有価証券報告書-第1期(2025/06/02-2026/03/31)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、2026年6月25日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「この先の道をともに歩み続ける、信頼のパートナー」というビジョンのもと、「人と物の移動をつなぎ、ともに豊かな未来を創ります。」のミッションを果たしてまいります。当社グループは、より良い未来のために、協業と業界パートナーシップを通じて社会への貢献とイノベーションの追求を目指しています。
当社グループは、日野自動車と三菱ふそうが長年培った強固な顧客基盤、日本・アジアをはじめとする広範な生産・販売ネットワーク、並びにダイムラートラック及びトヨタ両グループと連携した開発体制といった競争優位性を基盤に事業を展開します。開発・調達・生産の最適化に加え、燃料電池をはじめとするゼロエミッション技術や自動運転などの先進領域においてシナジーの可能性を追求し、「商用車の未来をともに作る」存在として、持続可能な輸送とより豊かな社会への貢献を目指します。
(2)中長期的な当社グループの経営戦略
当社は、2026年5月15日に中期経営計画を公表いたしました。中期経営計画は、本経営統合により発足した当社の成長に向けた明確なロードマップを示すものです。お客さまを全ての活動の中心に据えた上で、売上、収益性、資本効率の成長・向上を実現すべく、中長期の財務目標を定めております。商品の競争力向上、収益性向上、事業効率化及び大規模な統合シナジーを通じた持続的な企業価値向上を目指してまいります。
当社グループは、統合プラットフォーム戦略による商品の競争力強化を中核に、「事業成長」と「効率化」という2本柱の枠組みを通じて本経営統合による競争力向上を加速させてまいります。
①第1の柱:「事業成長」
・新車事業
日野自動車と三菱ふそうの2つの強力なブランドと長年培った販売ネットワークを基盤に、地域別に最適化した成長戦略により新車販売を拡大、統合プラットフォーム戦略による商品の競争力向上を通じて持続的な成長を図ります。日本においては、主に供給停止されていた製品の供給の再開等を行うことで、販売台数の回復を目指します。東南アジアにおいては、製品ラインアップを強化するとともに、現地調達・生産体制の最適化等の現地化を通じた成長により、強固な市場ポジションのさらなる強化を目指します。その他地域においては、強固な市場基盤を活かし、中東・アフリカや中南米といった高成長市場の成長の取り込みを目指します。
・部品・サービス事業
部品事業においては部品ポートフォリオを拡充するとともに日野自動車と三菱ふそうの統合シナジーにより効率を高め、サービス事業では整備士の増員と拠点拡大により整備能力とサービス稼働率向上を目指します。加えて、ソリューション事業の展開により提供価値の幅を広げてまいります。特に、成長に向けた重点領域として、国内外の部品事業及び国内の保守・修理サービスの展開を推進します。
・統合プラットフォーム戦略
製品ラインアップのプラットフォームを統合し、日野自動車と三菱ふそうの両ブランドの独自性を維持しつつ商品の競争力強化を図ります。競争力ある製品の実現に向け、大規模に展開されている世界トップクラスの技術に幅広くアクセスし、優れた製品・技術をより迅速に展開するとともに、ブランドごとの製品ポートフォリオを拡充することを目指します。また、共通の開発・生産基盤を活用することで、コスト効率、性能、品質を同時に最適化、研究開発の効率化で生まれたリソースをさらなる技術投資に再配分し、コストと価値の両面で優位性を持つ強固な事業基盤の確立につなげてまいります。
・お客さま起点の技術開発
お客さまの事業成功を起点に、総保有コストの最適化と高い運用性の実現に取り組むとともに、高度な先進安全機能や排ガス規制などの各市場ニーズに適合した最適な技術の提供を目指します。ダイムラートラック及びトヨタとの技術連携により先進技術へのアクセスを拡大し、既存技術の向上をはじめ、CASE(注)領域への対応を進め、持続的な収益成長の実現を目指します。
(注)CASEとは、コネクテッド、自動運転、シェアリング・サービス、電動化・ゼロエミッションを指します。
②第2の柱:「効率化」
中長期にわたり、研究開発、調達、生産、間接部門で段階的にシナジー創出を進め、変動費と固定費の双方を効率化し、収益性の向上を図ります。開発分野ではコスト競争力を実現する車両設計や統合プラットフォームによる標準化を進めます。調達分野では共同調達や内製・外製の最適化を進めます。生産分野では国内外における生産の最適化を図るとともに、サプライヤー基盤を活用した最適な調達を進めてまいります。間接部門では本社機能を最適化し、共同でのIT戦略を進めてまいります。
③持続的成長を支える財務方針
本経営統合によるシナジーの早期実現と最大化に向けた成長投資を推進するとともに、健全なバランスシートを維持しつつ規律ある資本配分を徹底し、安定的な株主還元の実現を目指します。また、事業ポートフォリオを財務面及び戦略面の両面から評価し、適切なタイミングで投資判断を行うことで、当社グループの潜在力の最大化を通じて企業価値向上に取り組みます。
④強固な経営基盤の確立
ガバナンスに関しては、当社は、透明性と適材適所を重視したコーポレート・ガバナンス体制のもと、多様な視点からの議論を通して強固で透明性の高いガバナンスを構築し、取締役会による適切な監督機能のもとで内部統制及びリスク管理体制の強化に取り組んでいます。過半数を独立社外取締役で構成する監査等委員会、指名諮問委員会及び報酬諮問委員会を設置し、独立社外取締役からの適切な関与と助言により、意思決定のプロセスの公正性や透明性の向上を図ってまいります。
人的資本に関しては、当社は、価値創造の原動力である人的資本に重点を置いています。これを重要な経営課題として、本経営統合前から経営層及び実務担当者層の双方において日野自動車及び三菱ふそうの両社メンバーからなる取り組みを通じて共通の価値観を育んでいます。当社のカルチャーは、日野自動車と三菱ふそうの文化を融合・発展させた共通の基盤として人材の力を最大限に引き出し、本経営統合の効果を最大化してまいります。
⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
中期経営計画において、売上高、営業利益率、連結売上台数(注)、キャッシュ・コンバージョン・レート、ROE(自己資本利益率)、配当性向、D/Eレシオを重要な財務上の経営指標としております。そのうち、営業利益率については、中期的に7%、長期的に10%以上を目標としております。
上記目標の達成可能性に関する主要な前提及び仮定には、日本・インドネシア等の主要市場における商用車需要及び部品・サービス需要の増加、当社の日本市場における販売台数・市場シェアの回復、生産拠点集約・販売子会社の売却の計画どおりの実施、統合プラットフォーム上での生産台数比率85%以上の達成(長期目標)、固定費・変動費削減の成功、必要資本へのアクセスの確保、並びに、円高を含む外国為替相場、固定費インフレ水準、競争環境及び規制環境が当社の想定の範囲内に留まることが含まれます。
上記目標の達成可能性は、上記の前提及び仮定に加え、後記「3 事業等のリスク」に記載された各種リスクが発現しないことを含む様々な前提及び仮定に基づいています。こうした前提及び仮定は、グローバルな事業・経済環境、当社の主要な事業地域における経済状況及び商用車需要、競争環境の変化等の当社の統制の及ばない事項に関係しています。上記目標は、当社の取締役会等の会議体にて審議及び決定されたものですが、当社の事業実績は限定的であり、当社の将来見通しに関する評価には、様々な戦略的施策を実行する当社の能力に関するものを含め、不確実性が伴います。そのため、当社は、上記目標の達成可能性や前提及び仮定の妥当性について、いかなる表明又は保証も行うことができず、また行うものではありません。実際の結果は、上記目標とは異なり、場合によっては重大な差異が生じる可能性があります。
(注)連結売上台数:当社グループ内取引消去後の当社グループ連結外へ売り上げたKD(Knock Down:完成車ではなく、部品又は半完成品として輸出し、現地で組み立てる方式)含む新車の台数
(3)当社グループの環境及び競争優位性並びに対処すべき課題
<当社グループの環境及び競争優位性>①当社グループ
商用車業界においては、地球温暖化や労働力不足、輸送の多様化など人流・物流を取り巻く社会課題の顕在化に伴い、カーボンニュートラルへの対応をはじめとする持続可能な輸送の実現に向けた変革が求められています。当社グループは、日野自動車と三菱ふそうが長年培ってきた強いブランドと生産・販売基盤、そしてダイムラートラック及びトヨタとの連携によって生まれる強固な競争優位性を最大限に活かし、「人と物の移動をつなぎ、ともに豊かな未来を創ります。」というミッションのもと、持続可能な輸送の実現と豊かな社会づくりに信頼できるパートナーとして貢献することを目指してまいります。
・日野自動車及び三菱ふそうの両ブランドを背景とした地理的に多様なポートフォリオ
当社グループは、世界中の地域の顧客にサービスを提供できる広範なグローバルネットワークを保有しています。三菱ふそうと日野自動車を合わせたグローバルネットワークは、25カ国に170以上のグローバル販売代理店(2024年12月現在)、3,700以上のサービス拠点(2024年12月現在)、及び現地組立工場で構成されています。
当社グループは、日野自動車及び三菱ふそうという確立されたブランド、長年にわたる顧客との関係、現地の販売パートナーやサプライヤーとの強固な結びつき、密なサービスインフラ、そして確立された現地生産拠点等を活用し、日本や東南アジアなどの地域において市場を牽引する販売を行っています。また、当社グループは、中東やアフリカ、中南米といった高成長市場を含むその他の地域でも販売を行っています。
・商用車のフルラインアップ及び堅調な部品サービス事業
当社グループのビジネスモデルは、商用車のフルラインアップ、販売・流通ネットワーク、堅調な部品・サービス事業によって支えられており、安定した市場と高成長市場の双方において事業展開を行っています。
新車事業においては、日野自動車及び三菱ふそうの両ブランドの下、大型・中型・小型トラック、ゼロエミッション車、バスを含む商用車のフルラインアップを取り揃えています。日野自動車は優れた乗り心地や競争力のある総保有コストを特徴として大型・中型トラックに強みを有し、三菱ふそうは効率性及び優れた車両性能を特徴として大型・小型トラックに強みを有していると当社は考えています。また、両ブランド合計における2024年1月~12月における販売台数は東南アジアで第1位・日本で第2位に相当します(注)。商用車のフルラインナップを取り揃えることにより、特にアジアで見られる多様な市場ニーズに対応した競争力ある製品を引き続き提供してまいります。
部品・サービス事業においては、堅調な成長軌道を描いており、商用車購入者に対し、メンテナンスの提供やスペアパーツの販売に加え、保守契約、フリート管理システムやドライバーコーチングなど、お客様の業務運営を支援する付加サービスを含む、多様なアフターサービス及び部品販売を提供しています。
(注)東南アジアはインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの合算。S&P Global Mobility, Light Vehicle Sales(2025年12月1日取得)及びMedium/Heavy Commercial Vehicle Industry Sales Forecast(2025年11月4日取得)のマーケット調査に基づく当社分析によります。なお、S&Pは本分析に関与しておらず、分析結果に対して責任を負うものではありません。
・統合プラットフォーム戦略
統合プラットフォーム戦略は、前述のとおり、日野自動車及び三菱ふそうの両ブランドのメリットを活かしながら、調達、生産、研究開発における規模の経済効果を最大限に引き出すことを目的としています。
・ダイムラートラック及びトヨタとの提携
当社グループは、研究開発体制及び経営資源を基盤として多様な顧客のニーズに合わせた広範な技術ポートフォリオを有しており、世界トップクラスの技術へのアクセスを確保しています。
2025年12月31日現在、日野自動車と三菱ふそうの研究開発及びエンジニアリング拠点は、両社を合わせると、3,000名以上の研究開発者を擁し、日本国内に6つの研究開発拠点を有しており、ダイムラートラック及びトヨタとの提携を通じて、最先端技術の開発と展開を加速させてまいります。
・強固なガバナンス体制
当社は、取締役会9名のうち4名が独立社外取締役を務めており、取締役会の意思決定に対して透明性の高い監督体制を確保しています。また、意思決定の透明性と質を高めるため、任意の指名諮問委員会及び報酬諮問委員会を設置しています。両委員会とも5名の取締役で構成され、そのうち3名が独立社外取締役であるため、独立性を確保し、関連する専門知識を持つ人材を任命することを目指しています。
当社グループは、アジア及び世界の商用車業界における専門知識と国際的な経験を有し、多様な国際的視点を持つ経験豊富な経営陣の下で運営されています。
なお、参考として、当事業年度末現在における当社の連結子会社である日野自動車及び三菱ふそうの取り組みを以下に記載いたします。
②日野自動車
i)事業の強化
・「総合品質」の追求
商品については、2025年7月に小型トラック「日野デュトロ」を一部改良し、積載量2トンクラスの使い勝手を向上させました。さらに2026年1月には小型バス「日野リエッセII」を改良し、安全性や利便性を高めました。現場の声を反映した商品づくりにより、お客様のビジネスの安定稼働に貢献しています。トータルサポートについては、国内外の販売会社の拠点新設・拡充・更新等を継続的に進め、スピーディーで質の高いサービスの提供を通じてお客様のビジネスに貢献し続けていくための体制整備に注力しております。2025年には、島根日野自動車・鳥取支店をリニューアルし、整備環境や動線を改善いたしました。人材育成と働きやすい現場づくりを通じて、サービス品質の向上と安定した車両稼働を支えています。また、販売会社メカニックを対象とした三級自動車整備士の養成施設を開設し、若手人材の早期育成と技術力の底上げを進めました。
・カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
カーボンニュートラルの実現に向けては、内燃機関車と電動車の両輪で適材適所に対応するマルチパスウェイによるアプローチで取り組みを進めています。2022年6月に発売した小型BEVトラック「日野デュトロ Z(ズィー) EV」は、脱炭素社会の実現を目指す全国のお客様に幅広くご愛用されており、2025年度の販売台数は570台を超えるレベルに達しました。2025年9月には、国内初となる燃料電池大型トラックの量産モデル「日野プロフィア Z FCV」を発売しました。水素を燃料として走行中にCO₂を排出しない本車両は、15~30分という短時間の水素充填で約650kmの航続距離を確保し、幹線輸送に求められる高い実用性を実現しています。燃料電池車に最適化した専用シャシを採用することで、荷台スペースと積載量を最大限に確保し、大型トラックとしての耐久性と信頼性も両立しました。物流の脱炭素化を力強く後押しし、カーボンニュートラル社会と水素社会の実現に貢献する一台です。日本国際博覧会(大阪・関西万博)においては、ENEOS株式会社(以下「ENEOS」という。)様と西日本ジェイアールバス株式会社(以下「西日本JRバス」という。)様とともに国内初となるCO₂から製造した合成燃料を使用した駅シャトルバスを運行しました。供給した合成燃料は、大阪・関西万博開幕当初の低濃度から段階的に濃度を上げて100%を達成しました。
・人流・物流に関する社会課題の解決
人流・物流に関する社会課題の解決に向けては、CASE技術を活用し、業界を越えた様々なパートナーとの取り組みを推進しています。自動運転については、2025年7月に大成ロテック株式会社とともに、国内民間企業初となる次世代舗装実験施設で無人自動運転荷重車両の24時間運行を開始し、舗装耐久性の短期間評価と省人化を実現しました。さらに、新東名高速道路において、これまでの検証・実証の集大成としてのレベル4自動運転トラックの社会実装に向けた総合走行実証を行いました。一方、交通空白という社会課題に対しては、公共ライドシェアの運行管理を複数地域で共同化する取り組みを進めています。2025年12月には、この取り組みが国土交通省の「交通空白」解消パイロット・プロジェクトに選定されました。遠隔による運行管理の集約により、地域の業務負担を軽減しながら、公共ライドシェアの安定運行を支え、持続可能な地域交通の確保に貢献しています。さらに、物流のいわゆる「2024年問題」への対応として、荷待ち・荷役作業時間の削減に向けた取り組みを進めています。2025年11月には、株式会社Hacobu、日野グローバルロジスティクス株式会社と連携し、トラックの動態をドライバーの操作なしで高精度に把握する共同プロジェクトを開始しました。工場構内での入退場時間を自動取得・可視化することで、ドライバーの負担軽減と業務効率化を実現し、持続可能な物流の構築に貢献してまいります。
ii)経営基盤の強化
ステークホルダーの皆様に持続的に価値を提供していくため、経営基盤の強化にも継続して取り組んでおります。収益改善に向けては、現場の知恵と工夫を活かしながら、原価低減や「選択と集中」の戦略を着実に進めてまいりました。在庫車両の削減や原価低減活動、適正な生産体制の構築、事務・技術系オフィス職場でのトヨタ生産方式による業務効率化など、地道な改善を積み重ねています。事業ポートフォリオの見直しも進めており、収益性の低い事業や商品については撤退や縮小を決断し、成長分野へのリソース再配分を加速してきました。二度と不正を起こさないために2022年10月に策定した「3つの改革」も継続して取り組みを進めています。全ての礎となる企業理念「HINOウェイ」に則り、会社の使命を実現して再び社会への責任を果たしていくため、経営層の強い覚悟と率先垂範により経営・企業風土・クルマづくりにおける改革を進めております。従業員への教育の拡充等にも継続的に取り組んでおり、認証不正問題の公表を行った3月4日を新たに「再出発の日」と位置づけ、全社での振り返りを毎年実施しております。「再出発の日」を含め、「3つの改革」をさらに深化させ、組織風土・業務執行の継続的な改善を実行していくために、経営層と従業員が何度も意見交換をする機会を持ち、これまでの取り組みや成果の振り返り、施策の見直しを行っています。社内調査の結果からは、理念の実践に関する肯定回答率が2023年の44%から2025年は64%へと大幅に向上しています。一方で、職場環境改善・業務効率化の実感は40%台、働きがいは50%台にとどまるなど、課題も明らかになりました。そこで、全ての職場における暑熱・IT・衛生環境の整備を進めるとともに、トヨタ生産方式に基づく、「ものの見方・考え方」を身に付けるための研修や自主研究会を通し、仕事の進め方を根本から見直すことにも取り組んでいます。
iii)エンジン認証不正問題への対応
2025年1月には、米国においてエンジン認証不正問題について当局と和解合意に至りました。現在、当局と合意したコンプライアンスワークプランに基づき、改善策を着実に実行しています。また、日野自動車に対する訴訟については、2022年8月に提起された米国の集団訴訟、2022年9月及び2023年4月に提起された豪州の集団訴訟、2023年10月に提起されたカナダの集団訴訟は全て和解に至っており、2025年3月に提訴されたニュージーランドの集団訴訟についても、2026年2月9日に和解契約を締結しております。当該和解契約は、2026年6月16日にニュージーランド高等裁判所の承認を受け、同年7月15日までに上訴がなされない場合、確定いたします。国土交通省から型式指定取消の処分を受けた車両についても、大型エンジン「A09C」搭載車の出荷を2023年2月より、大型エンジン「E13C」搭載車についても2025年12月より出荷再開しました。日野自動車のエンジン認証不正問題の詳細については、後記「3 事業等のリスク (2)当社グループにおける事業等のリスク ⑯エンジン認証不正問題」をご参照ください。
③三菱ふそう
2025年12月期において、三菱ふそうは、中核市場である日本及びインドネシアにおける需要低迷を背景に、厳しい外部環境に直面しました。また、為替の悪化やインフレに伴うコスト上昇が継続し、業績面では一層の逆風となりました。こうした厳しい環境下においても、三菱ふそうは価格戦略、アフターセールス事業の成長、継続的な販売費及び一般管理費の徹底管理を通じて収益性を維持し、業務効率とレジリエンスを高める構造改革を推進してまいりました。
2026年1月1日から2026年3月31日においても、需要の低迷、為替変動及びインフレ圧力は主要な経営課題として継続しております。三菱ふそうはこれらの外部環境要因に対して、コスト最適化及び構造改革の推進を通じて、安定した事業運営の維持と向上に引き続き注力してまいります。同時に、鴻海精密工業股份有限公司との協業による新バス会社の設立など、重要な課題にも直面しています。これらの取り組みが進む中、三菱ふそうは安定した事業運営を維持しつつ、必要な組織・構造改革の準備を慎重に進めてまいります。また、三菱ふそうは長期的な競争力の柱として電動化戦略を引き続き推進しています。現在、電動トラック市場は、バッテリーコストの高水準での推移や充電インフラの不足、主要市場における導入ペースの鈍化など、厳しい環境にありますが、三菱ふそうは電気自動車(EV)のラインアップ拡充と技術力強化に引き続き取り組んでまいります。
三菱ふそうにおける昨今の諸施策及びトピックスは以下のとおりです。
i)国内事業
2025年1月:「eCanter」使用済みバッテリーの蓄電池への再利用の実証を開始
4月:エネルギーマネジメントの国際規格「ISO50001」の認証を取得
5月:KD輸出部品倉庫を新子安へ移転(輸入部品倉庫も9月に移転)
栃木県さくら市と災害時連携協定を締結
6月:日野自動車との経営統合に関する最終合意を締結
8月:台湾・鴻海精密工業と、バス事業強化・ZEVバス共同開発に関する基本合意書を締結
10月:新持株会社の社名「ARCHION株式会社」を公表
自動運転に関する国家プロジェクト2件への参加を発表
「JAPAN MOBILITY SHOW 2025」に出展、2種類の水素駆動大型トラックコンセプトモデルを世界初公開
2026年1月:台湾・鴻海精密工業と日本国内における新バスメーカー設立に関する最終合意を締結
2月:スポーツエールカンパニー2026に認定
小型トラック新型「キャンター」を発売
ヤマト運輸株式会社の幹線輸送で運転自動化レベル2+技術搭載のセミトレーラーによる走行実証を実施
日野自動車と三菱ふそう、三菱ふそうへの OEM 供給に向け日野が中型トラック開発に着手
3月:インドに新拠点「Fuso Tech Centre India」を開設
ダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービス・アジアが電気小型トラック「eCanter」を小笠原村へ寄付
「健康経営優良法人 2026」に認定
ii)海外事業
2025年4月:「eCanter」欧州モデルに新架装追加、「bauma2025」に出展
11月:イスラエル・REE Automotive社と技術検証に関する基本合意書を締結
12月:台湾で「スーパーグレート」新型モデルを発売
2026年1月:欧州21市場のFUSO販売代理店にスイスのエミール・フライ・グループを選定
アラブ首長国連邦で電気小型トラック「eCanter」を初投入
<対処すべき課題>①本経営統合のシナジーによる事業の成長
当社グループはステークホルダーへの価値提供に向け、統合プラットフォーム戦略を軸に、日野自動車・三菱ふそう両社のシナジー創出によって事業を成長させてまいります。両ブランドの強みを活かした技術開発により製品の競争力を引き上げるとともに、セグメントごとに最適なプラットフォームを設定することでコスト効率性を高め、より良い商品をタイムリーに市場投入できる体制を実現してまいります。2026年度(2027年3月期)中には、三菱ふそうは日野自動車製の新型中型トラック、日野自動車は三菱ふそう製の新型小型電動トラック(3.5トン超クラス)をそれぞれOEM商品として国内市場へ投入する予定であり、これは統合プラットフォーム戦略に向けた第一歩となります。
さらに、統合プラットフォーム戦略を支える調達・生産・物流における規模拡大によるスケールメリットの活用に加え、財務・人事・ITといったコーポレート機能においても最適化を通じたコスト効率化と卓越した業務推進を追求してまいります。
こうして生み出したリソースを既存技術の進化とCASE技術開発の加速に向けた投資へと振り向け、お客様・社会の期待に応えつつさらなる事業成長を実現してまいります。日野自動車、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社の技術資本とスケールメリットを生かし、カーボンニュートラル対応においては、マルチパスウェイの考え方に基づき電動車の各セグメントで市場をリードする製品の開発を推進してまいります。また、先進安全技術及び自動運転技術の継続的な開発と社会実装を進めるとともに、コネクテッド領域では車両データの効果的な活用によりお客様へより高い価値を提供するソリューションの強化につなげてまいります。
これらのシナジーを基盤としつつ、日野自動車及び三菱ふそうの両ブランドは市場で切磋琢磨し合うことで互いの価値を高め、当社グループとしてお客様に対してより良い商品を提供してまいります。
②持続的な成長と株主還元
当社は、中期経営計画に基づき、短期的には日野自動車及び三菱ふそうの両事業会社の事業改善と成長、そして中長期的には統合プラットフォーム戦略を中核とするシナジー創出により収益性と効率性の向上を目指します。シナジーの早期実現と最大化に向けた成長投資を継続するとともに、安定的な株主還元の実現に向け、健全なバランスシートを維持しながら規律ある資本配分を徹底してまいります。また、事業ポートフォリオを財務面及び戦略面の重要性に基づき評価し適切なタイミングで投資判断を行ってまいります。こうした明確な財務方針に基づき、当社グループの潜在力の最大化を通じて企業価値向上に取り組んでいきます。
③積極的なサステナビリティ推進
サステナビリティへの取り組みは、自動車産業に求められる重要な社会的責任の一つであり、当社グループでは、これを経営戦略の中心に据えて積極的に推進してまいります。経営の健全性・効率性・透明性を確保する実効性のあるガバナンス体制として、取締役会は業務執行取締役3名に加え、独立社外取締役4名を含む非業務執行取締役6名で構成しており、多様な視点からの議論を通して強固で透明性の高いガバナンスを構築します。過半数を独立社外取締役で構成する監査等委員会、指名諮問委員会及び報酬諮問委員会を設置し、独立社外取締役からの適切な関与と助言により、意思決定のプロセスの公正性や透明性の向上を図ってまいります。
少数株主保護の観点では、主要株主であるダイムラートラックとトヨタと当社の間には事業活動を行う上での 承認事項等の制約はなく、独自に事業活動を行ってまいります。少数株主との利益相反の恐れがある重要な取引に関しては取締役会の承認を必須とし、その結果は監査等委員会が監査を実施することで、少数株主を含む株主全体の利益を保護する体制を整えております。
コンプライアンスの側面においては、当社グループでこれまで培った知見やノウハウを結集し、取り組みを一層強化いたします。過去の不正事案を踏まえ引き続き再発防止につとめるとともに、特に製品の安全性・認証及び排出ガス規制に関するコンプライアンス体制を強化してグループ全体を監督してまいります。
④企業文化の融合及び人的資本投資
異なる企業文化・歴史を持つ日野自動車及び三菱ふそうの事業会社2社の統合にあたり、当社グループが本経営統合によるシナジーを創出し、グループとしての成長を実現するには、企業文化の融合や、人的資本投資に係る取り組みが不可欠と考えております。
企業文化の融合に関しては、日野自動車及び三菱ふそうの両事業会社の企業文化の強みを活かし、弱みを克服して当社グループのシナジーを創出するには、経営層はもとより、従業員ひとりひとりが互いの企業文化を尊重し、相互理解を深め、同じ目標や価値観を共有してビジョンや経営戦略・経営目標の実現に一丸となって取り組む必要があります。本経営統合以前より、目指すビジョンの共有、トップからのメッセージ発信、経営層のオフサイトミーティング、定期的なワークショップ・タウンホールミーティングなど様々な試みを行い、これらは今後も継続的に実施し、当社グループとして企業文化の融合を加速してまいります。また、ダイバーシティに向けた目標設定と、実現に向けた施策も検討してまいります。
人的資本投資に関しては、人材は財産であり、資本ととらえて積極的な投資をいたします。賃金、教育、キャリア形成、職務環境や働きやすい制度整備、福利厚生面など様々な視点で、グループ全体の従業員満足度を高め、当社グループとしてのシナジー最大化・企業価値向上を目指します。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「この先の道をともに歩み続ける、信頼のパートナー」というビジョンのもと、「人と物の移動をつなぎ、ともに豊かな未来を創ります。」のミッションを果たしてまいります。当社グループは、より良い未来のために、協業と業界パートナーシップを通じて社会への貢献とイノベーションの追求を目指しています。
当社グループは、日野自動車と三菱ふそうが長年培った強固な顧客基盤、日本・アジアをはじめとする広範な生産・販売ネットワーク、並びにダイムラートラック及びトヨタ両グループと連携した開発体制といった競争優位性を基盤に事業を展開します。開発・調達・生産の最適化に加え、燃料電池をはじめとするゼロエミッション技術や自動運転などの先進領域においてシナジーの可能性を追求し、「商用車の未来をともに作る」存在として、持続可能な輸送とより豊かな社会への貢献を目指します。
(2)中長期的な当社グループの経営戦略
当社は、2026年5月15日に中期経営計画を公表いたしました。中期経営計画は、本経営統合により発足した当社の成長に向けた明確なロードマップを示すものです。お客さまを全ての活動の中心に据えた上で、売上、収益性、資本効率の成長・向上を実現すべく、中長期の財務目標を定めております。商品の競争力向上、収益性向上、事業効率化及び大規模な統合シナジーを通じた持続的な企業価値向上を目指してまいります。
当社グループは、統合プラットフォーム戦略による商品の競争力強化を中核に、「事業成長」と「効率化」という2本柱の枠組みを通じて本経営統合による競争力向上を加速させてまいります。
①第1の柱:「事業成長」
・新車事業
日野自動車と三菱ふそうの2つの強力なブランドと長年培った販売ネットワークを基盤に、地域別に最適化した成長戦略により新車販売を拡大、統合プラットフォーム戦略による商品の競争力向上を通じて持続的な成長を図ります。日本においては、主に供給停止されていた製品の供給の再開等を行うことで、販売台数の回復を目指します。東南アジアにおいては、製品ラインアップを強化するとともに、現地調達・生産体制の最適化等の現地化を通じた成長により、強固な市場ポジションのさらなる強化を目指します。その他地域においては、強固な市場基盤を活かし、中東・アフリカや中南米といった高成長市場の成長の取り込みを目指します。
・部品・サービス事業
部品事業においては部品ポートフォリオを拡充するとともに日野自動車と三菱ふそうの統合シナジーにより効率を高め、サービス事業では整備士の増員と拠点拡大により整備能力とサービス稼働率向上を目指します。加えて、ソリューション事業の展開により提供価値の幅を広げてまいります。特に、成長に向けた重点領域として、国内外の部品事業及び国内の保守・修理サービスの展開を推進します。
・統合プラットフォーム戦略
製品ラインアップのプラットフォームを統合し、日野自動車と三菱ふそうの両ブランドの独自性を維持しつつ商品の競争力強化を図ります。競争力ある製品の実現に向け、大規模に展開されている世界トップクラスの技術に幅広くアクセスし、優れた製品・技術をより迅速に展開するとともに、ブランドごとの製品ポートフォリオを拡充することを目指します。また、共通の開発・生産基盤を活用することで、コスト効率、性能、品質を同時に最適化、研究開発の効率化で生まれたリソースをさらなる技術投資に再配分し、コストと価値の両面で優位性を持つ強固な事業基盤の確立につなげてまいります。
・お客さま起点の技術開発
お客さまの事業成功を起点に、総保有コストの最適化と高い運用性の実現に取り組むとともに、高度な先進安全機能や排ガス規制などの各市場ニーズに適合した最適な技術の提供を目指します。ダイムラートラック及びトヨタとの技術連携により先進技術へのアクセスを拡大し、既存技術の向上をはじめ、CASE(注)領域への対応を進め、持続的な収益成長の実現を目指します。
(注)CASEとは、コネクテッド、自動運転、シェアリング・サービス、電動化・ゼロエミッションを指します。
②第2の柱:「効率化」
中長期にわたり、研究開発、調達、生産、間接部門で段階的にシナジー創出を進め、変動費と固定費の双方を効率化し、収益性の向上を図ります。開発分野ではコスト競争力を実現する車両設計や統合プラットフォームによる標準化を進めます。調達分野では共同調達や内製・外製の最適化を進めます。生産分野では国内外における生産の最適化を図るとともに、サプライヤー基盤を活用した最適な調達を進めてまいります。間接部門では本社機能を最適化し、共同でのIT戦略を進めてまいります。
③持続的成長を支える財務方針
本経営統合によるシナジーの早期実現と最大化に向けた成長投資を推進するとともに、健全なバランスシートを維持しつつ規律ある資本配分を徹底し、安定的な株主還元の実現を目指します。また、事業ポートフォリオを財務面及び戦略面の両面から評価し、適切なタイミングで投資判断を行うことで、当社グループの潜在力の最大化を通じて企業価値向上に取り組みます。
④強固な経営基盤の確立
ガバナンスに関しては、当社は、透明性と適材適所を重視したコーポレート・ガバナンス体制のもと、多様な視点からの議論を通して強固で透明性の高いガバナンスを構築し、取締役会による適切な監督機能のもとで内部統制及びリスク管理体制の強化に取り組んでいます。過半数を独立社外取締役で構成する監査等委員会、指名諮問委員会及び報酬諮問委員会を設置し、独立社外取締役からの適切な関与と助言により、意思決定のプロセスの公正性や透明性の向上を図ってまいります。
人的資本に関しては、当社は、価値創造の原動力である人的資本に重点を置いています。これを重要な経営課題として、本経営統合前から経営層及び実務担当者層の双方において日野自動車及び三菱ふそうの両社メンバーからなる取り組みを通じて共通の価値観を育んでいます。当社のカルチャーは、日野自動車と三菱ふそうの文化を融合・発展させた共通の基盤として人材の力を最大限に引き出し、本経営統合の効果を最大化してまいります。
⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
中期経営計画において、売上高、営業利益率、連結売上台数(注)、キャッシュ・コンバージョン・レート、ROE(自己資本利益率)、配当性向、D/Eレシオを重要な財務上の経営指標としております。そのうち、営業利益率については、中期的に7%、長期的に10%以上を目標としております。
上記目標の達成可能性に関する主要な前提及び仮定には、日本・インドネシア等の主要市場における商用車需要及び部品・サービス需要の増加、当社の日本市場における販売台数・市場シェアの回復、生産拠点集約・販売子会社の売却の計画どおりの実施、統合プラットフォーム上での生産台数比率85%以上の達成(長期目標)、固定費・変動費削減の成功、必要資本へのアクセスの確保、並びに、円高を含む外国為替相場、固定費インフレ水準、競争環境及び規制環境が当社の想定の範囲内に留まることが含まれます。
上記目標の達成可能性は、上記の前提及び仮定に加え、後記「3 事業等のリスク」に記載された各種リスクが発現しないことを含む様々な前提及び仮定に基づいています。こうした前提及び仮定は、グローバルな事業・経済環境、当社の主要な事業地域における経済状況及び商用車需要、競争環境の変化等の当社の統制の及ばない事項に関係しています。上記目標は、当社の取締役会等の会議体にて審議及び決定されたものですが、当社の事業実績は限定的であり、当社の将来見通しに関する評価には、様々な戦略的施策を実行する当社の能力に関するものを含め、不確実性が伴います。そのため、当社は、上記目標の達成可能性や前提及び仮定の妥当性について、いかなる表明又は保証も行うことができず、また行うものではありません。実際の結果は、上記目標とは異なり、場合によっては重大な差異が生じる可能性があります。
(注)連結売上台数:当社グループ内取引消去後の当社グループ連結外へ売り上げたKD(Knock Down:完成車ではなく、部品又は半完成品として輸出し、現地で組み立てる方式)含む新車の台数
(3)当社グループの環境及び競争優位性並びに対処すべき課題
<当社グループの環境及び競争優位性>①当社グループ
商用車業界においては、地球温暖化や労働力不足、輸送の多様化など人流・物流を取り巻く社会課題の顕在化に伴い、カーボンニュートラルへの対応をはじめとする持続可能な輸送の実現に向けた変革が求められています。当社グループは、日野自動車と三菱ふそうが長年培ってきた強いブランドと生産・販売基盤、そしてダイムラートラック及びトヨタとの連携によって生まれる強固な競争優位性を最大限に活かし、「人と物の移動をつなぎ、ともに豊かな未来を創ります。」というミッションのもと、持続可能な輸送の実現と豊かな社会づくりに信頼できるパートナーとして貢献することを目指してまいります。
・日野自動車及び三菱ふそうの両ブランドを背景とした地理的に多様なポートフォリオ
当社グループは、世界中の地域の顧客にサービスを提供できる広範なグローバルネットワークを保有しています。三菱ふそうと日野自動車を合わせたグローバルネットワークは、25カ国に170以上のグローバル販売代理店(2024年12月現在)、3,700以上のサービス拠点(2024年12月現在)、及び現地組立工場で構成されています。
当社グループは、日野自動車及び三菱ふそうという確立されたブランド、長年にわたる顧客との関係、現地の販売パートナーやサプライヤーとの強固な結びつき、密なサービスインフラ、そして確立された現地生産拠点等を活用し、日本や東南アジアなどの地域において市場を牽引する販売を行っています。また、当社グループは、中東やアフリカ、中南米といった高成長市場を含むその他の地域でも販売を行っています。
・商用車のフルラインアップ及び堅調な部品サービス事業
当社グループのビジネスモデルは、商用車のフルラインアップ、販売・流通ネットワーク、堅調な部品・サービス事業によって支えられており、安定した市場と高成長市場の双方において事業展開を行っています。
新車事業においては、日野自動車及び三菱ふそうの両ブランドの下、大型・中型・小型トラック、ゼロエミッション車、バスを含む商用車のフルラインアップを取り揃えています。日野自動車は優れた乗り心地や競争力のある総保有コストを特徴として大型・中型トラックに強みを有し、三菱ふそうは効率性及び優れた車両性能を特徴として大型・小型トラックに強みを有していると当社は考えています。また、両ブランド合計における2024年1月~12月における販売台数は東南アジアで第1位・日本で第2位に相当します(注)。商用車のフルラインナップを取り揃えることにより、特にアジアで見られる多様な市場ニーズに対応した競争力ある製品を引き続き提供してまいります。
部品・サービス事業においては、堅調な成長軌道を描いており、商用車購入者に対し、メンテナンスの提供やスペアパーツの販売に加え、保守契約、フリート管理システムやドライバーコーチングなど、お客様の業務運営を支援する付加サービスを含む、多様なアフターサービス及び部品販売を提供しています。
(注)東南アジアはインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの合算。S&P Global Mobility, Light Vehicle Sales(2025年12月1日取得)及びMedium/Heavy Commercial Vehicle Industry Sales Forecast(2025年11月4日取得)のマーケット調査に基づく当社分析によります。なお、S&Pは本分析に関与しておらず、分析結果に対して責任を負うものではありません。
・統合プラットフォーム戦略
統合プラットフォーム戦略は、前述のとおり、日野自動車及び三菱ふそうの両ブランドのメリットを活かしながら、調達、生産、研究開発における規模の経済効果を最大限に引き出すことを目的としています。
・ダイムラートラック及びトヨタとの提携
当社グループは、研究開発体制及び経営資源を基盤として多様な顧客のニーズに合わせた広範な技術ポートフォリオを有しており、世界トップクラスの技術へのアクセスを確保しています。
2025年12月31日現在、日野自動車と三菱ふそうの研究開発及びエンジニアリング拠点は、両社を合わせると、3,000名以上の研究開発者を擁し、日本国内に6つの研究開発拠点を有しており、ダイムラートラック及びトヨタとの提携を通じて、最先端技術の開発と展開を加速させてまいります。
・強固なガバナンス体制
当社は、取締役会9名のうち4名が独立社外取締役を務めており、取締役会の意思決定に対して透明性の高い監督体制を確保しています。また、意思決定の透明性と質を高めるため、任意の指名諮問委員会及び報酬諮問委員会を設置しています。両委員会とも5名の取締役で構成され、そのうち3名が独立社外取締役であるため、独立性を確保し、関連する専門知識を持つ人材を任命することを目指しています。
当社グループは、アジア及び世界の商用車業界における専門知識と国際的な経験を有し、多様な国際的視点を持つ経験豊富な経営陣の下で運営されています。
なお、参考として、当事業年度末現在における当社の連結子会社である日野自動車及び三菱ふそうの取り組みを以下に記載いたします。
②日野自動車
i)事業の強化
・「総合品質」の追求
商品については、2025年7月に小型トラック「日野デュトロ」を一部改良し、積載量2トンクラスの使い勝手を向上させました。さらに2026年1月には小型バス「日野リエッセII」を改良し、安全性や利便性を高めました。現場の声を反映した商品づくりにより、お客様のビジネスの安定稼働に貢献しています。トータルサポートについては、国内外の販売会社の拠点新設・拡充・更新等を継続的に進め、スピーディーで質の高いサービスの提供を通じてお客様のビジネスに貢献し続けていくための体制整備に注力しております。2025年には、島根日野自動車・鳥取支店をリニューアルし、整備環境や動線を改善いたしました。人材育成と働きやすい現場づくりを通じて、サービス品質の向上と安定した車両稼働を支えています。また、販売会社メカニックを対象とした三級自動車整備士の養成施設を開設し、若手人材の早期育成と技術力の底上げを進めました。
・カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
カーボンニュートラルの実現に向けては、内燃機関車と電動車の両輪で適材適所に対応するマルチパスウェイによるアプローチで取り組みを進めています。2022年6月に発売した小型BEVトラック「日野デュトロ Z(ズィー) EV」は、脱炭素社会の実現を目指す全国のお客様に幅広くご愛用されており、2025年度の販売台数は570台を超えるレベルに達しました。2025年9月には、国内初となる燃料電池大型トラックの量産モデル「日野プロフィア Z FCV」を発売しました。水素を燃料として走行中にCO₂を排出しない本車両は、15~30分という短時間の水素充填で約650kmの航続距離を確保し、幹線輸送に求められる高い実用性を実現しています。燃料電池車に最適化した専用シャシを採用することで、荷台スペースと積載量を最大限に確保し、大型トラックとしての耐久性と信頼性も両立しました。物流の脱炭素化を力強く後押しし、カーボンニュートラル社会と水素社会の実現に貢献する一台です。日本国際博覧会(大阪・関西万博)においては、ENEOS株式会社(以下「ENEOS」という。)様と西日本ジェイアールバス株式会社(以下「西日本JRバス」という。)様とともに国内初となるCO₂から製造した合成燃料を使用した駅シャトルバスを運行しました。供給した合成燃料は、大阪・関西万博開幕当初の低濃度から段階的に濃度を上げて100%を達成しました。
・人流・物流に関する社会課題の解決
人流・物流に関する社会課題の解決に向けては、CASE技術を活用し、業界を越えた様々なパートナーとの取り組みを推進しています。自動運転については、2025年7月に大成ロテック株式会社とともに、国内民間企業初となる次世代舗装実験施設で無人自動運転荷重車両の24時間運行を開始し、舗装耐久性の短期間評価と省人化を実現しました。さらに、新東名高速道路において、これまでの検証・実証の集大成としてのレベル4自動運転トラックの社会実装に向けた総合走行実証を行いました。一方、交通空白という社会課題に対しては、公共ライドシェアの運行管理を複数地域で共同化する取り組みを進めています。2025年12月には、この取り組みが国土交通省の「交通空白」解消パイロット・プロジェクトに選定されました。遠隔による運行管理の集約により、地域の業務負担を軽減しながら、公共ライドシェアの安定運行を支え、持続可能な地域交通の確保に貢献しています。さらに、物流のいわゆる「2024年問題」への対応として、荷待ち・荷役作業時間の削減に向けた取り組みを進めています。2025年11月には、株式会社Hacobu、日野グローバルロジスティクス株式会社と連携し、トラックの動態をドライバーの操作なしで高精度に把握する共同プロジェクトを開始しました。工場構内での入退場時間を自動取得・可視化することで、ドライバーの負担軽減と業務効率化を実現し、持続可能な物流の構築に貢献してまいります。
ii)経営基盤の強化
ステークホルダーの皆様に持続的に価値を提供していくため、経営基盤の強化にも継続して取り組んでおります。収益改善に向けては、現場の知恵と工夫を活かしながら、原価低減や「選択と集中」の戦略を着実に進めてまいりました。在庫車両の削減や原価低減活動、適正な生産体制の構築、事務・技術系オフィス職場でのトヨタ生産方式による業務効率化など、地道な改善を積み重ねています。事業ポートフォリオの見直しも進めており、収益性の低い事業や商品については撤退や縮小を決断し、成長分野へのリソース再配分を加速してきました。二度と不正を起こさないために2022年10月に策定した「3つの改革」も継続して取り組みを進めています。全ての礎となる企業理念「HINOウェイ」に則り、会社の使命を実現して再び社会への責任を果たしていくため、経営層の強い覚悟と率先垂範により経営・企業風土・クルマづくりにおける改革を進めております。従業員への教育の拡充等にも継続的に取り組んでおり、認証不正問題の公表を行った3月4日を新たに「再出発の日」と位置づけ、全社での振り返りを毎年実施しております。「再出発の日」を含め、「3つの改革」をさらに深化させ、組織風土・業務執行の継続的な改善を実行していくために、経営層と従業員が何度も意見交換をする機会を持ち、これまでの取り組みや成果の振り返り、施策の見直しを行っています。社内調査の結果からは、理念の実践に関する肯定回答率が2023年の44%から2025年は64%へと大幅に向上しています。一方で、職場環境改善・業務効率化の実感は40%台、働きがいは50%台にとどまるなど、課題も明らかになりました。そこで、全ての職場における暑熱・IT・衛生環境の整備を進めるとともに、トヨタ生産方式に基づく、「ものの見方・考え方」を身に付けるための研修や自主研究会を通し、仕事の進め方を根本から見直すことにも取り組んでいます。
iii)エンジン認証不正問題への対応
2025年1月には、米国においてエンジン認証不正問題について当局と和解合意に至りました。現在、当局と合意したコンプライアンスワークプランに基づき、改善策を着実に実行しています。また、日野自動車に対する訴訟については、2022年8月に提起された米国の集団訴訟、2022年9月及び2023年4月に提起された豪州の集団訴訟、2023年10月に提起されたカナダの集団訴訟は全て和解に至っており、2025年3月に提訴されたニュージーランドの集団訴訟についても、2026年2月9日に和解契約を締結しております。当該和解契約は、2026年6月16日にニュージーランド高等裁判所の承認を受け、同年7月15日までに上訴がなされない場合、確定いたします。国土交通省から型式指定取消の処分を受けた車両についても、大型エンジン「A09C」搭載車の出荷を2023年2月より、大型エンジン「E13C」搭載車についても2025年12月より出荷再開しました。日野自動車のエンジン認証不正問題の詳細については、後記「3 事業等のリスク (2)当社グループにおける事業等のリスク ⑯エンジン認証不正問題」をご参照ください。
③三菱ふそう
2025年12月期において、三菱ふそうは、中核市場である日本及びインドネシアにおける需要低迷を背景に、厳しい外部環境に直面しました。また、為替の悪化やインフレに伴うコスト上昇が継続し、業績面では一層の逆風となりました。こうした厳しい環境下においても、三菱ふそうは価格戦略、アフターセールス事業の成長、継続的な販売費及び一般管理費の徹底管理を通じて収益性を維持し、業務効率とレジリエンスを高める構造改革を推進してまいりました。
2026年1月1日から2026年3月31日においても、需要の低迷、為替変動及びインフレ圧力は主要な経営課題として継続しております。三菱ふそうはこれらの外部環境要因に対して、コスト最適化及び構造改革の推進を通じて、安定した事業運営の維持と向上に引き続き注力してまいります。同時に、鴻海精密工業股份有限公司との協業による新バス会社の設立など、重要な課題にも直面しています。これらの取り組みが進む中、三菱ふそうは安定した事業運営を維持しつつ、必要な組織・構造改革の準備を慎重に進めてまいります。また、三菱ふそうは長期的な競争力の柱として電動化戦略を引き続き推進しています。現在、電動トラック市場は、バッテリーコストの高水準での推移や充電インフラの不足、主要市場における導入ペースの鈍化など、厳しい環境にありますが、三菱ふそうは電気自動車(EV)のラインアップ拡充と技術力強化に引き続き取り組んでまいります。
三菱ふそうにおける昨今の諸施策及びトピックスは以下のとおりです。
i)国内事業
2025年1月:「eCanter」使用済みバッテリーの蓄電池への再利用の実証を開始
4月:エネルギーマネジメントの国際規格「ISO50001」の認証を取得
5月:KD輸出部品倉庫を新子安へ移転(輸入部品倉庫も9月に移転)
栃木県さくら市と災害時連携協定を締結
6月:日野自動車との経営統合に関する最終合意を締結
8月:台湾・鴻海精密工業と、バス事業強化・ZEVバス共同開発に関する基本合意書を締結
10月:新持株会社の社名「ARCHION株式会社」を公表
自動運転に関する国家プロジェクト2件への参加を発表
「JAPAN MOBILITY SHOW 2025」に出展、2種類の水素駆動大型トラックコンセプトモデルを世界初公開
2026年1月:台湾・鴻海精密工業と日本国内における新バスメーカー設立に関する最終合意を締結
2月:スポーツエールカンパニー2026に認定
小型トラック新型「キャンター」を発売
ヤマト運輸株式会社の幹線輸送で運転自動化レベル2+技術搭載のセミトレーラーによる走行実証を実施
日野自動車と三菱ふそう、三菱ふそうへの OEM 供給に向け日野が中型トラック開発に着手
3月:インドに新拠点「Fuso Tech Centre India」を開設
ダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービス・アジアが電気小型トラック「eCanter」を小笠原村へ寄付
「健康経営優良法人 2026」に認定
ii)海外事業
2025年4月:「eCanter」欧州モデルに新架装追加、「bauma2025」に出展
11月:イスラエル・REE Automotive社と技術検証に関する基本合意書を締結
12月:台湾で「スーパーグレート」新型モデルを発売
2026年1月:欧州21市場のFUSO販売代理店にスイスのエミール・フライ・グループを選定
アラブ首長国連邦で電気小型トラック「eCanter」を初投入
<対処すべき課題>①本経営統合のシナジーによる事業の成長
当社グループはステークホルダーへの価値提供に向け、統合プラットフォーム戦略を軸に、日野自動車・三菱ふそう両社のシナジー創出によって事業を成長させてまいります。両ブランドの強みを活かした技術開発により製品の競争力を引き上げるとともに、セグメントごとに最適なプラットフォームを設定することでコスト効率性を高め、より良い商品をタイムリーに市場投入できる体制を実現してまいります。2026年度(2027年3月期)中には、三菱ふそうは日野自動車製の新型中型トラック、日野自動車は三菱ふそう製の新型小型電動トラック(3.5トン超クラス)をそれぞれOEM商品として国内市場へ投入する予定であり、これは統合プラットフォーム戦略に向けた第一歩となります。
さらに、統合プラットフォーム戦略を支える調達・生産・物流における規模拡大によるスケールメリットの活用に加え、財務・人事・ITといったコーポレート機能においても最適化を通じたコスト効率化と卓越した業務推進を追求してまいります。
こうして生み出したリソースを既存技術の進化とCASE技術開発の加速に向けた投資へと振り向け、お客様・社会の期待に応えつつさらなる事業成長を実現してまいります。日野自動車、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社の技術資本とスケールメリットを生かし、カーボンニュートラル対応においては、マルチパスウェイの考え方に基づき電動車の各セグメントで市場をリードする製品の開発を推進してまいります。また、先進安全技術及び自動運転技術の継続的な開発と社会実装を進めるとともに、コネクテッド領域では車両データの効果的な活用によりお客様へより高い価値を提供するソリューションの強化につなげてまいります。
これらのシナジーを基盤としつつ、日野自動車及び三菱ふそうの両ブランドは市場で切磋琢磨し合うことで互いの価値を高め、当社グループとしてお客様に対してより良い商品を提供してまいります。
②持続的な成長と株主還元
当社は、中期経営計画に基づき、短期的には日野自動車及び三菱ふそうの両事業会社の事業改善と成長、そして中長期的には統合プラットフォーム戦略を中核とするシナジー創出により収益性と効率性の向上を目指します。シナジーの早期実現と最大化に向けた成長投資を継続するとともに、安定的な株主還元の実現に向け、健全なバランスシートを維持しながら規律ある資本配分を徹底してまいります。また、事業ポートフォリオを財務面及び戦略面の重要性に基づき評価し適切なタイミングで投資判断を行ってまいります。こうした明確な財務方針に基づき、当社グループの潜在力の最大化を通じて企業価値向上に取り組んでいきます。
③積極的なサステナビリティ推進
サステナビリティへの取り組みは、自動車産業に求められる重要な社会的責任の一つであり、当社グループでは、これを経営戦略の中心に据えて積極的に推進してまいります。経営の健全性・効率性・透明性を確保する実効性のあるガバナンス体制として、取締役会は業務執行取締役3名に加え、独立社外取締役4名を含む非業務執行取締役6名で構成しており、多様な視点からの議論を通して強固で透明性の高いガバナンスを構築します。過半数を独立社外取締役で構成する監査等委員会、指名諮問委員会及び報酬諮問委員会を設置し、独立社外取締役からの適切な関与と助言により、意思決定のプロセスの公正性や透明性の向上を図ってまいります。
少数株主保護の観点では、主要株主であるダイムラートラックとトヨタと当社の間には事業活動を行う上での 承認事項等の制約はなく、独自に事業活動を行ってまいります。少数株主との利益相反の恐れがある重要な取引に関しては取締役会の承認を必須とし、その結果は監査等委員会が監査を実施することで、少数株主を含む株主全体の利益を保護する体制を整えております。
コンプライアンスの側面においては、当社グループでこれまで培った知見やノウハウを結集し、取り組みを一層強化いたします。過去の不正事案を踏まえ引き続き再発防止につとめるとともに、特に製品の安全性・認証及び排出ガス規制に関するコンプライアンス体制を強化してグループ全体を監督してまいります。
④企業文化の融合及び人的資本投資
異なる企業文化・歴史を持つ日野自動車及び三菱ふそうの事業会社2社の統合にあたり、当社グループが本経営統合によるシナジーを創出し、グループとしての成長を実現するには、企業文化の融合や、人的資本投資に係る取り組みが不可欠と考えております。
企業文化の融合に関しては、日野自動車及び三菱ふそうの両事業会社の企業文化の強みを活かし、弱みを克服して当社グループのシナジーを創出するには、経営層はもとより、従業員ひとりひとりが互いの企業文化を尊重し、相互理解を深め、同じ目標や価値観を共有してビジョンや経営戦略・経営目標の実現に一丸となって取り組む必要があります。本経営統合以前より、目指すビジョンの共有、トップからのメッセージ発信、経営層のオフサイトミーティング、定期的なワークショップ・タウンホールミーティングなど様々な試みを行い、これらは今後も継続的に実施し、当社グループとして企業文化の融合を加速してまいります。また、ダイバーシティに向けた目標設定と、実現に向けた施策も検討してまいります。
人的資本投資に関しては、人材は財産であり、資本ととらえて積極的な投資をいたします。賃金、教育、キャリア形成、職務環境や働きやすい制度整備、福利厚生面など様々な視点で、グループ全体の従業員満足度を高め、当社グループとしてのシナジー最大化・企業価値向上を目指します。