訂正有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/25 10:00
【資料】
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【項目】
133項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「for Startups」という経営ビジョンを掲げ、スタートアップ企業を主として人的資源の側面から支援することで新産業を創出し、社会に貢献してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、持続的な事業拡大と企業価値向上のため、経営の効率化を図るとともに、売上高及び営業利益を重要指標としてとらえ、各種経営課題への対応を図っております。
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略
・経営環境
近年、海外ではスタートアップ企業が大きな注目を集め、世界的にイノベーションの創出基盤としてのスタートアップ企業に期待が集まっております。我が国においても、「未来投資戦略」においてスタートアップ企業の重要性が提唱され、経済産業省主導による「J-Startup」プログラムの開始や、福岡市が国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に指定される等、国や自治体を挙げたスタートアップ支援策が実施されております。また、徐々にではあるものの、人材がスタートアップ企業に流入するようになり、大手企業によるスタートアップ企業との連携(オープンイノベーション)事例も増加傾向にあります。
以上を背景に、我が国のベンチャーキャピタル等による投資額は2018年度で2,778億円(注1)と増加傾向にあります。加えて、「未来投資戦略2016」において、国内のベンチャーキャピタル投資額の増加は国家戦略に掲げられており、スタートアップ企業に対する投資の増加傾向は、当面継続することが推測されております。スタートアップ企業において、調達資金の多くは人材採用に充当されるケースが多く、当社の主力サービスのタレントエージェンシーにとって好環境下にあります。
・経営戦略
上記経営環境の中、当社は、主力であるタレントエージェンシーサービスをより一層強化するとともに、アクセラレーションサービスの拡充により、スタートアップ企業の成長を加速させ、スタートアップ企業を支援する「成長産業支援」のリーディングカンパニーとなることを目指してまいります。具体的な経営戦略については以下のとおりです。
①スタートアップエコシステムの形成による自律的成長サイクルの構築
スタートアップエコシステムの形成においては、①起業家人材の創出、②リスクマネーの供給、③優秀人材の確保、④大手企業や研究機関の協力、⑤会計・法務・知財等の専門知識のサポート、⑥起業文化の醸成、⑦EXIT環境の整備等が必要と当社は考えております。当社は、このうち、特に「優秀人材の確保」が重要と考えております。
当社は「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、独自のアルゴリズムを用いて各スタートアップ企業を数値化し、当社が成長性の高いと考えるスタートアップ企業(有力スタートアップ企業)を選定し、優先的に支援サービスを提供する仕組みを構築しております。これは、有力スタートアップ企業に人的資源を最適配置することが、結果的に次のユニコーン企業を生み出し、新産業の創出につながると当社が考えていることに因ります。
当社は、成長性の高い有力スタートアップ企業に対し、経営幹部を中心とした人材をアサインすることで、更なる企業成長を促進し、その結果、更なる需要(人材・サービス)を生み出す、自律的な成長サイクルの構築を目指してまいります。
②成長産業の人材支援企業としてのポジショニング確立
売上高の大部分を占めるタレントエージェンシーサービスは、スタートアップ企業向けに人材支援サービスを提供しております。
我が国のスタートアップ企業への投資は増加傾向にありますが、GDP比で0.04%(注2)と諸外国と比較して未だ小さく、人材がスタートアップ企業へ流入する潮流も未だ発展途上であることから、当社が属するマーケットは成長余地が大きいと認識しております。スタートアップ企業の調達資金の多くが人材採用に充てられることから、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載した特徴の強化と、サービスクオリティのより一層の向上を図り、成長産業の人材支援企業としてのポジショニングの確立に努め、タレントエージェンシー・アクセラレーションの両サービスの今後の収益機会の拡大を目指してまいります。
③持続的な競争優位の確保
当社は、事業運営を通じて、スタートアップ企業に関する定量・定性情報を蓄積しているほか、多数の経営幹部の支援によるノウハウを蓄積しております。当該情報やノウハウは、独自アルゴリズムを用いた「数値化されたスタートアップ企業情報」として可視化され、タレントエージェンシー・アクセラレーション両サービスの競争優位の源泉となっております。スタートアップ業界は日々目まぐるしく変化していることから、一般的に情報が陳腐化しやすく、参入障壁が低い人材紹介やコンサルティングビジネスにおいて障壁として有効に機能するものと考えております。今後も、独自アルゴリズムの強化やベンチャーキャピタル・起業家とのより緊密な連携により、当該競争優位性の維持・確保に努めてまいります。
④オペレーションの改革による生産性向上(タレントエージェンシーサービス)
タレントエージェンシーサービスにおいて当社は、同一のヒューマンキャピタリストがクライアント企業及び候補者を担当する両面型の運営方式を採用しております。両面型には、採用スピード向上といったメリットがある一方、業務管理プロセスにおいて、一定の工数が生じる等のデメリットも存在します。当社は、自社でエンジニアを抱え、当該プロセスの継続的な改善活動を実行することで、中長期的な生産性向上を図ってまいります。
⑤バリューを体現した人材採用及び育成
当社の運営するタレントエージェンシー及びアクセラレーション両サービスの最も重要な資産は「人」であり、企業成長には人材成長が欠かせないと認識しております。当社は、経営ビジョンである「for Startups」を実現するために、従業員の目指すべきバリュー(価値観)として、以下の3つを重視しております。
・「Startups First」
全ては日本の成長のために。スタートアップスのために。
※スタートアップス=『進化の中心』にいることを選択する挑戦者達
・「Be a Talent」
スタートアップスの最たる友人であり、パートナーであり、自らも最たる挑戦者たれ。そして、自らの生き様を社会に発信せよ。
・「The Team」
成長産業支援という業は、Teamでしか成し得られない。仲間のプロデュースが、日本を、スタートアップスを熱くする。
当社は、当該バリューを体現した「強い個人」を一人でも多く輩出することが、組織成長に寄与すると考えていることから、従業員に対し、社内外において様々な成長機会の提供を行っております。今後も、社内外での様々な教育研修機会の提供を通じて、人材の採用・育成を強化してまいります。
⑥コアコンピタンスを活用した事業領域の拡大
当社は、創業以来一貫してスタートアップ企業のサポートに特化した事業運営をしており、当該事業アセットを活用し、事業領域の拡大を図ってまいります。
・タレントデータベースを活かしたビジネスの多角的展開
当社は、成約情報を含めた様々な人材に関する情報を蓄積しております。当社が保有するタレントデータベース(人材データベース)を活かし、様々なニーズに対応した支援サービスを展開してまいります。
・データベースを活かした収益機会の拡大
我が国のスタートアップマーケットに関する情報は網羅的に一元化されていないことが課題と当社は考えております。当社が運営する「STARTUP DB」はスタートアップ企業に関するデータベースとして11,000社(2019年12月末現在)以上を収録しているほか、独自のアルゴリズムを背景に「数値化されたスタートアップ企業情報」を有しております。当社が有するタレントデータベースとスタートアップデータベースの双方を活かし、収益機会の拡大を図ってまいります。
・当社ブランドの確立による収益機会の拡大
当社は、成長産業支援を事業目標としており、当社とスタートアップ企業、ベンチャーキャピタル、大企業、大学・研究機関、専門組織・専門家との連携を強めていくことで、スタートアップエコシステムの中心的存在になることを目指しております。成長産業支援の中核的企業としてのブランドを確立させ、収益機会の拡大を図ってまいります。
(注)1.出典:一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2019」
2.出典:ベンチャーチャレンジ2020「我が国ベンチャーを巡る課題と今後の対応の方向性」
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社の対処すべき課題としては、既存事業の拡大、収益性の向上、内部管理体制の整備が重要であると認識しております。
①サービスの認知度向上
当社は、創業以来、マスメディアを活用した広報活動は行っておらず、スタートアップ向けのイベント等のターゲットを絞った広報活動のみ実施してまいりました。一方で、当社の経営ビジョンである「for Startups」や、スタートアップエコシステムの形成、各サービスの継続的な高成長を実現するためには、タレントエージェンシー・アクセラレーション両サービスともに、サービスの認知度向上が必要不可欠であると考えております。今後、費用対効果を慎重に検討した上で、より幅広い広告宣伝活動を検討してまいります。
②優秀人材の確保
日々目まぐるしく変化するスタートアップ業界において、顧客満足度を高めるには優秀人材の確保が欠かせないものとなっております。また、当社の成長に応じた組織体系の強化により、タレントエージェンシーサービスにおけるヒューマンキャピタリストのみならずエンジニアや高いスキルを有したトップタレント等の幅広い分野での人材の確保が課題と考えております。継続的に人材採用をするためにEVP(Employee Value Propositionの略。企業が従業員へ提供できる価値)を拡充させつつ、社内外の教育研修を通じた育成により当該課題に対応してまいります。
③タレントエージェンシーサービスにおける生産性の向上
タレントエージェンシーサービスの売上規模の拡大には、ヒューマンキャピタリストの増員のほか、一人当たりの生産性向上も必要であります。社員間のコミュニケーションの活性化や教育研修といった人材育成施策のほか、社内業務管理システムの機能強化や業務プロセスの改革による業務効率の改善を通じて、更なる生産性の向上に対応してまいります。
④スタートアップエコシステム形成へ向けた外部パートナーとの連携(アクセラレーションサービス)
当社が持続的に成長するためには、スタートアップエコシステムの形成が必要不可欠であります。アクセラレーションサービスの業容拡大に向け、ベンチャーキャピタルや大手企業、プロフェッショナルファーム等と提携し、新サービスの開発を図ってまいります。
⑤内部管理体制の強化
当社は、ビジネス上、個人情報や企業情報を含め、機密性の高い情報を有しております。定期的な社内教育の実施や管理体制の強化に取り組んでおりますが、内部統制の整備と実効性ある運用を通じて、組織の健全なる発展に努めてまいります。