有価証券届出書(新規公開時)
有報資料
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社は、30年以上にわたる国内アカデミアによる抗体研究を実用化し、ヒト及び動物領域で革新的な治療用モノクローナル抗体医薬品を提供するバイオ医薬品企業です。機能性と網羅性を備えた抗体ライブラリー(MOURAライブラリー)と高効率モノクローナル抗体単離技術を有し、従来技術では取得が困難な高品質・高機能性モノクローナル抗体等を提供することで製薬業界に新薬の研究開発機会の拡大をもたらします。主力事業である新規ペット(イヌ、ネコ)用抗体医薬を広く世界に提供し、ペットの健康を通して家族全体の生活の質向上に資することでミッションの具現化を行ってまいります。
(2)経営戦略
ヒト用医薬品開発は一つのパイプラインへの投資も高額になり、かつ、複数の疾患分野のパイプラインを開発するための人的資源にも制限があることから、従来のバイオスタートアップ企業のビジネスモデルは、単独又は多くても数本のパイプラインに依存するビジネスモデルです。当社は、これらとは全く異なる、19件の豊富なパイプラインからなるリスク分散型のポートフォリオの推進と、「高い成功確率」「短い開発期間」「低いコスト」というペット用抗体医薬品開発の特徴を活かしたビジネスモデルにより、着実に事業を拡大していきます。また、最新の機器、AI技術の導入、及び高度研究人材の獲得により常に世界のトップレベルの技術力を維持し、高機能かつ高品質な新規抗体取得を確かなものとします。短期的(2029年まで)には、継続的なパイプラインの拡充、進捗による確実なマイルストーンと導出の達成、中長期的(2030年以降)には世界のパートナーによる製品の製造販売開始を見込み、さらなる事業拡大を目指します。
①パイプライン売上の成立・拡大
豊富な既存共同研究パイプラインを推進し、着実にマイルストーンを達成します。また、世界の既存及び新規顧客とのパートナーシップ拡大により、確実に事業計画を達成及び継続的な黒字化を目指します。
②高付加価値の自社研究パイプラインの導出
自社研究パイプラインの対象動物における探索的有効性等のデータ付加により、自社開発パイプラインの価値最大化を行い、収益拡大を目指します。
③パイプライン製品化による更なる収益拡大
中長期的(2030年以降)には国内外のパートナーによるパイプライン製造販売開始に伴うロイヤリティと販売マイルストーン獲得による収益拡大に伴う事業価値の飛躍的向上を見込みます。
(3)経営環境
世界のペット用医薬品市場は、2024年の235億米ドルから年成長率11.1%で成長し、2034年には670億米ドルに達すると予測されています(「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)当社のビジネスモデル ② ビジネスモデル選択の背景」参照)。ワクチンや駆虫薬の普及と(出典:Grand View Research 2025)、ペットの家族化と住環境の充実によりペットの高齢化が進行した結果、ペットでもヒト同様加齢に伴う慢性疾患が問題となり、抗体医薬や再生医療等の新しいペット用医薬品が必要とされるようになっており、今後の同市場における成長はそれらが牽引することが期待されています。世界的に見ると、日本のイヌ及びネコの飼育頭数は人口の約10%ですが、最大のペット用医薬品市場である米国と欧州はイヌ、ネコとも人口の20%を超えており、中国、南米も含め今後も拡大が期待されます(出典:HealthforAnimal.org)。近年、ペットの家族化により、家計あたりのペットケアにかける支出が増大しており、この点も市場が拡大する要因となっています(出典:Bloomberg, March 2023)。
ペット用抗体医薬市場はその安全性、有効性、利便性から新たな巨大市場が形成されると期待されています。人体薬の医薬品市場において抗体医薬は約30年の歴史を持ち、その有効性と安全性から現在200種類以上の抗体医薬が製造販売されるに至っており、2022年から2028年にかけての世界医薬品市場でのシェアは約25%を占めると見込まれています(出典:創薬モダリティの潮流と展望、科学技術振興機構)。ペット用抗体医薬も同様のトレンドを踏襲することが期待されます。現時点で、Zoetis社が大きくリードしているペット用抗体医薬市場(「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)当社のビジネスモデル ② ビジネスモデル選択の背景」参照)に参入すべく、世界の動物用医薬品企業は積極的に抗体医薬の研究開発への投資を行っており、当社と類似の抗体取得スタートアップ企業の買収や共同研究契約の締結が進められています。
(市況)
2010年代後半、当社よりも早く操業したペット用抗体医薬品スタートアップの多くは、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)当社のビジネスモデル ②ビジネスモデル選択の背景」に記載のとおり、ここ数年の間に大手動物薬企業に買収され、現在独立して医薬品レベルの品質を示す完全イヌ型抗体及び完全ネコ型抗体を世界の大手動物薬企業各社に自由に提供できるのは当社の知りうる限り当社のみです。
(4)目標とする経営指標
当社は、2026年8月末時点で19件の研究開発パイプラインを進めています。国内外大手製薬会社との導出契約に基づく契約一時金及び研究開発の進捗に応じたマイルストーンの達成による売上高が計上されてはおりますが、将来のパイプライン製造販売開始後の事業価値を正確に反映しているとは考えられないため経営指標等は定めておりません。
①各パイプラインの研究開発の進捗状況
豊富に保有している共同研究パイプライン及び自社パイプラインの進捗状況(開発候補品の特定、臨床試験開始、申請段階移行等)を四半期毎、又は適宜モニタリングし、その結果を更新、視覚化し、目標に対する達成状況を一目で判断出来るよう開示してまいります。
②ポートフォリオの充実状況
将来の事業価値の確実な向上のため、既存及び新規顧客とのパートナーシップ強化によるポートフォリオの充実を進めております。その進捗を四半期毎、又は適宜モニタリングし、その結果をタイムリーに更新、視覚化してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①持続的・安定的な事業収益の獲得
新規及び既存パートナー(共同研究開発企業)との共同研究を円滑に進めマイルストーンを早期に確実に達成すること、並びに各パートナーとの良好な関係を維持し自社パイプラインの導出を積極的に推進し、持続的かつ安定的な収益を生み出す研究開発ポートフォリオを構築してまいります。
②優秀な人材の確保・育成
グローバルな活躍、最先端医薬品技術開発への取組を前面に出し優秀な人材の確保を図るとともに、誠実さ、革新、挑戦、環境と倫理をコアバリューとして重んじる文化形成に継続的に取り組んでおります。
③技術競争力の強化
ヒト及び動物薬技術の発展に常にアンテナを張り、引き続き抗体技術を基盤とし、有効性と安全性のみならず付加価値の高い二重特異性抗体、細胞内抗体技術等の新規技術の確立とパイプラインの構築を行ってまいります。
④事業領域の拡大
動物医薬領域においてはペットのみならず、同程度の市場規模である産業動物への抗体技術の応用が考えられます。また、現在は動物用抗体医薬品に特化してビジネスを行っておりますが、上場し、安定的な収益を見込める状況になった時点で、メディカルニーズ、成功確率を精査し、ヒト用抗体医薬品の分野にも徐々にビジネスを拡大していく計画です。
⑤財務基盤の拡充
当社は、事業拡大に応じ、人材の確保と併せて研究設備の拡充を図方針であり、これに伴う財務体質の強化が課題であると認識しております。そのため、導出契約の締結を始めとした国内外のパートナーとの提携や、株式市場からの資金調達等により財務体質の強化に努めてまいります。