臨時報告書

【提出】
2020/12/18 15:24
【資料】
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提出理由

当社は、会社法(平成17年法律第86号。その後の改正を含みます。以下同じとします。)第179条第1項に定める当社の特別支配株主であるJSR株式会社(以下「JSR」といいます。)から、同法第179条の3第1項の規定による株式売渡請求(以下「本株式売渡請求」といいます。)の通知を受け、2020年12月18日付の当社取締役会において、本株式売渡請求を承認することを決議いたしましたので、金融商品取引法第24条の5第4項及び企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項第4号の2の規定に基づき、本報告書を提出するものであります。

特別支配株主から株式等売渡請求の通知がされた場合又は当該株式等売渡請求を承認するか否かが決定された場合

1.本株式売渡請求の通知に関する事項
(1)当該通知がされた年月日
2020年12月18日
(2)当該特別支配株主の商号、本店の所在地及び代表者の氏名
商号 JSR株式会社
本店の所在地 東京都港区東新橋一丁目9番2号
代表者の氏名 代表取締役社長 川橋 信夫
(3)当該通知の内容
JSRは、会社法第179条第1項に定める当社の特別支配株主として、当社の株主の全員(但し、当社及びJSRを除きます。以下「本売渡株主」といいます。)に対し、その有する当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)の全部(以下「本売渡株式」といいます。)をJSRに売り渡すことを請求することを決定したとのことであり、当社は、2020年12月18日付でJSRから以下の内容の通知を受領いたしました。
① 特別支配株主完全子法人に対して株式売渡請求をしないこととするときは、その旨及び当該特別支配株主完全子法人の名称(会社法第179条の2第1項第1号)
該当事項はありません。
② 本株式売渡請求により本売渡株主に対して本売渡株式の対価として交付する金銭の額及びその割当てに関する事項(会社法第179条の2第1項第2号・第3号)
JSRは、本売渡株主に対し、本売渡株式の対価(以下「株式売渡対価」といいます。)として、その有する本売渡株式1株につき4,400円の割合をもって金銭を割当交付いたします。
③ 新株予約権売渡請求に関する事項(会社法第179条の2第1項第4号)
該当事項はありません。
④ 特別支配株主が本売渡株式を取得する日(以下「取得日」といいます。)(会社法第179条の2第1項第5号)
2021年1月15日
⑤ 株式売渡対価の支払のための資金を確保する方法(会社法第179条の2第1項第6号、会社法施行規則第33条の5第1項第1号)
JSRは、同社の保有する現預金によって、株式売渡対価の支払いを行う予定です。JSRは、株式売渡対価の支払いのための資金に相当する額の銀行預金を保有しております。
⑥ その他の本株式売渡請求に係る取引条件(会社法第179条の2第1項第6号、会社法施行規則第33条の5第1項第2号)
株式売渡対価は、取得日以降合理的な期間内に、取得日の前日の最終の当社の株主名簿に記載又は記録された本売渡株主の住所又は本売渡株主が当社に通知した場所において、当社による配当財産の交付の方法に準じて交付されるものとします。但し、当該方法による交付ができなかった本売渡株主については、当社の本店所在地にて、当社が指定した方法により(株式売渡対価の交付についてJSRが指定したその他の場所及び方法があるときは、当該場所及び方法により)、株式売渡対価の支払いを実施することといたします。
2.本株式売渡請求を承認する旨の決定に関する事項
(1)当該通知がされた年月日
2020年12月18日
(2)当該決定がされた年月日
2020年12月18日
(3)当該決定の内容
JSRからの通知のとおり、同社による本株式売渡請求を承認いたします。
(4)当該決定の理由及び当該決定に至った過程
JSRが2020年10月28日から同年12月10日までを公開買付期間として実施した当社株式に対する公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)に関し、当社が2020年10月28日付で提出いたしました意見表明報告書の「3 当該公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(5)本公開買付け後の組織再編等の方針(いわゆる二段階買収に関する事項)」に記載のとおり、本株式売渡請求は、当社株式の全て(但し、JSRが所有する当社株式及び当社が所有する自己株式を除きます。)を取得することにより当社をJSRの完全子会社とすることを目的とする取引(以下「本取引」といいます。)の一環として行われるものであり、株式売渡対価は、本公開買付けにおける当社株式1株当たりの買付け等の価格(以下「本公開買付価格」といいます。)と同一の価格に設定されております。
当社は、2020年10月27日付で当社が公表した「JSR株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明及び応募推奨のお知らせ」(同月29日付で当社が公表した「(訂正)「JSR株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明及び応募推奨のお知らせ」の一部訂正に関するお知らせ」による訂正後のもの。以下「意見表明プレスリリース」といいます。)の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(2)意見の根拠及び理由」の「③ 当社における意思決定の経緯及び理由」に記載のとおり、以下のとおり判断し、2020年10月27日開催の取締役会において、本公開買付けに賛同する意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けへの応募を推奨することを決議いたしました。なお、当該取締役会決議は、意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「⑤ 当社における利害関係を有しない取締役全員の承認及び利害関係を有しない監査役全員の異議がない旨の意見」に記載の方法により決議されております。
当社は、意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(2)意見の根拠及び理由」の「② 公開買付者が本公開買付けの実施を決定するに至った背景、目的及び意思決定の過程」に記載のとおり、2020年7月中旬、JSRから完全子会社化に関する協議を開始したい旨の意向を伝えられたことから、当社としても完全子会社化について検討する旨をJSRに回答しました。そして、JSRとの間における当該協議に応じることとし、2020年7月中旬から本取引に関し議論を開始したところ、同年9月11日、JSRから提案書の提出を受けました。当該提案を契機として、当社は、本取引に関して、JSR及び当社から独立したファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関として株式会社プルータス・コンサルティング(以下「プルータス」といいます。)を、JSR及び当社から独立したリーガル・アドバイザーとして佐藤総合法律事務所を、それぞれ2020年9月11日に選任しました。そして、当社は、2020年9月11日開催の当社取締役会決議により、当社において本取引の是非を検討するに際して、企業価値の向上及び一般株主の利益を図る立場から、その是非や取引条件の妥当性、手続の公正性などについて検討及び判断を行う任意の合議体として、意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得」に記載のとおり、当社独立社外取締役1名及び当社独立社外監査役2名からなる特別委員会(以下「本特別委員会」といいます。)を設置し、本特別委員会に対し、本取引に係る取引条件等についてのJSRとの交渉について事前に方針を確認し、適時にその状況の報告を受け、重要な局面で意見を述べ、指示や要請を行うことなどにより、本取引の取引条件等の交渉過程に実質的に関与する状況を確保するよう努めることを求めました。また、本特別委員会は、プルータスを当社のファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関、佐藤総合法律事務所を当社のリーガル・アドバイザーとして承認するとともに、本特別委員会としても、必要に応じてプルータス及び佐藤総合法律事務所から専門的助言を受けることができることを確認し、本公開買付けに係る協議・交渉を行う体制を構築いたしました。
上記のような体制の下で、本特別委員会は、本取引に係るJSRの提案内容を踏まえ、当社の事業の状況、事業環境、経営課題、事業計画の内容、本取引の当社事業に対する影響等について当社から説明を受け、これらの点に関する検討・協議を行うとともに、JSRと直接Web 会議システムを通じて面談を行うこと等を通じて、当社の事業の状況、事業環境、経営課題を含む本取引の背景・経緯、本取引によって創出が見込まれるシナジーの有無やその内容を含む本取引の意義・目的、本取引後の経営方針、本取引における諸条件等について、複数回に亘る協議・交渉を重ねました。本特別委員会は、当社が、2020年9月11日にJSRから本公開買付価格を1株当たり3,500円とする提案を受領して以降、プルータスによる当社の株式価値の算定結果やJSRとの交渉方針等を含めた財務的な助言及び佐藤総合法律事務所からの法的助言等を踏まえ、JSRとの間で、本公開買付価格を含む本取引における諸条件について継続的に協議・交渉を行ってまいりました。具体的には、JSRより、2020年10 月7日に4,200 円とする旨の提案を受領いたしました。これに対して、当社は、本特別委員会から聴取した意見並びにプルータス及び佐藤総合法律事務所から聴取した意見を踏まえて検討を行った上で、適正な価格に達していないとして、JSRに対し本公開買付価格の再検討を要請いたしました。その後もJSRとの間で、当社のファイナンシャル・アドバイザーであるプルータスを通じて、継続的に協議・交渉を行い、その結果、本特別委員会は、2020年10月19日に、JSRから、公開買付価格を1株当たり4,400円とする最終提案を受けるに至りました。
そして、本特別委員会は、当該最終提案を受け、当社がプルータスから提出を受けた当社の株式価値の算定結果に関する2020 年10 月26 日付株式価値算定書(以下「本株式価値算定書」といいます。)及び本公開買付価格が当社の少数株主にとって財務的見地から公正なものである旨の2020年10月26日付意見書(フェアネス・オピニオン)(以下「本フェアネス・オピニオン」といいます。)等も考慮し、本諮問事項(意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得」をご参照ください。)について慎重に協議及び検討を重ねた結果、2020年10月26日付答申書(以下「本答申書」といいます。)を作成し、当社は、同日、本特別委員会から本答申書の提出を受けました(本答申書の概要については、意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得」をご参照ください。)。その上で、当社は、佐藤総合法律事務所から受けた本取引に関する意思決定の過程、方法その他の取引に関する意思決定にあたっての留意点等についての法的助言、本株式価値算定書及び本フェアネス・オピニオンの内容を踏まえつつ、上記の本特別委員会から提出された本答申書の内容を最大限に尊重しながら、本取引に関する諸条件について、企業価値向上の観点から慎重に検討を行いました。
その結果、当社は、以下のとおり、本取引は当社の企業価値の向上に資するものであると判断するに至りました。
当社においては、今後の当社の企業価値向上のためには、以下の事項(i)乃至(ix)が喫緊の課題であると認識しております。まず、当社における事業環境の変化及び当社を取り巻くヘルスケア産業の情勢に鑑みると、当社においては、(i)医療の個別化等の進展、及び(ⅱ)新興・再興感染症の流行等への迅速な対応等、科学技術や医療ニーズの変化に適切に対応していくことが、後記の企業理念体系及び長期ビジョン(Vision 2030)を達成するための課題となります。また、日本国内では、(ⅲ) 競合他社との競争激化、及び(ⅳ)国内市場の頭打ち等に起因する極めて厳しい市場環境での生き残りが重要となります。そして、グローバル市場を俯瞰すると、各国・地域の薬事規制に遵守した(ⅴ) 高品質な製品の安定生産と供給の体制が重要となり、画期的な製品を開発、市場投入していくには、(ⅵ)最新製品・技術等の情報収集能力が必須となります。さらには、ヘルスケア産業の情勢を観察しながら、当社が進むべき(ⅶ)製品開発戦略・事業化戦略を立案、実行するリソース、(ⅷ)デジタル化・IT 化への対応、及び(ⅸ)人材の教育や確保が喫緊の課題になるものと認識しております。
これらの経営課題に対して的確に対応していくために、当社は、2020年度より、新たな企業理念体系として「革新的な診断技術で人々の健康と医療の発展に貢献する」を掲げ、長期ビジョン(Vision 2030)を「革新的な診断技術や製品の創出成果を、海外事業拡大、新規事業創出に積極的に投入することで企業価値を最大化し、人々の健康と医療の発展に貢献する」としたうえで、その実現により、グローバルニッチトップ企業を目指しております。その実現のために、具体的施策として(a)国内市場堅持、(b)海外事業拡大、及び(C)新規事業創出を掲げる新中期経営計画「Next Stage 2020-2024」を策定し、先端診断分野や新規事業でこれを実行しようとしております。
当社は、2013年3月に資本業務提携契約を締結したことを契機として、JSRとの間で、当社が保有する抗体・抗原・遺伝子関連技術や試薬開発の技術とJSRのメディカル材料技術を融合させることにより、事業価値を向上させるよう努め、さらには資本業務提携関係を強化するため、JSRは、公開買付期間を2015年2月10日から2015年3月11日まで、また買付価格を1株当たり600円とする2015年3月の公開買付けの方法による当社株式3,587,906株(取得割合:13.5%)の取得及びその後2015年4月30日から2015年10月20日まで実施した市場内での当社株式847,000株(取得割合:3.9%)の追加取得の結果、2015年10月20日にはJSRが当社株式13,138,906株(所有割合(注):50.8%)を所有するに至り、当社はJSRの連結子 会社となり、同一企業グループとして連携して事業を営んできたものです。
(注)「所有割合」とは当社が2020年10月27日に公表した「2021年3月期第2四半期決算短信日本基準(連結)」(以下「当社決算短信」といいます。)に記載された2020年9月30日現在の当社の発行済株式総数(5,211,800株)から、同日現在の当社が所有する自己株式(41,059株)を控除した株式総数(5,170,741株)に占める割合をいいます(小数点以下第二位を四捨五入しております。)。
これまで、当社とJSRは、当社が保有する抗体・抗原・遺伝子関連技術や試薬開発の技術と、JSRのメディカル材料技術を融合させることにより、主に技術・製品面で、当社の企業価値の向上を図ってきました。一方、上記の新中期経営計画「Next Stage 2020-2024」で掲げている、(a)国内市場堅持、(b)海外事業拡大、及び(c)新規事業創出を早期かつ効率的に実現し、当社のさらなる企業価値の向上を図るためには、技術・製品面にとどまらない事業面での当社とJSRの連携強化、及び当社における不確実性が高い分野での先行開発投資が不可欠となります。
事業面での当社とJSRの連携強化の観点からは、JSRからの人材、資金及びノウハウ等の経営資源のさらなる投入や、当社以外のJSRのグループ各社とのさらなる協業等を実現させることが不可欠であるところ、JSRによれば、JSRから当社に対する経営資源のさらなる投入や、当社以外のJSRグループ各社とのさらなる協業等は、JSRと当社双方の成長を実現するという目的にとって必要な施策と認識しているものの、短期的には当社のコストを増加させかねず、結果として必ずしも当社の少数株主の利益とならない可能性もあるとのことです。また、当社における不確実性が高い分野での先行開発投資についても、確実に成功するとは言えないためリスクがあり、結果として必ずしも当社の少数株主の利益とならない可能性があります。
よって、このような利益相反の懸念を解消し、当社の企業価値の向上にとって最善と考えられる各種の施策を実行するためには、当社が本取引を通じてJSRの完全子会社となり、JSRとのシナジーをより一層追及することが最も効率的であると判断いたしました。
本取引を通じてJSRの完全子会社となることにより、当社が想定するJSRとの具体的なシナジーは、上記の新中期経営計画「Next Stage 2020-2024」における具体的施策に照らしていえば、以下のとおりです。
(a)国内市場での製品群の拡充
当社は、自己免疫疾患やがん領域において自己抗体や抗原を検出する免疫・血清学検査試薬(MESACUP シリーズ、ステイシアMEBLux シリーズ)を柱として企業成長を遂げてきたものであり、約30年にわたり製品の品質や信頼によって競合製品群から当社製品群の市場を堅守してきましたが、過去10年来、競合他社による新製品発売や価格競争が厳しくなっていることから、国内市場での競争力を維持するため、当社における国内市場での製品群を拡充する必要があります。JSRは、JSR・慶應義塾大学医学科学イノベーションセンター(JKiC)における診断薬や研究試薬のシーズ、がんバイオマーカー候補、CVC(Corporate Venture Capital) を通じた創薬系ベンチャー企業へのアクセス等、当社における製品群の拡充に資する経営資源を保有しています。当社はこれらの経営資源を保有していないため、当社における国内市場での製品群を拡充するためには、JSRが保有する上記経営資源を投入する必要がありますが、そのためには、当該経営資源の投入を受けるための先行投資が必要となります。当社が製品群の拡充を考えている遺伝子検査試薬やコンパニオン診断薬等の分野は、先行投資を行ったとしても全ての開発項目で製品化が成功するとは限らず、不確実性が高い分野です。当社においては、当社の少数株主の利益への配慮から、これらの不確実性が高い分野での先行開発投資を実行することについては、少数株主に対して製品化に成功しなかった場合のリスクを負わせることになるため支障があり得ます。
当社がJSRの完全子会社となることにより、当社の少数株主との利益相反の問題が解消され、当社において、当社の少数株主の利益に配慮することなく、不確実性が高い分野での先行開発投資を実行することが可能となります。
このような、当社における先行開発投資に基づき、既存製品及び開発中製品に加え、JSRが保有するJSR・慶應義塾大学医学科学イノベーションセンター(JKiC)における診断薬や研究試薬のシーズ、がんバイオマーカー候補、CVC(Corporate Venture Capital)を通じた創薬系ベンチャー企業へのアクセス等を活用した画期的な製品の事業化、さらには新たな測定原理に基づいた検査項目に対応し、当社の製品群を拡充させることが可能となります。
(b)海外での事業展開
個別化医療の進展の下では、診断と治療は密接に関連しています。当社における今後の事業戦略として、新規の診断・治療方法や新薬が創製される主たる起源国の多くが含まれる欧米市場への進出は極めて重要な選択肢となり得ます。しかし、当社は国内での事業展開にとどまっているのが現状です。JSRは、海外(中国、米国、欧州)に拠点を有する海外子会社(Crown Bioscience International、Selexis S.A.、KBI Biopharma,Inc.をいいます。以下同じです。) を保有しています。海外事業の展開には、JSRが保有するこれらの海外子会社と連携し、その知見やノウハウを活用することが有効となりますが、これらの連携には当社において海外における製造、許認可、販売等の体制について先行投資が必要になります。かかる先行投資を行ったとしても海外での事業化が成功するとは限らないため、当社の少数株主の利益への配慮から、海外事業に係る先行開発投資を実行することについては支障があり得ます。
当社がJSRの完全子会社となることにより、当社の少数株主との利益相反の問題が解消され、当社において、当社の少数株主の利益を考慮することなく、海外事業に係る製造、許認可、販売等の体制に対する先行開発投資を実行することが可能となります。
このような、当社における先行開発投資に基づき、例えば創薬支援サービス事業等を営むJSRの海外子会社であるCrown Bioscience International の有する拠点と連携し、製造、許認可、販売まで一貫した機能を持つ現地の診断薬メーカーへと早急に体制を整備することにより、当社による中国での事業の拡大が可能となります。また、JSRとの連携強化及び当社における先行開発投資に基づき、ライフサイエンスの世界市場の50%を占める欧米市場へのアクセスが可能となり、当社のユニークな製品群をライフサイエンスの世界市場の中心である欧米市場に展開することが可能になります。
(c)新規事業の拡大
個別化医療の進展の下では、治療指針や医薬品(治療薬)の投薬判断を提供するバイオマーカー、コンパニオン診断薬の事業は、新薬の創製と開発に密接に関連するものであり、海外を含め、新薬が創製される起源国において事業拠点とすることが合理的です。しかし、現状において当社の主な顧客は日本の製薬企業又は海外製薬の日本法人です。一方、JSRは、上記のとおり、米国や欧州に拠点を有している海外子会社を保有しています。創薬支援事業を拡大するためには、JSRの海外子会社と連携することにより、今後新たに、新薬が創製される主たる起源国の多くが含まれる欧米の製薬企業等への直接的なアクセスルートを確保することにより、コンパニオン診断薬の開発支援事業を伸張させることが必要になりますが、これらの連携には当社において海外におけるバイオマーカー、コンパニオン診断薬の開発支援事業における新規技術の開発・導入や製品シーズの探索に対する先行投資が必要になります。かかる先行投資を行ったとしても海外での開発支援事業が成功するとは限らないため、当社の少数株主の利益への配慮から、海外におけるこれらの新規事業に係る先行開発投資を実行することについては支障があり得ます。
当社がJSRの完全子会社となることにより、当社の少数株主との利益相反の問題が解消され、当社において、当社の少数株主の利益に配慮することなく、海外での開発支援事業に係る先行開発投資を実行することが可能となります。
このような、JSRの海外子会社との連携強化及び当社における先行開発投資に基づき、例えばJSRの海外子会社による創薬支援事業に当社のコンパニオン診断薬の開発支援業務を付加することによって、当社にとっては、日本国内では受注できなかった新たなコンパニオン診断薬の事業機会を拡大することが可能となります。
以上のとおり、当社のさらなる企業価値の向上には、上記の新中期経営計画「Next Stage 2020-2024」で掲げている、(a)国内市場堅持、(b)海外事業拡大、及び(c)新規事業の創出を早期かつ効率的に実現することが必要であるところ、そのためには、技術・製品面にとどまらず、事業面での当社とJSRの連携強化が必須であり、また、当社における不確実性が高い分野での先行開発投資も不可欠となります。
一方、JSRによれば、主として当社の少数株主との間の利益相反の懸念が解消されなければ、JSRから当社に対する経営資源のさらなる投入や、当社以外のJSRグループ各社とのさらなる協業等を実行することは困難であるとのことです。また、当社における不確実性が高い分野での先行開発投資についても、確実に成功するとは言えないためリスクがあり、結果として必ずしも当社の少数株主の利益とならない可能性があります。
そこで、当社は、JSRによる当社を完全子会社とする内容の本取引に係る提案と、JSRの当該提案に対する本特別委員会での議論を踏まえ、2020年10月26日に本特別委員会から当社に提出された本答申書の内容を受けて、同月27日の取締役会において、上場子会社としての現状を維持するよりも、当社がJSRの完全子会社となることの方が、当社の企業価値向上により資するものであると判断するに至りました。
また、当社は、(ⅰ)本公開買付価格が、意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(3)算定に関する事項」の「(ⅱ)算定の概要」に記載のプルータスによる当社株式の価値の算定結果のうち、市場株価法により算定された価格帯の上限値を上回っており、さらにDCF法により算定された価格帯の中央値を上回っていること、また、プルータスから、本公開買付価格である1株当たり4,400円が当社の少数株主の皆様にとって財務的見地から公正である旨の本フェアネス・オピニオンが発行されていること、(ⅱ)本公開買付価格が、東京証券取引所市場JASDAQにおける、本公開買付けの実施についての公表日の前営業日である2020年10月26日の当社株式の終値3,440円に対して27.91%(小数点以下第三位を四捨五入。以下、プレミアムの計算において同じです。)、同日までの過去1ヶ月間(2020年9月28日から同年10月26日まで)の終値の単純平均値3,472円(小数点以下を四捨五入。以下、終値の単純平均値の計算において同じです。)に対して26.73%、同日までの過去3ヶ月間(2020年7月27日から同年10月26日まで)の終値の単純平均値3,273円に対して34.43%、同日までの過去6ヶ月間(2020年4月27日から同年10月26日まで)の終値の単純平均値3,458円に対して27.24%のプレミアムがそれぞれ加算されていること、(ⅲ)本公開買付価格の決定に際しては、意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」に記載の本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置が採られており、少数株主の利益への配慮がなされていると認められること、(ⅳ)本公開買付価格が、上記利益相反を回避するための措置が採られた上で、当社とJSRとの間で独立当事者間の取引における協議・交渉と同等の協議・交渉が行われたこと、より具体的には、プルータスによる当社株式の株式価値に係る算定結果の内容や佐藤総合法律事務所による本取引に関する意思決定の過程及び方法その他の留意点についての法的助言等を踏まえ、かつ、本特別委員会が、本取引に係る取引条件等についてのJSRとの交渉について事前に方針を確認し、適時にその状況の報告を受け、重要な局面で意見を述べ、指示や要請を行うことなどにより、本取引の取引条件等の交渉過程に実質的に関与する状況を確保するよう努めながら、当社とJSRとの間で真摯かつ継続的に協議・交渉が行われた結果として、当初提示額(1株当たり3,500円)よりも25.7%(小数点以下第二位を四捨五入)引き上げられた価格(1株当たり4,400円)で提案された価格であること、(ⅴ)本公開買付価格が、意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得」に記載のとおり、本特別委員会から取得した本答申書においても、公正かつ妥当であると認められると判断されていること等を踏まえ、2020年10月27日開催の取締役会において、本公開買付けは当社の株主の皆様に対して、相当なプレミアムを付した公正かつ妥当な価格での合理的な当社株式の売却の機会を提供するものであると判断しました。
その後、当社は、2020年12月11日、JSRより、本公開買付けに対して当社株式2,166,975株の応募があり、その全てを取得することとなった旨の報告を受けました。この結果、JSRは、2020年12月17日(本公開買付けの決済の開始日)をもって、所有割合が90%以上となり、当社の特別支配株主に該当することとなりました。
このような経緯を経て、 当社は、JSRより、2020年12月18日付で、意見表明プレスリリースの「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」の「(5)本公開買付け後の組織再編等の方針(いわゆる二段階買収に関する事項)」に記載のとおり、本取引の一環として、本株式売渡請求をする旨の通知を受けました。
そして、当社は、かかる通知を受け、本株式売渡請求を承認するか否かについて、慎重に協議、検討いたしました。
その結果、2020年12月18日付の当社の取締役会において、(a)本株式売渡請求は、本取引の一環として行われるものであり、2020年10月27日開催の取締役会の審議及び決議に参加した当社の取締役の全員一致で決議したとおり、当社が本取引によりJSRの完全子会社となることが、当社の企業価値の向上に資するものであると判断しており、当該判断を変更すべき事情は特段生じていないこと、(b)株式売渡対価は、本公開買付価格と同一であり、本公開買付価格の決定に際しては、本答申書を取得する等、本取引の公正性を担保するための措置が講じられていること等に鑑みれば、本売渡株主にとって合理的な価格であり、本売渡株主の利益を害することのないよう十分留意されていると考えられること、(c)JSRは、株式売渡対価を、同社の保有する現預金を原資として支払うことを予定しており、当社としても、本株式売渡請求に係る通知書の添付資料として提出された預金残高証明書の写しによりJSRによる資金確保の方法を確認していること、また、JSRによれば、株式売渡対価の支払に支障を及ぼす可能性のある事象は発生しておらず、また今後発生する可能性は現在認識されていないとのことであること等から、JSRによる株式売渡対価の交付の見込みはあると考えられること、(d)株式売渡対価の交付までの期間及び支払方法について不合理な点は認められず、本株式売渡請求に係る取引条件は相当であると考えられること、(e)本公開買付けの開始日以降本日に至るまで当社の企業価値に重大な変更は生じていないこと、(f)特別委員会が、株式売渡対価による本株式売渡請求についても検討をした上で、本取引は少数株主に不利益ではない旨の本答申書を提出していることがそれぞれ認められると判断し、審議及び決議に参加した取締役全員の一致で、当社をJSRの完全子会社とすることを目的とする本取引を進めるべく、JSRからの通知のとおり、本株式売渡請求を承認することを決議いたしました。
なお、2020年12月18日付の当社の上記取締役会においては、当社の取締役7名のうち、伊藤浩毅、橋本秀雄及び神谷紀一郎の各氏は、JSRからの出向者であることから、利益相反のおそれを回避し、本取引の公正性を担保する観点から、本公開買付けに関する全ての議案について、その審議及び決議には参加しておりません。
以 上