応して万全な供給体制を整えたことで多くのお客様にご搭乗いただき、第27期第2四半期累計期間においては純利益として2,704百万円、現金及び預金として8,807百万円と十分な金額を確保しております。これらを踏まえて、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断し、財務諸表等への注記は記載しておりません。
今後もより多くのお客様にご搭乗いただくため、より一層の経営努力に励み、引き続き各種施策が奏功すること及び本件公募増資等による財務基盤の強化を通じて、第27期末においては継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような状況も解消される見込みであると考えております。
(2)発着枠について
当社は羽田空港を発着する路線を中核として事業展開を図っておりますが、同空港の発着枠については、航空法による混雑飛行場に係る特例の適用を受けております。当社が利用可能な同空港の発着枠は、本書提出日現在において、国内線38枠であり、将来において発着枠の見直し・再配分等が行われた際に、当社の利用可能な発着枠が減少した場合又は想定通りに増加しなかった場合には、当社の事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。また、当社における既存発着枠の活用が計画通りに進まない場合についても、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)景気動向の影響について
航空業界は、旅客需要等について景気動向等の変動による影響を受けております。当社は、一般利用者や企業向けに比較的低価格で座席を提供しており、低価格志向の需要を一定程度取り込んでいるものと認識しておりますが、たとえば、当社の事業は、一般利用者の非ビジネス目的の旅客需要の構成比が高く、景気低迷等の物価変動に係る需要の減少等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、消費者が航空機の利用に代えて、新幹線等の地上交通機関を選択する場合や、LCCへのシフト、ビデオ会議等のコミュニケーション手段の浸透によるビジネス慣習の変化、消費者による信頼や認知度の低下、日本の高齢化と人口減少等による旅客需要の変化が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)原油価格の上昇に伴う燃料費への影響について
燃料費は、当社の営業費用の相当部分を占めているため、燃料の調達可能性及び価格の変更による燃料費の大幅な変動は、当社の営業損益に重大な影響を及ぼす可能性があります。例えば、当社の燃料費は原油価格水準の影響を直接的に受けております。ロシアのウクライナ侵攻等の地政学的要因、国際的な原油市場の需給バランス、金融情勢、為替相場、産油国の政治情勢及び石油精製能力等の影響に伴う原油価格水準の動向によって、燃料費が上昇する可能性があります。当社は、このような燃料費に係る原油価格については商品スワップ取引を行い、変動リスク低減に努めておりますが、これらの取り組みが、燃料費の変動による影響を完全に吸収できるとは限りません。また、当社は燃油サーチャージの徴収を導入していないため、燃料費の上昇を顧客に転嫁するためには、運賃を値上げする必要がありますが、運賃の値上げは顧客の需要に影響を及ぼす可能性があります。加えて、現在、政府により、燃料元売り業者に対して航空燃料を対象に含む燃料油価格激変緩和対策事業による補助金支給が行われており、航空燃料の価格が抑制されていますが、本書提出日現在、当該事業は2022年12月末まで実施することとされています。今後想定を上回る急激な原油価格の上昇が発生した場合、航空需要の縮小により想定を上回る減便が発生することによりオーバーヘッジとなった場合は当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)競争環境について
日本の航空業界において、近年のLCCの参入により航空各社の勢力地図にも変化がみられ、コロナ禍前における訪日外国人旅行客の増加等、国内外問わず航空需要は日々大きく変化しております。当社においては、一部の路線でLCC及び大手航空会社との競合に直面しており、また、日本国内でも最大の混雑空港である羽田空港を発着する路線及び地方空港を発着する一部の路線では、大手航空会社と競合しています。
また、当社の主要路線は、路線によっては新幹線・高速バス等の地上交通機関とも競合関係にあります。今後、競合他社等の運賃戦略等により競争が激化した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)為替変動の影響について
当社の主な費用のうち、航空機リース及び航空機整備の大部分並びに購入予定の航空機の売買契約について、外貨建で取引を行っているため、為替変動による影響を受けております。航空機リースに係る契約保証金等については外貨建債権を保有している一方で、当社は為替変動によるリスクをヘッジする目的で為替予約を行っております。しかしながら、為替予約により為替変動の影響を緩和することは可能であっても、すべてを排除することは不可能な状況であります。このため外国為替の大幅な変動が生じた場合には、費用の増減、若しくは外貨建債権債務の評価損益の発生等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)人材の確保について
当社における人材の中でも、運航に従事するもの(操縦士、運航管理者)、航空機の整備に従事するもの(整備士)については、航空法に定める資格が必要であります。当該有資格者については、国内他社の経験者並びに海外の経験者等に拠って、人材を確保しておりますが、雇用環境によっては、相当数の有資格者を一時に確保することが困難になる可能性があります。その対策として、自社養成による有資格者の育成を進めておりますが、資格取得までは一定期間の教育訓練を必要とするため、事業展開の時期並びに規模について制約を受ける可能性があります。
(8)航空機材の導入について
当社は保有する又は保有を計画している全ての航空機の調達等をボーイング社及び航空機リース会社に依存しているため、ボーイング社若しくは航空機リース会社が航空機を適時に納入できない、又は、製品・保守の適切なサポートを提供できない場合、当社の事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。国内路線における航空機材について、当社は国内路線においてはボーイング737-800型機(177席)を使用機材(本書提出日現在においてボーイング737-800型機29機を導入)として事業を展開しておりますが、ボーイング737-800型機は2019年に生産が終了していることから、新型機材としてボーイング737MAXシリーズのボーイング737-8型機及びボーイング737-10型機の導入を検討しております。しかしながら、例えば、ボーイング737-10型機の導入には、ボーイング社が米国連邦航空局及び国土交通省航空局から認証を取得することが必要であるなど、航空機メーカーの技術上・財務上・その他の理由により、新型機材の導入が遅延した場合、当社の機材計画は変更を余儀なくされ、中長期的な事業に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社の現在の航空機はボーイング社製の単一機種であり、ボーイング社製の737型機の安全性や信頼性に潜在的な問題が生じた場合、それが事実であるか否かにかかわらず、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)損益構造について
当社の営業費用のうち、人件費、航空機のリース料・整備費、空港施設の賃借料等は、事業収益の変動に比例して変化するものではありません。また、燃料費、着陸料及び航行料等、航空機の運航に関連する営業費用は、搭乗率や旅客数に関わらず発生します。その結果、旅客数、搭乗率及び旅客単価のわずかな減少が、当社の財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、当社は、新型コロナウイルス感染症の影響によって旅客需要が減少した期間において、一定のコスト削減施策を実施しておりますが、今後、更にコスト削減を行う余地が限られる可能性があります。
(10)使用機材等の整備費の変動について
航空機等に係る整備につきましては、当社の規程で定めている期限、使用機材の状態を考慮し、定期的に点検・整備を実施しておりますが、それぞれの機体及びエンジン等の点検結果によっては整備対象範囲の増加等により、整備費が変動する可能性があります。また、リース取引終了に伴う航空機返還に係る整備費用については、返還する時期、航空機の状態、その他の要因等によりその見込額に大幅な差異が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)航空機事故及びトラブル等について
当社の運航便において航空機事故又はトラブル、従業員のコンプライアンス違反等が生じた場合には、顧客の信頼性や社会的評価の低下、航空機運航に係る障害又は損害賠償請求等が生じることにより、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。現在、当社は航空機事故等に関して航空保険に加入しておりますが、事故や事件に関する費用が完全に塡補されない可能性があり、その場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、他社において航空機事故が発生した場合も、業界全体において航空需要が低下し当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社では航空機事故及びトラブル等が生じないよう、安全啓発セミナーや全社事故処理模擬演習、緊急脱出訓練(それぞれ年1回)等、従業員への研修を徹底しており、安心・安全な運航を提供できるよう努めております。
(12)システム障害等について
当社は、システムを通じて予約販売、搭乗手続、運航管理、業務管理等、お客様へのサービス及び運航に必要な業務を実施しております。システム上で重要な業務を行うことからシステム障害が起こらないよう、定期的にメンテナンスを実施しておりますが、万が一、自然災害、コンピュータウィルス、サイバー攻撃、その他のセキュリティ障害及び通信障害などによって、システムに障害が発生し運航等業務に支障をきたす事態となった場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、適切な時期及び内容でシステムのアップグレード等を行えない場合には、当社の事業運営や競争力に影響を及ぼす可能性があります。当社は、様々なシステムの導入にも一定の投資を行っておりますが、新システムの導入については、その性質上、一定の期間を要するほか、新システムが想定どおりに作動しない、導入によりデータや情報の消失が生じる、導入に想定以上のコストがかかる、導入が遅延する、システム障害が発生する、あるいは新システムがビジネス上の要請を満たせない等の可能性、また、それらによってソフトウエアに関して減損処理が必要になる可能性があります。
(13)顧客情報漏洩について
当社は、膨大な顧客に関する情報を保持していることから、機密保持規程、個人情報保護規程等を制定し、従業員への研修を行う等、情報管理に関する内部管理体制を整備しております。しかしながら、不正アクセス、サイバー攻撃、盗難、パスワードの管理不備や業務上の過失等、何らかの原因により顧客情報の漏洩事故が発生した場合、損害賠償費用の発生や信用失墜により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)第三者のサービスへの依存について
当社は、航空運送事業において、一部運航乗務員の派遣を受けているほか、航空機の整備、機器の修理、予約センター等の業務において、第三者に一部の業務を委託しています。特に当社が運航する羽田空港やその他の国内主要空港において、運航上の不具合や長期のストライキなどによって、これらの第三者による受託業務の遂行に支障が生じた場合、当社の事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)災害等について
当社の全ての運航管理は羽田空港で行われており、また、国内路線の多くは羽田空港、新千歳空港、神戸空港、福岡空港、那覇空港等の国内主要空港を利用しております。このため、当該地域において地震、洪水、台風、大雪等の大規模災害や当該施設における火災等による災害や労働争議が発生した場合には、運航管理及び当該空港発着便の運航が困難となり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当該地域以外においても、当社が就航する地域において自然災害や何らかの要因により空港施設等の利用に支障が生じた場合にも、同様に当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)戦争・テロ等の影響について
国際的な戦争・テロ等が発生した場合には、日本国内においても保安対策の強化に伴う航空会社の負担増や航空保険料の上昇等により関連費用が増加する可能性があります。また、ウクライナ情勢緊迫化による燃料価格等の更なる高騰により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)感染症による影響について
現在、当社は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により甚大な影響を受けております。国内航空旅行への需要は回復傾向にあるものの、この傾向が継続するか否か、特に新型コロナウイルスの感染が再度拡大した場合に、国内旅客需要が、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻るか否かは不明であります。今後も新型コロナウイルスの感染が再度拡大した場合や新たな感染症が発生・蔓延した場合は、人々が外出を控えることによる利用客数の減少や、顧客の航空利用の意欲の低下が予想されるほか、渡航制限、検疫、公共施設の閉鎖、公共行事の中止等、様々な対策が実施され、国内外の観光及びビジネス目的の旅客需要が引き続き落ち込むことにより当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。加えて、現在、当社は国際路線を運航していませんが、外国人観光客の日本への流入は当社のサービス需要に一定の影響を及ぼす可能性があり、国内外での新型コロナウイルスの感染の再拡大により、日本政府による外国人観光客の入国制限が復活した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、ビジネス商用目的の旅客需要は、新型コロナウイルス感染拡大によって普及したビデオ会議等のコミュニケーション手段の浸透によるビジネス慣習の変化により、新型コロナウイルス感染拡大以前の水準に完全には回復しない可能性があるほか、政府の旅行支援策が想定どおりに国内航空旅行の需要を回復させない可能性もあります。また、毒性の強い感染症に当社社員が大量に感染し運航等業務に支障をきたす事態となった場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(18)事業に対する法的規制について
当社は、航空事業関連法令等の法的規制に基づき事業を展開しており、国土交通省航空局より航空運送事業者としての「事業許可証」の交付を受けております。
当社では当該法的規制を遵守するため、組織並びに規程類を適宜整備し、専門性の高い人材の確保、育成に努めていますが、これらの法的規制の遵守には多額の費用が必要となります。また、今後、これらの法的規制の改正や新たな規制の導入があった場合、追加的な費用が発生する可能性があります。加えて、当該法規制等に抵触する事象が生じた場合や重大な変更等が生じた場合には、事業許可の取り消しにより当社の事業運営が制限を受け、財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。なお、現在事業許可の取り消しに係る事象はございません。
(航空運送事業許可の状況)
取得年月2000年2月(注)
許認可等の名称事業許可
所管官庁等国土交通省
有効期限事業許可証の書換え又は再交付がなされるまでの間、有効とする。
※書換え又は再交付の発生事由は、事業許可の内容、若しくは運航者情報の変更による場合であります。
※最新の許可内容となった日は2019年12月2日であります。
法令違反の要件及び主な許認可取消事由航空法第119条(事業の停止及び許可の取消し)
・事業許可等に付した条件に違反したとき。
・正当な理由が無く、事業許可等の実施すべき事項を実施しないとき。
航空法第120条(許可の失効)
・航空法第4条第1項各号に掲げる者に該当するに至ったとき。
※当社の事業許可等に付された条件及び未実施事項はありません。

(注) 航空法改正に伴い、2000年2月1日より従来の路線免許制から事業許可制へと変更されております。
(19)環境規制について
近年、温暖化防止を始めとした地球環境保全の一環として、航空機による温暖化ガスの排出量削減に係る取組の強化等が求められております。今後、規制の更なる強化や環境税等の新たな規制が導入された場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、航空機の騒音、危険物の使用及び取扱、大気放出及び環境汚染の浄化に関連する様々な規制の適用も受けておりますが、今後の更なる規制の強化や新たな規制が導入された場合には、多額の費用を要する可能性があります。
(20)公租公課について
航空会社は、公租公課等として航空機燃料税や着陸料、航行施設利用料等を支払う必要がありますが、航空機燃料税、着陸料及び航行施設利用料については現在、国の時限的な軽減措置を受けております。このうち、本書提出日現在、新型コロナウイルス感染拡大対策としての航空機燃料税の軽減措置は2023年3月まで、空港使用料及び航行援助施設利用料の軽減措置は2023年2月まで継続する予定となっております。今後、かかる軽減措置の縮小・廃止が行われた場合、当社の経営に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社の事業計画の策定においては、かかる軽減措置について上記期限での終了を見込んでおります。
(21)訴訟等について
当社の事業活動に関連して、重要な訴訟等が提起された場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(22)資産減損について
当社は、固定資産の減損に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し減損の兆候の把握及び減損損失の認識・測定を行っております。その結果、将来において固定資産の減損損失を計上することも予測され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(23)有利子負債及びリース債務について
当社は国内路線においてはボーイング737-800型機(177席)を使用機材(本書提出日現在においてボーイング737-800型機29機を導入)として事業を展開しておりますが、同機材に関しては24機をオペレーティング・リース取引により導入しています。また、当社は、オペレーティング・リースを通じて一部の新型機材を導入することを予定しており、当社のオペレーティング・リース債務は将来増加する可能性があります。加えて、当社は、金融機関からの借入も行っており、これらのオペレーティング・リース債務及び有利子負債については、その返済等のために多額の手元資金が必要となることなどにより、当社の収益及び流動性に影響を及ぼす可能性があり、また、当社が経済状況や事業環境の変化に応じた施策を行う能力が制限される等の悪影響を受ける可能性があります。
オペレーティング・リース取引により導入されている機材に関して、当該航空機及び未経過リース料については貸借対照表には計上されておりません。しかしながら、今後、リース会計基準等の改正によりオペレーティング・リース対象資産・負債を計上することとなった場合には、関連する経営指標に悪影響を及ぼす可能性があり、また、将来においてリース資産の減損損失が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(24)配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を経営の最重要課題の一つとして認識しておりますが、企業体力の強化及び今後の事業展開へ備えるため、まずは適正な内部留保を確保する必要があると考えております。そのうえで業績及び財政状態の状況を勘案しながら株主への利益還元を行って参ります。しかしながら、当社の事業が計画通りに進展しない場合など、当社の業績が悪化した場合には配当の実施を行うことができない可能性があります。
(25)欠損金の繰越控除について
当社は、現時点で税務上の繰越欠損金が存在するため、法人税等が軽減されております。今後当該繰越欠損金が解消され、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が発生する場合において、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。また、仮に繰越欠損金を利用するのに十分な課税所得がない場合、繰越欠損金による控除を受けられないまま、繰越欠損金を課税所得から控除できる期間を経過する可能性があります。
本書提出日現在における当社の資本金の額は1億円であり、当社は、法人税法上の中小法人等として、過去10年以内に生じた繰越欠損金について課税所得の全額まで控除が可能となるなど、税法上、いわゆる中小企業向けの措置の適用対象となっております。当社は、「第一部 証券情報 募集又は売出しに関する特別記載事項 5.株式発行と同時の資本金の額及び資本準備金の額の減少について」に記載のとおり、本件公募増資等と同時に本件減資等を行うことを予定しており、これにより、当社の資本金の額は引き続き1億円となる見込みです。しかしながら、今後、当社の資本金の額が増加し、これに応じた資本金の減少がなされない場合、また、上記の中小企業向けの税制措置について、廃止、変更その他の理由により、上記措置の全部又は一部が当社に適用されなくなった場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
具体的には、当社には、2022年3月末時点において合計約787億円の法人税法上の繰越欠損金が存在することから、今後生じる各事業年度の課税所得の全額について、上記の中小企業向けの措置を活用することによって、最大で約275億円(※)のキャッシュ・フロー上のメリットを享受できる可能性があります。しかしながら、上記の中小企業向けの税制措置の適用対象とならない場合には、繰越欠損金による控除の限度は各事業年度の課税所得の50%となり、繰越期間内に繰越欠損金の全額を課税所得からの控除のために使用できなくなる等、上記のメリットを享受できる範囲が限定される可能性があります。
なお、本件減資等の実施及びそれに伴い当社が税法上の中小企業向けの措置の適用を引き続き受けることについては、社外の専門家等の意見も踏まえ、当社の社外取締役4名及び社外監査役2名の意見も聴取した上で慎重に検討した結果、現行の法制度を利用した適法なものであり、当社航空事業の安定的な運営及び企業価値の向上に資するものであると当社取締役会にて判断しております。しかしながら、上記措置を利用することにつき、今後、否定的な報道等がなされた場合には、当社のレピュテーションに影響を与える可能性があります。
(※)繰越欠損金の繰越期間中の各事業年度において対応する課税所得(繰越欠損金控除前)が発生することを前提とし、中小法人等の実効税率を34.59%として算出しております。上記金額は最大額であり、実際の影響額は上記金額と異なる可能性があります。
(26)繰延税金資産について
当社は、将来の課税所得に関する予測・仮定を基に個別に繰延税金資産の計上・取崩しを行う方針です。なお、当社は繰延税金資産に係るスケジューリング期間を5年とし、第27期第2四半期累計期間末日において繰延税金資産を17,395百万円(うち税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産は12,449百万円)計上しております。今後将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の全部又は一部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は純資産(第27期第2四半期末日で10,561百万円)よりも大きく積みあがっていることから当社の財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、前記(25)に記載のとおり、本書提出日現在において、当社は資本金の額が1億円であるため中小法人等としての繰越欠損金控除限度額が適用されております。今後、資本金の額が1億円を超える場合や中小企業向けの税制措置の廃止、変更その他の理由により、適用される限度額が変更された場合には、繰越欠損金に係る繰延税金資産が減少し、損益計算書上、当該減少分が法人税等調整額に費用として計上されるなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(27)大株主がファンドであることについて
本書提出日現在において、インテグラル2号投資事業有限責任組合が当社の発行済株式の42.93%を、UDSエアライン投資事業有限責任組合が当社の発行済株式の33.40%を、Integral Fund Ⅱ(A)L.P.が当社の発行済株式の4.75%を、インテグラル2号SS投資事業有限責任組合が当社の発行済株式の2.42%を所有しております。一般的にファンドによる未公開企業の株式所有目的は、株式公開時若しくは株式公開後に売却を行い、キャピタルゲインを得ることであります。当社株式上場後において、ファンドが所有する当社株式を市場にて売却した場合、当社株式の売却圧力が顕在化し、市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
(28)業績の季節変動性について
当社の属する旅客航空運送業界においては、春季及び夏季(3月及び7月から9月)並びに年末年始に需要が増加する傾向にあります。そのため当社の業績につきましても、これらの季節変動の影響を受けやすく、偏重が生じやすい状況にあります。したがって、各四半期の業績は、他の四半期又は年度全体の業績を示すものではありません。また、今後の新規路線の就航や就航便数の増加等により、当該季節変動とは異なる偏重傾向が生ずる可能性があります。
(29)資金調達について
当社の2022年3月期末における有利子負債は総資産の38.34%となっております。そのため金融情勢の変化等により計画通り資金調達ができない場合には、事業展開等に影響を受ける可能性があります。当社の財政状態の分析について、詳しくは「(1)継続企業の前提に関する重要事象等について」をご参照ください。また、金融機関からの借入に関して財務制限条項などが付されている契約もあり、当該条項に抵触した場合、貸付人の請求があれば本契約上の期限の利益を失うこととなり、債務の弁済が必要となるため当社の資金繰りや財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当該財務制限条項について、詳しくは後記「第5 経理の状況 1 財務諸表等 財務諸表に関する注記事項 (追加情報)」をご参照ください。
今後事業を推進していく中で借入金等への依存を低減していくように努めて参りますが、金利の上昇により資金調達コストが増大した場合には利益を圧迫し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。