有価証券報告書-第38期(2024/04/01-2025/03/31)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社グループを取り巻く環境は社会・経済・環境・技術において大きな変化が起きています。こうした環境の変化に柔軟に対応し、社会価値を提供し続けていかなければ、企業グループとしての成長はないと考え、2019年4月に新しい「ブランドメッセージ」と「理念」を制定しております。
この「ブランドメッセージ」と「理念」は、私たちが社会インフラとして担ってきた核となる「貨物鉄道輸送」の強化と同時に、物流企画から物流施設関連サービス、物流周辺事業に至るトータルな物流ソリューションを提案・提供可能な「総合物流企業グループ」への進化を追求していくこと、IoTやAI等の先端技術を活用することで、提供サービスや労働環境の飛躍的向上を実現すること、安全はすべての事業活動の根幹を成すものであり、そのための仕組みづくりや基盤強化、技術導入等の投資は積極的に行っていくこと、に果敢に挑戦し、企業グループとして変革し続けていくことを意味します。
JR貨物グループ理念
a ブランドメッセージ
Challenge and Change 挑戦、そして変革
b 理念
(a)全国に広がる鉄道貨物輸送網とグループの経営資源を活かし、新技術を積極的に導入し、産業と暮らしを支える総合物流サービスを提供します。
(b)お客様の課題を解決する新たなサービスを創出し、社会に必要とされる存在であり続けます。
(c)安全をすべての基盤とします。
(2)今後の経営環境の変化
世界経済全体は安定的な成長が見込まれる中で、米国トランプ政権による経済施策や中国経済の低迷は各国における保守主義や内需優先の政策を招き世界経済の足踏み要因となる懸念があります。また、長期化するウクライナ戦争や不安定化する中東・台湾情勢のように国際情勢の不確実性の増大による国際貿易等への影響は、日本経済や国内物流にも変化をもたらすことが見込まれます。
国内消費は堅調なインバウンド需要や大手企業を中心とした賃上げの動きが下支えとなり緩やかな回復基調にある一方で、国内総物流量はサプライチェーンの効率化等により中長期的に減少傾向が続いています。物流業界においては、少子高齢化による労働人口の減少に加え時間外労働時間の上限規制が適用されたことによってトラックドライバー不足が懸念されるいわゆる「物流の2024年問題」の更なる深刻化、2025年度から施行される流通業務総合効率化法による荷主や物流事業者への規制的措置への対応、GX推進法における排出量取引等の制度設計の具体化による2050年カーボンニュートラルを目指す取組みの加速化など、当社グループを取り巻く環境は大きく変化しています。
環境特性に優れ労働生産性の高い貨物鉄道輸送は、このような社会課題の解決に貢献できる輸送機関であり、効率的かつ持続可能な物流システムの構築に向けた取組みを推進します。既存のモードやインフラに新しい技術を積極的に取り入れ、それぞれのモードの特性を活かし、既存の枠にとらわれることのない未来に向けての交通インフラの最適解を求めるという「モーダルコンビネーション」の考え方に立ち、大きなデザインを描きながら、全国一元的な貨物鉄道ネットワークを有する唯一の企業グループとして、期待される役割を発揮していかなければならないと考えています。
(3)経営戦略等
当社グループは2021年1月に、「JR貨物グループ 長期ビジョン2030」を策定しました。この長期ビジョンは、 2019年に策定した「JR貨物グループ 中期経営計画2023」に取り組む中で、社会構造の変化や技術革新、さらに政府が宣言した「2050年カーボンニュートラル」などの持続可能な社会の実現に向けた取組みの進展を受け、当社グループが総合物流企業グループとして社会に提供する価値を改めて定義するとともに、今後目指していく姿を長期的視点に立って展望し、そこへ向かうための取組み方針等について具体的に示したものです。2024年3月には、この長期ビジョンの方針を踏まえ、2022年度に国土交通省が主催した「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」を受けて設定したKGI/KPIを織り込みながら、3ヶ年の中期経営計画「JR貨物グループ中期経営計画2026 ~一人ひとりが決意を新たに さあ、走りだそう、次の150年へ~」を策定しました。
■中期経営計画「JR貨物グループ中期経営計画2026 ~一人ひとりが決意を新たに さあ、走りだそう、次の150年へ~」
「JRグループ中期経営計画2023」の期間中、「さらなる成長に向けた挑戦、そして変革」という方針を掲げ、お客様への最適なソリューションと時代に即した新しいサービスの提供を通じた総合物流企業グループとしての成長を目指しましたが、度重なる自然災害と新型コロナウイルス感染症拡大等の影響により運輸収入が伸び悩み、また、エネルギー価格や原材料価格の上昇によりコストが増加し、厳しい経営状況となりました。一方で、積替ステーションの整備やレールゲートの展開、マンション事業ブランド「フレシア」の市場展開などの取組みは進捗し、着実な成果として表れています。
「JR貨物グループ中期経営計画2026」(以下「中計2026」)では、目まぐるしく変化する外部環境に対応し、総合物流企業グループへの進化を通じて、鉄道事業の黒字化と今後の更なる役割発揮に向けた体制強化を目指します。「中計2026」では、「お客様満足度(CS)」、「企業の社会的責任(CSR)」、「社員満足度(ES)」の3つの視点からグループとして目指す姿を「物流を通じて社会に、お客様に貢献し続ける企業グループ」と明確化し、計画全体を通じた指針として「全国のグループ社員の力を結集して、安全を基盤とした物流のプロとして”なくてはならない存在”へと進化し、鉄道×物流の総合力によって、日本を、地域を、社会を支えていきます。」と定めました。具体的取組みを進める上での基本方針として次の5つを掲げ、各施策に取り組みます。
① 安全基盤の強化・安定輸送の追求による貨物鉄道輸送への信頼の回復
安全基盤の強化として、旅客・公衆の人命を脅かす危険な事象の撲滅に向け、「安全の価値観」をより一層浸透、そして定着させるとともに、お客様や利用運送事業者等の関係者とも連携し、事業運営の根幹である安全の確保に貨物鉄道全体で取り組みます。安定輸送の追求では、鉄道以外の輸送モードを通常時から活用するフェーズフリーの考え方によって、災害時のトラック代行及び船舶代行の迅速な立ち上げを目指し、お客様へ安心な物流サービスを提供します。
② 既存アセットを最大活用した輸送量の回復(鉄道事業黒字化)
低迷する貨物鉄道輸送量回復のため、グループの営業力を総結集し、マーケティング分析に基づくニーズの把握とソリューション提案によってモーダルコンビネーションの取組みを進め、既存輸送力の最大活用によるご利用の拡大を目指します。大型コンテナの取扱量の拡大や中距離帯におけるネットワークの強化により、ご利用いただきやすい環境を整備し、貨物鉄道輸送の得意分野を伸ばしながら新たなサービスの提供によって物流課題の解決に貢献します。
③ 不動産事業の更なる拡大と新規事業の展開
安定的な成長を続ける不動産事業の更なる収益拡大を目指し不動産価値を高めるスクラップアンドビルド、取得物件拡大・組替えによるポートフォリオ拡充、資産流動化による投資スピードアップに着手するとともに、新規事業へ継続的にチャレンジすることで、社会に新しい価値を提供していきます。
④ 経営基盤の強化
鉄道ロジスティクス事業や不動産事業の施策を支えるため、組織力やガバナンスの強化に加え、未来を創造し、常に安全とお客様に寄り添った物流のプロを目指すことを目的とした人的投資や働きがいの創出、収支構造改革、グループ各社とJR貨物相互の経営資源の効率的活用を目指したグループ戦略を実行します。
⑤ 貨物鉄道輸送の更なる役割発揮に向けた体制強化
脱炭素社会の実現に向け、貨物鉄道輸送によるCO2排出量の精緻化、お客様のScope3削減を明示するインセンティブの導入検討や次世代エネルギーである水素輸送の検討を進めるほか、タイをはじめとした海外における貨物鉄道輸送事業への参画、また、新技術の導入によりDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することで、貨物鉄道輸送の進化を目指すことで更なる役割を発揮し、さまざまな社会課題の解決に貢献していきます。
■長期ビジョン「JR貨物グループ 長期ビジョン2030」
近年の物流業界は、トラックドライバー不足、環境問題の深刻化、Eコマース市場の拡大など取り巻く環境が著しく変化しております。一方、政府においてはDXや2050年カーボンニュートラルを推進しており、企業においてはSDGsやESG経営などに基づく活動が強く求められ、環境特性と労働生産性に優れた日本唯一の貨物鉄道輸送ネットワークを持つ当社グループが果たすべき役割はますます高まっています。
このような状況の中で、将来にわたって持続可能な社会の形成のため、そして国鉄改革の使命としての完全民営化の実現に向けた経営基盤を固めるため、当社グループが鉄道を基軸とした総合物流企業グループとしてどのような価値を提供し、役割を果たしていくかを10年の長期ビジョンとして示すことが必要と考え、2021年1月に「JR貨物グループ 長期ビジョン2030」(以下「長期ビジョン」)を策定しました。
長期ビジョンにおいて、当社グループは、鉄道を基軸とした総合物流企業グループとして最適なソリューションを提供し社会価値向上に貢献することを目指す姿として掲げ、次の4点を基本方針としました。
①安全を全ての基盤として、社会インフラである物流の幹線輸送を担うべく、鉄道ネットワークの強靭化を進め、確固たる事業基盤を構築
②多角的な不動産開発により資産のポテンシャルを最大限に活かした不動産事業の展開
③全国をつなぐ鉄道ネットワークを基盤に、物流結節点としての貨物駅に保管、流通加工等のサービスを付加することで最適なソリューションを提供し、物流生産性の向上に寄与
④グリーン社会の実現・持続可能な社会の形成に貢献するとともに、人々の生活や産業を支え、完全民営化を実現
これら4点の基本方針を実行することによって、当社グループは、総合物流企業グループとして、
①物流生産性の向上
②安全・安心な物流サービス
③グリーン社会の実現
④地域の活性化
という4つの価値を社会に対して提供することを目指しています。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、すべての事業において安全を最優先することを大前提に事業運営を行うこととした上で、以下に掲げる取組みを進めてまいります。
① 物流生産性の向上
「物流生産性の向上」では、全国一元的な貨物鉄道輸送サービスを提供する国内唯一の企業グループとして、お客様に最適なソリューションを提供する総合物流企業グループへと成長するための取組みを進めてまいります。具体的には、新たなブロックトレインの新設や輸送力の増強、速達化による輸送サービスの向上を目指していくとともに、トラックドライバー不足が懸念される物流の2024年問題やカーボンニュートラルの達成等の物流課題をお客様と共有し、将来を見据えた貨物鉄道利用のメリットを訴求することで輸送量の拡大を図り、「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」の提言を受けて設定した2025年度目標であるKGI/KPI(コンテナ輸送量:チャレンジ目標209億トンキロ、必達目標196億トンキロ)の達成を目指します。また、総合物流企業グループへの進化に向けた取組みも引き続き継続していきます。2020年2月に竣工した「東京レールゲートWEST」、2022年5月に竣工した「DPL札幌レールゲート」、2022年7月に竣工した「東京レールゲートEAST」、各駅で整備を進める積替ステーションといった物流施設とJR貨物グループ各社が持つ物流アセットと結合させることで、お客様に物流効率化のニーズに応えるサービスを提供するとともに、収益力の向上を図ります。
② 安全・安心な物流サービス
「安全・安心な物流サービス」では、2021年12月に発生した山陽線瀬野~八本松間貨物列車脱線事故の再発防止策として輪重測定装置やトラックスケールの導入や、荷主様、利用運送事業者様ら関係者が一体となって偏積を防止する仕組みの構築を実施してまいります。また、2024年9月に輪軸の圧入作業に関する作業記録の書き換え等の不適切事案が判明し、2024年10月31日に国土交通省から「輸送の安全に関する事業改善命令」を受け、講ずべき措置の4つの項目(「規程類の整備」、「教育体制の改善」、「作業記録の書き換えの防止」、「安全管理体制の点検、見直し」)について報告を行いました。報告した内容を着実に実施し、全社をあげて安全管理体制の強化に取り組み、輸送の安全確保に万全を期し、社員一丸となって信頼回復に努めてまいります。さらに近年頻発化・激甚化する豪雨災害等による長期寸断時の対応強化の取組みとして、う回運転に備えたEH500形式電気機関車の改造や乗務員の乗り入れ線区の拡大、代行輸送に備えたグループ会社との連携によるトラック輸送の拡大 、共同保有船の「扇望丸」の活用、定期航路船(RORO/フェリー)利用拡大に取り組むなど、災害時のリダンダンシー確保を進めております。
また、輸送量に応じた列車設定の見直し、列車運行にかかるオペレーションコストの削減に取り組むほか、安全の確保をした上で機関車・貨車、またはその部品の検査周期延伸を行うなどコスト削減を図ってまいります。
③ グリーン社会の実現
「グリーン社会の実現」の取組みとしては、機関車やフォークリフトの取替時に従来型よ り燃費削減効果の高い車両の導入を進めているほか、構内 移送トラック、入換用機関車、フォークリフトに次世代バイオディーゼル燃料の使用(試使用含む)を開始しました。今後も次世代バイオディーゼル燃料のさらなる使用拡大を検討してまいります。また、国の目標に合わせて、2022年7月に環境長期目標「JR貨物グループ カーボ ンニュートラル2050」を策定しました。数値目標として、2030年度に自社で排出するCO2量を50%削減(2013年度 比)し、2050年度にはグループ全体のCO2排出量を実質ゼロとすることを掲げており、目標の達成に向けてグループ全体で取組みを進めてまいります。
④ 地域の活性化
「地域の活性化」では、「社会課題解決型」の新規事業への挑戦の初めての取組みとして植物工場事業を行う合弁 会社を2021年9月に設立し、2023年4月から新工場が操業開始しました。オペレーションを含めて商品として出荷できる製品レベルまで早期に到達するように取り組むとともに、販路拡大も行ってまいります。また、海外事業ではタイ王国に重点を置いて活動を行います。2021年9月に開設したバンコク駐在員事務所を拠点として貨物鉄道輸 送事業の実施可能性及び貨物鉄道関連産業の参画可能性について調査を進めてまいります。
不動産事業では、自社用地を活用した新規開発に加え、外部から購入した不動産物件による賃貸事業を推進し、不 動産事業の安定した成長軌道の確立を目指します。また、回転型不動産ビジネスに参入し不動産事業の更なる拡大に着手します。
⑤ 財務上の課題
「財務上の課題」として、金融危機等の発生による資金の枯渇や金利の上昇が挙げられます。当社グループは今後も継続的に長期資金・短期資金の調達が必要であることから、資金調達先や借入期間の分散化を実施するとともに、震災・大雨・噴火対応型のコミットメントラインを締結し、有事の際の資金需要にも対応できるようにしております。
次いで、格付けの低下等により、市場からの資金調達コストが上昇する、もしくは調達自体が困難になることも想定されることから、財務体質の維持・強化に努めます。
また、新型コロナウイルス感染症の流行に代表されるような、当社グループの事業継続に大きな影響を及ぼす事象が発生した際には、資金繰りを継続的に注視し、早期の資金調達を実施するなど、対策を講じてまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社グループを取り巻く環境は社会・経済・環境・技術において大きな変化が起きています。こうした環境の変化に柔軟に対応し、社会価値を提供し続けていかなければ、企業グループとしての成長はないと考え、2019年4月に新しい「ブランドメッセージ」と「理念」を制定しております。
この「ブランドメッセージ」と「理念」は、私たちが社会インフラとして担ってきた核となる「貨物鉄道輸送」の強化と同時に、物流企画から物流施設関連サービス、物流周辺事業に至るトータルな物流ソリューションを提案・提供可能な「総合物流企業グループ」への進化を追求していくこと、IoTやAI等の先端技術を活用することで、提供サービスや労働環境の飛躍的向上を実現すること、安全はすべての事業活動の根幹を成すものであり、そのための仕組みづくりや基盤強化、技術導入等の投資は積極的に行っていくこと、に果敢に挑戦し、企業グループとして変革し続けていくことを意味します。
JR貨物グループ理念
a ブランドメッセージ
Challenge and Change 挑戦、そして変革
b 理念
(a)全国に広がる鉄道貨物輸送網とグループの経営資源を活かし、新技術を積極的に導入し、産業と暮らしを支える総合物流サービスを提供します。
(b)お客様の課題を解決する新たなサービスを創出し、社会に必要とされる存在であり続けます。
(c)安全をすべての基盤とします。
(2)今後の経営環境の変化
世界経済全体は安定的な成長が見込まれる中で、米国トランプ政権による経済施策や中国経済の低迷は各国における保守主義や内需優先の政策を招き世界経済の足踏み要因となる懸念があります。また、長期化するウクライナ戦争や不安定化する中東・台湾情勢のように国際情勢の不確実性の増大による国際貿易等への影響は、日本経済や国内物流にも変化をもたらすことが見込まれます。
国内消費は堅調なインバウンド需要や大手企業を中心とした賃上げの動きが下支えとなり緩やかな回復基調にある一方で、国内総物流量はサプライチェーンの効率化等により中長期的に減少傾向が続いています。物流業界においては、少子高齢化による労働人口の減少に加え時間外労働時間の上限規制が適用されたことによってトラックドライバー不足が懸念されるいわゆる「物流の2024年問題」の更なる深刻化、2025年度から施行される流通業務総合効率化法による荷主や物流事業者への規制的措置への対応、GX推進法における排出量取引等の制度設計の具体化による2050年カーボンニュートラルを目指す取組みの加速化など、当社グループを取り巻く環境は大きく変化しています。
環境特性に優れ労働生産性の高い貨物鉄道輸送は、このような社会課題の解決に貢献できる輸送機関であり、効率的かつ持続可能な物流システムの構築に向けた取組みを推進します。既存のモードやインフラに新しい技術を積極的に取り入れ、それぞれのモードの特性を活かし、既存の枠にとらわれることのない未来に向けての交通インフラの最適解を求めるという「モーダルコンビネーション」の考え方に立ち、大きなデザインを描きながら、全国一元的な貨物鉄道ネットワークを有する唯一の企業グループとして、期待される役割を発揮していかなければならないと考えています。
(3)経営戦略等
当社グループは2021年1月に、「JR貨物グループ 長期ビジョン2030」を策定しました。この長期ビジョンは、 2019年に策定した「JR貨物グループ 中期経営計画2023」に取り組む中で、社会構造の変化や技術革新、さらに政府が宣言した「2050年カーボンニュートラル」などの持続可能な社会の実現に向けた取組みの進展を受け、当社グループが総合物流企業グループとして社会に提供する価値を改めて定義するとともに、今後目指していく姿を長期的視点に立って展望し、そこへ向かうための取組み方針等について具体的に示したものです。2024年3月には、この長期ビジョンの方針を踏まえ、2022年度に国土交通省が主催した「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」を受けて設定したKGI/KPIを織り込みながら、3ヶ年の中期経営計画「JR貨物グループ中期経営計画2026 ~一人ひとりが決意を新たに さあ、走りだそう、次の150年へ~」を策定しました。
■中期経営計画「JR貨物グループ中期経営計画2026 ~一人ひとりが決意を新たに さあ、走りだそう、次の150年へ~」
「JRグループ中期経営計画2023」の期間中、「さらなる成長に向けた挑戦、そして変革」という方針を掲げ、お客様への最適なソリューションと時代に即した新しいサービスの提供を通じた総合物流企業グループとしての成長を目指しましたが、度重なる自然災害と新型コロナウイルス感染症拡大等の影響により運輸収入が伸び悩み、また、エネルギー価格や原材料価格の上昇によりコストが増加し、厳しい経営状況となりました。一方で、積替ステーションの整備やレールゲートの展開、マンション事業ブランド「フレシア」の市場展開などの取組みは進捗し、着実な成果として表れています。
「JR貨物グループ中期経営計画2026」(以下「中計2026」)では、目まぐるしく変化する外部環境に対応し、総合物流企業グループへの進化を通じて、鉄道事業の黒字化と今後の更なる役割発揮に向けた体制強化を目指します。「中計2026」では、「お客様満足度(CS)」、「企業の社会的責任(CSR)」、「社員満足度(ES)」の3つの視点からグループとして目指す姿を「物流を通じて社会に、お客様に貢献し続ける企業グループ」と明確化し、計画全体を通じた指針として「全国のグループ社員の力を結集して、安全を基盤とした物流のプロとして”なくてはならない存在”へと進化し、鉄道×物流の総合力によって、日本を、地域を、社会を支えていきます。」と定めました。具体的取組みを進める上での基本方針として次の5つを掲げ、各施策に取り組みます。
① 安全基盤の強化・安定輸送の追求による貨物鉄道輸送への信頼の回復
安全基盤の強化として、旅客・公衆の人命を脅かす危険な事象の撲滅に向け、「安全の価値観」をより一層浸透、そして定着させるとともに、お客様や利用運送事業者等の関係者とも連携し、事業運営の根幹である安全の確保に貨物鉄道全体で取り組みます。安定輸送の追求では、鉄道以外の輸送モードを通常時から活用するフェーズフリーの考え方によって、災害時のトラック代行及び船舶代行の迅速な立ち上げを目指し、お客様へ安心な物流サービスを提供します。
② 既存アセットを最大活用した輸送量の回復(鉄道事業黒字化)
低迷する貨物鉄道輸送量回復のため、グループの営業力を総結集し、マーケティング分析に基づくニーズの把握とソリューション提案によってモーダルコンビネーションの取組みを進め、既存輸送力の最大活用によるご利用の拡大を目指します。大型コンテナの取扱量の拡大や中距離帯におけるネットワークの強化により、ご利用いただきやすい環境を整備し、貨物鉄道輸送の得意分野を伸ばしながら新たなサービスの提供によって物流課題の解決に貢献します。
③ 不動産事業の更なる拡大と新規事業の展開
安定的な成長を続ける不動産事業の更なる収益拡大を目指し不動産価値を高めるスクラップアンドビルド、取得物件拡大・組替えによるポートフォリオ拡充、資産流動化による投資スピードアップに着手するとともに、新規事業へ継続的にチャレンジすることで、社会に新しい価値を提供していきます。
④ 経営基盤の強化
鉄道ロジスティクス事業や不動産事業の施策を支えるため、組織力やガバナンスの強化に加え、未来を創造し、常に安全とお客様に寄り添った物流のプロを目指すことを目的とした人的投資や働きがいの創出、収支構造改革、グループ各社とJR貨物相互の経営資源の効率的活用を目指したグループ戦略を実行します。
⑤ 貨物鉄道輸送の更なる役割発揮に向けた体制強化
脱炭素社会の実現に向け、貨物鉄道輸送によるCO2排出量の精緻化、お客様のScope3削減を明示するインセンティブの導入検討や次世代エネルギーである水素輸送の検討を進めるほか、タイをはじめとした海外における貨物鉄道輸送事業への参画、また、新技術の導入によりDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することで、貨物鉄道輸送の進化を目指すことで更なる役割を発揮し、さまざまな社会課題の解決に貢献していきます。
■長期ビジョン「JR貨物グループ 長期ビジョン2030」
近年の物流業界は、トラックドライバー不足、環境問題の深刻化、Eコマース市場の拡大など取り巻く環境が著しく変化しております。一方、政府においてはDXや2050年カーボンニュートラルを推進しており、企業においてはSDGsやESG経営などに基づく活動が強く求められ、環境特性と労働生産性に優れた日本唯一の貨物鉄道輸送ネットワークを持つ当社グループが果たすべき役割はますます高まっています。
このような状況の中で、将来にわたって持続可能な社会の形成のため、そして国鉄改革の使命としての完全民営化の実現に向けた経営基盤を固めるため、当社グループが鉄道を基軸とした総合物流企業グループとしてどのような価値を提供し、役割を果たしていくかを10年の長期ビジョンとして示すことが必要と考え、2021年1月に「JR貨物グループ 長期ビジョン2030」(以下「長期ビジョン」)を策定しました。
長期ビジョンにおいて、当社グループは、鉄道を基軸とした総合物流企業グループとして最適なソリューションを提供し社会価値向上に貢献することを目指す姿として掲げ、次の4点を基本方針としました。
①安全を全ての基盤として、社会インフラである物流の幹線輸送を担うべく、鉄道ネットワークの強靭化を進め、確固たる事業基盤を構築
②多角的な不動産開発により資産のポテンシャルを最大限に活かした不動産事業の展開
③全国をつなぐ鉄道ネットワークを基盤に、物流結節点としての貨物駅に保管、流通加工等のサービスを付加することで最適なソリューションを提供し、物流生産性の向上に寄与
④グリーン社会の実現・持続可能な社会の形成に貢献するとともに、人々の生活や産業を支え、完全民営化を実現
これら4点の基本方針を実行することによって、当社グループは、総合物流企業グループとして、
①物流生産性の向上
②安全・安心な物流サービス
③グリーン社会の実現
④地域の活性化
という4つの価値を社会に対して提供することを目指しています。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、すべての事業において安全を最優先することを大前提に事業運営を行うこととした上で、以下に掲げる取組みを進めてまいります。
① 物流生産性の向上
「物流生産性の向上」では、全国一元的な貨物鉄道輸送サービスを提供する国内唯一の企業グループとして、お客様に最適なソリューションを提供する総合物流企業グループへと成長するための取組みを進めてまいります。具体的には、新たなブロックトレインの新設や輸送力の増強、速達化による輸送サービスの向上を目指していくとともに、トラックドライバー不足が懸念される物流の2024年問題やカーボンニュートラルの達成等の物流課題をお客様と共有し、将来を見据えた貨物鉄道利用のメリットを訴求することで輸送量の拡大を図り、「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」の提言を受けて設定した2025年度目標であるKGI/KPI(コンテナ輸送量:チャレンジ目標209億トンキロ、必達目標196億トンキロ)の達成を目指します。また、総合物流企業グループへの進化に向けた取組みも引き続き継続していきます。2020年2月に竣工した「東京レールゲートWEST」、2022年5月に竣工した「DPL札幌レールゲート」、2022年7月に竣工した「東京レールゲートEAST」、各駅で整備を進める積替ステーションといった物流施設とJR貨物グループ各社が持つ物流アセットと結合させることで、お客様に物流効率化のニーズに応えるサービスを提供するとともに、収益力の向上を図ります。
② 安全・安心な物流サービス
「安全・安心な物流サービス」では、2021年12月に発生した山陽線瀬野~八本松間貨物列車脱線事故の再発防止策として輪重測定装置やトラックスケールの導入や、荷主様、利用運送事業者様ら関係者が一体となって偏積を防止する仕組みの構築を実施してまいります。また、2024年9月に輪軸の圧入作業に関する作業記録の書き換え等の不適切事案が判明し、2024年10月31日に国土交通省から「輸送の安全に関する事業改善命令」を受け、講ずべき措置の4つの項目(「規程類の整備」、「教育体制の改善」、「作業記録の書き換えの防止」、「安全管理体制の点検、見直し」)について報告を行いました。報告した内容を着実に実施し、全社をあげて安全管理体制の強化に取り組み、輸送の安全確保に万全を期し、社員一丸となって信頼回復に努めてまいります。さらに近年頻発化・激甚化する豪雨災害等による長期寸断時の対応強化の取組みとして、う回運転に備えたEH500形式電気機関車の改造や乗務員の乗り入れ線区の拡大、代行輸送に備えたグループ会社との連携によるトラック輸送の拡大 、共同保有船の「扇望丸」の活用、定期航路船(RORO/フェリー)利用拡大に取り組むなど、災害時のリダンダンシー確保を進めております。
また、輸送量に応じた列車設定の見直し、列車運行にかかるオペレーションコストの削減に取り組むほか、安全の確保をした上で機関車・貨車、またはその部品の検査周期延伸を行うなどコスト削減を図ってまいります。
③ グリーン社会の実現
「グリーン社会の実現」の取組みとしては、機関車やフォークリフトの取替時に従来型よ り燃費削減効果の高い車両の導入を進めているほか、構内 移送トラック、入換用機関車、フォークリフトに次世代バイオディーゼル燃料の使用(試使用含む)を開始しました。今後も次世代バイオディーゼル燃料のさらなる使用拡大を検討してまいります。また、国の目標に合わせて、2022年7月に環境長期目標「JR貨物グループ カーボ ンニュートラル2050」を策定しました。数値目標として、2030年度に自社で排出するCO2量を50%削減(2013年度 比)し、2050年度にはグループ全体のCO2排出量を実質ゼロとすることを掲げており、目標の達成に向けてグループ全体で取組みを進めてまいります。
④ 地域の活性化
「地域の活性化」では、「社会課題解決型」の新規事業への挑戦の初めての取組みとして植物工場事業を行う合弁 会社を2021年9月に設立し、2023年4月から新工場が操業開始しました。オペレーションを含めて商品として出荷できる製品レベルまで早期に到達するように取り組むとともに、販路拡大も行ってまいります。また、海外事業ではタイ王国に重点を置いて活動を行います。2021年9月に開設したバンコク駐在員事務所を拠点として貨物鉄道輸 送事業の実施可能性及び貨物鉄道関連産業の参画可能性について調査を進めてまいります。
不動産事業では、自社用地を活用した新規開発に加え、外部から購入した不動産物件による賃貸事業を推進し、不 動産事業の安定した成長軌道の確立を目指します。また、回転型不動産ビジネスに参入し不動産事業の更なる拡大に着手します。
⑤ 財務上の課題
「財務上の課題」として、金融危機等の発生による資金の枯渇や金利の上昇が挙げられます。当社グループは今後も継続的に長期資金・短期資金の調達が必要であることから、資金調達先や借入期間の分散化を実施するとともに、震災・大雨・噴火対応型のコミットメントラインを締結し、有事の際の資金需要にも対応できるようにしております。
次いで、格付けの低下等により、市場からの資金調達コストが上昇する、もしくは調達自体が困難になることも想定されることから、財務体質の維持・強化に努めます。
また、新型コロナウイルス感染症の流行に代表されるような、当社グループの事業継続に大きな影響を及ぼす事象が発生した際には、資金繰りを継続的に注視し、早期の資金調達を実施するなど、対策を講じてまいります。