有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/11/15 15:00
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145項目

事業内容

当社グループは、当社、連結子会社2社(モリカトロン株式会社、モノビットエンジン株式会社)、及び持分法適用関連会社1社(AIQVE ONE株式会社)から構成されております。
当社グループは、XR(注1)事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。なお、当社グループのサービスは、メタバース(注2)サービス、XRイベントサービス、XR周辺サービスに区分されます。
メタバースは、人々を住んでいる場所の制約から解き放つテクノロジーであり、19世紀に産業革命を起こした鉄道や、20世紀に情報革命を起こしたインターネットに続いて、21世紀に新しい革命を起こすインフラとして期待されています。
また、当社は「先進技術で、エンタメと社会の未来を創造する」ことをミッションとし、オンラインゲーム開発で培った通信技術とAI技術をコアとするXR技術をあらゆる産業に展開しております。企業価値の最大化を図るべく、誰でも簡単に仮想空間でイベントを行うことができる「XR CLOUD」等の新しいプロダクトを開発していきます。
オンラインゲームなどのメタバースは、フィクションの仮想空間においてプレイヤーが様々な体験をするために開発されたものです。また、オンラインゲームではリアルタイム同時接続の技術が重要ですが、新型コロナウイルス感染防止を契機として、この技術はノンフィクション(現実)においてもバーチャルイベントやバーチャル展示会などの様々な用途に利用され始めております。
バーチャルイベントやバーチャル展示会などのメタバース市場においては、株式会社矢野経済研究所が公表している「メタバースの国内市場動向調査(2022年)」によると、国内市場は2026年度まで年平均成長率68.3%(2021年度744億円→2026年度予測値10,042億円)での成長が予測されております。
このような予測について、足元はテレワークの急速な広がりに伴いバーチャルイベントやバーチャル展示会に加え、バーチャルオフィスやバーチャル会議が浸透するなど、現実的なものとなっております。今後も高速大容量通信や低遅延通信を実現する5Gの普及もあいまって、継続的に市場拡大していくことが予測されます。
そのなかでも当社グループでは、オンラインゲーム開発で培ってきた技術をゲーム業界だけでなく、幅広い業界における様々なシーンで利用可能とするために、仮想空間共有技術プラットフォーム「XR CLOUD」を開発しております。また、XR周辺に位置するAI技術・通信技術とを総合してXR事業とみなしております。
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<仮想空間共有技術プラットフォーム「XR CLOUD」について>「XR CLOUD」は、だれでも、どこからでも、大勢で同時接続できる仮想空間共有技術プラットフォームです。当社グループではXR市場において、コア技術である通信技術及びAI技術をゲーム業界だけでなく幅広い業界で利用可能とするために、誰でも簡単に仮想空間でイベントを行うことができることを目指し、仮想空間共有技術プラットフォーム「XR CLOUD」を開発しております。
オンラインゲーム開発で培ってきた技術と経験を背景とした「XR CLOUD」は、以下の特長を有しております。
1.安定した数万人規模の同時接続かつ、仮想空間を構成する1エリアごとにも1,000人規模の同時接続が可能
リアルタイム同時接続数は、仮想空間でのコミュニケーションに不可欠な技術要素ですが、全体と個別の2つの観点で分けて考えることができます。1つは「空間内全体での同時接続数」、もう1つは「1エリア内での同時接続数」です。当社の技術では、仮想空間内全体において数万人の同時接続が可能であり、かつ、当該空間を構成する1エリア内でも1,000人規模の同時接続が可能です。1エリア内での同時接続数は多ければ多いほど現実でのコミュニケーションに近しいものとなっていきます。この点は当社グループが持つ重要な優位性となっております。
2.OEM提供による高い拡張性
当社グループは、長年にわたるオンラインゲーム開発などのシステム開発ノウハウの蓄積、自社で確保している開発リソースを背景に、「XR CLOUD」を開発いたしました。このような開発技術を活用し、顧客ごとに異なる個別の細かなニーズに合わせた柔軟なカスタマイズ対応を可能とする体制を構築できております。
3.マルチデバイス(スマートフォン、タブレット、PC等)に加え、アプリだけでなくブラウザにも高品質対応が可能
仮想空間においては、ユーザー側の使用するブラウザによって、画面遷移や音声等の品質にバラツキが発生します。当社グループではこれまでの開発技術や知見を活かし、独自のクラウドレンダリング技術(注3)を有しております。従来のブラウザでレンダリングを行うWebGL技術(注4)では接続数が増えるとクライアント処理が極端に重くなるという課題をクリアした、1,000人が同時接続しても重くならない先端技術です。
<当社グループのサービスについて>当社グループのサービスは、(1)メタバースサービス、(2)XRイベントサービス、(3)XR周辺サービスに区分されます。
(1)メタバースサービス
メタバースサービスは、仮想空間内で行われるライブ・展示会等の需要に対し、顧客ごとのシステム開発及びオンラインゲーム開発、顧客の要望によってはライブ・展示会等のイベント運営、集客代行、運営支援を行うものです。また、「XR CLOUD」をOEM供給し、顧客のプラットフォームとして、顧客ごとのオリジナルの仮想空間の構築及びオンラインゲーム開発等を行うものを分類しております。OEM供給することで、メタバースをゼロから開発することなく、迅速かつ安価に独自メタバースを構築できます。開発実績としては、ライブ特化型仮想空間SNS「INSPIX WORLD」や、「INSPIX WORLD」内のオンラインゲーム、バーチャル音楽ライブ「JM梅田ミュージックフェス」、オリジナル会場における展示会「デジタル甲子園」、同人誌即売会「NEOKET」、ファンイベント「JM梅田ミュージックフェス内の野外ライブやポイントラリー」等を手掛けております。これらサービスにおいて、当社は主にシステム開発の成果物の対価として売上を計上しておりますが、顧客の要望によっては川上から川下まで一気通貫で支援するソリューション提供をしております。これらにより顧客企業内に専門人材が不在でも、メタバースイベント等を運営できるような支援をする体制を有しております。
主たる収益であるカスタマイズ開発による初期収益に加え、プラットフォーム利用におけるライセンス料及び運営費等による安定した中長期収益モデルとなっております。
(2)XRイベントサービス
XRイベントサービスは、仮想空間内で行われるイベント等の需要に対して、当社のプラットフォーム「XR CLOUD」を活用し、あらかじめ構築した仮想空間をベースに、誰でも簡単に仮想空間上でイベント等を開催できるサービスを分類しております。
開発実績としては、採用説明会や社内懇親会、社内会議、展示会、ショッピングモール、VTuberファンイベント、国際化学オリンピック等を手掛け、さまざまな種類のイベントをパッケージ化し、低コスト、短期納期化を実現しております。
当社は「XR CLOUD」にあらかじめ構築されている標準機能※を提供することで、顧客が実現したいイベントを、ゼロから作る場合と比較して、短納期かつより廉価で実現可能なものとしております。また、「XR CLOUD」のプラットフォーム内においても、標準機能の応用として、顧客ごとに細やかな対応も可能です。それにより顧客1社1社にあったサービスを提供しております。具体的には、自社スタッフの顔を表現したアバターを用いるケースや、自社会議室を模した社内イベントを催すケースのほか、画面共有機能、カメラ映像のワイプ表示、PDFアップロード、質問者へのマイク付与など、ビジネス機能を充実させることもできます。また、同一エリアに1,000人同時接続可能な自社プラットフォームで、大規模なイベントも開催が可能です。このように「XR CLOUD」では、画一的なプラットフォームでは対応が難しいケースにも柔軟に対応しております。
ライセンス料、イベント制作・運営委託による収益がメインであり、イベントのパッケージ化によって、高い収益が見込めるモデルとなっております。
※仮想空間でイベント実施するのにあたり必要な「空間、アバター、画面共有、カメラ機能、名刺交換」等の機能
メタバースサービス及びXRイベントサービスは主に、仮想空間内で行われるイベント開催の需要がある法人に対してサービスを提供しております。当第3四半期連結累計期間における累計動員数は186,956人と前年度(59,026人)に比べ大きく増加しており、順調に推移しております。
開催されるイベントの属性は大きく以下2つのケースに分類できます。
1.最終消費者である一般個人が参加するイベント開催に利用するケース
顧客企業が要望する背景として、物理的に1か所に参加者を集める開催方法と比較してコスト安が望めること(設営費、運営人件費等)や、参加者増加が望めること(全世界から参加可能、施設の収容可能数に縛られない、移動が不要等)、技術革新により高いクオリティーでのメタバース体験が可能なこと(場所に囚われず、没入感のある体験ができる等)等が挙げられます。
例.バーチャルショッピングモール(そらのうえショッピングモール/ベネリックデジタルエンターテインメント株式会社)、バーチャルファンミーティング(オンラインVTuberフェス/中京テレビ放送株式会社)、テレビ連動企画(24時間テレビコンテンツ/中京テレビ放送株式会社)
2.自社内でのイベント開催に利用をするケース
顧客企業が要望する背景として、物理的に1か所に参加者を集める開催方法と比較してコスト安が望めること(賃料やイベント会場費等)や、メタバースならではの高付加価値(擬態化されたアバターを用いることでのコミュニケーション活性化等)があることが挙げられます。
例.社内イベント(アビームコンサルティング株式会社)、講演・懇親会(フランチャイズオーナー懇親会/株式会社HITOSUKE)
また、これらの新規顧客獲得の数・質を高めることを目的に、オウンドメディア「メタバース相談室」を運営しております。これにより、メタバース開発需要のある当社ターゲット企業へ効率的にリーチできる体制を構築しております。
(3)XR周辺サービス
当社グループ「XR CLOUD」の根幹でもある通信ミドルウェア「モノビットエンジン」の開発・販売、AIを用いたソフトウエア品質保証サービスの開発、キャラクター開発等のAI技術開発を行っております。
具体的には、当社子会社であるモノビットエンジン株式会社では、オンラインゲームやVR開発に用いる通信ミドルウェア「モノビットエンジン」を開発し、開発会社向けに提供しております。当社子会社であるモリカトロン株式会社では、AIを用いたソフトウエア品質保証サービスのシステム設計や研究開発、AIがキャラクターの口調を学習しセリフの監修をサポートする「AIせりふサポート」、人との雑談をシステム化する「AI会話ジェネレーター」等を提供しております。
(注)1.XR
VR、AR、MRなどの総称。VR:Virtual Reality=仮想現実は、仮想世界に入り込むことができ、AR:Augmented Reality=拡張現実は、現実と仮想世界を重ねることができ、MR:Mixed Reality=複合現実は、現実に仮想空間を融合させることができる。
2.メタバース
インターネット上に作られた仮想空間のことを指す。メタバースの利用者は3DCG空間で自分の姿をアバターの姿に変え、他のユーザーと交流したりコンテンツを楽しんだり、商品売買などの経済活動を行うことができる。
3.クラウドレンダリング
PCやスマートフォンなどのローカル端末で行われるイメージ処理を、全てクラウド上のサーバで行う手法。
4.WebGL技術
ブラウザで3DCGを高速に描画する技術仕様の一つ。
[事業系統図]
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注 持分法適用関連会社であるAIQVE ONE株式会社については、連結業績に与える影響は僅少であるため、事業系統図への記載を省略しております。