有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/05/17 15:00
【資料】
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【項目】
153項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは「Happiness」「Beauty」「Wellness」をテーマに掲げています。当社グループの目的は、店舗を通して、当社グループの価値観をお客様に明確に提示し、幸福を感じていただける方を一人でも多く増やしていくことです。このテーマの下、当社グループでは年間約2万4千組(2019年9月期時点の当社のフォトウエディング撮影組数とHAPISTAの撮影組数の合計)のお客様にサービスを提供しており、お客様の「想い」に寄り添い、株主の皆様に信頼され、社会貢献できる経営を確立してまいります。
(2) 経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は少子高齢化が一段と進み、厚生労働省が公表している「人口動態統計調査(2019年)」によれば平均婚姻年齢は2005年で男性29.8歳、女性28.0歳から2019年で男性31.2歳、女性29.6歳と上昇しています。また同調査によると年間の婚姻組数は2015年:635千組、2016年:620千組、2017年:606千組、2018年586千組、2019年:599千組と減少傾向にあります。一方で、近年では家族を中心とした少人数での挙式や披露宴を行わない結婚スタイル、ソーシャルネットワークサービスを利用した体験の共有等、従来の結婚式の様式にとらわれない、新たな価値観が醸成されていると当社では考えています。このような環境下において、結婚写真についても従来は挙式会場で当日に撮影を行うスタイルが主流でしたが、当日の式場とは異なるスタジオ、ロケーションの中で、参列者に気兼ねすることなく、挙式当日には撮影できないような写真を残せるフォトウエディングサービスの需要が増加していくものと当社では考えています。また、披露宴を行わない結婚スタイルにおいてもフォトウエディングで花嫁衣裳に袖を通し、結婚の報告等を行うことで花嫁体験をするケースが認知されつつあると考えています。
2020年からは新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、ブライダル業界においては、従来型の挙式・披露宴業態では参列者への配慮からの「3密」回避や、大人数のイベントの自粛傾向の強まりを受け、2020年4月から2021年3月までで28万組(日本ブライダル文化振興協会「新型コロナウイルス感染症影響度調査結果(0228)」)が影響を受けるなど、挙式・披露宴の延期や中止による実施組数の減少が続いています。他方、フォトウエディング業態においては、新郎新婦だけで「3密」を回避しつつ撮影が可能であり、挙式・披露宴の延期・中止が増える中で思い出を残したいカップルの写真へのニーズが高まっていると当社では考えています。
(3) 経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営方針及び経営環境を踏まえた中長期的な経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
スタジオ事業では「フレームを超える感動を」を行動指針として、「新しい感動体験をつくり、文化として浸透させる」を使命とし、以下の経営戦略を実行しています。
①フォトグラファー、メイクアップアーティストの人材確保及び育成
当社グループはフォトグラファー及びメイクアップアーティストについて、外注依存することなく自社で正社員として雇用しています。専門学校の卒業生や未経験者を積極的に正社員として採用し、当社グループの研修を行う専門部署が技術研修・指導を継続的に行うことにより、写真撮影に関わる職種ごとの専門技術・ノウハウを習得したプロフェッショナル人材として育成しています。
研修は当社で設定した技術等級に応じて実施され、等級別に以下の目標を設定しています。
第1等級(入社時) :一般的・標準的な要求に対し、上位者の指示やマニュアル、研修で教わった内容のもとに対応できる、もしくは習得中の段階であり必要とされる基本的なスキルを知るレベル
第2等級(在籍数年後):行動を振り返り習熟することで、一般的・標準的な要求に、独力で対応できるレベル
第3等級(在籍5年超):難しさ・複雑さのある要求に、独力で対応できるような、プロとして完成するレベル
整備された教育システムにより、フォトグラファー及びメイクアップアーティストの技術力を高めつつ高水準で均質化し個人差を極小化することで、当社グループが提供するフォトウエディングサービスは安定した品質でのサービス提供が担保されていると当社では考えています。
また、撮影・メイクの専門技術を保有する人員を正社員として確保(2021年4月1日時点において、フォトグラファー:134名、メイクアップアーティスト:148名)していることで、フォトウエディングサービスの平均単価が上昇する春秋の繁忙期の需要を確実に取り込むことを可能としています。また、少人数で日程調整が容易かつ短時間で撮影可能なフォトウエディングの特性を活かし平日に顧客を取り込むことで人員と設備の稼働を平準化し、稼働が土日に集中する結婚式や披露宴と比較してより多くの撮影を可能としています。
当社グループのフォトグラファー及びメイクアップアーティストの人員数の推移
(単位:人)
2017年9月2018年9月2019年9月2020年9月2021年4月
213266271262282

②Web集客力の強化
当社ではウェブサイト制作について制作チームを内製化しており、適時適切なWebサイトの更新、SEO対策(*1)、Web集客状況のモニタリング等を行っています。
「ゼクシィ結婚トレンド調査2020」(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ)によれば、首都圏における顧客によるフォトウエディング事業者の選定媒体として、SNSが39.4%、その他インターネット上のWebサイトが27.6%と最も多く利用されています。
別撮りのスタジオ・ロケーション撮影の依頼先を検討する際に利用した情報源
(単位:%、複数回答可)
媒体2018年2019年2020年
SNS21.231.039.4
その他Webサイト35.029.027.6
結婚情報サイト26.921.719.3
結婚式場の紹介13.114.914.2
結婚情報誌19.611.811.6
友人・知人の紹介12.010.611.3
挙式会場などのHP3.13.46.1

(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ「ゼクシイ結婚トレンド調査2020」)
当社グループの接客件数のうち90%以上は自社Webサイトでの予約によるものであり、その入口となるWeb検索においては、SEO対策(*1)と、競合他社に先行してWebサイトからの集客に注力してきたことによる過去の検索数の蓄積等により、「フォトウエディング」「前撮り」等のキーワード検索で各地域において上位を占める結果を導いています。例えば、2021年4月16日時点において「東京 フォトウエディング」、「大阪 フォトウエディング」、「大阪 前撮り」でGoogle検索すると、広告表示を除きいずれもフォトウエディング事業者として第1位、「東京 前撮り」で検索すると同2位で表示されます。
SNSを通じた情報発信にも積極的に取り組み、当社グループの提供するサービスの認知度を向上させる活動を進めています。スタジオ事業においては、各店舗の公式アカウントに加えて、技術水準等の社内認定基準を満たしたフォトグラファーやメイクアップアーティストについては個人アカウントを開設し、フォロワー数を増やし情報発信力を強化することによる認知度の向上に取り組んでいます。さらに、SNSにおいては当社グループのサービスに満足いただけた顧客自身により情報発信されることで、当社グループ・顧客の双方向からの情報発信が当社グループのサービスの認知度を高める仕組み作りを推進しています。
(*1)「Search Engine Optimization」の略であり、インターネット検索結果でWebサイトを上位表示させたり、より多く露出するための一連の取組のことを「SEO」といいます。
③衣裳
和装の品揃えの充実と、洋装ドレスはデザインを内製化して海外の仕入先に直接発注することで最新のデザインのトレンドを取り入れた衣裳をいち早く提供することを可能とし、品質とコストを自社でコントロールしつつ、顧客に「多くの衣裳の中からお気に入りを選ぶ楽しさ」を提供し満足度を高める取組を進めています。
④地域に根差した店舗展開
当社グループは首都圏で「スタジオAQUA」、関西圏で「スタジオTVB」、名古屋で「スタジオ 8」、福岡で「スタジオAN」、沖縄で「スタジオSUNS」、北海道で「スタジオSOLA」を展開しており、それぞれの地域に応じたブランディング・店舗づくりを行っています。都市型店舗はターミナル駅近辺に出店することにより、地域のお客様にとって利便性の高い店舗展開を行っています。
今後は、大都市圏においては大規模なターミナル店舗とその周辺に展開する中小規模のサテライト店舗を組み合わせ、商圏内のシェアを引き上げる戦略を推進します。また、オンライン接客等のセンターオペレーション化や衣裳管理のリモート化等を進めることで、店舗の業務とスペースの効率化及び既存店稼働率の向上を推進します。これらの施策と併せて、郊外や地方都市における中規模商圏に対応した省スペース・少人数で運営可能な地方都市型店舗の展開、リゾート地におけるフォトウエディングサービスを提供するリゾート型店舗の展開を推進してまいります。
これらの取組により、当社グループでは、将来においてフォトウエディングサービスの店舗を年間2店舗以上、アニバーサリーフォトサービスの店舗を年間2店舗ずつ出店する計画です。
スタジオ事業の店舗数の推移は以下のとおりです。
2008年2009年2010年2011年2012年2013年2014年
店舗数225791112
(ウエディング)225781011
(アニバーサリー)----111
出店数2032221
退店数0000000
2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年
店舗数15171919182020
(ウエディング)13151717161716
(アニバーサリー)2222223
(ペット写真)-----11
出店数3221021
退店数0001101

(注)2008年から2020年は12月末の情報であり、2021年は4月末現在の情報です。
⑤衛生管理
当社グループでは新型コロナウイルス感染症対策を含めた適切な衛生管理体制を構築するため、各店舗への必要な衛生設備の配置及び衛生管理の指導を徹底し、お客様が安心してサービスの提供を受けることができる環境を整備しています。
⑥衣裳の品質管理
当社グループではグループ全体の衣裳を管理する部門を設置し、定期的な衣裳の購入と廃棄、店頭在庫の入替等を行い衣裳デザインの陳腐化や使用過多・経年による劣化品の使用を防止することで品質を確保しています。衣裳の買付けにあたっては仕入先に直接赴き、デザイン・品質を確認した上で大量購入することで低価格を実現しています。
⑦新型コロナウイルス感染症拡大への対応
当社では新型コロナウイルス感染症への対応として、非接触でコロナ禍においても安心して撮影申込が可能な「オンライン専門相談カウンター」によるオンライン接客の拡充、長距離の移動が制約を受ける中で都市近郊の旅行先でのフォトウエディングを提供する「フォトジェニックジャーニー」の実施等、顧客のニーズをとらえ環境に合わせた施策を実行してまいります。
⑧フォトウエディング事業領域の拡大及びライフイベント領域への展開加速
近郊の旅行先でフォトウエディングを行う「フォトジェニックジャーニー」、新郎新婦だけでなく家族と一緒に撮影する「家族フォトウエディング」、フォトウエディングにオンライン結婚式を組み合わせた「フォトパブリックウエディング」、本格的なチャペルでフォトウエディングを行う「チャペルフォトプラン」等の取組や、新型コロナウイルス感染症の収束後にはインバウンド需要の取込みを推進し、フォトウエディング事業領域の拡大を加速してまいります。
また、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラによる手軽な個人撮影とは異なる写真に対する消費者のニーズに対し、当社グループの持つフォトグラフィック技術を活用し、ライフイベント領域への展開に取り組んでまいります。家族や子供の記念日(アニバーサリー)をテーマとしたフォトスタジオである「HAPISTA」の店舗展開を加速すると共に、貸切スタジオでの撮影や散歩等の日常を切り取るようなペット写真サービス、成人式や誕生日等の人生の記念写真や、その他のライフステージにおいて顧客に寄り添ったサービスの展開を推進してまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社では、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、調整後営業利益による評価を行っています。調整後営業利益は「営業利益±その他の収益・費用+本社費(※)」で算定しています。調整後営業利益の金額、内容は「3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容d.経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について」をご参照ください。
(※)本社費:管理部門等で発生する全社的な管理費用等