有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/11/10 15:00
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144項目

事業内容

当社グループは、当社、連結子会社(SmartDrive Sdn. Bhd.)の計2社で構成されており、「移動の進化を後押しする」というビジョンのもと、国内外において、モビリティデータ(GPSデータ(緯度経度、GPS速度、GPS精度)、加速度センサーデータ等)を利活用した顧客企業の業務効率化による生産性向上や既存サービスの高付加価値化、新規サービスの創出等に貢献するべく、事業を展開しております。
当社グループの主要事業は、「国内フリートオペレーター(*10)事業(以下、「国内FO事業」)」、「国内アセットオーナー(*11)事業(以下、「国内AO事業」)、及び「海外モビリティDX事業」の3つのサービス・事業を運営しており、具体的な内容は以下のとおりです。
なお、当社グループは、「モビリティDX事業」の単一セグメントとなります。
(1) 国内FO事業
国内に約2,000万台(注)ある商用車・法人需要車両を、業務目的で利用する企業向けに、クラウド(*1)車両管理や法令遵守、安全運転管理、車両に係る各種業務のDX(*2)化、モビリティデータ(*3)の分析・解析など各種サービスをSaaS型(*4)で直接提供しております。
(2) 国内AO事業
国内FO事業における各種サービスをパッケージ化し、リース会社や自動車メーカー、保険会社等のアセットオーナー企業を主とするパートナー企業向けにOEM(*5)提供することで、パートナー企業の既存顧客に向けて各種サービスを共同販売・展開すること、及びパートナー企業内の新規事業立ち上げ支援やPOC(*6)の実施支援など、パートナー企業が行う事業の高付加価値化や新規サービスの創出を支援しております。
(3) 海外モビリティDX事業
マレーシアにおいて現地企業や海外展開する日系企業向けに上記(1)(2)事業を提供しております。
(注) 一般財団法人 自動車検査登録情報協会「車種別(詳細)保有台数表」2022年5月、及び
一般社団法人 日本自動車リース協会連合会「自動車総保有台数とリース車保有台数の年別比」
から当社集計
各事業における主なサービスは以下のとおりです。
事業サービス
国内FO事業SmartDrive Fleet (法人向けクラウド型車両管理サービス)
その他オプションサービス
国内AO事業パートナー企業向けSmartDrive FleetのOEM提供、POC及びR&D支援
海外モビリティDX事業国内における各サービスの東南アジア市場向け展開

① SmartDrive Fleet
車載デバイスで車両をコネクテッド化し、業務目的で車両を利用する企業の各種課題を解決する、クラウド型車両管理サービスです。以下に記載した当サービスの主な用途・特徴は、業務目的で車両を利用する企業に共通した用途・課題であり、中間流通・インフラメンテナンス・不動産・訪問介護など幅広い業界の顧客企業にご利用いただいており、2022年6月末時点において800社超(注)の導入実績があります。

(注) 第2『事業の状況』1『経営方針、経営環境及び対処すべき課題等』(契約企業社数(エンドユー
ザー社数)の推移)参照
(SmartDrive Fleetの主な用途と特徴)
▪ DX推進
車載デバイスを介して車両の移動データや位置情報、運転挙動、車両稼働状況など各種モビリティデータを収集できます。顧客企業は収集されたデータから、自社で利用する各営業車両や各配送車両の位置情報・訪問エリア・訪問ルート等をリアルタイムに把握し、業務を可視化することができ、訪問効率や営業効率の最適化、生産性向上を推進することができます。その他、共用車両の事前予約機能による車両管理業務の簡易化や、各車両の使用頻度や稼働状況の自動記録機能によって保有台数の最適化等を検討することができます。

▪ 安全運転管理や法令遵守等のコンプライアンス対応
各ドライバーの運転挙動・運転性向の自動記録機能や独自のスコアリング機能によって、急操作等が多いドライバーを適時把握でき、顧客は自社における安全運転指導や交通事故未然予防を推進することができます。その他、運転日誌など道路交通法施行規則に基づく法定必要書類の自動作成機能や、アルコール検知器と連携した酒気帯び点検結果の自動記録機能など、顧客は車両に関する法令遵守・コンプライアンス対応を推進できます。

▪ マルチデバイス対応
サービス利用及び各種モビリティデータの収集に際して、SmartDrive Fleetでは、車種を問わずに取り付け可能な自社製デバイスのみならず、他社製のドライブレコーダーや車載Wi-Fiルーター、ETC2.0機器とも連携し利用可能であること、また、SmartDrive Fleetの一部機能についてはスマートフォンのみでも使用可能な設計となっており、顧客はデバイスの種類並びに車両の保有形態の制約を受けずにサービス利用することができます。

② その他オプションサービス
▪ SmartDrive Cars(ドライバーエンゲージメント)
運転挙動データに基づき、安全運転度合いに応じてコンビニエンスストア等で利用可能なデジタルポイントを、従業員であるドライバー向けに付与できるサービスであり、顧客企業内の福利厚生や従業員の安全運転に対するモチベーション向上のための手段として利用されます。車両管理を目的にSmartDrive Fleetを利用し、福利厚生を目的にSmartDrive Carsを利用するなど、同一顧客企業内で両サービスを並行利用する場合もあります。
▪ Fleet Option Report、Mobility Data Insight(データ分析サポート)
当社サービス利用時に自動記録される各種モビリティデータを基に、SmartDrive Fleetの通常利用時よりも詳細に安全運転管理、労務管理、業務効率化、コスト削減、動産管理等を実施する顧客企業向けに、データ分析結果のレポートや管理用ダッシュボードを提供するオプションサービスです。サービス提供に際しては、当社サービス利用時に自動記録されたモビリティデータのみならず、顧客企業が保有する各種データ(リース料、保険料、燃料費、車種等の車両関連情報や地図情報等)も組み合わせた形での分析・管理も可能です。
▪ SmartDrive Fleet Basic
車載デバイス不要でスマートフォンで使用可能な、安全管理者の日報作成自動化などコンプライアンス対応に特化した、エントリー向けサービスです。
③ パートナー企業向けSmartDrive FleetのOEM提供、POC及びR&D支援
モビリティデータを活用して自社の既存事業の高付加価値化や新規事業創出を目指すパートナー企業に向けて、SmartDrive Fleet をホワイトラベルとしてOEM提供することで、パートナー企業における新規事業のスムーズな立上げ支援を行います。例えば、自動車メーカーやリース会社などのパートナー企業が、エンドユーザー(自動車購入企業やカーリース契約者等の既存顧客)向けに、クラウド型車両管理サービスを新規事業として、かつ自社ブランドとしてサービス提供開始するにあたって、データ管理のためのデータプラットフォームや既存のサービス管理画面など、エンドユーザーへのサービス提供に向けた導入支援やサービス立上げ支援を当社が行い、サービス提供開始後はエンドユーザー数に応じて、パートナー企業との間でレベニューシェアを行います。
当該取組みは、パートナー企業にとっては新規事業の早期立ち上げや既存顧客との接点強化、顧客生涯価値の拡大を可能にするものであり、当社グループにとってはパートナー企業自体が大口顧客となり、エンドユーザーへのディストリビューターとして当社サービスの拡販に繋がるものといえます。
(SaaS基盤提供(サービスOEM提供)における協業事例)

その他POCやR&D支援として、当社が車両走行データやカーシェア利用データ、電気自動車の充電データ等各種モビリティデータを収集し、パートナー企業が保有するその他データを掛け合わせ、それらの解析支援を行うことで、パートナー企業と共同で新規商材やサービスの開発を行っております。例えば、保険会社をパートナー企業として、当社はデータプラットフォームに収集された車両の走行データに基づき、該当車両が将来事故を起こす確率と予測された事故率に基づいて保険料を柔軟に設定・算定できるAI(*8)(テレマティクス保険用リスクAI)モデルを保険会社に提供し、保険会社では当該モデルを活用した新たな保険商品(テレマティクス保険)の開発と販売を行っております。
(テレマティクス保険における協業事例)

[事業モデル]
① 国内フリートオペレーター事業
当社グループでは顧客に対して、直接販売及び販売代理店経由でサービス提供・販売を行っております。
なお、販売代理店経由での販売には、パートナー企業向けに既存サービスをOEM提供している場合における、パートナー企業の顧客に向けた販売も含まれます。提供されるサービスに対応して計上される売上の内容としては、以下のとおりです。
サービス売上種類摘要(売上の内容)
SmartDrive Fleet、及び
その他オプションサービス
イニシャル売上デバイス売上(3rd party製デバイス代金)
初期費用(各種サービスのセッティング費用)
リカーリング売上各種サービスの月額利用料
デバイス売上(自社製デバイス代金の原契約期間における期間按分相当)


② 国内アセットオーナー事業
当社グループではパートナー企業(顧客)に対して、直接販売・直接契約の形で相対でサービス提供・販売を行っております。提供されるサービスに対応して計上される売上の内容としては、以下のとおりです。
サービス売上種類摘要(売上の内容)
サービスOEM提供、及び
POC・R&D等のプロジェクト実施支援
イニシャル売上短期間のPOC・プロジェクト支援報酬
プロジェクト支援の過程で提供するデバイス売上(3rd party製デバイス代金)
OEM提供における初期費用(セッティング費用)
リカーリング売上長期間のPOC・プロジェクト支援報酬(プロジェクト支援に付随する各種サービスの月額利用料も含む)
パートナー企業における常駐・コンサルティング等の長期支援報酬

③ 海外モビリティDX事業
当社グループでは顧客に対して、直接販売・直接契約の形で相対でサービス提供・販売を行っております。
サービス売上種類摘要(売上の内容)
クラウド型車両管理サービスイニシャル売上初期費用(サービスセッティング費用)
リカーリング売上各種サービスの月額利用料

[事業の特徴]
a. SaaS型の容易なサービス導入
クラウド経由でのサービス提供を前提とし、ユーザー側でのサーバーやソフトウェア等の設備投資は不要で、インターネット経由でのサービス利用となるため、低コストでの導入が可能となります。また、ソフトウェアの保守や機能追加等は当社グループにて一括実施するため、運用コストも安価で、中小企業での導入も容易となっています。
b.マルチデバイス対応
当社グループのサービスは、車種を問わずに脱着が容易なシガーソケット型デバイスを用いることで、車両保有形態(リース車両、保有車両、カーシェア、レンタカー、借上車両)を問わずに利用可能です。また、他社製ドライブレコーダーや車載用Wi-Fiルーターとの連携、及び一部機能の制限はあるもののETC2.0やスマートフォンとも連携しており、マルチデバイスでのサービス提供や、モビリティデータの分析・解析が可能です。
c.リカーリングレベニュー(*7)による安定性と成長性の実現
サービス料金は主に顧客企業の利用期間、車両台数やユーザー数等に応じてサブスクリプションとして課金しています。継続的なサービス提供を前提とし、収益も継続的に積み上がるストック型ビジネスとしての安定性、かつ新規契約数の増加に伴い高い成長性も見込めるビジネスモデルとなっております。また、複数年間契約が主体で、契約金額を一括前払いにて回収しているためキャッシュ・フローの観点でも安定性が見込めます。
d.国内AO事業におけるパートナー企業との連携
パートナー企業の既存顧客との接点及び販売チャネルが効果的に機能することで、導入企業数(エンドユーザー数)の増加が見込めます。
e.データを活用したクロスセルの実現
各サービスを通じて収集したモビリティデータを活用することで既存サービスに加え、提供サービスの高付加価値化に資する分析データや予測データの提供など、クロスセルや更なるマネタイズが可能となります。
なお、*の用語については後記「用語の定義」をご参照ください。
[モビリティデータプラットフォームとしてのポジショニング]
上記各種サービスの提供を可能とするデータ解析基盤として、国内FO事業や国内AO事業を通じて収集されるモビリティデータを格納し、当該データの利活用が可能となるよう加工・解析を行っております。当データプラットフォームの構築によって、新規サービスの創出やクロスセルの実現、テレマティクス保険用リスクAI(*8,*9)の開発などパートナー企業の新規事業立上げ支援の実現が可能となり、当社グループのビジネスモデルを支える重要な役割を果たします。

以上を踏まえた、当社グループの事業領域とサービスの流れ、事業系統図は以下のとおりです。
[事業領域とサービスの流れ]
マルチデバイス対応による車両のコネクテッド化と各種モビリティデータの収集、データの利用価値を高めるデータプラットフォームを介したサービス作りと顧客への各種サービス提供、OEMパートナー企業に向けたデータ活用支援や事業化支援など、これら一連の事業・サービスを一気通貫で提供しております。

[事業系統図]

[用語の定義]
本書記載内容に対する理解を容易にするために、また、正しい理解をしていただくために本書で使用する用語の定義と解説を以下に記載します。なお、番号は本項「3 事業の内容」の文中において*で示した用語と対応しています。
番号用語用語の定義
*1クラウドクラウドコンピューティングの略称。ユーザー側がサーバーやソフトウェア等を保有するのではなく、インターネットを介してユーザーがサービスを利用する形態。
*2DXデジタルトランスフォーメーションの略称。企業がビジネス環境の変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争優位性を確立すること。
*3モビリティデータ車両をはじめとする移動体関連データ、関連分野データ、派生データ等
*4SaaSSoftware as a Serviceの略称。クラウドで提供されるソフトウェアサービスのこと。ユーザー側でソフトウェアを保有するのではなく、サービス提供側がソフトウェアの機能をクラウド上で提供し、インターネットを介してユーザーがサービスを利用する形態。
*5OEMOriginal Equipment Manufacturingの略称。委託者や発注元の名称・ブランドで製品やサービスを生産・提供すること。
*6POCProof of Conceptの略称。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーション、概念実証を指す。
*7リカーリングレベニュー継続型収益。リカーリングは「繰り返される」という意味であり、リカーリングビジネスとは一度の取引で完了するのではなく継続して取引を行い、安定した収益を得ることができるビジネスモデルのこと。リカーリングビジネスで得られる収益をリカーリングレベニューと呼ぶ。
*8AIArtifical Intelligenceの略称。学習・推論・認識・判断などの人間の知能的な振る舞いを行うコンピューターシステム。
*9テレマティクス保険テレマティクスとは、通信を意味するテレコミュニケーションと情報科学を意味するインフォマティクスを組み合わせた造語で、移動体に通信を組み合わせて、リアルタイムに情報サービスを提供することの総称。
そして、テレマティクス保険とは、テレマティクスを利用して、走行距離や運転特性といった運転者ごとの運転情報を取得・分析し、その情報を基に保険料を算定する自動車保険を指す。
*10フリートオペレーターここでは、車両を介して、「3 事業の内容」に記載された各種サービスを利用するエンドユーザーを指す。
*11アセットオーナーここでは、完成車メーカーやリース会社、保険会社等、車両を活用する企業に対して、主に保有する社内資産を介してサービス提供を行う事業会社を指す。