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当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の項目と認識しております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。また、本書において※を付した用語につきましては、章末の「用語集」においてその定義・解説を記載しております。
(1) 経営方針
当社グループでは、「AIで、全てのビジネスのワークフローを自動化する」をミッションに掲げております。多くの企業においては、社内に散在する情報の検索・活用に多大な時間を要すること、定型的な業務プロセスの多くが人手に依存していること、専門的なプログラミング知識を持たない従業員が業務アプリケーションを迅速に構築できないことなど、生産性向上を阻む課題が存在していると認識しております。当社グループは、最先端の自然言語処理技術及び独自のRAG技術を活用したAIエージェント及びノーコード開発基盤を顧客に提供することにより、こうした業務上の課題を解決し、顧客企業の生産性向上及び競争力強化に貢献するとともに、社会全体の労働生産性の向上に貢献し続けることを基本方針としております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、より高い成長性及び収益力を確保する観点から、売上高、契約社数、ARPA(※1)及び営業利益を重要な経営指標と捉えております。
(3)経営環境
Grand View Research, Inc.(以下、GVR)「Enterprise Generative AI Market(グローバル/日本/韓国/米国)」によれば、エンタープライズ生成AI市場はグローバルで急拡大が見込まれており、2024年29億ドルであったものが、2030年には198億ドルに達し、2025年から2030年の予測期間においては年平均成長率(CAGR)38.4%を超える成長率で拡大すると予測されております。当社グループが拠点を置く日本、米国、韓国においても同様の成長軌道が想定されており、各国のエンタープライズ生成AI市場はそれぞれ13.8億ドル(2025年~2030年のCAGR40.9%)、63.3億ドル(同期間のCAGR38.1%)、3.7億ドル(同期間のCAGR38.8%)と成長ポテンシャルが見込まれます。
今後の成長にあたっての主な成長ドライバー及び阻害要因・課題は以下の内容が考えられますが、市場は激しい競争環境にあることから、これらに対抗するために継続的な技術開発と差別化戦略が不可欠であると考えております。
・主な成長ドライバー:
-生産性向上と自動化の推進
-イノベーションと新たな収益源の創出
-技術的進化(LLM、NLP(※2)など)
-アクセシビリティ向上(クラウド、ノーコード/ローコード)
・主な阻害要因と課題:
-高コストとROI実証の難しさ
-専門人材不足とスキルギャップ
-データセキュリティ、プライバシー、倫理的懸念
-既存システムとの統合・拡張性
-精度と信頼性(ハルシネーション等)
-導入における「信頼」の重要性
各国における市場概況は以下の通りとなります。
地域別市場概況 - 日本
市場規模・成長: 世界で最も急速な成長が期待される市場の一つです。近年、急速な技術革新により、生成AI(Generative AI)市場は世界的に拡大傾向にあります。特に、大規模言語モデル(LLM)の進化やAI技術の低価格化を背景に、企業における業務効率化や顧客体験向上に対する期待が高まっており、生成AIの活用は今後ますます広がることが予想されます。GVRの推計によれば、日本のエンタープライズ生成AI市場は世界で最も急速な成長が期待される市場の一つであり、2024年の1.8億ドルから2030年には13.8億ドルへ拡大し、2025年から2030年のCAGRは40.9%と、グローバル平均(38.4%)を上回る成長率が見込まれております。
ドライバー: 高齢化・労働力不足による自動化ニーズ、政府の強力な支援(Society 5.0、GENIAC等)、DX加速、技術基盤が挙げられます。
規制: アジャイル・ガバナンス(※3)を特徴とし、ソフトロー(ガイドライン)中心のアプローチを採用しております。AIの促進を目的とするAI新法が国会提出されるなど、イノベーションを阻害せず、責任ある利用を促進する環境です。
地域別市場概況 - 米国
市場規模・成長: 世界最大のAI市場であり、リーダー的存在です。GVRの推計によれば、米国のエンタープライズ生成AI市場は2024年の9.6億ドルから2030年には63.3億ドルへ拡大し、2025年から2030年のCAGRは38.1%と予測されております。世界最大規模の民間投資とAIテックエコシステムの集積を背景に、世界最大のAI市場としてリーダー的地位を有しております。
ドライバー: 技術リーダーシップ(シリコンバレー、大手IT企業)、豊富な資金調達環境、多様な産業での早期導入、クラウドインフラ普及が挙げられます。
規制: 包括的な連邦法は未整備で、州レベルや既存法が中心です。大統領令やNational Institute of Standards and Technology(米国国立標準技術研究所)のフレームワークはガイドラインとしての性格が強いです。
地域別市場概況 - 韓国
市場規模・成長: アジア太平洋地域で急成長しており、GVRの推計によれば、韓国のエンタープライズ生成AI市場は2024年の0.5億ドルから2030年には3.7億ドルへ拡大し、2025年から2030年のCAGRは38.8%と、アジア太平洋地域における急成長が見込まれております。
ドライバー: 政府の強力な推進策(AI国家戦略、デジタルニューディール)、高度なデジタルインフラ、大手テクノロジー企業の注力、活発なスタートアップエコシステム、高い技術力(半導体、AI特許)が挙げられます。
規制: 2026年1月に欧州に次いで世界で2番目にAI基本法(人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法)を制定しました。産業振興と信頼性確保のバランスを目指し、高リスクAIへの規制、産業振興策、自主規制も重視しております。
(4)経営戦略
当社グループは、創業以来掲げる「AIによって全てのビジネスのワークフローを自動化・最適化する」というビジョンのもと、独自の技術基盤と柔軟なビジネスモデルを核に経営戦略を展開しております。本戦略では、当社グループの強みであるノーコードAIエージェント構築、オンプレミス対応、独自LLM搭載プラットフォーム、Agentic RAG(AIエージェント型RAG)といった要素を軸に据えた差別化戦略を再構築し、SaaSとオンプレミスという二つの提供形態によるエンタープライズ顧客深耕の補完的ビジネスモデル、そして販売推進・地域・サービスの三本柱による成長戦略を明確に示します。さらに、投資家視点で収益モデルの拡張可能性とスケーラビリティについての示唆も盛り込み、当社グループの持続的成長ポテンシャルを説得力ある形で説明します。
社内アセットとの連携:代替不可能性と独自のインサイト(※4)創出 当社グループは、社内に存在する多様なアセット(文書、データベース、業務システム)とAIとの緊密な連携を、事業戦略における重要な柱と位置づけております。その理由は、社内アセットが当社グループのサービスに深く統合されればされるほど、顧客にとってそのシステムを容易に代替することが困難になるためです。
さらに、社内アセットの変更履歴、構成員のアクセス記録、そしてAIによる利用履歴といったデータが蓄積されることで、そこから導き出されるインサイトは、競合他社が容易に模倣できない独自の価値となります。これらのデータは、単なる情報以上の、顧客の業務プロセスや知識、利用傾向を深く理解するための基盤となり、よりパーソナライズされた、付加価値の高いサービス提供を可能にします。
この戦略は、単にAIの利便性を高めるだけでなく、顧客との長期的なエンゲージメントを強化し、持続的な競争優位性を確立するための核心となります。社内アセットとの深い連携を通じて、当社グループは顧客にとってかけがえのないパートナーとなり、共に成長していくことを目指します。
ノーコードAIプラットフォームと先端技術 当社グループが提供するオールインワン生成AI・LLMプラットフォーム「Alli LLM App Market」は、企業向けAI活用に必要な機能を網羅した包括的ソリューションです 。具体的には、100個以上の業務特化型生成AIアプリをプリセットし、ノーコードでカスタマイズ・新規作成が可能なアプリビルダーを備えております。これにより専門知識がなくとも現場部門が即座に生成AIを業務に活用でき、AI導入のハードルを劇的に低減します。また、当社グループプラットフォームは高度な企業向けRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を搭載しており、社内の機密データから高精度な応答を自動生成できます 。この独自RAGシステムは、表や手書き文書を含む複雑な資料も解析可能であり、汎用LLMだけでは難しい正確性・文脈適合性を実現しております。
さらにオンプレミスなどクローズドな環境での導入に対応している点も大きな強みです。Alli LLM App Marketはクラウドだけでなく完全閉域ネットワーク内や自社サーバー上でも稼働可能であり、必要に応じて当社グループより日本語特化の独自LLMを提供することで機密情報を社外に出さずに生成AIを活用できます。加えて、業界・用途別に最適化した専用AIモデルの開発にも注力しており、例えば金融業界向けに専門知識を備えたAlli Finance LLMを日本・韓国市場で提供開始するなど、ドメイン特化型LLMによる差別化も進めております。これら「ノーコード+オンプレ対応+独自LLM+RAG」の技術群を有機的に組み合わせたプラットフォーム戦略により、他社には真似できない一貫性ある競争優位を確立しております。
人材育成基盤による持続的な技術競争力の確保 当社グループは、持続的な技術競争力の源泉を、優秀なAI人材の体系的な育成基盤に求めております。韓国市場において当社は「実戦型AI企業」としてのブランドを確立しており、研究に留まらず市場で収益を上げる実利的な企業イメージのもと、実務志向の強いAIエンジニアや論文著者、コンテスト受賞者等、高度な志願者層からの応募を集めております。2025年度のインターン採用では、応募者357名に対し採用者13名、正規雇用に至った人数は3名(正規雇用社員数/インターン応募者数=0.8%)と、厳選された人材を獲得しております。
当社グループは、日本・米国・韓国にわたるグローバルな開発体制を特徴としており、韓国で採用したインターン・ジュニア人材を体系的な社内教育プロセスを通じて高度なAIエンジニアへ育成しております。具体的には、(1)製品全体の技術スタックを理解し、AIをシステムとして統合する視点を養う「クロスオンボーディング」、(2)LLM学習、モデル評価、エージェント開発、RAG構築等の多様な業務を内部で経験する「AIコアトレーニング&開発」、(3)最新のRAG技術の追求から評価指標の確立まで技術的深みを追求する「RAG研究・評価・高度化」、及び(4)顧客サイトの実運用データを用いて現場の課題を技術で解決し、モデルを最適化する「実戦評価&モデル最適化」という4段階の人材育成プロセスを体系化しております。
このような人材育成基盤は、最先端の技術スタックとグローバルな実データに触れられる成長環境を志願者に提供することで優秀な人材を惹きつけ、育成した人材が現場で技術力を高めるという好循環を生み出しており、当社グループの持続的なAI技術力の確保に寄与していると当社グループでは考えております。
ビジネスモデル戦略:SaaSとオンプレミスの両提供形態によるエンタープライズ深耕 当社グループの顧客基盤は大企業を中心としたエンタープライズ顧客であり、中小企業や個人を対象とするいわゆるセルフサーブ型のビジネスモデルは採用しておりません。当社グループは、SaaS(クラウドサービス)とオンプレミスという二つの提供形態を、顧客のセキュリティ要件や導入規模に応じて使い分け、又は組み合わせて提供することにより、エンタープライズ市場の幅広いニーズに応える戦略を採っております。この二つの提供形態は単なる「攻め」の多角化ではなく、互いの強みを補完し合う相乗効果によって成り立つビジネスモデルです。
・SaaS(クラウドサービス): クラウド環境で迅速に利用を開始できる提供形態であり、大企業の特定部門や子会社等が低い導入コスト・短いリードタイムで生成AI活用を開始する際の入り口として機能しております。ノーコードで容易に使える製品特性により、現場部門が主体的に当社グループサービスを導入しやすく、これが幅広いエンタープライズ顧客基盤の獲得につながっております。SaaSで蓄積された利用データやフィードバックはプロダクトの改良に活かされ、機能改善や新機能開発を迅速化します。
・オンプレミス: 高度なセキュリティ要件や既存システムとの統合ニーズを有する大企業向けに、オンプレミス導入や個別カスタマイズ、コンサルティングを含む包括的ソリューション提供を行っております。クラウド利用が困難な金融機関や官公庁等の機密データ活用ニーズに応えることで、大手企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)案件に深く入り込み、高い付加価値を提供します。例えば、国内では大手Sierとの提携により安全なクローズド環境での生成AI活用基盤を共同提供し、大企業の機密データ活用を可能にしております。また、日本の大手鉄道会社では当社グループプラットフォームを顧客対応と社内業務に採用し、年間数十万件に及ぶ問い合わせ処理の効率化を実現する見通しです。このような大型案件で培った知見は汎用プロダクト機能としてフィードバックされ、他のユーザーにも展開可能な新機能(例:高度なFAQ生成、業種別テンプレート等)となって蓄積されます。なお、オンプレミスの受注単価※5は、2025年9月期の44百万円から2026年9月期第3四半期時点では115百万円となっております。
両者の補完性により、当社グループは幅広さと深さの両面で競争力を発揮しております。SaaSにより特定部門や子会社等の単位で迅速に導入実績を積み、その後、全社展開やセキュリティ要件の高い領域への対応としてオンプレミス契約や追加部門への展開へと発展させる、エンタープライズ内での「拡張(クロスセル)」戦略を可能にしております。また、大企業案件で得た高度なAI機能開発ノウハウをプロダクト全体に還流させることで、SaaSプロダクトの付加価値を継続的に高める好循環も創出しております。これにより収益構造の安定化(SaaSによるストック収益とオンプレミスの大型契約によるフロー収益の両立)とプロダクト競争力の強化を同時に実現し、競合他社にはない戦略的優位性を築いております。
成長戦略の三本柱: サービス戦略・地域戦略・販売推進戦略 当社グループはさらなる事業成長に向け、「サービス戦略」「地域戦略」「販売推進戦略」の三本柱を据えてグローバル展開を推進し、グローバルエンタープライズAIプラットフォームとしての発展を継続します。それぞれの柱で現状の展開状況と将来の展望を示します。なお、当社の成長ドライバーは「1社あたり売上高(ARPA)の向上」と「契約社数の増加」に分解され、1社あたり売上高(ARPA)の向上」は主に「サービス戦略」及び「地域戦略」、「契約社数の増加」は主に「販売推進戦略」によって実現いたします。
サービス戦略: クロスセル推進と分野別ソリューション及び顧客ロックイン強化・契約規模拡大
サービス戦略では、(ⅰ)クロスセル推進と分野別ソリューション、及び(ⅱ)顧客ロックイン強化・契約規模拡大の2点を軸に、顧客への提供価値の最大化と収益機会の拡大を図ります。
(ⅰ)クロスセル推進と分野別ソリューションについて、当社グループは、2026年4月より提供を開始した「Alli Coworker」を新規顧客開拓のみならずクロスセル推進の起点(フック)として位置付けており、Alli Coworker導入企業に対するAlli LLM App Marketへのクロスセルを推進します。また、金融特化型の「Alli Finance LLM」を始めとした分野別ソリューションの強化を進めており、今後は他業種向けモデル(例:製造業向け、医療向けなど)の展開も視野に入れております。加えて、当社のプラットフォーム「Alli LLM App Market」上に自律型のAIエージェント機能「Alli Agent」を新たに開発・提供開始し、大規模言語モデル(LLM)の進化にいち早く対応することで、単一タスクの自動化から複雑な業務プロセス全体の自動化へとソリューション範囲を拡大しております。
(ⅱ)顧客ロックイン強化・契約規模拡大について、当社グループは、顧客の社内資産(データ・業務システム等)との連携を強化することで、顧客にとってシステムの代替が困難な状態を構築し、顧客のロックイン強化及び顧客あたり売上(ARPA)の向上を目指しております。また、既存顧客におけるSaaSからオンプレミス契約への発展、他部門展開及びコンサルティングサービスの拡大等を通じて、クロスセルの進展・効率化を図ることにより契約規模の拡大を目指しております。
地域戦略: 更なる多国化展開と金融・公共市場の優先獲得
地域戦略は、(ⅰ)既進出市場での展開ノウハウを活用した更なる多国化展開、及び(ⅱ)各国における金融機関や公共機関等、機密情報を取り扱う領域への優先的な進出(金融・公共市場の優先獲得)の2点を軸としております。現在主力市場である日本・韓国での地位を盤石なものとしつつ、アジア及び欧米への事業拡大を計画しております。特に、当社グループの強みであるオンプレミス対応は、機密情報の取扱いに厳格な要件を有する金融機関や公共機関において高く評価されており、新規進出国においてもこうした領域への優先的なアプローチを重視する方針です。
販売推進戦略:直販体制の強化とパートナーシップ拡大による顧客接点の最大化 販売推進戦略では、(ⅰ)直販営業体制の強化による新規顧客の開拓、及び(ⅱ)パートナーシップによる販売推進の2点を軸に、顧客接点の拡大と持続的な販売基盤の強化を図ります。
(ⅰ)直販営業体制の強化による新規顧客の開拓について、当社グループは、Alli Coworkerを軸とした直販営業体制の強化を進めております。直販チャネルを通じて顧客ニーズを直接把握し、迅速な製品改善及び提案活動につなげるとともに、獲得した顧客基盤を軸に、他製品・サービスへのクロスセル及びアップセルを図っております。
(ⅱ)パートナーシップによる販売推進について、当社グループは、パートナー企業との連携を通じた顧客接点の拡大を、直販に次ぐ重要な柱として位置付けております。特に官公庁及びエンタープライズ市場においては、当社グループ単独でのカバレッジには限界があることから、パートナー企業の持つ顧客基盤や業界知見を活用することで、効率的な市場浸透を図っております。主要パートナーとしては、国内外のSI事業者、通信事業者及びBPO事業者等の複数企業との連携を進めており、これらのパートナーを経由した販売網の拡大を通じて、既に多数の案件が進行しております。連携の形態としては、①パートナー企業による顧客紹介及び販売代理、②官公庁・自治体及び各パートナーの重点業界への共同営業、並びに③パートナー製品・サービスへの当社製品の組み込み販売、の3類型に整理しております。
収益モデルの拡張性とスケーラビリティ 上記の戦略により、当社グループの収益モデルは顧客単位での取引拡大による「拡張性」と、事業規模拡大に伴う収益性向上による「スケーラビリティ」の双方を備えております。SaaSはサブスクリプション収入を中心としたストック型ビジネスであり、低い顧客獲得コストで導入企業数を拡大できるポテンシャルがあります。一方のオンプレミスビジネスは、大口契約やライセンス提供による高単価収入をもたらし、1件ごとの売上規模は大きいものの受注までのリードタイムが長い傾向があります。当社グループは前述のエンタープライズ内での拡張(クロスセル)戦略により、SaaSでの初期導入から大規模なオンプレミス契約への発展をスムーズに行えるため、両モデル間で顧客ライフタイムバリューを最大化できます。また、プロダクトがクラウド経由で提供される部分については、導入企業数が増加してもサービス提供の限界費用は低く抑えられるため、事業規模拡大に伴う収益率の向上(スケールメリット)も期待できます。地域戦略の項で述べたグローバル展開により市場母数自体も飛躍的に増大することから、各地域での収益機会を合算すれば当社グループサービスにはまだ十分な成長余地があります。さらに、サービス拡張戦略による収益源の多角化も進んでいきます。例えば、コンサルティングサービスやマーケットプレイスからの手数料収入や、コアのSaaS利用料に加えてオンプレミス契約にオプション収入を積み上げる形でARPA(顧客あたり売上)を向上させることが可能です。以上のように、当社グループのビジネスは横へのスケール(導入企業数拡大)と縦へのスケール(顧客単価向上)の両面で拡張可能性を有しており、投資リターンの観点でも魅力的な成長余力を備えていると考えております。
以上の経営戦略を一貫して推進することで、当社グループはノーコードAIプラットフォームの技術優位性を武器に、市場の幅広いセグメントをカバーしつつグローバルで事業拡大を図ります。SaaSとオンプレミスの補完戦略により安定かつ成長性の高い収益基盤を構築し、プロダクト・地域・サービスの各軸で機動的に展開することで、中長期的に持続可能な競争優位を確立してまいります。引き続き投資家の皆様にとって魅力ある企業価値の向上を実現すべく、戦略遂行に邁進していきます。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の主な課題は以下のとおりであります。
①急激な市場環境の変化に対応可能な組織体制の構築
LLMモデルの性能が急速に進化しており、わずか数か月前には実現が困難だったことが短期間で可能になるケースが頻繁に生じております。また、LLMを提供するOpenAIやGoogleなどの企業がサービス領域を積極的に拡張し、特定の業界に特化したLLMサービス企業を買収する事例も増加しております。さらに、これまでLLMのトレーニング用データを扱っていた企業が、オープンソースLLMモデルを活用し、自らが直接顧客案件を獲得するために競合となるケースも増えてきました。このように、短期間で技術的実現性や市場環境が大きく変動する状況において、当社グループは迅速かつ柔軟に対応できる技術・営業組織を安定的に運営する体制の構築を最優先課題として取り組んでまいります。
②社内エンジニアのAI活用による生産性向上
LLMモデルの急速な発展に伴い、マイクロソフトやGoogleなど一部の大手企業では、AIによるコード生成が開発工程の一定割合を占めるとの情報も見られます。新規に立ち上げるプロジェクトにおいては、AIを活用した開発により生産性の向上が期待できる一方、既存サービスに組み込まれているレガシーコードについては、現状のAI技術では十分に理解・対応することが容易ではないケースもあると考えられます。そのため、既存サービスの開発・保守におけるAI活用による生産性向上効果は、新規にゼロからサービスを構築する場合と比較して、相対的に限定的となる可能性があります。この点、スタートアップ企業がゼロベースで競合サービスを迅速に開発することも想定されるため、当社グループとしては、新規参入企業との競争において開発速度と品質の両立を図ることを重要な経営課題と認識し、継続的に対処してまいります。
③内部管理体制の強化
当社グループは事業内容の進化、事業・組織両面での成長を続けている段階にあって、グループ全体での業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。このため、当社及び子会社との適切な連携を前提としたバックオフィス業務の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するため、企業規模の拡大に適う、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでまいります。
④情報管理体制の強化
当社グループはシステム開発やシステム運用、又はサービス提供の遂行過程において、機密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、情報管理規程等に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修の実施やシステムの整備などを継続して行ってまいります。
⑤財務上の課題
現時点で当社グループは財務上の課題を認識しておりません。2025年9月期まで計上している営業損失及び営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスは、プロダクト開発への先行投資によるものであり、2025年9月期は当期純利益を計上したほか、2026年9月期第3四半期連結累計期間においても営業黒字を維持しております。当社グループは、事業の拡大に伴いストック収益が積み上がることで売上高に占める費用の割合の逓減を図り、①契約社数の増加及びクロスセル・アップセルによるARPAの向上、②プロダクトのスケールメリットの享受、③AIを活用した開発生産性の向上による開発効率化により、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に努めてまいります。
用語集
注釈番号用語内容
※1ARPA「Average Revenue Per Account」の略で、顧客1社(アカウント)当たりの平均売上高をいう。
※2NLP「Natural Language Processing」の略で、人間が日常的に使っている言葉(自然言語)をコンピューターに処理させる一連の技術をいう。自然言語処理と同義。
※3アジャイル・ガバナンス環境や技術の変化、新たなリスクの発生等に応じて、統治(ガバナンス)の在り方を継続的に見直し、機動的に改善していく統治手法をいう。
※4インサイト顧客データや行動履歴等の分析を通じて得られる、表面的には見えていない顧客の潜在的なニーズや課題に関する洞察をいう。
※5受注単価新規に獲得した初期導入契約に係る初期導入費用(追加の機能開発や保守運用に係る費用は含まない。)の総額を、当該契約の件数で除して算出。モデルの入れ替えやメンテナンス等の小型受注を除外するため、20百万超の契約に限定して集計。
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